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芸人の笑像

あっぱれ婦人会:ついに頭角を現わしたハイテンション女性コンビの生きる道【後編】

2022.02.18

ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第12回は、今年、『おもしろ荘』『山-1グランプリ』といった芸人の登竜門的番組に出演し、しっとりとした見た目と名前とは裏腹なハイテンション芸で爪痕を残した女性コンビ、あっぱれ婦人会。「生粋のSMAっ子」木下あやと、彼女を誘った天野裕加里。ふたりがこの生き方を選んだ理由とは。芸人の始まりとしてはいくらか特殊な、ふたりの道のりを聞く。

後編では、それぞれの性格が伺えるコンビ結成エピソードや、SMAの先輩芸人との絆を明かす。

  • あっぱれ婦人会

    Apparefujinkai

    (写真左より)木下あや/1975年9月5日生まれ。千葉県出身。血液型O型。身長150㎝。天野裕加里/1981年10月30日生まれ。東京都出身。血液型A型。身長162㎝。

第2の人生の始まり

前編よりつづく)天野は、「言い出しっぺがやめると言い出すなんて、いいかげんにしろ!」と激怒されて当然と思い、「水をぶっかけられる覚悟で木下さんに会った」と当時の心境を思い返す。話を切り出された木下のほうはというと……。

「私はピンでもコンビでも、お笑いができればそれだけで幸せだったから、天野さんの好きなようにしてくれれば良いなという感じで。天野さんほど深刻に考えてなかったし、そんなに衝撃も受けてなかった(苦笑)。ただ、女性同士のコンビが組めるのはうれしかったから、ちょっと残念だなと」(木下)

「そうなんです。木下さんは、切羽詰まって話す私に、『わかった、わかった』とすごく優しく対応してくださって。今でもハッキリ覚えてるんですけど、最終的には『もうこんな日はさ、パンケーキ食べに行こう!』って言い出して、ベローチェを出て新宿のオシャレなパンケーキ屋さんに連れて行ってくれたんですよ」(天野)

……と、感動的なエピソードを天野が話す最中、天野に向かって、「そうだっけ?……覚えてないなぁ、話作ってない?」と、あっけらかんと笑う木下。そんなふたりの様子からも、お互いにないものを求めて惹かれ合ったのであろう、コンビの絆が透けて見える。そして、そこからまた2、3カ月経ったころ、「やっぱり木下さんとコンビを組みたい!」と気持ちが高まった天野は、もう一度、木下に会いに行く。

「虫の良い話すぎるんで、どうせ断られるだろうなと思ったんです。でも、言うだけはタダだし! と。これも木下さんは忘れてるみたいですけど(笑)、私はハッキリ覚えてるんですよ。池袋の公園で久しぶりに会ったんですけど、私、そこでチャーハンのおにぎりを食べてて。木下さんに『今日どうしたの~?』って言われて、『ほんと言いにくいんだけど……』と恐る恐る話を切り出したら、『う~ん、いいよぉ!』って(笑)。すごくホッとしたのを覚えてます」(天野)

あっぱれ婦人会の結成を、木下は「私にとって第2の人生の始まりだったんですよ!」と語る。その理由は、彼女のプライベートな出来事にあった。

「こんなこと初めて話しますけど……思い返してみれば私、天野さんと出会って、離婚したんです。それまでは、“自分は結婚してる”という安心感とか、結婚相手との絆を頼りに、なんとなく生きてきたんですけど……。天野さんはしっかりしてるから、彼女とのコンビがあれば、自分が離婚してひとりになっても、不安にならず生きていけるなと思ったんですよ。だから、もし天野さんに出会わず、コンビを組まなかったら、離婚して新しい一歩を踏み出そうとはきっと思わなかったですね(笑)」(木下)

初めて聞く木下の本音に「えぇ~!?」と目を丸くする天野。

「そのときのことも、私、よく覚えてるんですよ。先に喫茶店に着いていた木下さんのところに私が行ったら、『天野ちゃん、私、離婚するわ!』ってパッと言われて。そんな話、全然知らなくて驚いてたら、木下さんが大きな声で店員さんを呼んで、『抹茶パフェとチョコレートパフェは、どっちが量多いんですか?』って聞いてて。それを見て、『あ、きっと未練はないんだろうな、吹っ切れてるんだな』と思ったんですよね。ほんと、あのパフェの質問は衝撃でしたね」(天野)

SMAには本当におじさんしかいなかった(笑)

年齢ゆえの迷いやためらいを乗り越え、2018年、ついにふたりはコンビとしての活動をスタートさせる。と同時に、天野もSMAに所属。若手芸人が集まるHEET Projectの一員になった。先にSMAにいた木下が、個性的な芸人揃いのSMAの社風に相方がなじめるのかと心配した通り、天野は衝撃を受けたと言う。

「最初にBeach V(東京・千川にあるSMAお笑い部門の劇場)に足を踏み入れたときは、スラム街かと思いました(笑)。ワタナベコメディスクール時代に、ライブを観に2回くらい入ったことはあったんですけど、改めて見ると、今まで知っているお笑いライブハウスや、事務所の雰囲気とも全然違っていて、『ここがSMAか……!』と圧倒されましたね。先輩方が所属しているNEET Projectも、本当におじさんしかいないんだ! と驚きでした(笑)」(天野)

今でこそ、あっぱれ婦人会という“名は体を表す”ネーミングが、彼女たちのネタにもぴったり合っているが、最初に付けたコンビ名は、今とは違う“大正ロマネチカ”という名前だったそうだ。名付けたのは天野だ。

「古臭い名前が良かったので、ちょっと格好付けて色気を出して、大正ロマネチカにしたんですけど……別に何かネタに関係していたわけではなく、浪漫が漂うわけでもなく(笑)。そうしたら作家さんが、『やってることは大正というより昭和じゃん! だったら、〇〇婦人会が良いんじゃない?』と言ってくださって、あぁ確かになぁと。それで、あっぱれ婦人会に変えました」(天野)

結成当時のあっぱれ婦人会のネタは、天野が書いていたW・soft時代のコントを、木下とふたりで演じるところから始まったという。髪を夜会巻きにした天野は、一見、上品マダムに見えるが、実は上品とは言い難い面があるという。

「天野さん、ああ見えて下ネタが大好きなんですよ。だからW・soft時代のコントも、乳首がどこにあるかわからなくて探すネタとかだし。『おなら出ちゃった!』みたいなギャグもあって、私が言わされていたんですよ。ほんとヤだなと思ってました(笑)」(木下)

それでは、今のあっぱれ婦人会の、思い切り身体を使ってダジャレを繋いだ意味不明のギャグワードをふたりでユニゾンし、テンポ良く畳みかける振り切った独特のネタは、どのようにできていったのだろうか。その陰には、M-1王者、マヂカルラブリーの野田クリスタルも師匠と仰ぐ、元SMA NEET Projectのコンビ芸人・モダンタイムス(現在はフリー)の存在があった。

「あれはまず、天野さんがギャグを言ってボケて、私がそれに追い詰められるという漫才から始まったんです。最初は天野さんだけがボケていたんですけど、モダンタイムスさんにネタを見てもらったときに、『ふたりでギャグを言って馬鹿をやったほうが良い』と言われたんです。最初、私は、『ギャグなんてやらないよ!』という気持ちだったんですけど、ふたりでボケるようになったら、急に注目されるようになりました」(木下)

「モダンタイムスさんが毎月やっていたネタ見せライブがあったんですけど、そこに私たちが運良く参加させていただけて。そこからですね、モダンタイムスさんのアドバイスで、ガラリとネタが変わったんです。だから、今のスタイルができたのはつい最近、2年前くらいのことですね」(天野)

今のネタはいろいろな先輩方のアイデアの結晶

あっぱれ婦人会の代表的なギャグアクション――ギャグを畳みかけたあとに木下が右手、天野が左手を挙げて「ワーッ!!」と叫ぶ素っ頓狂なブリッジも、モダンタイムスの「『ワーッ!』って言ってみたら?」のひと言から始まった。それを見たマツモトクラブが気に入ってくれたことから、ネタのなかで何度もやるようになったそうだ。

「マツクラさんが、『“ワーッ!”を待ってる俺がいるよ』という言い方で、もっとやったほうが良いとアドバイスしてくれました。だから、今の私たちのネタは、いろいろな先輩方のアイデアの結晶なんです。モダンタイムスさんだけじゃなく、SMAの先輩方は皆さん本当にお優しくて、嫌な顔ひとつせず、後輩のネタを見てアドバイスをくださる。ほんとに温かい事務所だなと、いつも感動しています。今は、ネタの土台を木下さんが書き、先輩方に見ていただいて、皆さんの意見をまとめて調整していく感じですね」(天野)

とは言え、あっぱれ婦人会のネタのキモである、ダジャレを繋いでいくリズミカルなギャグを、息をぴったり合わせて繰り出すには、ふたりの努力もかなり必要とされるはずだ。

「練習はもちろんやるんですが、なんか不思議なんですけど……普通にセリフの掛け合いをするよりも、やりやすいんですよね。歌を歌うような感じでできるので。むしろ先輩方には『お前らは普通の漫才をしたら下手が目立つから、しゃべるな!』と言われているくらいで(笑)。一応、漫才のつもりなので『M-1グランプリ』にも挑戦してますけど、動きも多いですし、漫才から一番遠い漫才なのかもしれない。“リズムネタ”が一番イメージに近いんでしょうかね(苦笑)?」(天野)

あっぱれ婦人会という名前だけ見れば、阿佐ヶ谷姉妹のようにほっこりするお笑いをやりそうなふたりだが、実はそうではないというギャップも、彼女たちの大きな魅力だ。

「それこそモダンタイムスさんが、キミたちは普通の漫才をやっても仕方ないから、どこまでハイテンションで振り切れるかを追求したほうが良いと、目標を定めてくれたんです。だから私たちも、どこまでヘンになれるかを目指してやっているので、すごくやりやすいですね」(木下)

「最初は、“え? こんなことやるの?”とどこかで思ってたんですけど、いざやってみたら、意外とやりやすい。私たちは役者を経験しているので、演技としてヘンな人になりきれるからかな? とも思ったんですが、つづけているうちに、そうじゃないとわかってきました。あんなおかしなことを、ふたりともがやりやすいと感じる……ということは、木下さんも私も、もともとがおかしいのかもしれないです(笑)」(天野)

『ネタパレ』『おもしろ荘』『山-1グランプリ』『ザ・ベストワン』など、次世代ブレイク芸人の登竜門とも言える有名ネタ番組に次々出演し、どんどん露出を増やしているあっぱれ婦人会。テレビでネタを見た視聴者からは、SNSに「ヤバすぎて腹がよじれるくらい笑った」「見ているだけで疲れが吹っ飛ぶ」「全力すぎて元気がもらえる」という書き込みが乱舞する。先輩・錦鯉のネタもそうだが、暗いニュースが多いこの御時世だからこそ、バカバカしいお笑いで元気になりたい人たちの心を、あっぱれ婦人会はしっかりと掴んでいくことだろう。

「そう思っていただけたら、とてもうれしいですよね。去年から今年にかけて、徐々にテレビに出させていただく機会も増えて、ありがたいです。去年、準決勝まで進めた『THE W』にもまた挑戦したいですし、『M-1グランプリ』も去年初めて、3回戦に上がることができました。なので今年は、賞レースでも今まで以上に良い結果を残したいです。個人的には、バラエティらしいバラエティ番組が好きなので、『世界の果てまでイッテQ!』のような番組で、体を張ったチャレンジもしたいです」(天野)

「私はおしゃべりが全然できないんですけど、夢は大好きなラジオの冠番組を持つことです。例えば『オールナイトニッポン0(zero)』とか!……今、横で、天野さんが冷たい目をして見てますけど(笑)、思うのは自由ですからね! 『おもしろ荘』や『山-1グランプリ』は、もともと漫才ネタだった「合コン」をコントにしたネタで出演できたので、これからはコントネタも頑張っていければ良いな。錦鯉の(長谷川)雅紀さんと一緒で、私も『M-1』には56歳になるまで出場資格があるので(笑)、挑戦をつづけたいですね!」(木下)

文・取材:阿部美香
撮影:塚原孝顕

関連サイト

公式サイト
https://sma-owarai.com/s/beachv/artist/h002?ima=2954
 
木下あや Twitter
https://twitter.com/kalpis
 
天野裕加里 Twitter
https://twitter.com/6JIphrcSJxUug08
 
あっぱれ婦人会 YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCs7w4lQ12Wxp1mWvRhPskDA

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