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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

オーディションではなく“才能”というピースに出会うために始動した『Puzzle Project』

2020.11.20

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

数々の才能にスポットを当ててきたソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のSDグループ(新人発掘・育成セクション)。多くのユーザーが参加して、日々、物語を紡いでいるエンタテインメントプラットフォーム「monogatary.com」。そして全世界に45カ所以上の拠点を持つ配信会社で、インディペンデントのアーティストや楽曲を世界に送り出す音楽ディストリビューター「The Orchard Japan」の3組が、新たな才能と出会う場として『Puzzle Project』を起ち上げた。彼らが出会いたいと考えているのは、どんな才能で、そしてその才能と何を目指すのか。

SME SDグループの須藤一希、「monogatary.com」の屋代陽平、「The Orchard Japan」の岡村貴文に『Puzzle Project』の詳細と、それぞれがこのプロジェクトに託す思いを聞いた。

  • 須藤一希

    Suto Kazuki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    SDグループオーディション部
    兼 開発部
    兼 REDエージェント部
    兼 ソーシャルクリエイターレーベル「Be」クリエイターマネージャー

  • 屋代陽平

    Yashiro Yohei

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    デジタルコンテンツ本部GSチーム
    兼 REDエージェント部

  • 岡村貴文

    Okamura Takafumi

    The Orchard Japan room

■ソニー・ミュージックエンタテインメント SDグループ
1978年に発足した、SMEの新人開発・育成を担うセクション。これまでに300組以上のアーティストや俳優、タレントなどを世に送り出し、さかのぼれば松田聖子、尾崎豊、ユニコーン、西野カナ、近年ではKing Gnu、LiSA、Creepy Nutsなど多くのヒットアーティストをSDグループが発掘している。YOASOBIの“ikura”こと“幾田りら”もSDが発掘・育成しているシンガーソングライター。

 

■monogatary.com
ユーザーが日替わりの“お題”に合わせた小説を投稿し、物語を紡ぎ出すストーリーエンタテインメントプラットフォーム。サービスインから3年を経た現在では、小説から音楽を生み出す音楽ユニット・YOASOBIを輩出するなど、従来の投稿サイトとは一線を画す進化を遂げている。

 

■The Orchard
1997年にニューヨークで設立。全世界に45カ所以上の拠点を構えている音楽ディストリビューション会社。音源のパッケージ(商品化)、ディストリビューション(流通)だけでなく、マーケティング、広告展開、シンクロナイゼーション(映画、TV、CM、ゲームなど、音楽以外のメディア)のライセンスのサポート、ライツマネジメントなど多角的にアーティストをサポートすることができる。2019年に日本オフィス「The Orchard Japan」が設立された。

更なる可能性を秘めた才能がマッチングする場

――『Puzzle Project』はSMEで新人開発・育成を行なっているSDグループと「monogatary.com」、そして「The Orchard Japan」の3組の協力で立ち上がった新しいプロジェクトと伺いました。まずは『Puzzle Project』がどんな取り組みなのか教えてください。

須藤:『Puzzle Project』は、作品を生み出すアーティストやクリエイターと、その活動をサポートする僕らがマッチングする“場”だと考えてください。

形式上は、これまでと同様に応募から始まり、我々が才能を感じた方にコンタクトを取らせていただくので、流れだけで見ると一般的なオーディションと同じように捉えられてしまうと思います。

しかし、『Puzzle Project』はそうではなくて、まだ世に多く知られていない才能を持つ方々に、ソニーミュージックグループのさまざまエンタメソリューションを活用してもらうことで、「自分の作品がこんなにも多くの人の心を震わせることができるんだ」ということを体感してもらう。僕らは『Puzzle Project』をそのきっかけになる場所にしたいんです。

屋代:応募期間を設けて、選考というかたちはとりますが、僕らは『Puzzle Project』を“オーディション”とは言いません。アーティストやクリエイターの方との“出会いの場”としています。今回は、そうした思いをしっかりお伝えする意味も込めて、プロジェクト化させました。

――それでは改めて、このプロジェクトを始めることになったきっかけを、それぞれの立場から聞かせてください。

須藤:僕は、SMEのSDグループでアーティストや俳優、タレントの新人発掘、育成を担当しながら、坂道シリーズ(乃木坂46、櫻坂46、日向坂46)やNiziUが生まれた「Nizi Project」などのオーディション運営を担当してきました。

ほかにもソーシャルクリエイターレーベル「Be」というYouTuberをはじめとした、ソーシャルクリエイターのエージェント事業があり、ここではクリエイターマネージャーという立場でプロジェクトに参加しています。

※YouTuberのエージェント事業「Be」についての詳細はこちら前編後編

SDグループでは今、ネットの世界でまだ世に多く知られていない才能の発掘を活発化させていて、今回もその一環として自分がプロジェクトに参加することになりました。

改めて言うことでもないんですが、今はインターネットとSNSを使えば、音楽、映像、アニメ、小説、漫画など、どんなコンテンツだって、一瞬で世界に発信することが個人の力で可能です。しかし、発信することはできても、それが多くの人の目に留まらなければ、もったいないことになってしまいます。僕らSDグループは、才能といち早く出会い、見出していくプロとして、多くの人に発見されることのお手伝いをさせてもらいたいと考えています。

屋代:僕は「monogatary.com」を担当していますが、そこに至る経緯は既にここでも話しているので、もし、気になる方がいらっしゃったらこちら(前編後編)をご覧ください(笑)。

あとは、自分もSDグループと対となるSMEのREDエージェント部という部署を兼務していて、そこでは「monogatary.com」で生まれた小説から音楽を創作するユニット・YOASOBIも担当しています。

『Puzzle Project』では、「monogatary.com」のエンタテインメントプラットフォームとしての特性をいかして、ときにはユーザーの皆さんにも参加してもらえるようなかたちで、アーティストやクリエイターの方々をサポートしていければと考えています。

岡村:自分はソニーミュージックグループに入社後、ソニー・ミュージックマーケティングで営業や販売促進といった仕事に関わってきました。そして昨年、アメリカでリアルな音楽ビジネスの現場を体験できる人材育成プログラムに参加することができ、ニューヨークで2カ月半の研修を受けてきました。そこでの経験もいかせるということで、昨年5月に「The Orchard」の日本オフィス立ち上げに参加させてもらい、現在に至ります。

「The Orchard Japan」では音楽ディストリビューター(アーティストやクリエイターを世界のマーケットにダイレクトにつなげる販売仲介業者)として、新しい才能をデジタル、フィジカル問わずに、全世界の音楽配信サービスやメディアに展開するお手伝いができます。

「The Orchard Japan」が持っているネットワークやコネクション、またそこから得られるマーケティングデータを才能あふれるアーティストにぜひ使ってほしいと思い、今回のプロジェクトにジョインしました。

『Puzzle Project』が求めている出会い

――皆さんは『Puzzle Project』でどんなアーティストやクリエイターに出会いたいと考えていますか。

須藤:既に作品があり、ご自身でインターネットなどを通じてそれらを発信されている方たちですね。

例えば、自分の楽曲をCDやアナログレコードとして販売したい、もしくは小説やマンガを出版したいと考えたとき、そのパッケージ自体は個人で作れたとして、ショップや書店にはどのように流通させますか? または、大きなフェスやイベントでパフォーマンスをしたいと考えたとき、「出たい!」と言うだけで「はい、どうぞ」ということにはなかなかならないですよね。

『Puzzle Project』に参加したら、もちろんやりたいことがすぐに叶うというわけではありませんが、それぞれにはルートがあって、それをたどるには個人の力だけではどうにもならないことや、大きな遠回りを余儀なくされることがたくさんあります。そこで僕らが力になれると考えています。

岡村:海外マーケットに直結するネットワークを持つ「The Orchard Japan」としては、オープンマインドなアーティスト、クリエイターに来ていただきたいです。

以前アーティストのインタビューのなかで「あらゆる配信プラットフォームで音楽を配信したいと思っている。どこかでの配信を制限したり、選択したりすることは逆に効率が悪い」というコメントを読んで、その通りだなと思いました。

今は全世界に配信プラットフォームがいくつもあって、Apple MusicやSpotify、Amazon Musicといった世界展開されているものから、地域限定のローカルサービスだけど、そのテリトリーでは大きな影響力を持っているストアもあります。

つまり、現在は世界のどこからヒットの芽が出るかわからないし、逆にヒットの動向が出たときに、それをマーケティングでしっかりキャッチアップすれば、さらなるヒットに導くこともできるんです。この事実からも我々としては、どんなプラットフォームにも挑戦していく、国や地域を限定しないオープンマインドな方々と出会えたらと考えています。

屋代:自分が作るものに対して信念を持っていたり、自分の作っているものがなぜカッコ良いのかを言語化できる方と出会えたら最高ですね。「何をしてくれるんですか?」「サポート待ってます!」という受け身だと、どうしても時間がかかってしまいますが、モチベーションが明確にある方や、いわゆるクリエイターとしての矜持がある方だと、こちらからのサポートもより効果的にいかしてもらえると思います。

どちらか一方が依存するのではなく、お互いがひとつのピースになって“一緒にパズルを作り上げていく”。そういう関係性が築ける方と出会いたいです。

才能の輝かせ方を『Puzzle Project』でサポート

――いわゆるインターネットなどで、インディーズ的に活動しているアーティスト、クリエイターの方々に対しては、どんな印象をお持ちですか?

須藤:例えば今、TikTokなどで注目を集めている人には、多くのフォロワーがいて、大きな影響力も持っているんですが、その人たちが全員、メジャーと呼ばれるフィールドで活動をしたいと考えているかというと、必ずしもそうではないと思うんですよね。

屋代:わかりやすい芸能人になりたいわけじゃなく、そのコミュニティのなかで大スターという人たちですよね。

須藤:そう。でも、僕らから見ると、その才能はいかし方によってもっと広げられると思っていて、そのテリトリーのなかだけじゃなく、例えばこっちではこういうパフォーマンスをすればもっと多くの人に響きますよ、みたいなことを伝えたいし、視野を広げることだったり、いかに多くのスイッチを入れることができるか。それも『Puzzle Project』の役割ではないかと考えています。

岡村:『Puzzle Project』の内容を初めて聞いたときに頭に浮かんだのが、アメリカの音楽マーケットの現状です。お話しした通り、僕は昨年、2カ月半ほどアメリカで研修を受けてきて、メタリカやレッド・ホット・チリ・ペッパーズを輩出している老舗のマネジメント会社・Q-Primeで、メジャーシーンの動向を学ぶ機会がありました。その後、アメリカの「The Orchard」に行き、アメリカのインディペンデントシーンの動向も学んでいます。

そこでわかったのは、今のアメリカの音楽マーケットでは、いわゆるインディペンデント……つまり、従来の音楽レーベルにとらわれず活動しているアーティストの台頭が大きなトピックになっているということ。

実際、2023年にはアメリカの音楽マーケットにおいて、インディペンデントのアーティストのシェアが実に50%近くにまで到達すると言われていて、以降も同じような市場動向がつづくと予想されています。

アーティストはSNSを使えば自分たちでプロモーションもできるので、どんなパートナーと組むかが重要で。「ディストリビューションだけをアグリゲーターにお願いしよう」とか、「大スターを目指すためにタイアップの取れるメジャーと契約しよう」といった具合に、アーティスト側が知識をすごく蓄えていて、戦略的でもあるんです。

従来のオーディションでは、選ばれた人がそのレーベルに所属し、そこで何者かになれるというものでしたが、今のアメリカのアーティストたちにとっては、“自分に足りないもの”をサポートしてもらうという考え方がスタンダードになっています。『Puzzle Project』も“自分に足りないもの”を得られる場だと考えてもらうと良いかもしれません。

須藤:人の手を借りたいと思ったことがない、サポートしてほしいという発想がなかった人にこそ『Puzzle Project』に注目してもらいたいですね。才能を世に送り出すノウハウを持つSDグループ、ディストリビューションで世界とつながる「The Orchard Japan」、新たな形でファンとコミュニティが持てる「monogatary.com」。それぞれの良さをぜひ、自分の創作活動にいかしていただきたいです。

YOASOBIのヒットと『Puzzle Project』の類似点

――屋代さんが手掛けている「monogatary.com」では、ikuraさん(ボーカル)とAyaseさん(コンポーザー)といった、既にインターネット上やさまざまな場で活躍している方を引き合わせて、小説を音楽にするユニット・YOASOBIを世に送り出しています。こういった新しい才能をメジャーに送り出すという試みは、『Puzzle Project』が目指していることに通じるものがあるのではないでしょうか。

屋代:そうですね。同時に、今回の『Puzzle Project』は、もっと幅を持たせた展開ができればとも考えています。

――アーティストやクリエイターをサポートする上で、「monogatary.com」が具体的にできることはどんなことだと考えていますか。

屋代:「monogatary.com」というサイトの特性を抽象的に捉えなおすと、こちらから何か(お題)を投げかけて、ユーザーの皆さんがいろいろな解釈で返してくれるプラットフォームだと思うんです。

例えば、『Puzzle Project』に参加してくれたアーティストが作った楽曲をお題として提示して、ユーザーの方々からミュージックビデオのアイデアや字コンテを集める……というようなこともできるかもしれない。

さらに「monogatary.com」は、良い物語、アイデアが集まってくるということだけでなく、そのアーティストのクリエイティブに、ユーザーの皆さんが投稿という形で直接関わることもできるかもしれないと考えていて。自分のアイデアや言葉が、アーティストを通して世のなかに広がっていったら楽しくないですか? そういう楽しみや才能を伝播させる関係性が「monogatary.com」なら同時に作れるのではないかと思っています。

音楽ディストリビューターが開く世界への扉

――「The Orchard Japan」では、どんなサポートが考えられますか? できれば実例なども踏まえて教えてもらえるとありがたいです。

屋代:実例ということならYOASOBIがまさに「The Orchard」のサポートを受けたアーティストですね。「The Orchard」のおかげで、海外の方にもかなり早い段階から注目してもらうことができましたし、楽曲制作の上でもマーケティングデータからいろいろな気づきをアーティストに伝えることができました。

岡村:おっしゃる通り、YOASOBIは良い事例ですね。YOASOBIをサポートすることが決まったときは、既に『夜に駆ける』のミュージックビデオがYouTubeで配信されていました。

屋代:そうですね。YouTubeで配信を始めて1カ月ぐらい、その時点で国内では100万回ぐらいの再生回数でした。このスマッシュヒット前夜のタイミングで「The Orchard」にサポートに入ってもらっています。

岡村:取り組ませてもらったころのYOASOBIは海外ではまだ無名のアーティストだったんですが、海外への展開をスタートさせて1カ月後くらいには、「このアーティストは面白い」と各国のスタッフから反響がありました。

さらに、海外スタッフからのレポートでインドネシアのJOOXという音楽配信サービスで、日本人アーティストのトップチャートに入っていることもわかりました。じゃあ、次の曲のタイミングでは各プラットフォームに対して、アーティスト自身のインタビューなども交えながら、しっかりと紹介していこうと。そうやってアプローチを重ねていったことで、「たぶん」のリリース時には、アメリカでも各サブスクリプションサービスのプレイリストに入るようになっていきました。

屋代:恥ずかしながら、僕らサイドでは、インドネシアのJOOXという配信サイトを知らなかったんですが、チャート2位まで上がっていると聞いて、公式のSNSでファンに告知したり、うまく国内外で盛り上がっているという状況を伝えることができたんです。情報のスピード感がとても良かったですね。

岡村:いろいろなメディアやサービスができたことでアーティストやクリエイターが世に出るのは簡単になりましたし、アーティストが自分自身でソーシャルメディアを駆使することでプロモーションもできるようにもなりました。でも、そのなかで大ヒットを掴むことができるアーティストは一握りだということは、皆さんもご存じだと思います。

「The Orchard」を使っていただくことで、世界の各地のどこかでヒットのスパイクが起きたときに、その芽を見逃さないようにできる。同時に、そのスパイクをすぐに海外のチームに伝えて波及させることができます。特にアジア圏、韓国、台湾、中国にもそれぞれスタッフが配置されているので、より具体的な動きができるかなと思います。

YOASOBIがJOOXで注目されていることをキャッチして、実際に投稿されたツイート。

参加を検討されている方へのメッセージ

――なるほど。それでは最後に『Puzzle Project』に興味を持ってくれた方、参加しようと考えている方にメッセージをお願いします。

須藤:僕らは、音楽制作のみならず、ライブや映像、イベント、グッズなど、エンタテインメントに関わることなら、あらゆることをサポートできると思いますし、ソニーミュージックグループにはそれだけのソリューションがあります。ぜひ、これをうまく活用していただきたいですね。

SDグループは、これまでずっと人と向き合い、その人の才能を見出すことに心血を注いできたセクションです。ここに「monogatary.com」と「The Orchard」というピースが加わり、 “才能”というピースを『Puzzle Project』で探しています。きっと何か面白いことができるんじゃないかと感じていますので、少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ『Puzzle Project』にご参加ください。

 

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

関連サイト

Puzzle Project
https://www.sonymusic.co.jp/sd/puzzle_project/
 
ソニー・ミュージックエンタテインメント SDグループ
https://www.sonymusic.co.jp/sd/(新しいタブで開く)
 
monogatary.com
https://monogatary.com/(新しいタブで開く)
 
The Orchard Japan
https://www.theorchard.com/(新しいタブで開く)

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