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連載Cocotame Series

ソーシャルメディアでの挑戦

2度目の無料オンラインイベント『Aniplex Online Fest』――開催の意義と狙い【前編】

2021.06.30

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ソーシャルメディアで活躍する人や注目のプロジェクトをフィーチャーする連載「ソーシャルメディアでの挑戦」。

昨年7月、アニプレックス(以下、ANX)が主催となり、コロナ禍であっても世界中のアニメファンに作品や情報を届けたいという思いから立ち上がったオンラインイベント『Aniplex Online Fest(以下、AOF)』。その第2回となる『Aniplex Online Fes 2021(以下、AOF 2021)』が2021年7月4日(日)に開催される。

アニメ業界に限らずオンラインイベントが定着化しつつあるなか、ANXは2度目のオンラインイベントでどのような施策を展開するのか。イベントの企画・運営で中心的な役割を担う、海外事業担当の本間久美子と企画推進担当の井上貴允のふたりに話を聞いた。

前編では、『AOF 2021』が採用した配信形式と、イベント中に扱うアニメ作品の番組について語ってもらった。

  • 本間久美子

    Honma Kumiko

    アニプレックス

  • 井上貴允

    Inoue Takamitsu

    アニプレックス

『Aniplex Online Fest 2021』とは?

ANXが主催する、アニメ作品の最新情報やアーティストのライブを無料で楽しめるオンラインイベント。昨年7月に初開催され、延べ80万人以上が来訪した。今年は「鬼滅の刃 海外出張版 2021」「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア <Past and Future>」「『Fate/Grand Order ANIME PROJECT』Special Program」「『魔法少女まどか☆マギカ』10年の軌跡」といった特番に加え、「ヴァニタスの手記」をはじめとする新作アニメ紹介の番組が予定されているほか、Aimer、ClariS 、SawanoHiroyuki[nZk]、LiSA 、ReoNaなどのアーティストのライブもラインナップしている。

開催日時:2021年7月4日(日)午前10時~午後4時(日本時間)

反省点も課題もあった昨年の『AOF』

──前回の『AOF』からちょうど1年。2021年7月4日に第2回となる『AOF 2021』が開催されます。改めて、昨年の『AOF』の成果をどのように考えていますか。

本間:去年の『AOF』は、新型コロナウイルスの影響で、海外のリアルイベントが軒並みキャンセルになったことをきっかけに、急遽立ち上げたオンラインイベントでした。4月末から5月にかけて企画を急ぎ立ち上げ、そこから2カ月の準備期間で開催しています。

英語・中国語の2言語でYouTube(英語版)とbilibili(中国語版)で配信したイベントでしたが、とにかく『Anime Expo』や『Japan Expo』といった海外で開催されるリアルイベントの代わりになるものをと考えていて。こちらとしてはそのときに“できることを全てやる”というスタンスで臨んだイベントでした。

とは言え、YouTube、bilibiliの延べ視聴者数(ユニークユーザー数)は80万人を超えましたし、リアルイベントではなかなかリーチできないほど多くの方々にご覧いただき、楽しんでいただけたので、そこはオンラインならではの成果だと考えています。

ただ、同時に反省点もあって。例えば、昨年の『AOF』は海外のアニメ、ゲームファンの方をメインのターゲットに開催したのですが、実際のところでは、日本の方の視聴者数もかなり多かったんです。感度の高い日本のアニメファンの方たちが、イベントに参加してくださったことは非常にありがたかったものの、海外をターゲットにしたためにUI(ユーザーインターフェイス)に日本語をあまり使っていなくて、使いにくいと感じた方も少なくなかっただろうと思います。また、イベントそのもののプロモーションが手薄だったという反省点もあります。このあたりは今回にいかさねばいけないポイントでした。

井上:『AOF』の前段としてANXでは『アニプレックス48時間テレビ!』というオンラインイベントを実施していたんです。これは昨年、国内最大のアニメイベントである『AnimeJapan 2020』が中止になったことを受けて、ANXの各アニメ作品の情報番組などをABEMA(旧AbemaTV)で配信するという総合的なオンラインイベントでした。

2020年3月21~22日に開催された『アニプレックス48時間テレビ!』。

こちらがあったので、『AOF』は海外をメインターゲットにさせていただいたという経緯があるのですが。大がかりなオンラインイベントを実施するのは、ANXにとってはその『アニプレックス48時間テレビ!』が初めてで、そのノウハウを『AOF』で海外向けにいかすというケースでもあったと捉えています。

ANXでは、国内の宣伝チームが『アニプレックス48時間テレビ!』を実施し、海外の宣伝チームが『AOF』を実施するという棲み分けがありましたが、昨年はオンラインイベントの正しいやり方、在り方を模索していた時期でした。

“体験”に代わる価値を求められているオンラインイベント

──コロナ禍の厳しい状況がつづくなか、イベントのオンライン化の比率も高まっています。おふたりはオンラインイベントの現状にどんな印象を抱いていますか。

本間:コンテンツホルダー、IPの版元にとって世界各地に向けたプロモーションの選択肢がひとつ増えたということだと思っています。ただ、チケットを販売して収支を立てていくイベントは、オンライン配信だけでは、リアルイベントと同じ規模のリターンを得るのは難しく、ビジネスとして成立させるのも現状では難しいのではないかと感じています。

井上:そうですね。イベントだけでなく、音楽ライブや演劇など、多方面でオンライン化が進んでいますが、ビジネスとしての確固たる成功事例はまだ少ない現状です。ソニーミュージックグループでもソニー・ミュージックソリューションズが運営するライブ動画配信サービス『Stagecrowd』があり、配信環境は充実しています。しかし、マネタイズについては、まだまだ試行錯誤の段階だと思っています。

――オンラインイベントでビジネスを成立させるのが難しい要因は何だと思われますか。

井上:そもそもイベントは観ることだけが目的ではないと思います。イベント会場へ向かう過程、例えば電車に乗って会場へ到着するまでのワクワク感とか、会場で自分の席を探して着席し、周りの席の人と一緒に盛り上がったり、物販でグッズを買うということ。そういった一連の体験を共有することで満足感を味わうものだと思うんです。

“体験”の価値にあたるもの、いわゆるナラティブの部分を味わえないということが、現状のオンラインイベントの課題かなと思います。もちろんオンラインイベントはスマホで簡単に楽しめたり、インタラクティブ性をいかせる部分もあるので、そこを強化していくことが大事でしょうね。

『AOF 2021』では国内外で人気の『鬼滅の刃』の番組も配信される。

今回のテーマ“BORDERLESS”&“夏祭り”に込めた想い

──そういった状況を踏まえて、今年の『AOF 2021』はどんな方向性のイベントにしていこうと考えていますか。

本間:前回の課題であるターゲットの絞り込みやUIの改善、プロモーションにきちんと焦点を当てていこうと考えました。去年は私たち海外事業チームが主導しながら、ほかのセクションに協力してもらうという運営でしたが、今年はターゲットを国内にも広げることで、井上が所属している企画推進のチームにも主導してもらい、かつ宣伝チームの人たちにも率先して参加してもらっています。そこが大きく変化したポイントですね。

今年10周年を迎えたオリジナルアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の番組も。

──ターゲットとして国内も主軸に加えたということですね。

井上:宣伝部が参画したことで、国内のメディアへもプレスリリースを配信し、海外と足並みを揃えた情報発信がしやすくなりました。また、昨年はなかったプロモーションビデオも何本か作って、事前告知もしっかり行なっているところも大きな変化です。海外事業部と宣伝部が情報共有することで、昨年よりも大きな広がりを持ったイベントになっています。

本間:イベント中に配信される番組内容に関しても企画制作部や宣伝部の意見がベースになっています。制作・宣伝チームはいつも特番やイベントの制作に関わっているので“この作品をどうやって見せたら、作品の魅力が伝わるのか”ということを熟知している。そういった知見をいかして番組制作を行なっています。

──今回の『AOF 2021』のテーマは“BORDERLESS”&“夏祭り”を掲げています。こちらのテーマに込めた思いを聞かせください。

本間:“BORDERLESS”については、海外と日本で同時展開し、世界の方々に垣根なく楽しんでいただきたいという思いを込めています。

井上:日本では7月4日の日曜日の朝10時から16時。アメリカ西海岸は7月3日、土曜日の18時から24時。中国の上海は日本とほぼ同じ時間帯と、ワールドワイドで見やすい時間に実施することにしました。世界中の方々が同じタイミングで楽しめるという意味でも“BORDERLESS”ですね。

同時に、イベントの名前に冠しているようにフェス感も大事にしています。今回はたくさんのアーティストが参加して、パフォーマンスを披露してくださるので、皆さんに“夏祭り”気分を味わっていただきたいと考え、テーマに加えました。

2021年7月30日に特別上映予定の『Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-』の番組も放送される。

──言語についてはどのように対応されているのでしょうか。

本間:bilibiliは中国本土向けなので、中国語での展開となります。そして、YouTubeで流すものは日本語と英語のバイリンガルになります。MCが話す言語も英語で言ったことは日本語でフォローしますし、日本語で言ったことは英語でフォローするという準備をしています。世界中の皆さんが同じ番組を見て楽しんでいただけたらと。その点でも“BORDERLESS”を心がけています。

去年の『AOF』が終わったあとに、社内のアナリティクスチームの解析で『AOF』で伸びたアクセス数やANXのチャンネルの改善点が見えてきました。それを受けて、この1年でチャンネルをどう変えたのかは、井上さんからお願いできますか?

井上:そうですね。実はANXのYouTubeチャンネルは、日本国内限定で視聴できる設定だったんです。なので、北米用にはAniplex of AmericaのYouTubeチャンネルを別に設置していました。

それを去年から一部の映像に関して視聴制限を解除しまして。作品のプロモーションビデオや放送前の告知、放送後の映像など、全世界で見られる映像が増えています。今回の『AOF 2021』では海外地域でも日本でも、同じANXのYouTubeチャンネルで見ていただくことができるようになりました。

濃厚に凝縮した今年の番組プログラム

──『AOF 2021』のイベント内容についても伺っていきます。今回はメインになるタイトルを4つ挙げられていますね。

本間:海外でも国内でも人気の高いシリーズ作品のなかから、今後も新作をラインナップしている作品を4作品ピックアップしました。この4作品を決めた上で、ソニーミュージックの音楽レーベル、SACRA MUSICに相談しまして、主題歌を手掛けている5組のアーティストに出演してもらえることになりました。

──メインになるタイトルは「鬼滅の刃」「ソードアート・オンライン」「Fate」シリーズ、「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズです。どれも国内での知名度が高い作品ですが、海外ではどれくらいの人気があるのでしょうか。

本間:「鬼滅の刃」は国内で話題になると同時に海外でも大きな反響を呼びましたし、アメリカでも『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が興行収入で記録を打ち立てています。そして、「ソードアート・オンライン」「魔法少女まどか☆マギカ」はいずれも、劇場版作品をハリウッドでプレミアイベントを実施するなど海外各地でマーケティングをしつづけてきた作品です。「Fate」シリーズもゲームとアニメの相乗効果で人気が拡がっています。それぞれの地域に作品の根強いファンがいて、どれも10年前後の歴史を持ちながらも高い人気を持続しています。そして、今もなお新しいファンを獲得している特別な作品ですね。

アニメ化されて9年目の『ソードアート・オンライン』シリーズの番組も放送。

――昨年の『AOF』ではクリエイターの方たちを軸としたトークイベントなどの番組もありました。今年はそういった作品はラインナップしていないのでしょうか。

本間:海外のアニメファンには作品の制作スタッフにも興味を持ってくださる方が多いので、リアルイベントで作品に関わるクリエイターを招待して、トークコーナーを実施することが多いんです。

前回の『AOF』では海外イベントを意識して、そういったクリエイターやプロデューサー主体の番組を多くラインナップしていました。今回はイベント構成の都合上、単独の番組として、クリエイターの方たちをフィーチャーしたものはないのですが、新作紹介の番組のなかにはアニメ制作の内部に迫るものもあります。

井上:『ヴァニタスの手記』という新作の紹介番組では、アニメーション制作を手掛けるスタジオ・ボンズの制作現場に潜入させていただいています。そこで現場のクリエイターやプロデューサーの天野(直樹)さんにアニメの作り方を軸に語っていただきました。ドキュメンタリー風に作っている番組になので、ほかとは違うテイストで、きっと海外の方にも楽しんでいただけるものになっていると思います。

後編につづく

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関連サイト

Aniplex Online Fest 2021 公式サイト(日本語、英語)
https://aniplex-online-fest.com/(新しいタブで開く)

Aniplex Online Fest 2021(YouTube/日本語・英語)
https://www.youtube.com/watch?v=YNjC7w46E0k(新しいタブで開く) 

アニプレックス YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC14QT5j2nQI8lKBCGtrrBQA(新しいタブで開く)

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