CocotamesearchtwitterFacebookSeriesnewsaboutarticlesstorypick up
連載Cocotame Series

芸人の笑像

TOKYO COOL:ショートボケを連発するひょうきん漫才の“全力じじぃ”【後編】

2022.03.15

ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第13回は、お揃いのダンガリーシャツとピンクのボウタイで、「HEY!」とユニゾンする姿が愛くるしい(?)40代コンビ、TOKYO COOL。2019年に、全力じじぃから改名したふたりは、テンポの良いボケを次々と繰り出す芸風で、今年初めにショートネタ王決定戦『12秒グランプリ』で優勝。今春は、芸歴10年以上のベテランが集結する『G-1(ジカタNO.1)グランプリ 2022』の決勝に進出するなど、注目を集めている。

後編では、結成のきっかけから、現在へとつづく活動の軌跡をふたりが語る。

  • TOKYO COOL

    トーキョークール

    (写真左より)カンカン/1976年7月14日生まれ。兵庫県出身。血液型AB型。身長168㎝。体重68㎏。前すすむ/1976年2月22日生まれ。和歌山県出身。血液型B型。身長166㎝。体重68㎏。

波長が合わないと思っていたら……

前編からつづく)“残ったふたり”が、今ではSMAのブレイク芸人のひと組として注目を集めているのだから、わからないものだ。結成のきっかけは、結成、解散を繰り返してピン芸人同士になったふたりが、2014年に行なったトークライブだった。

「僕は、浜風キットというコンビを組んで、2005年の1月……SMAがお笑い部門を立ち上げてすぐに所属になっていたんです。で、そのあとすぐにコウメ太夫がブレイクしたんですけど、コウメさんはネタが3分しかもたないから、時間を埋めるために、コウメさんの営業に全部付いて回ってたんです。そこからコンビを解散して、ピン芸人をやってました」(カンカン)

「僕も結局、こんらんチョップというトリオのメンバーのふたりが辞めてしまったので、ピンになってました。そのときはフリーで、ほんまはもう芸人辞めようと思ってたんですけど、最後の最後に気持ちが戻ってきたんですよ。辞めるくらいなら、本当に自分がおもろいと思う、シュールなピン芸をやってやろう、と。こんらんチョップ時代は、こいつ(カンカン)が前に組んでた5人組のGOBUGOBUというグループの影響もあって、割とベタな笑いをやっていたんで。

でも、コンビやトリオが長かったから、ピンでの笑いの取り方がまったくわからない。2年くらい、ぼちぼちなネタと、MCの営業とかで細々生きてました。そんなときですね、芸人を辞めていった仲間たち全員に言われたんですよ。『お前らふたりともピンなんだから、一緒になんかやったら?』って。いまさらやなぁ、と照れくさかったですけど、じゃあトークライブでもやってみよか! と」(前すすむ)

はじめは「笑いの取り方やキャラ的に合わないんじゃないか?」と懸念していたそうだ。

「波長がそんなに合わないと思っていたら……合ったんですよ。『あれ? これはコンビでいけそうや』と思いましたし、ちょうど『M-1グランプリ』も復活したときで。“じゃあ、いっとくか!”と、ふたりでネタを考えるようになり、それやったら同じ事務所に入るのが良いかと。そんなに気乗りはせんかったんですけど(笑)、僕もSMAに所属することになったんです。

そのときにつけたコンビ名が“全力じじぃ”で。由来は、トークライブをやったのが渋谷の宮益坂にあるバーで、『全力坂』という番組にあやかってライブのタイトルを『全力宮益坂』にしたんですけど、“全力”って響きはええなと。で、ふたりともじじぃなんやから、“全力じじぃ”でええやないか! と、すんなり決まりました」(前すすむ)

SMAの“全力じじぃ”として2015年に活動をスタートしたふたりは、それまでの紆余曲折を払拭するように、弾みがつく。

「2015年の10月に初めて事務所ライブに出て、年末からすぐテレビに出られるようになったんです。最初は、さまぁ~ずさんがMCだった『聖夜のネタ祭!お笑いクリスマスショー!!』。出演者はみんな売れてる人で、オーディション枠が一枠しかなかったところに、僕らが入った。120組中の1組で。ほかはみんな難しいネタばっかりだったんで、逆に昭和みたいな僕らのネタがわかりやすくて良いと言ってもらえたんですよ」(カンカン)

「ほんまに、出だし最高やったんです。やっぱイケるやん、このコンビあるんちゃう? とモチベーションがグッと上がった。周りでも、長いことやってるふたりが組んだので、めっちゃおもろいんちゃう? と話題になってましたしね」(前すすむ)

今につづく、“ひょうきん漫才”のネタも、原型は2014年のふたりの初ライブのときのもの。11本ほど作った新ネタのなかの1本に萌芽があったと言う。

「せっかく芸歴を重ねたふたりが新しいコンビになるんやから、普通のネタはやりたくない。誰もやってないことをやろうと決めてたんですね。で、ライブにかけてみたら、今のカタチのヤツがほかのネタとは全然違う、爆発的なウケ方をしたんです。ベタを振り切ってできる人って、その当時はそんなにいなかった。だったら、苦手なことをやるより、その得意なことだけを伸ばそうという、ね」(前すすむ)

「ふたりの共通点は、ひょうきんなところ。とにかくバカなことをやっていきたいなっていうのは、お互いのなかにあったんですよ。当時はもう“1分ネタ”の時代が来てたんで、『爆笑レッドカーペット』でウケるやり方は意識してましたね。30秒で楽しめるネタをくっつけていこうやないかって。その作り方は今も変わらないですし、それをやったらやっぱりテレビに呼ばれた。どこから見ても笑えるって大事やなと」(カンカン)

「年齢的にもね、このコンビでラストかもしれんと思うから、自分が楽しまないと損やないですか。一回しかない人生やし。ふたりともバカでひょうきんなんやから、もう自分たちで言っちゃえと。ネタ終わったら『ひょうきーん!』って言ったり、『バカでーす! イェーイ!』をふたりで言ったらおもろいんちゃうか。ボケもツッコミも決めずに、ふたりでボケてふたりでツッコむ。それを楽しそうにやってるヤツって、そういないんちゃいます?」(前すすむ)

TikTokも「やってみるもんやなぁ」

ふたりでテンション高い同時ボケ&ツッコミを隙間なく畳みかけていく、圧倒的なテンポの良さが彼らの真骨頂。しかもふたりのカマシのタイミングがピタリと揃うから、見ているほうの笑いのテンションもどんどん高まっていくカタルシスがある。ネタを合わせるためには、さぞ熱心に練習を重ねているのでは? と聞くと、なんとも意外な答えが返ってきた。

「僕らほんまに練習嫌いなんですよ(笑)。めっちゃ練習してそうですよね、とよく言われますけど、ほとんどやってなくて。なので、ふたりでケンカしてる感じからいきなりボケて落とすあのノリも、打ち合わせなしのアドリブでやってます。せやから、絶対同じネタの構成にはならないんですよ。その点、めっちゃ楽しいですけどね、きっとほかのコンビより」(前すすむ)

「一度、普通にフリとボケをやっても、もしかしてこれスベるかもしれんなぁと思ったら、パパッとアドリブでケンカに持ち込んで、またボケをかまして、『すべってませんよ!』っていうふうに見せてる(笑)。そういうネタの作りにしたんです。

例えばケンカのときに、『お前、殴ったろか』と言うきっかけなのか、『お前、投げ飛ばしたろか』って言うきっかけなのかで、違うボケができるようになってる。だからバラエティの平場のときでも、打ち合わせなしでギャグを出せるんですよ。練習が嫌いやから、練習せんでできる方法を編み出しました(笑)」(カンカン)

ちなみにネタ作りは、分業制の共同作業だ。カンカンが大まかな台本を書き、前すすむが演出を考え、得意のケンカボケパートは、ふたりで実際に身体を動かして、ポーズを考えながら決めていくという。

「ネタを作るときは、必ずふたりで集まってやりますね。セリフのリズムとかスピードも大事なんで。特にケンカのところは、練習場の鏡の前で、『こう肩組んだら文字に見えるかな?』とか言い合いながらやってます。セリフがいくらおもろくても、画(え)的に面白くないと意味ないんで」(カンカン)

「僕らのネタは、頭のなかで考えてるだけでは、なかなかできないんですよね。ボケのセリフの言葉の多さやリズム、動きのスピードも大事なんで。『もっと気持ちよく、パン! ってキマらへんかなぁ?』とか言いながら、何度もやってます」(前すすむ)

アドリブでいつ何時でも、いくつでも繰り出せると語るショートボケも、既に191個ストックがあるという。

「もうすぐ200個になりますね。僕のなかでは、とりあえず365個作ろう! が今の目標なんですよ。今年、『12秒グランプリ』で優勝したとき、審査員の方に、僕らのネタはTikTok向きだから、ネタの動画を上げたほうが良いって言われたんで、毎日1個ずつ上げようと頑張ってます。TikTokも最初の1週間は何の反応もなかったんやけど、2週間後にバズって、今は20万人くらい見てくれてる。やってみるもんやなぁと思いますね」(カンカン)

そうネタについて話すふたりは、まるで少年のように楽しそうでいきいきしている。20代から30代前半ごろは、売れていった芸人たちにジェラシーを感じながらもコンパに明け暮れていた彼らが、今は2カ月に一度の新ネタライブに真剣に取り組み、自分たちのお笑いに大きな手応えを感じているのがよくわかる。過去にないがしろにしてきた芸人としての本懐を、全力で取り返しているのかもしれない。30代後半になってふたりがコンビを組んだのは、必然だったのだろう。そして、今感じている手応え、テレビ出演回数の増加やSNSでの人気の上昇と比例するように、新しい層のファンが増えてきたという。

そのひとつの契機は、“全力じじぃ”から“TOKYO COOL”への改名だ。2019年12月に放送された『有田ジェネレーション』の企画“改名サミット”の回で、出演芸人から案を募り、多数決で決定した。名付け親はネルソンズだった。

「今でも昔から知ってる芸人からは“全力さん”と呼ばれてますけど、TOKYO COOLという名前になってからのほうが、世間の人に覚えてもらいやすくなりました。有田(哲平)さんに感謝やなぁと。僕らもそうですけど、早くからSMA芸人をたくさん番組に呼んでくれてますし。ヒコロヒーや蛙亭、ジェラードン、コウテイ……『有ジェネ』出身のブレイク芸人もたくさんいますからね」(カンカン)

「有田さんの発掘力、プロデュース力、企画力は、ほんますごいと思いますね。TOKYO COOLなんてカッコ良い名前なのに、“こんなおじさんがこんなベタなネタやってる!”ってとこが、インパクトがあってええんでしょうね。最近はTOKYO COOLが定着しちゃったんで、ギャップ的な効き目も薄れてきましたけど(笑)、僕らを知ってもらう入り口としては、非常に良かったです。街で大学生の男の子が『大阪ホットさんですか?』といじってくれたり、「ヘイ! ですよね!」なんて声を掛けてくれる若い人もおるようになりましたね(笑)。あと昨日驚いたのが、女子中学生ふたり。『ネタパレずっと見てます!』なんて、中学生に声掛けられたのは初めてやったんで、めっちゃうれしかったですよ」(前すすむ)

「この間もロケ先でおばあちゃんが、めっちゃ高めのテンションで僕らに会えてうれしいと喜んでくれて、僕らもうれしかったです。ライブ会場でも、前から応援してくれている同年代くらいのおじさんファンに混じって、最近はカップルや若い人が来てくれることも増えました」(カンカン)

賞レースで優勝してBeach Vの椅子を新調したい

同じSMA芸人仲間の錦鯉のブレイクが追い風となったおじさん芸人ブームの一角を担いつつ、メジャーフィールドへと着実に歩を進めるTOKYO COOL。現在好調な彼らの道のりは、どこへとつながっていくのだろうか。彼らの野望を挙げてもらうと……。

「タイトルを獲らんとなぁというのは、やっぱりありますね。そのためにも『M-1グランプリ』のような大きな賞レースには出つづけるんですけど……。『M-1』を獲れる人は、一発のボケで仕留められる人たち。短いボケをじわじわ畳みかけていく僕らのネタは、『M-1』の4分間という尺には向かないんです。100m走と400m走では走り方が全然変わるんと一緒で。なので今、賞レースの戦い方を知っている作家さんにネタを見せて、良い構成を考えてもらっている最中やったりします。SMAには、大きな賞レースで優勝すると、僕らの劇場、Beach Vの何かを新調するしきたりがあるんですよ。こないだ錦鯉が優勝したから、舞台に敷いてるカーペットがキレイになってました(笑)。僕らは、優勝して、客席の椅子を新品にしたいですね」(カンカン)

コンビ名に“クール”と付いてはいるが、ふたりの胸の内には、彼らに夢を託した、かつての大阪芸人仲間たちへの熱い想いもある。

「あんまり取材とかでも言ったことないんですけど、例の大阪からの上京組で一緒にイベントとかやってたときのことですね。もう辞めてしまったコイツ(カンカン)の前の相方と、僕が前に組んでたこんらんチョップの相方は、もともとコンビやったんですよ。今、僕らはネタ終わりで『イェーイ!』ってやっていますが、その前は『ニーン!』てやってました。その『ニーン!』は、元相方同士のコンビがやってたネタでもあったんです。仲間の証みたいなつもりでね」(前すすむ)

「だから今でも、テレビで『ニーン!』をやろうか? って話をするんですよ。元相方たちが、テレビで僕らを見てくれてるから。なので、こういう取材をしてもらえるのも、すごくありがたいんです。僕らの想いを彼らに伝えられますから」(カンカン)

「僕らがこうして頑張れているのも、アイツらがいるから。SMAに限らずですが、錦鯉を筆頭にベテランの芸人でおもろい人は、ほんまたくさんいるんですよ。なので僕は、おじさん芸人でも本気で頑張っていれば、いつか報われることを証明したい。みんなで助け合って、おじさん芸人が辞めないことで、こんなに素晴らしいお笑いの世界が広がる。若手に負けず、おじさん芸人が尊敬される世の中になるように、頑張りたいなと思ってますね」(前すすむ)

今も、彼らの衣装には“zenryoku jiji”の名前がしっかりと刻まれている。コンビ名を改名してオシャレになっても、おじさん力全開でパワフルな笑いを追求するふたりの“全力じじぃ”スピリットは、これからも枯れることはないだろう。

文・取材:阿部美香
撮影:塚原孝顕

関連サイト

公式サイト
https://sma-owarai.com/s/beachv/artist/n041?ima=1835

 
前すすむ Twitter
https://twitter.com/gootopar
 
カンカン Twitter
https://twitter.com/1pintandoku
 
TOKYO COOL☆(全力じじぃ)漫才情報
https://twitter.com/7kk141
 
全力TOKYO COOL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC0xAMwrjw6JN0w-hQhZOSMQ
 
じじぃひょうきん
https://www.youtube.com/user/sma7kk141
 
TikTok
カンカン【TOKYO COOL】(全力じじぃ)
https://www.tiktok.com/@kankantokyocoolfullpowe2

連載芸人の笑像

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!