激動の時代に音楽による癒しをもたらす老舗コンピレーション『image』の強み【後編】
2021.07.21
音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。
今回は、7月21日に第21弾が発売されるコンピレーションアルバムのロングシリーズ『image』の魅力を紐解く。今や、ヒーリングミュージックの老舗ブランドになった本作。第1弾発売の2000年から、世の中の変化とともに歩みつづけた20年と今なお支持される要因を、15年にわたり制作に携わってきたソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(以下、SMJI)原賀豪が語る。
前編では、本シリーズの歴史から印象的な出来事や制作上のこだわりなどについて聞く。(文中敬称略)
原賀 豪
Haraga Go
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
2000年8月23日に第1弾が発売された、ヒーリングミュージックのコンピレーションアルバムシリーズ。音源リリースと並行して、コンサート『live image』も行なわれてきた。シリーズの代表的な収録曲は、葉加瀬太郎「情熱大陸」(TBS系『情熱大陸』メインテーマ)、宮本笑里「Les enfants de la Terre~地球のこどもたち~」(TBS系『世界遺産』メインテーマ)、加古隆「パリは燃えているか」(NHKスペシャル『映像の世紀』テーマ曲)ほか。
――20年以上つづくロングシリーズとなったコンピレーションアルバム『image(イマージュ)』の成り立ちからお伺いできますか。
第1弾の『image』が発売されたのが2000年の8月です。今では、いわゆる“ヒーリングコンピレーション・アルバム”の代名詞のように言われていますが、実は後発企画で、東芝EMI(当時)の『feel(フィール)』が先に出ていたんですね。そこで、ソニーミュージックとしてもヒーリングミュージックを集めたコンピレーションアルバムを作っていこうという機運がありました。
いっぽうで、葉加瀬太郎の「情熱大陸」や宮本文昭の「風笛」、加古隆の「パリは燃えているか」など、TVやCMで使われている楽曲で素晴らしい作品をたくさん弊社からリリースしていたというのがあって。なので、ヒーリングのアルバムだけど、“映像にまつわる音楽”を集めるというコンセプトでリリースされたのが最初ですね。
――1作目は180万枚の大ヒットとなり、クラシックジャンルのアルバムとしては史上初のオリコンチャート1位を獲得しました。
当時、僕は宮本文昭や加古隆など、収録されているアーティストを何組か担当していて、『image』の直接のディレクターだったわけではないんですが、1作目から数字のダイナミズムには本当に驚きました。クラシック関連アイテムでも、100万枚単位で売れる作品がまだあった時代の最後のころだったと記憶しています。
――『feel』は立ち上げから5年、2004年の第5弾でシリーズを終えましたが、いっぽうで、『image』が20年以上つづいてきた理由はどこにあると思いますか。
当時、『feel』と『image』が売れたので、レコードメーカー各社がヒーリングミュージックのコンピレーションをリリースしましたよね。緑色で、森みたいなジャケットの癒し系コンピが林立したんですが、『image』が今なお存続している大きな理由が、シリーズ立ち上げ当初からコンサートツアー『live image』と両軸でやってきたことだと思います。
昨年、今年と新型コロナの影響で開催されませんでしたが、それまでは毎年、アルバムのリリースとリンクする形で、全国規模のコンサートが開催されてきました。過去20年間で221公演やっていて、累計60万人を動員しています。CDとともにコンサートツアーをやっているということが、『image』が唯一残ってこられた要因なのかなという気がしています。
また、『image』というブランドを広めていくことと並行して、個々のアーティストのアルバムも売り出していくというスタイルが確立されました。オリジナルアルバムをアーティストが出し、そのアルバムのなかに収録されている曲を『image』にも収録させていただき、それが広まって、コンサートになるというスパイラルですね。アーティストのオリジナルアルバムと『image』のCDと『live image』の三位一体の関係が20年間のエンジンになっています。
――制作にあたってこだわってきたことはなんでしょうか。
僕は立ち上げ当初からこのプロジェクトに関わっていますが、『image』の担当ディレクターになったのは、2008年2月に発売になった『image7』からです。担当として常に考えているのは、1作1作、きちんとクオリティをキープできているかということです。時代に左右されない、何年経って聴いても古びない、音楽の根源的な魅力を持った楽曲やアーティストが大事だと思いますね。
『image』はいわゆるクラシック音楽のコンピレーションアルバムではないんですが、“クオリティミュージック”とでも言うべき音楽を奏でるアーティストが多数参加しています。そこの部分でクオリティを担保しながらも、決して教条主義に陥らず、誰が聴いても気持ち良く感じられるもの、その共存が大事だと考えています。
――この20年間を振り返って、ターニングポイントとなった出来事をいくつか教えてください。
ひとつは2004年に韓国で海外公演が行なわれたこと。日本を飛び出したという意味で、エポックメイキングな取り組みだったと思います。あとは、2011年の東日本大震災のときにチャリティ公演が開催されました。あのときは、本気になって音楽で何かを変えようという思いがみんなにあって、とても印象的でした。
もうひとつ、2012年の『live image12』が加古隆の卒業公演となったんですね。その全国ツアーの千秋楽のアンコールで、加古隆のこれまでの収録曲をメドレーでやったんです。それが、長くつづけてきたからこその盛り上がりがあって、本当に感動的だったのをよく覚えています。その映像は『image14』の初回限定盤のDVDに収録されていて、リリース当時、大きな反響もありましたね。
――『image』にとってはどんな20年間だったでしょうか。
まずは20年以上、同じ企画がつづいていること自体に本当に驚いています。それと同時に、この20年というのは、テロや紛争、自然災害、そして今はコロナ禍と、世界中で大変なことが起きている時代でもあります。
1980年代や1990年代に比べて、人がかなり生きづらい時代に突入していると思うんです。そんな時代だから、人はやはり安らぎや安心を求める。そこに『image』の音楽が求められる理由があるのではないかと感じています。
――激動の時代とともに歩んできたんですね。
そうですね。時代がどうなっていくかわからない部分もあるなかで、こうして長くつづけてこられた。音楽は人が作っているものなので、やはり一番大きいのは、参加アーティストが皆さん素晴らしい音楽家だということに尽きると思います。まずは良い曲が生み出されないと、コンピレーションアルバムは存在しないですから。『image』に参加するアーティストの皆さんは、日々、情熱を燃やしながら音楽を作っています。そのエネルギーが、CDを聴いたり、コンサートに来てくださる聴き手の皆さんに伝わっていってるんじゃないかと思いますね。
文・取材:永堀アツオ
『image21 emotional & relaxing』
2021年7月21日発売
【収録曲】
Fragrant Woods/羽毛田丈史
Dawn Flight featuring 三宅一徳 /宮本文昭
Majestic Shadow/鳥山雄司 ※フジテレビ系「ソニーオープン イン ハワイ」中継テーマ曲
Bitter Love/宮本笑里
From LAX With Love(原曲名:Air On G String)/Michael Thompson & Kimiko Nakagawa ※サントリーシングルモルトウイスキー山崎・白州「なぜ、この場所なのか。」CM曲
永遠の歌 /アレクシス・フレンチ
LOVE(2019 New Recording) /ゴンチチ
アマポーラ /沖仁
花鳥風月/春畑道哉 ※TBS系『じょんのび日本遺産」エンディングテーマ曲
麒麟がくる メインテーマ/ジョン・グラム、広上淳一指揮 NHK交響楽団、林英哲 ※2020~2021年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』メインテーマ
START! /葉加瀬太郎
雨あがり~after the rain~/小松亮太 ※日本テレビ系「news every.」お天気コーナーテーマソング
黄昏のワルツ(クァルテット・ヴァージョン)/加古隆 ※NHK総合『にんげんドキュメント』テーマ曲
悪魔のロマンス /高嶋ちさ子
Taking off Loneliness/紀平凱成
戦場のメリークリスマス/アウラ
『image』シリーズ公式サイト
http://www.sonymusic.co.jp/artist/image/
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