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連載Cocotame Series

音楽カルチャーを紡ぐ

名門音楽レーベル・アルファレコードのDNAを受け継いで――音楽出版のグローバルな試み【後編】

2021.03.20

音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。

今回は、YMOやユーミンといった日本を代表するアーティストを数多く抱えた名門レーベル、アルファレコードをフィーチャー。その原盤を2019年に一手に引き受け、今一度国内外に向けて発信しているのが、ソニー・ミュージックパブリッシング(以下、SMP)だ。2020年に50周年を迎えたアルファに残る膨大な音楽的財産を、これからどのようにいかしていくのか。SMP代表取締役、見上チャールズ一裕に聞く。

後編では、アルファミュージック原盤管理の実際の作業や、それを使っての世界に向けた発信について語る。

  • 見上チャールズ一裕

    Mikami Charles Kazuhiro

    ソニー・ミュージックパブリッシング
    代表取締役

アルファレコード

 
1969年に、作曲家だった村井邦彦が音楽出版社、アルファミュージックを設立したのち、海外進出を目的に1977年に立ち上げた音楽レーベル。YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)、荒井由実(現・松任谷由実)、カシオペア、ティン・パン・アレーらが所属し、不世出のアーティストや唯一無二の楽曲を数多く世に送り出した。

一つひとつ整理して、すべてストリーミングに乗せる第一歩

──アルファレコードで「遊んでいきたい」とおっしゃっていましたが、具体的にどういったことを考えていましたか。

遊ぶと言っても、もちろんやるべきことをちゃんとやった上でなんですが、アルファのロゴマークが三角のピラミッド型なので、直感的に、我々はある種科学者だ、というイメージを持ってやっていこう、と思ってました(笑)。

まずは、託された箱を一つひとつ開けていくように、それぞれの原盤がどのような契約になっているのかを紐解いていきました。その上で、権利があるものは全部ストリーミングに乗せようと。それが大きな第一歩ですね。当時、それなりの制作費をかけて作った愛情や熱意の結晶がレコードとして残っているので、それを世界中に発信していこうと。タイムマシン的かもしれないですけど、現代の若者は、時代やジャンルの区別なく音楽を聴くので、とにかくどんどん送り出していきたいと思って、ソニー・ミュージックダイレクトと組んで、全原盤を出すぞ、というプロジェクトをスタートさせました。痒いところにも手が届くように、日本でしか配信されてないものを世界に広げる、デジタル化されてないものをデジタル化するという作業を並行してずっとやってます。

──全原盤というと、大変な作業ですよね。

大変ですが、まだ世に出ていないお宝が出て来るかもしれないですからね。まずは権利を持っている全原盤、映像を整理して、世界中の人に見て、聴いてもらう。地味な作業ですけど、誰かがやらないといけない。

──今、1970〜80年代の日本のシティポップが海外のDJから人気を集めてます。

日本人としてはうれしいですよね。当時の録音は、原盤によっては、海外原盤に比べるとあまり良い状態じゃないものもあるんですけど、そのなかでも日本以外の人たちが聴いて、良いじゃんって思えるジャンルが、何となく“シティポップ”なんじゃないかと思っていて。アルファの楽曲はよくサンプリングに使われるんですよね。例えば、アメリカのラッパー、J.コールは『January 28th』という曲でハイ・ファイ・セットの『スカイライン』をサンプリングしているんです。マニアックな人なら、そこからハイ・ファイ・セットを聴いてみようってなる。

そういうサンプリング需要はまだまだありそうだし、それこそ海外の人にとっては、「お宝が見つかったぞ!」ってことになるんじゃないでしょうか。サンプリングって、その時代ごとのセンスがあるし、大昔の大ネタはもうほとんど使われている。だから、海外の、特にヒップホップやEDMの人たちは、「これは知らないだろう」っていうネタをまだまだ探してると思いますね。

スピード上げていかないと、チャンスを逃してしまう

──DJやプロデューサー、トラックメイカーにとってはまさに宝の山だと思います。ほかにも全世界に配信して反響があった曲はありますか。

今、日向敏文さんの『Reflections』のイントロのバイオリン部分をアメリカのインディーズのヒップホップの人がサンプリングしているんですよ。どこから見つけてきたのかわからないんですけど、それを受けて、急遽、配信したんですね。それが、Spotifyだけで、2カ月で700万回も再生されて。こちら側もスピード上げていかないと、チャンスを逃してしまう。

ソニーミュージックグループでも、そういった財産は劣化しないようにどんどんデジタル化しようっていうプロジェクトが進んでいます。音源はもちろんですけど、映像も、そのうち、再生できなくなるソフトが残っていたりもするんですよね。あとは、佐藤博さんの『awakening』も人気ですね。世界的にも受け入れられるアーティストが少しずつ見えるようになってきた段階です。

──欧米とアジアの違いというのは?

欧米はやはりインストをすぐに聴いてくれますね。アメリカがダントツですけど、YMOは既に認知されてるし、細野晴臣さんや坂本龍一さんは既に数多く聴かれてます。いっぽうでカシオペアはこれまで配信されてなかったので、これから認知度が上がっていくと思います。ほかには、MELON、YENレーベル(細野晴臣、高橋幸宏、戸川純、立花ハジメほか)とか、ゲーム音楽だとか、まだ手がつけられていないものがたくさんあります。

──どの曲が海外で反響があるか読めないですよね。

そうなんですよ。なので、『なんでも鑑定団』に出してる感じですね(笑)。日本人の感覚で、「これ、良いでしょ!」って出したときに、まったくはずすこともあれば、何気なく出してみたら、向こうの人からしたらお宝だっていうこともあるので。まだまだ財宝が眠っていると思います。

──先ほど、映像のお話もありました。

まずは音源から整理しているんですけど、“電車の旅”みたいな映像のマスターテープが出てきまして。『世界の車窓から』みたいなものかもしれないんですが、「スイス」とか書いてあるんです。これはこれで、アルファが権利を持っているってことをクリアにした上で世に出したら、もしかしたらスイスの人が懐かしいと思うような映像かもしれない。

一見、何かわからないようなものにも価値があるかもしれないので、ちゃんと利用できる体制にしたいです。世界中で聴かれたり、見られたりする可能性のあるものを、しらみつぶしに探して出していくぞという気持ちです。

──アルファレコードの作品群をまだ全部整理しきれてはいない状態ですか?

そうですね。最初に段ボール600箱くらいを検査したんですが、マスターテープや映像は別にリストがあるので、まだまだですね。音源以外にも、写真なども相当出てきたんです。アーティストが映っていれば、アルファのホームページで見てもらえるようにできたら良いですよね。そのほかレーベルの名前が入ってる防災ヘルメットなんかも出てきて(笑)。丁寧に進めていきたいと思ってます。

アルファの看板で新人アーティストを出す可能性も

──今後、アルファミュージックとしてはどんなプランがありますか。

基本的にはカタログのレーベルなので、ピクチャーディスクとか、LPやEPは出せますよね。細野晴臣プロデュースの女性シンガー、リンダ・キャリエールの作品を出してくれっていう声もあったりします。また、世界配信を始めたことで、海外の音楽ファンへも発信することが必要となったため、SMEグループのNYオフィスが中心となり、今年は海外向けSNSに力を入れていくことになります。

いずれ、機が熟したらアルファのレーベルで新人も手掛けてみたいですね。レーベルそのものを復活させたいという気持ちはあります。最近も、リチャード・ブランソンがまたヴァージン・レコードを復活させるという話がありましたが、海外だと、一時眠っていたレーベルを掘り起こしてまたやることもあるんですよね。

アルファは、カタログをリリースしていくというところから始まって、やっとひとつ商品化できましたというのが現状ですけど、そのライブには小坂忠の娘さんや林立夫の息子さんもミュージシャンとして参加していたので、将来的には、次世代アーティストの新譜をアルファ名義で出しても良いんじゃないかなという気もします。アルファの看板を蘇らせたレーベルで、30年ぶりに新人アーティストを出す可能性もありますね。

──レーベルと言うと、SMPにはCHASSAY PRODUCTION MUSIC(チャッセイ プロダクションミュージック)というライブラリーレーベルもあります。

CHASSAY PRODUCTION MUSICでは、普通にCDショップで売られている音源ではなく、日本ではライブラリーミュージック、海外ではプロダクションミュージックと呼ばれている、商業用映像のBGMに使える音源を作っています。例えば、海外のニュース映像やスポーツ番組のBGM、YouTubeで使われているものもあります。

日本のテレビは、今は包括契約をしているので、ビートルズの楽曲を番組のBGMで使ったりもできるんですけど、例えば、NHKのドキュメント番組で使えそうなBGMを作っておいて、必要なときに使ってもらうという感じですね。海外では、クインシー・ジョーンズやスヌープ・ドギー・ドッグ(現・スヌープ・ドッグ)など、そういったライブラリー用に曲を作っているアーティストもいます。使用料は多くはないですが、使い勝手が良いから世界中に広がるチャンスがあるんです。SMPでは、EMIとExtremeと言う海外のプロダクションミュージックを扱ってきました。これからは自分たちで音源を作って、世界に向けて出したいよねっていうのがCHASSAY PRODUCTION MUSICの始まりです。

実は、当初このレーベル名をアルファミュージックライブラリーにしようという案が一度持ち上がったんです。“日本から海外へ”という村井さんアルファのDNAを僕らも受け継いでいきたいと思ったんですね。結局諸事情で断念しましたが、名前は違っても、日本の音楽的財産を持って海外にどんどん打って出ていきたいという想いは同じだと思います。

 

文・取材:永堀アツオ
撮影:大塚秀美

商品情報

 
『ALFA MUSIC LIVE-ALFA 50th Anniversary Edition』【完全生産限定】
2015年9月27、28日、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて、アルファレコードの創設者・村井邦彦の古希を記念して行なわれたライブから、28日の模様を初パッケージ化。荒井由実(現・松任谷由実)、細野晴臣、鮎川 誠(シーナ&ロケッツ)他出演。
詳細および購入はこちら

関連サイト

ソニー・ミュージックパブリッシング公式サイト
https://smpj.jp/
 
アルファミュージック公式サイト
https://alfamusic.co.jp/
 
CHASSAY PRODUCTION MUSIC
https://www.chassayproductionmusic.com/

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