CocotamesearchtwitterFacebookSeriesnewsaboutarticlesstorypick up
連載Cocotame Series

音楽カルチャーを紡ぐ

名門音楽レーベル・アルファレコードのDNAを受け継いで――音楽出版のグローバルな試み【前編】

2021.03.19

音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。

今回は、YMOやユーミンといった日本を代表するアーティストを数多く抱えた名門レーベル、アルファレコードをフィーチャー。その原盤を2019年に一手に引き受け、今一度国内外に向けて発信しているのが、ソニー・ミュージックパブリッシング(以下、SMP)だ。2020年に50周年を迎えたアルファに残る膨大な音楽的財産を、これからどのようにいかしていくのか。SMP代表取締役、見上チャールズ一裕に聞く。

前編では、アルファミュージックを受け継いだ音楽出版社としての役割や、その一環で商品化された貴重なライブ映像について語る。

  • 見上チャールズ一裕

    Mikami Charles Kazuhiro

    ソニー・ミュージックパブリッシング
    代表取締役

アルファレコード

 
1969年に、作曲家だった村井邦彦が音楽出版社、アルファミュージックを設立したのち、海外進出を目的に1977年に立ち上げた音楽レーベル。YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)、荒井由実(現・松任谷由実)、カシオペア、ティン・パン・アレーらが所属し、不世出のアーティストや唯一無二の楽曲を数多く世に送り出した。

メディアが変わっても音楽を供給できるのが権利者の強み

──2019年4月に、SMPがアルファミュージックを子会社化した経緯から聞かせてください。

僕がSMPに異動する前ですが、もともと2001年からアルファの音楽著作権の管理はSMP、原盤の販売はソニー・ミュージックダイレクト(以下、SMDR)でやっていたんです。SMPがアルファミュージックを子会社化した2019年は、時期としては、アルファミュージックが創立50周年を迎えたところで、2代目社長である当時のオーナーがそろそろ引き継ごうかなというタイミングだったと思うんです。

アルファミュージックとアルファレコードは村井邦彦さんが創設されて、その後もオーナーカンパニーとしてやられていたんですが、ソニーミュージックに会社を預けることでアルファミュージックの過去の作品、いわゆる“カタログ”が、この先もずっと輝いてほしいという想いがあったんだと思います。

村井邦彦氏

──ソニーミュージック側としてはどんな想いでバトンを受け取りましたか。

ものすごく光栄であると同時に、責任を感じています。村井さんは作曲家として活動を始めて、アルファは当初、音楽出版と原盤制作を中心とした会社、アルファミュージックとして設立され、のちに海外に打って出るためにレコード会社、アルファレコードを立ち上げたんですが、その村井さんの音楽への愛も一緒に受け取った気持ちです。

音楽業界の歴史を紐解いてみれば、最初は、誰かが音楽を演奏することによってしか“音楽ビジネス”は生まれなかった。その後、印刷技術が発達して、その音楽の楽譜を売るようになって。それが、“ミュージックパブリッシング=音楽出版”の語源です。音楽メディアも、アナログレコードからカセットテープ、CD、MD、デジタルダウンロード、そして、ストリーミングになっていった。しかしメディアが変わっても音楽を供給できるというのが、権利者の強みになりますね。

良い楽曲があったら、それを聴いてもらいたい。その想いが原盤の重要性につながるので、我々音楽出版社が大事な財産である原盤を預かるというのは自然な流れで、違和感はまったくないですね。

──改めて、音楽出版と原盤管理について、わかりやすく教えていただけますか。それぞれ、どんな役割だと言えばいいでしょうか。

大きく分けると、エンタテインメントの権利は3つに分けられると思っています。ひとつは名前や肖像権です。グッズを作ったりブロマイドを売ったりする、アーティスト本人の肖像権ですね。それはたいていアーティストが所属するマネジメント会社が持っています。あとのふたつが、原盤と出版。原盤と言われているのは、CDやストリーミングで聴いたり、ラジオやテレビで流れる音源そのもののことです。

ビートルズを例に挙げると、ビートルズ本人が歌っている楽曲の権利は、ビートルズの原盤会社であるユニバーサルが持っています。でも、誰かがビートルズの「LET IT BE」をカバーしたとしたら、音源の権利はそのレコード会社が持つ。カラオケで流れる「LET IT BE」のインストゥルメンタルはカラオケの音源を作っているカラオケ事業者などが権利を持っています。そのように各原盤会社が楽曲を使用したときに、元の楽曲を作詞作曲した著作権者にお金を払いましょう、というところを管理しているのが音楽出版です。

音楽出版は、楽譜という形のあるものだけでなく、歌詞とメロディという無形のものも管理するんです。ほかにも例えば、歌詞をアクリル板に印刷して利用するなどという場合も権利は発生します。

アルファはレーベルとして認識されていた、日本では数少ない存在

──見上さん自身はアルファにどんなイメージを抱いていましたか。

アメリカのモータウンやA&M、アトランティック、アサイラムのように、音楽レーベルとして認識されていた、日本では数少ない存在だと思っていました。だからこそ、このアルファというブランドをどういかすかということに大きな責任を感じます。あとは、ジャンルの幅広さですね。赤い鳥、ガロ、荒井由実らのフォークソングやニューミュージックがあって、YMOがいて、シーナ&ザ・ロケッツがいて、フュージョンやゲーム音楽まである。今はもうライセンスが切れてしまっていますけど、一時はA&Mの販売権を持っていたり、ユーロビートもやったりしていた。かなり遊んでいるレーベルという印象がありましたね。

ファウンダーの村井さんとは今も一緒にいろんなプロジェクトをやっているので、あんまり失礼なことはできないと思いつつ(笑)、原盤と出版というワンパッケージで我々の手元に来たので、ソニーミュージックとしても、良い意味で遊べると良いなって思っていました。

──どのようなブランディングを考えていましたか?

2020年を“ALFA50プロジェクト”イヤーと銘打って、まずは2020年3月に、アルファのアーティストや、以前アルファで働かれていた皆さんをはじめとする関係者を集めて同窓会をやろうと思ったんですよ。ソニー・ミュージックエンタテインメント本社ビルのカフェスペースに、アルファからリリースされた作品をたくさん並べて期間限定で展示した“アルファカフェ”で、同窓会を催す予定だったんです。YMOのアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のジャケットは、4m×4mくらいのタペストリーにして壁全面に飾りました。

2020年3月に行なわれたアルファカフェの展示。

そこに関係者の皆さんをお呼びして、『アルファが50周年を迎えた節目でソニーミュージックに移りました。皆さん、これからぜひ一緒に絡んでください』って宣言するつもりだったんです。そのイベントを行なう予定だった日は村井さんの奥様の誕生日だったので、村井さんご夫婦にも来ていただいて盛大にやろうと思っていたんですが、それが新型コロナウイルスの影響でできなくなってしまいました。

そこからアルファミュージックのオフィシャルサイトを立ち上げて、世界配信をスタートさせました。さらに、2015年に東京・Bunkamuraオーチャードホールで開催された伝説のライブ『ALFA MUSIC LIVE』の商品化を “ALFA50プロジェクト”のいったんのゴールとして進めていたんですが、諸事情でタイミングがズレてしまって、今年ようやく発売できました。

楽曲の利用開発というのは音楽出版の腕の見せどころ

──3月4日に『ALFA MUSIC LIVE-ALFA 50th Anniversary Edition』としてリリースされました。

僕は会場にも行っているんですが、この映像を見るといかにアルファがすごいかっていうことがわかるので、これまでアルファになじみがなかった人にとっても最適な入門編なんですよね。

2015年9月に開催された『ALFA MUSIC LIVE』より。撮影:三浦憲治

──見上さんが思われるすごさというのはどういうところでしょう。

だって、MCが元CBSソニーの社員で、現ソニー・ミュージックアーティスツ所属のジョン・カビラですよ(笑)。ま、それは冗談としても、最初のプレゼンテーターが荒井由実(松任谷由実)で、ほかにもザ・タイガースの加橋かつみ、吉田美奈子、赤い鳥、ミッキー・カーチス、ガロと、そうそうたるメンバーが顔を揃えています。若い人でも知ってる曲が多いと思うので、これを見ると、改めてすごいレーベルだったんだなっていうことがわかるんじゃないかなと。バックの演奏を、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆のティン・パン・アレーがやっていたり。ユーミン(松任谷由実)がティン・パン・アレーをバックに初めて歌ったという貴重なシーンもあります。

──2015年の伝説的なライブの、まさに待望の映像化ですね。

そうですね。少しでもお祭り感が出せるように発売日は村井邦彦さんの誕生日にしました。

現在は肖像権も著作権もバラバラの、そうそうたるアーティストが結集しているライブ映像を商品化できたのはすごいことなんです。これはSMDRをはじめ、ライブを協賛したWOWOWやニッポン放送、アーティストそれぞれのマネジメントの協力があってこそ。それもこれも村井さんの、「俺の古希のお祝いを商品化してほしいな」っていう気持ちが伝わったから皆さんが協力してくれたので、実現できました。

──村井さんの求心力のたまものなんですね。

村井さんは今アメリカ在住なんですけど、私自身、お会いするたびに刺激をもらいます。すごく活発な方で、Web媒体で『モンパルナスの1934』という連載を執筆していたり、ミュージカルの脚本なども書いていらっしゃったりします。個人的には、最初にご挨拶したときに、『チャーリー、お前がアルファの3代目の社長だな』って言っていただけたのがすごくうれしかったですね。

 
後編へつづく

文・取材:永堀アツオ
撮影:大塚秀美

商品情報

 
『ALFA MUSIC LIVE-ALFA 50th Anniversary Edition』【完全生産限定】
2015年9月27、28日、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて、アルファレコードの創設者・村井邦彦の古希を記念して行なわれたライブから、28日の模様を初パッケージ化。荒井由実(現・松任谷由実)、細野晴臣、鮎川 誠(シーナ&ロケッツ)他出演。
詳細および購入はこちら

関連サイト

ソニー・ミュージックパブリッシング公式サイト
https://smpj.jp/
 
アルファミュージック公式サイト
https://alfamusic.co.jp/
 
CHASSAY PRODUCTION MUSIC
https://www.chassayproductionmusic.com/

連載音楽カルチャーを紡ぐ

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!