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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

『Stagecrowd』:競合ひしめくライブ動画配信プラットフォームで、独自のサービスを追求【後編】

2020.08.27

ここから未来が生まれ、そして育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

第4回は、2020年6月29日にスタートすると、早くも年内にすでに100件以上の配信を予定しているという新しいライブ動画配信サービス『Stagecrowd(ステージクラウド)』をピックアップ。コロナ禍において急増したライブ配信ビジネスにソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が参入する意図と、競合ひしめくこの分野で、『Stagecrowd』が独自で提供するサービスとは。

後編では、アーティストとユーザーが求めるものに向き合う彼らが思い描く“ライブ”の未来像を聞く。

  • 小野寺 徹

    Onodera Toru

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 笠井英年

    Kasai Hidetoshi

    ソニー・ミュージックソリューションズ

アーティストが表現したいことを反映するのが一番の目的

――SUPER BEAVERの配信ライブが7月11日に開催されて、翌日には八神純子とGirls²があり、7月16日に行なわれた欅坂46の配信は生ライブでした。

欅坂46

小野寺:八神純子さんは収録したものを配信、Girls²は1回だけの無料の生配信という内容でした。なので、有料の生配信ライブの一発目が欅坂46というのは、相当緊張感がありましたね。

ただ、欅坂46はファンクラブの運営もSMSでやっているので、特典付きチケットを販売したり、本編終了後にスペシャル映像が見られたりというファンクラブ限定のサービスも盛り込めたので、うちとしては、トータルでファンクラブも絡めてできて良かったです。ファンの方にも満足していただけたのではないかと思います。

7月16日に生配信された“KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!” 。

――『Stagecrowd』としては、収録も生も、どちらもありなんですね。

笠井:そうですね。収録でコンセプチュアルにお届けしたいというアーティストもいれば、生の勢いをそのまま伝えたいというアーティストもいるし、過去のライブ映像を配信したいというアーティストもいます。アーティストが表現したいことをしっかり落とし込むのが一番の目的であって、僕のなかでは生も収録もあまり変わらないというか、どちらも大切なコンテンツであるという認識ですし、アーティストによって、それぞれの選択が違うことは当たり前のことだと思っています。

5年間の歴史に幕を下ろし、新グループ名になることがこのライブで発表された。

――サービスのスタートから1カ月経って、ここまでの反響を予想していましたか。

小野寺:どうなんでしょうね。リアルなライブがあったときは有料のライブ配信はそんなに需要がなかったと思うんですね。でも今は、有料の配信ライブをやって当たり前の状況になっていますからね。

ただ、この状況がどこまで続くのかわからないですけど、今は配信ライブをやるのが当たり前になってきちゃったので、アーティストサイドも次のステップを考え始めているようです。オンラインならではのライブとはどんなものか。どんどんアップデートされていくんだろうなと思いながら、日々、取り組んでいます。

笠井:今はもう回線が落ちずにキレイに見せるということが当たり前になってきているので、次は例えば、グッズを付録にしてチケットを売りたいという声が挙がっていたり、何回かに分けた通し券を売りたいというアーティストもいます。

ただの配信じゃなくて、ちゃんとそこにプラスアルファのエンタメ要素を加えようとしているアーティストもたくさんいるので、「こういうことがやりたい」「ああいうことできない?」という声に応えていかなければいけないと思っています。ただ、今はもうバタバタですという感じですが(笑)。

“KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!”より。

ファンクラブとグッズとライブが一体になる配信ライブ

――アーティストやマネジメントサイドから求められるものは変わってきましたか?

笠井:変わってきましたね。アーティスト側としてはライブも大事だし、ファンクラブやグッズ販売も大事なので、その3つを架け橋にする施策が増えてきました。今まで、リアルライブでやってきたファンクラブブースやグッズ販売が、すべて配信のなかでひとつにまとまっています。そういう面ではかなり変わってきたかなと思います。

“KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!”より。

――配信というライブのあり方は、新しいライブカルチャーであると同時に、新しいビジネスでもあるように映ります。

小野寺:そうですね。ファンクラブの運営があり、グッズの販売があり、今回、新しくライブを配信するという部分が増えて。どういうお客さんがどういう行動をしているのか。このマーケティングデータは将来的に戦略的な情報として、すべてのサービスにいかせるんじゃないかと思います。

笠井:ただ、まだライブの配信チケットは、リアルとは比べ物にならないくらい売れないと思っています。じゃあ、どうしたらチケットが売れるのか。それはやはり、何を配信するかが大事だと考えています。

お客さんにとっては、サービスよりも、コンテンツの内容のほうが大事なのは当たり前のこと。そういう意味では、僕らとしては良いコンテンツを一緒に作っていきつつ、なおかつ、グッズやファンクラブと連携していく。それが我々にしかできないことだと思います。

10月12日、13日に、欅坂46のラストステージとなるワンマン公演を開催する。

ユーザーファースト、アーティストファースト

――今後、オンラインならではのライブはどんなものになるのでしょうか。

小野寺:オンラインのライブはインタラクティブ性がありますし、会場を選ばずにできるので、ARなどの演出は増えていく気がしています。ほかにもオンラインならではの演出が出てくるのではないでしょうか。

――ちなみにライブ制作から一括して請け負うという考えは?

小野寺:最初のうちはライブ配信の部分をメインで進めていましたが、やっていくうちに、ライブ中にインタラクティブなコミュニケーションを取れないかとか、ARを使った演出をしたいという話になって。そうすると、配信システムよりも制作側に寄っている希望もたくさん出てきます。

僕らはあくまでシステムですが、SMS内に制作の機能もあるので、社内で協力できるような体制は作ろうと考えています。ソニーミュージックグループの横断型プロジェクトとして海外にも見せるべく動いていて、SMS以外からもグループ全体で協力いただいているのでありがたい限りです。

『Stagecrowd』オフィシャルHPより。

――Volumetric(ボリュメトリック)をはじめ、新しいテクノロジーをいかすハブにもなりそうですね。

小野寺:確かにソニーならではのことを期待されるマネジメントも多いですね。Volumetric(ボリュメトリック)は僕らも話を聞いたりしていますし、ソニーならではの技術もどんどん導入していきたい。最新技術と融合することで、魅力的なコンテンツが作れるものもあると思うので、どんどん連携してやっていきたいなと思います。

笠井:一方で、やっぱりユーザーが配信ライブに求めているのは、テクノロジーよりも、本来リアルなライブで感じるはずだった一体感や温度感だと思うんですね。それがテクノロジーによって増すかどうかはアーティスト次第だと思いますし、僕らはアーティストが発信したいライブ配信に対して寄り添うことしかできない。

だから、僕らとしては、ユーザーを第一に考えたいし、アーティストがやりたいことをストレートに配信しているっていうところを、より濃くしたいなと思ってます。もちろん、アーティストがやりたいことやファンに伝えたいことをテクノロジーが解決できるのであれば、それは最大限いかしていきたいです。

でも、一番大事なのはアーティストのパフォーマンスそのものであるし、彼らの温度感が伝わり、ユーザーとの一体感が生まれるコンテンツにしていくことを忘れてはいけないと思いますね。

『Stagecrowd』オフィシャルHPより。

もっと皆さんにとって使い勝手の良いものに

――少しずつリアルなライブも再開していますが、配信ライブの未来についてはどう考えていますか。

笠井:歌やパフォーマンスを生業にしている方たちのなかでは配信も残っていくというか、リアルもやりながら配信もやったり、もしくは、配信しかやらないという方も出てくる気がしています。

小野寺:今はまだまったく予測はつかないですね。リアルが復活したら、配信をやらないのかもしれないし、配信ライブの良さが残るのであれば、リアルもやりつつ配信とのハイブリッドでやっていくかもしれない。先は読めないですけど、僕らは状況に合わせて、アーティストやマネジメントのサポートができるように頑張るしかないですね。

――最後に、今後の目標を聞かせてください。

小野寺:できるだけ多くの人に喜んでもらえるものができたらいいなと思います。この状況なので、より多くの人に楽しんでもらえるコンテンツ作りをサポートできればと。

笠井:『Stagecrowd』をもっと皆さんにとって使い勝手の良いものにしたいですし、マネジメントやA&Rが求めているものをより反映できるような配信サービス、プラットフォームにしたいと考えています。

あとは、今、SUPER BEAVERの配信が好評で、『Stagecrowd』の代表作のようになっていますが、こういった事例が複数あって、「これって、『Stagecrowd』でやってたんだ」って言われるようなものがお届けできると、少人数でやっているチームの励みになるので、良質なコンテンツをお預かりしていけるようになればいいなと思いますね。

――これからのラインナップで、何か代表作になりそうなコンテンツはありますか。

小野寺:当初からお話をいただいてたKing Gnuですかね。きっと面白いことを考えていると思うので、僕らもすごく楽しみにしています。

King Gnu

笠井:我々の動画配信サービスに『Stagecrowd』という名前がつく前から、「一緒にやりましょう」っておっしゃってくださっていたんです。コミュニケーションを重ねながら実現したものなので、またひとつ、良いものが配信できるんじゃないかなと思っています。

実は、後からメンバーの副音声が聞けるチケットの販売を考えているんです。通常のライブを配信した後に、そのライブのチケットを買った方だけがまた、プラスでメンバーの副音声がついた本編が見られるというものを計画しているので、それは成功したら非常に面白いだろうなと思います。

あとは、まだ実現はしていないですが、音楽以外にも演劇やスポーツ関係のオーダーもいただくようになっているので、年内のどこかでお届けできたらいいですね。

文・取材:永堀アツオ

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