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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

『Stagecrowd』:競合ひしめくライブ動画配信プラットフォームで、独自のサービスを追求【前編】

2020.08.26

ここから未来が生まれ、そして育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

第4回は、2020年6月29日にスタートし、年内だけで既に100件以上の配信を予定している新しいライブ動画配信サービス『Stagecrowd(ステージクラウド)』をピックアップ。コロナ禍において急増したライブ配信ビジネスにソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が参入する意図と、競合ひしめくこの分野で、『Stagecrowd』が独自に提供するサービスとは。

前編では、本サービスならではの特徴と第1回配信が実現するまでの経緯を担当者らに聞く。

  • 小野寺 徹

    Onodera Toru

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 笠井英年

    Kasai Hidetoshi

    ソニー・ミュージックソリューションズ

 

強いニーズに応えるため、独自のシステムに機能拡張の形で導入

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ほぼすべてのアーティストの音楽ライブやフェス、イベントが延期や中止を余儀なくされた。そこで、アーティストやスタッフ、ライブハウス関係者たちは“今、できること”を可能な限り模索。それぞれが新しいエンタテインメントのひとつとして、さまざまなデジタル施策を始動させた。

緊急事態宣言が発令された4月から5月中旬にかけては、YouTubeやLINE LIVE、ニコ生、ツイキャス、ミクチャ、SHOWROOMなどの従来のメディアを使った無料の動画配信が中心だったが、全面解除後の5月下旬からは有料による配信ライブが急増。

チケットぴあが運営する“LIVE STREAM”、ローチケの“ZAIKO”、イープラスの“Streaming +”などのプレイガイド系に加え、ABEMAやRAKUTENなどのIT企業も動画配信サービスに参入するなか、SMSは、やや後発ながらも6月29日にライブ動画配信サービス『Stagecrowd』をスタートさせた。

サービスの特徴としては、アーティストのオリジナル性を生かしたサイトの構築、グッズ販売におけるEC(電子商取引)との連携、大規模なライブ配信でも安定した高画質・高音質の配信などを挙げているが、多くのアーティストが所属するソニーミュージックグループ発の動画配信サービスとして、どのようなプラットフォームの構築を目指したのか。プロジェクトの企画開発からサービスの運営に携わる小野寺徹と、音楽レーベルやアーティストマネジメントと向き合い、ブッキングを担当する笠井英年のふたりに話を聞いた。

――まず、『Stagecrowd』を立ち上げた経緯から聞かせてください。

小野寺:僕らが籍を置くSMSには、もともとアーティストのファンクラブの運営やサポートを行なう部署があって、その活動のひとつとして生配信のサービスもお手伝いしていたんです。それがベースにあった上で、今年の頭くらいから、ファンクラブのなかで有料の生配信をやってみたいというリクエストが出てきていました。そのニーズが、新型コロナウイルスの影響で加速した結果、我々もファンクラブだけでなく、広く公開できる動画配信サービスを提供しようということになったんです。

笠井:もともとSMSにあるデジタルビジネスカンパニーという部署は、独自のシステムを持っていたんです。そのシステムは、アーティストの公式サイトやファンクラブのショップでグッズを売るためのユーザー課金用の管理システムなんですが、そこに拡張という形で、動画配信のプラットフォームサーバーを加えたというイメージですね。

コロナ禍への対応という意味も含め、突発的にスタートしたプロジェクトではありましたが、今、非常に求められているソリューションだと思います。

ソニーミュージックグループだから打ち出せる独自のサービス

――プロジェクトがスタートした当初は、どのようなライブ配信サービスにしたいと考えていましたか。

小野寺:新型コロナウイルスの影響でライブやイベントを自粛しなければならなくなったころには、各社が急ピッチで配信プラットフォームを作り始めていました。毎日、新しいサービスが立ち上がるような状況で、その流れでは、僕らは若干後発になります。そのため他社のサービス内容を横目で見ながら、我々ならではの独自性、どこに他社との違いを出すのかを一番に考えました。

――2月末ぐらいからアーティストのライブが延期や中止になって、3月下旬から徐々にオンラインライブが始まり、有料配信ライブが本格化したのは6月に入ってからでした。他社との違い、『Stagecrowd』ならではの特徴とはどんなものと言えば良いですか。

小野寺:システム面では、先ほど笠井が説明したように、ファンクラブやECで使っている独自のシステムを利用しています。また、既にそのシステムでの動画配信に実績があったので、システムの安定性にも自信がありました。あとは、レコード会社のグループ企業として、できるだけアーティストカラーに沿ったものを柔軟に作れるということが『Stagecrowd』の強みだと考えて、開発を進めていきました。

――他社ではよりメディア色が強い配信プラットフォームもあるなかで、『Stagecrowd』はホームページを見ても配信アーティストのラインナップなどは掲載されていませんね。

『Stagecrowd』オフィシャルHPより。

小野寺:そうですね。サービスを前面に打ち出すというよりは、チケットはアーティストのサイトで販売して、『Stagecrowd』はライブを見せるための仕組みを提供するという割り切った考え方をしています。

特に、他社サービスのようにアーティスト一覧を並べて、『Stagecrowd』がチケットを販売しているような見え方になるよりは、この配信はアーティストが行なうライブであって、我々はあくまで裏方であるという見え方にしたかったんです。

笠井:アーティストごとのWebサービスというのは、ほかとは違う特色だと思います。例えばAというアーティストの横にBというアーティストのチケットが売っていたら、Aのチケットを目当てに訪れたファンが、Bのチケットを買うことがあるかもしれない。

でも、私たちが今、お預かりしているコンテンツは延期や中止になったライブが多いので、そのアーティストのオリジナリティをちゃんとお客さんにわかりやすく提示しないといけないと考えました。

アーティストのオリジナリティを表現した配信サイトを構築することで、お目当てのアーティストのライブがなくなって残念だけど、配信ライブが楽しみだよねって、一緒に盛り上がってもらえるようにしたのが、『Stagecrowd』ならではだと思います。

SUPER BEAVERの動画配信で『Stagecrowd』への信頼度が急上昇

SUPER BEAVER

――『Stagecrowd』は、同時配信の人数制限がなく、高画質、高音質での映像配信を可能にするプラットフォーム“Brightcove(ブライトコーブ)”を採用しているのも大きな特徴のひとつかと思います。このシステムを使っているのは、現状、『Stagecrowd』だけですよね。

小野寺:そうですね。ブライトコーブ社とはもう10年近くお付き合いいただいています。ソニーミュージックの楽曲の視聴ファイルもすべてそれで動いていますし、以前にファンクラブの配信ライブをやったときもとても安定していたんです。

動画配信の場合は、サーバーが落ちてしまうのが一番の問題なんですけど、ブライトコーブは接続数に上限のない世界的な動画配信システムなので、その心配はないし、画質も音質もクオリティが高いことはわかっていたので、お任せしようと思いました。

――そして、6月29日に『Stagecrowd』を立ち上げ、第1弾アーティストとしてSUPER BEAVERが決定したことが発表されました。

笠井:その一発目の配信ですごく信頼度が上がったなと思います。コンテンツの内容もすばらしかったんですけど、「音も画質も良いよね」という声をいただきましたし、チャットも非常に盛り上がっていました。最初のSUPER BEAVERが、とても良い形で配信できたので、今、問い合わせが殺到しています。まさに、うれしい悲鳴ですね。

小野寺:1回目のSUPER BEAVERのライブ自体がすばらしくて、それを良い形でサポートすることができたのでほっとしました。案件も増えていますので、ともかく実績を積み重ねていきたいと思います。

ライブ配信にチャット機能は必須、その訳は?

第1弾配信となった“SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP ~LIVE document~ ”。 撮影:Taka"nekoze_photo"

――最初がSUPER BEAVERだったのはどんな理由からですか。

笠井:SUPER BEAVERは今年、ソニー・ミュージックレーベルズとメジャー再契約を結び、バンドとして新たな道を踏み出しました。そんな矢先にライブが延期になって、最終的には中止になってしまったんですが、“だったら配信でしかできないライブをやろう!”という高いモチベーションでお話をいただいて。SUPER BEAVERはメジャー再契約第1弾ライブ、『Stagecrowd』もサービスイン第1弾ライブで、お互い初めの一歩という共通点があってマッチングしました。

――第1弾は生ライブではなく収録のライブ映像でした。

小野寺:そうですね。我々は生ライブを想定していたのですが、制作側の強い意向で収録ライブになりました。

笠井:SUPER BEAVERの皆さんは、配信でしかできないことをやろうとしていたので、必然的にああいう映像になったんだと思います。

――音質、画質のクオリティの高さに驚かされましたが、先ほど、笠井さんも言われた通り、チャットがかなり盛り上がっていましたね。文字で合唱も起きていて。

笠井:あのチャットは感動的でしたね。

小野寺:サービスとしても、チャット機能は必ず入れようと思ってました。ファンクラブをやっていたときからチャット機能が欲しいというリクエストはいただいていたし、ファン同士のコミュニケーションという意味でも、配信ならではのベーシックなもののひとつという意味で、必要な機能だと思っていました。

“SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP ~LIVE document~ ”より。撮影:Taka"nekoze_photo"

10月3日、日比谷野外大音楽堂でのライブ開催が決定。撮影:Taka"nekoze_photo"

――実際に『Stagecrowd』がスタートして、なにか感じたことはありますか?

小野寺:当日にチケットが売れたりとか、駆け込みで買われる方が多かったりするのは配信ならではの動きかなと思いましたね。そういうデータも、今後サービスを提供する上でいかしていきたいと考えています。

後編へつづく

文・取材:永堀アツオ

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