イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

芸人の笑像

TOKYO COOL:ショートボケを連発するひょうきん漫才の“全力じじぃ”【前編】

2022.03.14

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第13回は、お揃いのダンガリーシャツとピンクのボウタイで、「HEY!」とユニゾンする姿が愛くるしい(?)40代コンビ、TOKYO COOL。2019年に、全力じじぃから改名したふたりは、テンポの良いボケを次々と繰り出す芸風で、今年初めにショートネタ王決定戦『12秒グランプリ』で優勝。今春は、芸歴10年以上のベテランが集結する『G-1(ジカタNO.1)グランプリ 2022』の決勝に進出するなど、注目を集めている。

前編では、カンカンと前すすむのそれぞれのバックグラウンドとコンビ結成前夜までを聞く。

  • TOKYO COOL

    トーキョークール

    (写真左より)カンカン/1976年7月14日生まれ。兵庫県出身。血液型AB型。身長168㎝。体重68㎏。前すすむ/1976年2月22日生まれ。和歌山県出身。血液型B型。身長166㎝。体重68㎏。

おもろいとケンカが強いやつより偉くなれる

昨年の『M-1グランプリ』覇者となった錦鯉のブレイク以降、ますます脚光を浴びるようになった “SMA芸人”たち。先日も人気バラエティ番組『激レアさんを連れてきた。』に、SMAお笑い部門を設立した、“ヒライさん”こと平井精一が出演し、あらためて個性的なSMA芸人たちの魅力が語られた。そんなSMA芸人のイメージとして挙がるキーワードの代表格は、“遅咲きのおじさん”と“インパクト芸”だ。

カンカンと前すすむ。それぞれの芸歴が四半世紀を超えるTOKYO COOLほど、そのふたつのキーワードがぴったり、しっくりくるコンビもないだろう。去年から今年にかけては、テレビ番組への出演も大幅に増加。『有田ジェネレーション』『ネタパレ』『ENGEIグランドスラム』などのそうそうたる全国区のネタ番組はもちろん、2022年1月には、彼らにとって初タイトルとなる新時代のショートネタ王決定戦『12秒グランプリ』チャンピオンにも輝いた。4月10日に決勝戦を迎える、芸歴10年以上の芸人による賞レース『G-1(ジカタNO.1)グランプリ』の決勝戦へも駒を進めたばかりだ。

TOKYO COOLの一番の得意技は、“令和なのに昭和!”を感じるノリツッコミふうのショートボケを、ふたりの肉体を大胆にシンクロさせて連発していくハイテンションな“ひょうきん漫才”だ。ケンカを始めたふたりが、いきなりセリフをユニゾンして一糸乱れぬ同じアクションでかます瞬発ボケや、ブリッジに挟み込まれるベタなお笑いポーズによる「HEY!」の掛け声は、超ポップでリズミカル。シンプルなだけに思わず笑ってしまう、まさにスベリ知らずのインパクトを放っている。

そんなTOKYO COOLのカンカンと前すすむは、同じ1976年生まれ。子どものころから、お笑いバラエティ番組を見つづけてきたというバックグラウンドも同じ。1980年代半ばから始まるダウンタウンの快進撃と、その後に巻き起こった新世代の大阪お笑いブームの隆盛を、リアルタイムで感じていた世代でもある。

「子どものころからお笑い番組が大好きで、『8時だョ!全員集合』や『オレたちひょうきん族』のネタのモノマネをして、家や学校でもみんなを笑わせてました。でもやっぱり一番驚いたのは、中学生のときに初めて見たダウンタウンさん。兄が、とんでもなくおもろいコンビがいる! と教えてくれて、『4時ですよーだ』を毎日一緒に見て、学校でもダウンタウンさんの漫才の真似をして、めっちゃウケてました」(カンカン)

「僕も同じですね。お笑いのモノマネには自信があった。『とんねるずのみなさんのおかげです』の木梨(憲武)さんの“のり子”とか、ビートたけしさんがやる“鬼瓦権造”の“冗談じゃないよ!”もめっちゃ練習しました。そこからのダウンタウンさん。あんなテンポの遅い漫才は初めて見たし、シュールなネタもほんまに衝撃的で。一番影響を受けたお笑い芸人ですよね」(前すすむ)

カンカンは兵庫県、前すすむは和歌山県出身。単純に、“お笑い番組が好き”だけで終わらないのも、“おもろいヤツが人気者になれる”西の文化ならではのことだ。ふたりは高校生になると、ただの芸人のモノマネから、よりお笑い能力を進化させる、させなければならない環境に身を置くことになる。

「野球推薦で大阪の高校に入ったんですけど、名門校だったんでレベルも段違いだし、部員の数もハンパないんですよ。同級生だけで50人ぐらい。野球が上手いか、マッサージが上手いか、めちゃめちゃおもろいかじゃないと、先輩に名前も覚えてもらえないんです。だけど僕は野球もマッサージもイマイチやったんで、残ったのはおもろさだけ。最初は監督のモノマネから入って、やっと名前を覚えてもらえたみたいな感じでした。で、学園祭にも出ろと言われて、同級生とマイネームイズという漫才コンビを組んで出たら、またウケて。休憩時間には先輩のクラスに行って、漫才を見せたりしてましたね」(カンカン)

「僕は男子校で、周りは不良だらけ。でも、おもろいと、ケンカが強いやつより偉くなれるんですよ。そういうとこやったんで、ダウンタウンさんみたいなネタで笑かして、ケンカ強いヤツの横について身を守ってきた感じですね(笑)。それである日、近所の女子校の子をナンパして、お花見をすることになったんですね。だけど当時の僕は、女子と全然しゃべれなくて、普段の自分を出せず、ひとりでポツンとしてたんですよ。そんな僕に、ある女の子が声をかけてくれて、初めて普段通りのおもろいことを言ってみたら……めっちゃウケまして。初めてその子が彼女になってくれた。おもろかったら、こんなに人気者になれるんや! モテるんや! といきなり調子づきました(笑)」(前すすむ)

それぞれの環境で、人を笑わせる面白さに気付いたひょうきん者のふたりは、そこでお笑いに目覚め、お笑いの本場である大阪に乗り込むことになる。

「おもろいこと言ってたらモテる。それが膨らんで、キレイなお姉ちゃんと付き合いたいなぁ、お金持ちになりたいなぁっていう、本当に邪念だけで、お笑い界に入るために吉本のNSC大阪校に入ってピン芸人になりました」(前すすむ)

「僕はかなりラッキーでしたね。偶然にも、高校の学園祭でネタをやったら、それを見に来てた友達のお父さんがお笑いの関係者やったんですよ。吉本に紹介してやるぞと言われて、忘れもしませんね……マイネームイズでうめだ花月に行って、トイレの横にある非常階段のところでネタ見せをしたんです(笑)。あかんかな? と思ってたら、来月からライブに出て良いよ、みたいな感じで言われて、うめだ花月に月イチくらいのペースで出させてもらえたという珍しいタイプ。だから普通にNSCを目指してたら、彼(前すすむ)とは同期になってたはずです」(カンカン)

いろんなオーディションライブで必ず合格していた

同じ時期に大阪で吉本興業と関わりを持っていたふたりだが、そこではまだ出会うことはなかった。前すすむはNSC卒業後、NSC大阪校15期同期の西田幸治が笑い飯の前に組んでいたコンビや千鳥とともに、1996年ごろからインディーズライブ“魚群”で腕を磨いた。

「結局、吉本には正式に所属はしなかったけど、“魚群”は2年ほどつづきましたね。笑い飯、千鳥はもちろんですけど、当時はそこにおもろい若手がいっぱい集まっていて、スターも生まれていったんです。NGK(なんばグランド花月)の前に、ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)があって、そこのレッスンルームで始めたライブでした。

最初はほんとにお客さんも少なかったんですけど、だんだん人気になりまして。今じゃ伝説のライブなんて呼ばれてますね。それに、ちょうどそのころは、若手が出る心斎橋二丁目劇場がなくなって、base よしもとができるまでの狭間の時期。東京に行くか、大阪に残るかの二択を迫られる芸人が多くて、それやったら、東京に殴り込んだれ! というのが流行ってた。それで僕も、“魚群”でもトップ争いをしていた自信があったんで、意気揚々と上京したんです」(前すすむ)

一方、カンカンはというと。

「僕も、吉本にいた2年間くらいは二丁目劇場に出たりしてましたが、結局マイネームイズも解散して。で、いったん芸人を引退して、大阪・梅田の新地のラーメン屋で働いてたんですよ。そんなとき、休憩時間に新聞を見たら、福岡に吉本の劇場ができるから、立ち上げの素人オーディションをやるという記事を見付けて。初めてピンネタを作って予選を受けにいったら、優勝できちゃったんです。そのときのMCが極楽とんぼさん。賞金で20万円をもらって、本当なら福岡吉本の所属にならないといけなかったんですけど、この金で東京に行こう! と上京しました。当時の吉本の人には、上京するなら東京NSCから始めろと言われましたけど、それは無視(笑)。それが22、3歳のときでした」(カンカン)

別々の道のりで同時期に東京に出てきたふたりは、偶然にも芸能プロダクションの浅井企画に所属。当時の浅井企画は、「本当に上京が流行ってた時期やったんで、東京のお笑い事務所やけど、ほとんどの人間、関西弁やったんですよ」と、前すすむは笑う。大阪時代にはまったく接点のなかったふたりだったが、そこで10人ほどいた大阪芸人仲間として急速に仲良くなったそうだ。前すすむはヤムヤムインナーチョップというコンビ、カンカンは柳沢カンカンの名前でピン芸人として活動し、浅井企画の自主ライブで頭角を現わしていった。ちなみに当時の彼らの芸風は正反対。前すすむはダウンタウンの影響が強いシュールな漫才で、カンカンは、ベタな笑いを追求するひとりコントをやっていた。

「ふたりともめちゃめちゃ最初は順調やったんですよ。当時は、浅井企画以外のオーディションを受けても良かったんで、いろんなライブのオーディションに行って、必ず2組とも合格してた。正直、こうやって東京で売れていくんやな! と、めっちゃ調子に乗ってましたね(笑)」(前すすむ)

仲間が辞めていくたびに「あとは頼む!」

そのうち、ふたりとも浅井企画を離れることになり、さまざまな事務所やフリーでの活動で、コンビやトリオを結成したり、ピン芸人になったりと、紆余曲折があった。上京したての出だしこそ順調だったが、2000年代に入ると、『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』『爆笑オンエアバトル』などの番組をきっかけに、周りの芸人たちが続々と売れていくのを目の当たりにする。「でも当時の僕らは、ナンパしたり合コンばっかりやってましたね」と、ふたりは苦々しく笑う。

「周りが徐々に売れ出してきて……でも俺らのほうがおもろいはずや! っていう確認の場所が、お互い、ライブの舞台と合コンになってくるんですよ」(カンカン)

「ホンマ面白いように周りに抜かれて行きましたね。一緒にライブに出ていたザブングルとか、スギちゃんとか、後輩の流れ星☆とか。でも今思ったら、そういうときに努力してたヤツが売れていく。努力をせずに遊んでばかりいた僕らが抜かれていくのは当然なんですよ。じゃあ俺らも努力しよう! と思えば良いのに、いやそんなはずがない! っていう確認作業をコンパでやってた。コンパで女の子を笑わせていると、ほらやっぱり俺らおもろいやん! と思えますからね。それこそ芸の肥やしのつもりでいましたね」(前すすむ)

「ようするに、ちゃんと考えずに感覚でお笑いをやってたのがいけなかった」とカンカンは言う。

「しかも僕は、東京に来てからレギュラー番組がなくなったことがなかったんですよ。栃木のラジオとかTVKとかJ-COM、WOWOWの番組MCをやらせてもらったりしてました。これはラッキーでしたけど……途中からちょっとずつ思惑がずれていったんです。売れていったみんなはネタを頑張っていたのに、僕はこのままでもタレントとしてやっていけるかもしれないと、ネタ作りもしないで勘違いしたんです。そこがダメやったですね。そうなると、番組オーディションにも声を掛けてもらえなくなる。あいつはもうレギュラー番組があるから、ネタ番組には出なくてもええやろと」(カンカン)

「僕もたまに出させてもらえる全国区のテレビで、なんとなくモチベーションが保ててたんですよ。こんらんチョップというトリオでマセキ芸能社に所属していたときも、ネタ番組にも出られてたし、『笑っていいとも!』なんかにも出させてもらえてた。バイトはしてましたけど、たまに、『ぐるぐるナインティナイン』の『おもしろ荘へいらっしゃい!』とかでスポットが当たったりね。だから、自分が面白くないわけじゃないとは思っていたんですけども……」(前すすむ)

「東京で売れるんや!」という夢を見ていた20代から年齢も重ね、さしたる結果も残せないまま芸人をつづけていたふたり。当然、同じ事務所ではなくなっても仲は良かった。しかし、浅井企画時代からの仲間たちも20代後半から30代になると、家庭の事情や収入の問題など、さまざまな理由で芸人を辞めていく。

「当時の仲間も、みんなおもろかったんですよ。でもいろんな事情で辞めていって。そのたびに『あとは頼む!』と言われました。今でもそれをどっかで背負ってるんですよね。彼らが叶えられなかった夢を託されているというか。そういう理由もあって俺らは辞められなかったというのは確かにありますね」(カンカン)

「そう。だから、逆にもう辞められない。余計なプレッシャーかけやがって(笑)!  でもね、芸人でお笑いを辞めてほかの仕事を始めた人は、基本的にみんな成功するんです。しゃべりも立つし、おもろいから。なんで、仲間はみんな成功してますよ。それで、『これくらいしかできんけど』と言って、何か買ってくれたり、飯を奢ってくれたりもする(笑)。ずっと応援してくれてて、ほんまにありがたい話です」(前すすむ)

後編につづく
 

文・取材:阿部美香

関連サイト

公式サイト
https://sma-owarai.com/s/beachv/artist/n041?ima=1835(新しいタブで開く)

 
前すすむ Twitter
https://twitter.com/gootopar(新しいタブで開く)
 
カンカン Twitter
https://twitter.com/1pintandoku(新しいタブで開く)
 
TOKYO COOL☆(全力じじぃ)漫才情報
https://twitter.com/7kk141(新しいタブで開く)
 
全力TOKYO COOL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC0xAMwrjw6JN0w-hQhZOSMQ(新しいタブで開く)
 
じじぃひょうきん
https://www.youtube.com/user/sma7kk141(新しいタブで開く)
 
TikTok
カンカン【TOKYO COOL】(全力じじぃ)
https://www.tiktok.com/@kankantokyocoolfullpowe2(新しいタブで開く)

連載芸人の笑像

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!