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連載Cocotame Series

今、聴きたいクラシック

歴史を継承し、未来へとつなげる――ソニーミュージックのクラシック【後編】

2021.12.03

遠い昔に生まれ、今という時代にも息づくクラシック音楽。その魅力と楽しみ方をお届けする新連載「今、聴きたいクラシック」がスタート。

さまざまな音楽ジャンルのなかでもとりわけ長い歴史を持つクラシック音楽は、ソニーミュージックグループにおいても音楽ビジネスの核のひとつになっている。そこで今回は、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(以下、SMJI)で長年クラシック音楽を担当してきた工藤恭子、原賀豪、杉田元一の3人に、ソニーミュージックのクラシック部門のこれまでの歩みと、日々変化しつづけるクラシック音楽市場にどう向き合っていくのかについて話を聞いた。

後編では、ソニーミュージックのクラシック部門の看板シリーズ『ベスト・クラシック100極』について話を聞くとともに、クラシック音楽の現在と未来について展望を語ってもらった。

  • 工藤恭子

    Kudo Kyoko

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 原賀 豪

    Haraga Go

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 杉田元一

    Sugita Motoichi

    ソニー・ミュージックレーベルズ

極めつけの名盤をセレクトした『ベスト・クラシック100極』

――(前編からつづく)ソニーミュージックのクラシック部門が持つ膨大なアーカイブのなかから、選りすぐりの100枚のアルバムを、お求めやすい価格で提供する人気シリーズ『ベスト・クラシック100極』についてお伺いしたいと思います。こちらは、まさにソニーミュージックのクラシック部門の看板ともいうべきシリーズですね。

原賀:4年に1度ラインナップをリニューアルしてきた当シリーズは、2020年11~12月に最新の『ベスト・クラシック100極』がリリースされました。

アメリカの2大レーベル、ソニー・クラシカルとRCA RED SEALのアーカイブから選ばれた100枚のアルバムからなるシリーズですが、クラシック音楽の百科事典のように網羅的に“名曲”を100曲集めるのではなく、あくまで“名盤”を100枚集めるというのが第一のコンセプトです。グレン・グールド、ブルーノ・ワルター、レナード・バーンスタイン、アルトゥール・ルービンシュタイン、ヤッシャ・ハイフェッツといったレジェンドから、テオドール・クルレンツィス、パーヴォ・ヤルヴィ、カティア・ブニアティシヴィリなど、今ホットなアーティストや、これから名盤になっていくものまで、極めつけの100枚をセレクションすることにこだわりました。

そのため、シリーズのなかで同じ曲を含むアルバムが複数あるといったことも、あえて許容しています。例えばチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が入っているアルバムは4枚も選ばれているいっぽうで、名曲中の名曲として知られるブラームスの交響曲第1番が入っているアルバムは1枚もありません。

工藤:映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの自作自演アルバムや、ヨーヨー・マのクロスオーバー・アルバムが入っているところにもソニーミュージックらしさが表われていると思います。

『ベスト・クラシック100極』

『ベスト・クラシック100極』

クラシック音楽のビギナー層にどれだけ提案できるか

――『ベスト・クラシック100極』のプロモーションには元クイズ・プレイヤーの鈴木光さんを起用するなど、より幅広いリスナーへ届くように工夫されていますね。

原賀:このシリーズのミッションのひとつは、クラシック音楽に少しでも興味があって、最近聴き始めたといったビギナー層にどれだけ提案ができるか、その魅力を伝えられるかというところにあります。そうしたターゲット層も踏まえて、このシリーズでは2008年からイメージキャラクターを起用しています。

ヴァイオリニストの宮本笑里さん、乃木坂46の生田絵梨花さんにつづくイメージキャラクターとして、今回のリニューアルでは元クイズ・プレイヤーの鈴木光さんにお願いしました。人気テレビ番組『東大王』にも出演されていた鈴木光さんは、クラシック音楽にも深い知見をお持ちで、“知的”という言葉を体現されているかのような方ですので、『ベスト・クラシック100極』のイメージにも相応しいと考えました。

また、今回のリニューアルから100タイトルほぼすべての配信を行なっていて、特設サイトからすぐに配信サイトへと飛べるように設計してあります。まだまだクラシック音楽市場ではCDなどのフィジカル商品のほうが販売比率が大きいですが、今後のサブスクリプションサービスを主体とした配信時代にも対応できるシリーズを目指しています。

鈴木 光

――特に人気があるタイトルは?

原賀:グレン・グールドの『バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年ステレオ録音)』や、『ラフマニノフ自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番』などは不動の人気です。そのほか、新しくラインナップに加わった話題の指揮者、テオドール・クルレンツィスのアルバムも注目度は高いですね。

グレン・グールド『バッハ:ゴールドベルク変奏曲(81年ステレオ録音)』

『ラフマニノフ自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番』

杉田:小規模なCDショップなどでは、『ベスト・クラシック100極』のようなセットは「商品として置きやすい」とよく言われます。小さなお店ではクラシック音楽のアルバムを1枚単品で売るのはなかなか難しいですが、セットになっていると売りやすく、また多くの人の目に触れやすいというメリットがあります。

――新たに導入された高音質の「極HiFi CD」という仕様も気になるポイントです。

杉田:4年に1度、シリーズをリニューアルするにあたり、ラインナップだけでなく音質についてもアップデートしていくことが求められます。これまでも「Blu-spec CD」など高品質の技術を用いた『ベスト・クラシック100』をお届けしてきましたが、今回もCDの金型、成形条件、レーザーの反射膜をそれぞれ改善させた「極HiFi CD」を採用して、これまでにない高品質を実現しました。「極HiFi」は今回の『ベスト・クラシック100極』が初めての採用となり、現時点ではこのシリーズのみで体験できる高品質技術です。

「極HiFi CD」

SNSやサブスクリプション時代をチャンスに

――『ベスト・クラシック100極』のターゲット層のお話にも関連しますが、今日のクラシック音楽界では若い、新しい聴衆へのアプローチが課題だと言われています。日本の高度成長期からバブル期に比べると、クラシック音楽の若い聴き手は世代間の人口差を考慮しても明らかに減少しています。ソニーミュージックではそうしたクラシック音楽界の状況についてどのように分析されていますか?

原賀:音楽の聴き方に多様性が失われてきたというのは、ひとつの大きな要素だと思います。J-POPを聴く人はJ-POPしか聴かない、クラシック音楽を聴く人はクラシック音楽しか聴かないという傾向は、かつてよりも強まっているように感じます。そのなかで、既にクラシック音楽を楽しんでくださっている年配の方たちにこれからも聴きつづけてもらうのと同時に、新たに若い世代にも聴いてもらうためのきっかけづくりを模索しているのが現状です。

2021年2月にソニーミュージックのクラシック部門のTwitter(@sonyclassicaljp)をローンチしたのもそうした取り組みのひとつです。これまではCDなどのフィジカルをメインにマーケティングしてきましたが、これからの配信時代に、ソニーミュージックのクラシック部門も対応していくことが求められています。そうした配信の時代を意識して、Twitter上からもすぐにSpotifyなどのサブスクリプションサービスへ飛べるようにするなど、さまざまな工夫を施しています。


工藤:今はSNSの発達によって、リスナー一人ひとりがメディアになれる時代です。TikTokのような場では、きっかけさえあれば大きな注目を集めることもできますし、クラシック音楽もSNS時代をチャンスだと捉えていくことが大切だと考えています。

かつてのように雑誌に広告を出したらCDがたくさん売れる、ということは難しくなっているいっぽうで、ひとり1台音楽を再生できるデバイスを持っているということは見過ごせない要素です。その一人ひとりのデバイスにどうアプローチしていくのか、ということが今日のマーケティングのポイントではないでしょうか。

同時に、すごい才能や魅力的な音楽に感動するということ自体は、今も昔も変わっていません。テオドール・クルレンツィスのような存在には大きな注目が集まりますし、売上を見てもはっきりと数字に表われています。そうした音楽体験の本質の部分は変わらないので、それをどうやって拡げていくかということに変化が求められているのだと思います。

かつては大きな図書館へ行ったり、知識を持った人に聞いたりしなければわからなかったような情報も、インターネットですぐに得られるようになり、配信サービスの発達によってその音源にすぐアクセスできるようになりました。これは素晴らしいことですし、今後、もっといかしていかなければなりません。

テオドール・クルレンツィス

杉田:これからはSNSやサブスクリプションの時代に対応するとともに、クラシック音楽界に新しいムーブメントを作っていくという視点も必要だと思っています。工藤さんがTikTokに触れていましたが、洋楽ロック&ポップスの世界では今、TikTokは無視できない存在で、ミーティングでも必ず話題に上がります。クラシック音楽とTikTokは一見親和性がなさそうに思えますが、そこで関係ないものと切り捨てずに、TikTokで何ができるだろう? と考える姿勢が大切なのではないでしょうか。

――先ほど日本のクラシック音楽市場はデジタル配信よりフィジカル商品の比率が大きいというお話を伺いましたが、若年層へのアプローチとともにデジタルの比率も上がっていくでしょうね。

杉田:現状、日本では圧倒的にフィジカルの比率が大きいので、これからデジタルの比率を上げていくことが、会社としても重要な目標になっています。ただ、そこにはクラシック音楽というジャンルならではの難しさがあるのも事実です。

例えばサブスクリプションサービスでは、データの検索ひとつをとってもクラシック音楽だけが異色です。ポップスだったらアーティスト名と曲名を入れればヒットしますが、クラシック音楽の場合は同じ「ベートーヴェンの交響曲第5番」にも、指揮者によってさまざまな録音が存在するので、目当てのものに行きつくのが大変なんですね。

また、膨大な過去の音源をデジタル化して配信に乗せる作業にも手間とお金がかかります。1タイトルごとに「レーベルコピー」と呼ばれる録音の詳細資料を作らなければならず、それだけでも無限の時間が必要……。単発では収益に結び付かないような過去の音源までデジタル化するのは、正直、難しいのが現状です。でも、僕らとしては全カタログをデジタル化したい。そういう意味で、今回の『ベスト・クラシック100極』の100タイトルがほぼすべてデジタル化されたのは大きな一歩だったと思います。

工藤:ただ配信するだけでなく、それを聴いてもらうための導線作りも必要。そのためにTwitterで毎日おすすめのアルバムをコメントとともに投稿し、サブスクリプションサービスのリンクに飛んでもらえるような工夫をしています。

――これまでソニーミュージックが積み上げてきたクラシック音楽の遺産とともに、ソニーミュージック発の新しいクラシック音楽のムーブメントに注目しています! 本日はお集まりいただき、ありがとうございました。

 
文・取材:八木宏之

関連サイト

『ベスト・クラシック100極』特設サイト
https://www.bestclassics100.jp/
 
ソニーミュージック|CLASSIC Twitter
https://twitter.com/sonyclassicaljp

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