『DinoScience 恐竜科学博』開催の裏に隠れていた制作者たちの熱意と奇跡のエピソード【前編】
2021.09.01
ソニー・ミュージックソリューションズ
“0”から生み出された“1”というヒット。その“1”を最大化するための試みを追う連載企画「ヒットの活かし方」。
落語演芸に特化したレーベルとして、12年の歴史を重ねてきた『来福』から派生して、6月に立ち上がったオンラインクラブ『らくご来福』。CD、DVDといった“フィジカル”から、配信、サブスクリプションの時代へと移り変わりつつある今、この新たなサービスは日本の伝統文化にどのように寄与していくのか。『来福』立ち上げ時から落語と向き合ってきたソニー・ミュージックダイレクト(以下、SMDR)の吉岡勉に聞く。
後編では、オンラインクラブ『らくご来福』立ち上げの経緯と、これからの挑戦を語る。
目次
吉岡 勉
Yoshioka Tsutomu
ソニー・ミュージックダイレクト
落語ファンのためのオンラインクラブとして、2021年6月に発足した有料オンラインサービス。解説付き落語音源視聴や限定映像公開のほか、落語会チケットの先行販売、会員限定イベントなどを行なう。オープン企画第1弾としては、“令和三年 柳家小三治の会”(開催済み)のチケット最速先行申し込み受け付けと、「大工調べ/柳家小三治」のフル視聴をスペシャル解説付きで提供した(終了)。月額330円。
――落語レーベル『来福』から派生した有料オンラインクラブ『らくご来福』が6月からスタートしました。このタイミングで立ち上げたのはどうしてですか?
とにかく、従来と違うこと、落語界のためにできることをやろうという気持ちでずっとやってきたなかで、レーベル発足から10年経って、このあとどうしていこうかと考えていました。そんなときにちょうどコロナ禍になって、原点回帰も含めて考え直さなくちゃいけないなと感じて。
今までは矢印を外方向に向けて、その矢印がどこか遠くに行っちゃっても追いかけないというか、ただ放出するいっぽうだったんです。その放出した矢印が戻ってくる場所を、1回ちゃんと持ったほうが良いんじゃないかなと。今までと同じように、いろんなイベントをやったりとか、いろんな商品を作ったりとかしつつではあるんですが。
――商品としては、7月21日に人間国宝である柳家小三治の20枚組CDボックスが出ました。
柳家小三治『昭和・平成 小三治ばなし』CD BOX
はい。そういった人間国宝の商品も手掛けつつ、年内に、新ユニットの“ソーゾーシー”という4人組の1st CDを発売する予定です。我々のなかでは“落語”というひとつの括りでとらえているんですけど、端からは、小三治はやるわ、ソーゾーシーはやるわ、幅が広すぎない? みたいに見えてしまうところもあって。
噺家と浪曲師による創作話芸ユニット、ソーゾーシー。(写真左から)立川吉笑、玉川太福(浪曲師)、春風亭昇々、瀧川鯉八。
ただ、僕らとしては、古典も創作も、ベテランも若手も、区別や上下はない。皆さん、噺家としてすごい方たちなんです。今回、オンラインクラブを立ち上げたのは、そういうふうにいろんな方向に向かってやってきたことを、一度ちゃんとみんなで情報共有できる場所みたいなのものを作ろうかな、と考えたという感じです。
――月額330円という金額設定は?
クラブを維持できるだけのお金をいただくという意図で設定した金額です。ビジネス的な狙いよりも、我々がやろうとしていることや、この先にやる予定のイベント、作ろうとしている商品を、ファンに真っ先に伝えられる場所にしたいという考えです。
――今はサブスクリプションでも落語が聞ける状態になっています。
そうですね。うちでも真っ先に始めました。ただ、正直に言うと、サブスクでの配信はどうなのかな、と思っていて。何千万回と再生されるようなアーティストでない限り、ビジネスとして成立しづらいですし、演者にもほとんど利益を還元できないんです。それに、なんでも聞けますという状態だと、よっぽどマニアな人は良いですけど、初めて聞く人は何を聞いて良いのかわからないし、初心者が聞いても面白くないものに当たってしまう確率も高くなる。
なので、『らくご来福』では、作品をちゃんと面白く解説できる書き手の特別テキストをつけて、毎月1本を紹介するっていうのを柱としてやっていきます。キュレーションをちゃんとしてあげないとダメだなって思っています。
――サブスクやYouTubeチャンネルとは違う形で提供するんですね。
結局、無差別でいろんなものが聞けるっていう状態だとなかなかリーチしないので、やっぱりちゃんと紹介する人がいる仕組みを作らないと、ただやってるだけになってしまう。誰に何を紹介してもらうのか。そこだと思うんですよね。いつか、他メーカーやメディアと協力して、落語だけのサブスクやチャンネルを作って、それを収益化するというのが最大の目標ですね。さすがに、なかなかできないとは思いますが。
――音声メディアの需要は高まっているので実現できそうな気がします。『らくご来福』では、今後はどんな音源を提供していく予定ですか?
第1弾としては、「大工調べ」(柳家小三治)のフル視聴をスペシャル解説付きで出しました。次は、8月21日に“俺のカジカザワ”という、真夏に冬の噺である「鰍沢」を聞くという落語会があったのですが、それをSMDRで配信販売する予定があるので、三遊亭圓生師匠のシリーズ『圓生百席』収録の「鰍沢」を音源で聞かせるという企画をやろうと思ってます。
「鰍沢」が収録されている『圓生百席 9』(1997年)。
あとは、年末になったら、「芝浜」や「文七元結」という季節の大ネタをおすすめの音源で聞いてもらうとか、そのときどきのタイムリーな噺を出して行けたら良いなと思っています。
――落語音源の提供だけでなく、チケットの先行販売やイベントの開催もありますね。
4カ月連続で、CD『ザ・きょんスズ30』セレクトを出したばかりの、柳家喬太郎師匠の発売記念イベントを9月30日に開催できるよう企画中で、そのチケットの先行販売を予定しています。
柳家喬太郎『ザ・きょんスズ30』セレクト‐古典編Ⅱ-
そのほかは、もう130回以上やっている桃月庵白酒師匠のWebラジオ『白酒のキモチ。』という番組を『来福』ではやっているのですが、その番組発の寄席を定期的にやりたいと考えています。それも『らくご来福』の会員優先のイベントになるのと、来年の春開催を目指している“渋谷に福来たる 2022”のチケット先行販売も予定しています。
そのほか、イベント開催や音源の発表など、まだまだ試行錯誤することになりそうです。当然ですけど、誰もやったことのないことをやっているので、今年いっぱいは、いろんな形を試していこうと思っています。
――今後の展望を聞かせてください。
実は最初は、会員制の有料オンラインクラブをやることに少し抵抗があったんです。というのは、始めちゃうとやめられないので。でも、『来福』レーベルでコンスタントに作品をリリースしていけるならやれるなと、踏ん切りをつけて始めました。
そのような経緯なので、何か大きな展望があるわけではないですけど、例えば発足5周年とか、キリの良い数字になったときに大きな花火をあげてみるのはどうかなとは思っています。ただ、夢みたいな話ばかりしているのは嫌なので、計算はします。大勝負仕掛けて、「失敗したのでごめんなさい、終了です」っていうのが一番ダメなので、そこはちゃんと考えていきたいです。
――『来福』は落語レーベルとしての確固たる地位を築いていて、「ソニーミュージックからリリースしたい」とおっしゃる噺家も多いと聞きます。レーベルが成功した秘訣はなんだと思いますか?
そう言ってもらえているのであれば、本当にありがたいことですね。成功したとは思っていませんが、秘訣は、もう情熱しかないですよ。これはすごいと思ったものを、みんなに見せるのが自分たちの仕事なので、それに情熱をかけられないんだったら、やっている意味がない。
SNSでも、自分の好きなものを熱く語っている人たちを見ると、「すげえな」って思うじゃないですか。僕らはそれを仕事にしている以上、それをもう少しだけでもブラッシュアップして見せようと思うのは当然ですよね。何より、落語界は素晴らしい才能を持った人たちがたくさんいる場所なので、その人たちをちゃんと見せられる場所を維持したいっていうのが、一番の願いです。
――“落語界のためにどうすれば良いか”という視点は、レーベル立ち上げ時から一貫して変わっていないんですね。
基本的に、ソニーミュージックとして落語をやるのに、落語界のためにならないことをやってもしょうがないって強く思っています。それがありつつ、時代に即したこととすり合わせていくという感じですかね。
そういう意味では、今思っている『らくご来福』でやりたいことと、1年後に思っていることはまったく違っている可能性もあります。とにかく最初の半年はわやくちゃになっても良いから、いろんなことをやってみたいです。そのなかから、やるべきこと、つづけるべきことが見つかるんじゃないかなと思います。
文・取材:永堀アツオ
『らくご来福』公式サイト
https://rakugoraifuku.com
『来福』公式サイト
http://www.110107.com/raifuku
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