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芸人の笑像

ハリウッドザコシショウ:“誇張モノマネ”の裏にある、ブレないポリシーとストイックなお笑い観【後編】

2021.03.05

ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。第6回は、“誇張モノマネ”などの唯一無二の芸風で、お笑い界でも特異なポジションで活躍しているハリウッドザコシショウ。2004年、“3度目の正直”でSMA所属となった彼の歴史と、芸人としてのポリシーとは。

後編では、『R-1ぐらんぷり2016』優勝の裏側や日々更新をつづけているYouTubeチャンネルについても語る。異才芸人の“ネタ”との向き合い方とは。

  • ハリウッドザコシショウ

    Hollywood Zakoshisyoh

    1974年2月13日生まれ。静岡県出身。血液型A型。2016年『R-1ぐらんぷり』優勝。3月7日に決勝戦が行なわれる新生『R-1グランプリ』で審査員を務める。

『わかんないけど……』なんて言うヤツは、絶対に信じない

ハリウッドザコシショウの『あらびき団』につづく第2の転機は、もちろん、『R-1ぐらんぷり2016』での優勝劇だ。地元の静岡弁を駆使し、フリップをめくりながら見せる “誇張モノマネ”を筆頭に、似ているかどうかの枠を超えた爆発力ある短いモノマネネタを連発するスピーディな芸風に、観客全員が巻き込まれていった。いまだ破られることのない最年長優勝者の肩書きとともに、芸歴24年目にして勝ち取った栄冠だ。セルフプロデュースを怠らないハリウッドザコシショウだが、2016年に優勝するまでには、見た目の演出に試行錯誤したと言う。

「裸になったのは誇張モノマネを始めたときからなんですけど、2015年の『R-1』では僕、3回戦止まりだったんですね。実はそのころはまだ白ブリーフをはいていた。僕のなかには白ブリーフ=形態模写というイメージがあったんですね。なぜかというと、昔、タモリさんがイグアナのモノマネを白ブリーフでやってたから。あれが僕のモノマネの出発点であり着地点なんですよ。

でも、2015年は、お客さんにはめちゃくちゃウケたのに落とされた。仲間に聞いたら、『ダメを出すポイントはネタそのものじゃない。直すことがあるとすれば白ブリーフしかないです』と言われましてね。そこでスーツにするか全身タイツにするかと悩んだんですけど、スーツだとカッコ良すぎるし、全身タイツだと違和感が先に立つ。じゃあ、ちょっとスポーティにしようと思ってプロレス的な黒パンツにしたら、しっくりきた。黒い帽子と黒いパンツで、ちょっとコーディネートしてるみたいな感じも良かったのかな」

黒パンツで2016年の『R-1』に挑んでからも、ちょっとした裏話がある。

「決勝進出が決まると、アドバイザーとして一応構成作家がつくんですね。で、『僕が担当します』とやってきた作家が、『ニーパッドとかつけて、もっとプロレスっぽくしませんか?』とお節介なことを言うんですよ。でも僕は、これ以上プロレス的になるのは嫌だった。ネタよりもそっちのほうに目がいっちゃうし。なので、そもそも僕のネタなんだから従わなくても良いと思って、受け入れなかった。

あの演出に従っていたら、そもそも優勝してないと思いますよ。ずっと僕、専属の職業作家はつけずにやってきてるんです。なぜかというと、作家のほとんどは自分が“板の上”に立ってないから。だからすぐ、キャラが弱いとか言って余計な色をつけようとする。そういうの嫌なんですよ」

単独ライブに挑むときも、ネタのブラッシュアップは作家ではなく、芸人仲間の力を借りる。

「単独ライブをやるときは錦鯉の渡辺(隆)と、今年の『おもしろ荘』にも出演した野田ちゃんに作家をやってもらってるんです、毎年毎年。やっぱりね、ネタの面白い面白くないは、芸人じゃないとわからない。いろんな作家へのネタ見せでも、僕がやるとみんな体を斜めにしちゃって、第一声が『よくわからないけど……こういうふうにしたら良いんじゃないかな?』みたいなことしか言わない。責任取りたくないんですよ、結局。『僕はこう思う』とも言わないんだから。ハナから『わかんないけど……』なんて言うヤツは、絶対に信じないです」

すべてのネタは芸人としての自分が責任を持つし、信じるものを自由にネタにしたい。ハリウッドザコシショウのお笑いへの考え方は、実にナチュラルでストイックだ。しかもポリシーこそ強固だが、“面白い”を追求するためなら、さまざまなやり方にチャレンジする柔軟性も持ち合わせている。インパクトの強い芸でブレイクしていながら、いわゆる一発屋で終わらずにコンスタントにテレビで活躍しつづけているのも、自分が信じる面白さを常に追求し、工夫しつづけているからだ。

「僕の大方のイメージは裸に黒パンツかもしれないけど、トークに呼ばれたら普通に服を着て出ますし、スーツも着る。ズボンを腹まで上げるネタとかもあるから、そういうときはそれに合わせた格好で行く。裸じゃなければいけないとはまったく思ってません」

学生時代から、自分の冠番組を持つのが夢

ネタも常に新しいものをストックしている。その証拠となるのが、オリジナルネタの動画配信だ。しかも毎日! スタートは2009年3月。自身のブログ『ハリウッドザコシショウの「南海ホークスは今!?」』を投稿するアメーバブログに当時あった動画配信機能を使っていたが、そのサービス終了とともにYouTube『HollywoodZakoshisyohチャンネル』に移行し、12年目になる今も、毎日動画投稿を継続している。

「やっぱりね、草木だって何個も何個も植えて水をやりつづければ、ずっと育ちつづけるじゃないですか。ネタも同じですよ。それを僕は、めちゃくちゃ前から動画でやってきてるだけ」

今でこそ、芸人が自身のYouTubeチャンネルを持つことが当たり前になってきたが、動画配信自体がまだコアだった時代から、ショートネタ動画を上げようと考えたことには、ある番組の影響があると言う。

「学生時代から自分の冠番組を持つのが夢だったので、松本人志さんの『一人ごっつ』に衝撃を受けたんです。30分のなかに短い企画コーナーが5個ぐらいある。大喜利もあれば、紙芝居コーナーもあるし、ひとりコントもある、すごく楽しめる構成で。

なんで、YouTubeも毎日何か別の企画をずっと上げていって、それを例えば30分にまとめたら松本さんみたいなことができるかな? と、自分なりに開発していったというところですね」

漫談、日々の雑談、モノマネ連発芸、映像ならではの企画もの、声だけのラジオ、芸人仲間にスポットを当てた企画など、実にさまざまな内容の膨大な数の動画が、『HollywoodZakoshisyohチャンネル』にはひしめいている。聞くと、撮影も編集も外部スタッフを使わず、すべて自分でやっていると言う。何度も言うが……1年365日! よくそれだけのアイデアが出てくるものだし、よくつづけられるものだと驚く。

「毎日、何かしら考えることってあるじゃないですか、1個か2個ぐらいは。例え何も思いつかないとしても、昔の映像を編集して面白くしたり、ただトークするだけでも良い。声だけでも良い。そういうのを毎日1個考えていくのが楽しいんですよ。YouTubeだってちゃんとしたメディアですからね。僕が投稿を始めた当時は『ええ? ネットでしょ?』みたいな反応でしたけど、今は誰もが見るメディアになった。1日1個、メディアにネタを出すことが大事。YouTubeなら僕のことを知らない人の目に触れる機会もあるし、こういう人がいるんだという宣伝にもなる。だから毎日やるのをルールにしてるんです」

ただし『芸人“YouTuber”になるつもりはない』とも断言する。

「だってYouTuberは、YouTubeで稼ぐ人でしょ? 僕も一応広告はつけてますけど、YouTubeで稼ぐつもりは毛頭なくて。だから『別に誰かが見るんだったら良いよ』というスタンス。もしこれがちゃんとした有料配信だったら、絶対にお客さんを楽しませないといけないという気持ちが生まれるし、テレビは視聴率というものがあるから、より面白いものをやらなきゃいけないと思います。でも、今のチャンネルは僕が毎日毎日考えた企画を、保存用として上げているだけ。だからチャンネル登録者数を頑張って増やそうとも思ってないし、再生回数を稼ぎたいから何かするというものでもないんです」

ときには、コメント欄に辛辣な意見が書き込まれることもあると言う。

「まぁ、それはありますよね。でも僕からすると、タダで見てる動画に文句を言うのは筋違いじゃないかなとも思うし。最近、サムネ(サムネイル)をいじるのが面白くなっちゃって、ちょっとYouTubeっぽい写真大喜利みたいな感じで遊んでるんですけど、コメント見たらね、『サムネに凝り出し始めてつまんなくなった』とか書かれるんですよ(苦笑)。こっちはボケのひとつでやってるのにね。

動画の作り方だって、面白くする方法はいろいろある。それを試してる感じですかね。夜、家に帰ってから撮って編集するのはちょっと大変だとか、今は昼間、子どももいるから自宅では撮影しづらいとか細かい問題はありますけど、毎日投稿をやめようと思ったことは基本的にはない。自分が楽しいから、面白いから、やってるんですよね」

最近特に増えている芸人のYouTubeチャンネルについて、先駆者としてはどう感じているのだろうか。

「全部が全部そうじゃないですけど、テレビに出なくなったからYouTubeに……というのは僕とは考え方が違うかなと。テレビに出れなくなったんだなって思われちゃってもね。僕もテレビに出ながらYouTubeをやってますし、テレビに出てないときもやってる。そこは自分としては一貫してますから、変わることはないですね」

諦めずにつづけることができるのも才能のひとつ

同じことは芸風にも言える。ハリウッドザコシショウのポリシーは、とにかく人と同じことはせず、自分が面白いと思ったものを貫くこと。尊敬する人を問うと、竹中直人、ビートたけし、電気グルーヴの名が挙がった。3組とも唯一無二を追求し、それを継続している人たちだ。

「もちろんね、正統派の……例えば漫才ならNON STYLEとか、ピン芸ならエハラマサヒロとか、そういう人たちも尊敬してますよ。あなたたちがいてくれるおかげで、僕の芸が成立している。僕みたいな芸風を全員やってたら、目立たないですもん(笑)。だから正統派を否定するつもりはない。ただ、僕はそうしないというだけのことですね」

ハリウッドザコシショウのブレないポリシー。それを貫いてきたからこそ、遅咲きでも、芸人としての確固たる地位を築けているのだろう。

「なんかね、売れるタイミングって、その芸人が自分のなかに既に持ってるもんだと思うんですよね。芸人になってから15年で売れる、25年で売れる……みたいな感じで、裏データとして持ってる数字がある。でもその数字は、自分ではわからない。だから、その数字がやってくるまで、ずっと諦めずにやっていけるかどうかってことじゃないかなと。

だって、芸人のなかには10年で売れる人もいるし、半年で売れる人もいる。たぶん45年で売れるというデータの人もいると思うんですね。でも、普通はそこに辿り着く前に諦めちゃう。僕の場合は、それが24年だったってことでね。それまで諦めずにつづけることができるというのも、才能のひとつなんじゃないかなと僕は思いますね」

では、YouTubeの毎日投稿とテレビでの活躍でネタを植え、育てつづけているハリウッドザコシショウの夢はなんだろうか。世界発信が可能なYouTubeでの活動やモノマネ芸などの体当たりのネタを見ていると、海外進出もあり得るのではないかと思うのだが……。

「いや、海外はまったく興味ないですね。違う言語じゃ、自分のやりたいことは伝わらないんじゃないですかね。適当にデタラメをしゃべっているように見えるかもしれないけど、やっぱり僕のネタは言葉が大事で。アメリカならアメリカなりのイントネーションが必要だし、日本は日本なりのイントネーションで笑いを取る。例えば、僕の『ええやんええやん!』も、あのニュアンスを外国人にどう伝えたら良いか、まったくわからないですもん。日本語でも伝わらないときがあるんだから、海外じゃわかるわけないですよ(笑)」

では、改めて問い直そう。ハリウッドザコシショウの夢は?

「身近なことだと、去年開催できなかった単独ライブを、どういう形かはまだわからないですけど、今年は絶対にやりたいですね。そして夢ということだと……やっぱり冠番組を持つこと。それも、僕がやりたいことをやらせてくれる冠番組。できれば、視聴率をそれほど気にしなくても良い深夜のローカル番組が良いですね。YouTubeで予行練習みたいなことはもうやっていますから、その発展系みたいな内容になるのかな。僕が思い描いたことをやらせてくれる冠番組が作れたら、ようやくハリウッドザコシショウとしての目標達成になるのかなと思いますね」

文・取材:阿部美香
撮影:塚原孝顕

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