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音楽カルチャーを紡ぐ

『トップガン』『フットルース』……80年代映画を彩ったヒット主題歌の魅力と功績【前編】

2022.05.24

音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。

今回は、80年代映画の主題歌&テーマ曲を収録したコンピレーションCD『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』を制作した担当者と、Webマガジン『otonano』のエディターで、1980年代カルチャーに造詣の深いライターが、当時の思い出とともに、収録曲の魅力をクロストーク。当時の空気感や、音楽史における80年代映画主題歌の位置づけが見えてくる。

前編では、映画『トップガン』、『フットルース』などの思い出や、“サントラの帝王”と呼ばれたケニー・ロギンスの談話を紹介する。

  • 佐々木 洋

    Sasaki Hiroshi

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 安川達也

    Yasukawa Tatsuya

    ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド
    Webマガジン『otonano』編集部

『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』


 

1980年代に、日本で大ヒットを記録した80年代映画主題歌、テーマ曲を網羅したコンピレーションCD。2022年5月27日より新作が公開される『トップガン』主題歌の「デンジャー・ゾーン」(ケニー・ロギンス)、映画の同名主題歌「ゴーストバスターズ」(レイ・パーカーJr.)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』主題歌「パワー・オブ・ラヴ」(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)といったヒット曲の数々を、全40曲収録している。高品質Blu-spec CD2仕様の2枚組。歌詞、対訳、解説が充実した冊子付き。

MTVムービーは『フラッシュダンス』から始まった

──1980年代、映画と音楽が密接になり、サウンドトラックブームが起きました。その背景から解説していただけますか。

安川:1980年代の洋楽サントラブームのきっかけは、僕は『フラッシュダンス』(1983年)だと思うんです。1981年にMTVが開局してから、映画公開までの2年間にミュージックビデオ(以下、MV)というものが広まって、世の中に認知されるようになっていった。ちょうど良いタイミングで『フラッシュダンス』が出てきたんです。ここがいわゆる、映画とMVが密接にリンクした“MTVムービー”元年だと僕は思ってます。

Irene Cara - Flashdance What A Feeling (Official Music Video)

『フラッシュダンス』は、中学1年の夏休みに、スクリーンで見て洗礼を浴びました。ラストのオーディションの場面で、アイリーン・キャラが歌う主題歌が流れて、きれいな光が差し込むなかでジェニファー・ビールスが踊るシーンは今でも目に焼き付いてます。既にMVで見てたものと変わりがないんですが、スクリーンで映画本編を見て、改めてこれは映画のために作られた音楽だったんだって実感しましたね。のちに、『フラッシュダンス』から、音楽と映像が一体となっているMTVムービーが始まったんだなと思いました。

──佐々木さんの、80年代映画体験はどのようなものでしたか?

佐々木:僕が映画館で洋画を見るようになったのは、『ロッキー4/炎の友情』(1985年)、『トップガン』(1986年)のころなんですが、そのころにはMTVムービー的な感覚は既に体に入っていました。というのも、『フラッシュダンス』とか『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年)とかって、十分曲が知れわたっていたので、MVを見ただけで、映画本編を見たような気になってました。『フラッシュダンス』も、まだ見ていないのに、オーディションで踊って成功を掴む話なんだなって内容を知ってる感じでしたね。その曲を聴いただけで本編の映像とか感情が浮かぶ感覚が楽しくて、どんどんサントラ好きになっていきましたね。

あと、地域差というのもあったと思うんです。僕は島根県の田舎に住んでいたので、1980年代中ごろにレンタルビデオ店が隆盛になってきて、街から映画館がなくなっていったんです。そうするとビデオが出るまで新作映画を見ることができないので、先にサントラを聴いて、楽曲や曲名から逆に映像を連想するということをしていました。なので、歌もののサントラだけじゃなく、疑似視聴体験をするためにスコア版のサントラも同時に買ってましたね。

安川:それは面白いですね!

佐々木:MVを見たり、スコアを聴いたりして、映画を見た気になってました(笑)。だから、洋楽にハマったのもサントラがきっかけでしたね。まさに『トップガン』とケニー・ロギンスが、僕が洋楽を聴くスタートになったんです。

Kenny Loggins - Danger Zone (Official Video)

あと、“『フラッシュダンス』『ネバーエンディング・ストーリー』『トップガン』『オーバー・ザ・トップ』(1987年)も、全部ジョルジオ・モロダーがプロデュースしてるぞ”とか、いろんなものが有機的につながってることを見付けられる喜びを知りましたね。

安川:『トップガン』の劇中スコア「トップガン・アンセム」を作曲したハロルド・フォルターメイヤーは、ジョルジオ・モロダーの弟子なんです。モロダーとフォルターメイヤーのふたりが、1980年代のサントラブームを作ったと言っても過言ではないですね。僕が初めて買ったシングル盤も、アイリーン・キャラの「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」でした。中学1年のとき、映画を見たその日に買いましたね(笑)。

佐々木:『フラッシュダンス』は、曲を聴いて映画を見た気になっていたと同時に、堀ちえみの顔が浮かびます(笑)。

安川:ドラマ『スチュワーデス物語』ですよね。麻倉未稀がカバーした「ホワット・ア・フィーリング~フラッシュダンス」が主題歌でした。当時は、大映ドラマの主題歌は、洋画主題歌をカバーするっていう流れがありましたよね。映画『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984年)の劇中曲を椎名恵がカバーした「今夜はANGEL」は『ヤヌスの鏡』の主題歌でした。

佐々木:ジム・スタインマン作曲ですよね。ドラマ『スクール・ウォーズ』の主題歌として麻倉未稀がカバーした「ヒーロー」も、原曲は、スタインマンが共同作曲した『フットルース』(1984年)の劇中歌です。

Bonnie Tyler - Holding Out For A Hero (Official HD Video)

安川:当時、哀愁帯びた世界観を作らせると、ジム・スタインマンの右に出るものはいなかったですよね。そこが日本人の心にヒットしたんでしょう。だって、「ヒーロー」の原曲、ボニー・タイラーの「ヒーロー」は、アメリカでは日本ほど認知されてないですからね。『フットルース』のサントラからの2曲目のシングルカットだったんですけど、世界的にはデニース・ウィリアムスの「レッツ・ヒア・ボーイ」のほうが知られてますよね。

佐々木:「レッツ~」はチャート1位になりましたし。

安川:ところが、「ヒーロー」のほうが、『スクール・ウォーズ』効果と哀愁のメロで、日本人に刺さってしまった。

MVを2時間映画にしてみたのが『フットルース』

──『フットルース』は、ケニー・ロギンスが歌った同名主題歌はもちろん、ヒット曲の宝庫ですよね。

Kenny Loggins - Footloose (Official Video)

佐々木:僕は『フットルース』公開当時は小学生だったんで見れてなくて、実際に映画を見たのが2010年に、『フットルース』のサントラ再発キャンペーンをやったときだったんです。

曲は全部有名だし、自分のなかでは名作映画な感じがしてたんです。きっと「ヒーロー」も、主役のケビン・ベーコンがヒロイックに活躍をする場面で流れるんだろうなと思ってたら、まさかのトラクターに乗ってるシーンだったので、思ってたのと違う! ってなりました(笑)。

サントラはさんざん聴いてたんで、自分のなかで世界観が出来上がってたんでしょうね。思ってたのと作品のテンポ感が違ってびっくりしました(笑)。ただ、あの時代に、都会から郊外にやってきた高校生が自分の感性で街を変えていくというストーリーには、なるほどなって思いました。

安川:正直、『フットルース』を作品性で語るのは厳しいかもしれない(笑)。でも、あれこそがMTVムービーなんですよ。

佐々木:僕も映画本編を見て、改めてMVがすべてだなと思いました(笑)。本当に楽曲が素晴らしいですね。

安川:MVの映像って、もともとは映画の予告編みたいに、おいしいところを集めたものを作ろうっていう発想だったわけじゃないですか。でも1980年代は、それを逆転させて、MVを2時間にして映画にしてみようとなった。その象徴が『フットルース』なんです。

『フットルース』オリジナルサウンドトラック

佐々木:誤解のないように言うと、『フットルース』がつまらない映画というわけじゃないんです。僕は大好きなんですよ。映像と音楽が合わさった総合芸術の作品だなと思います。

安川:確かにそうですね。自分がリアルタイムで『フットルース』を見たときに思ったことは、ダンスシーンの描き方の違いですね。それまでは、『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)に見られるような、ミラーボールの下でみんなで揃って踊る形だったんです。でも『フットルース』では、ヘッドホンをして個人で踊るんです。それが斬新だなと思いました。

主人公がヘッドホンを着けてる後ろ姿が、映画のポスターやサントラのジャケットに使われているメインビジュアルになってます。あれ、『ウォークマン®』のフォルムなんですよ。アメリカでは、日本より3年遅れて『ウォークマン』が流行ったんですが、『フットルース』で一気に広がったんです。そういう意味でも、1980年代を象徴してる映画だなと思いますね。

『トップガン』がMTVムービーの究極の完成形

──主題歌「フットルース」を歌ったケニー・ロギンスは、一躍時代の寵児になりました。

佐々木:そのあと、映画『トップガン』の主題歌「デンジャー・ゾーン」が大ヒットしますよね。『トップガン』こそ、まさにMTVムービーの完成形的なすごい作品だと思うんです。それぞれのシーンごとに、バキバキに音と映像がハマるじゃないですか。例えば「デンジャー・ゾーン」なら、空母から離陸するシーン、ベルリンの「愛は吐息のように~トップガン・愛のテーマ」はヒロインとのラブシーン、ケニー・ロギンスの「真昼のゲーム」はパイロットたちがビーチバレーをするシーンだし。

まさにたくさんのMVが合わさってひとつの作品になってて、しかも映画としても純粋に面白い。当時、僕は中学生でしたけど、これはすごい! と思いました。

安川:僕も『トップガン』が、MTVムービーの究極の完成形だと思いますね。これ以上にないだろうってくらい映画と音楽が一体化しちゃった。正直、それ以降、そういう意味で『トップガン』を超える作品は出ていないと思います。もう、音楽がセリフになってましたからね。極端なことを言うと、セリフがなくても、曲が流れてるだけでストーリーが伝わるんじゃないのかなと思います。

佐々木:ケニー・ロギンスは、『フットルース』につづく『トップガン』の大ヒットで、“80年代サントラの帝王”の異名で呼ばれるようになるんですが、当時の現象について、2020年のインタビューでこんなふうに答えてるんです。

ケニー・ロギンス「デンジャー・ゾーン」(1986年)

「最初は“サントラの帝王”と呼ばれることにちょっと抵抗があった。でも今では、自分にとってはラッキーな出来事だったんだと思うようになったよ。あのころ、ポップミュージックの世界はちょうどディスコが出てきていて、それまであった音楽すべてに取って代わるようになっていた。ラジオ局でかかるのもディスコ調の曲ばかり。そんなときに、幸運にも僕に映画の話が来た。映画のための曲を書くことで、メインストリームのポップスの世界から、ある種、距離を置き、離れることができたんだ。

映画という違う流れのなかで音楽をつづけたことで、僕のキャリア自体もつづいた。周りの多くのアーティストのキャリアは苦しいものだったからね。これだけの年月が経っても自分の音楽が“再発見”されているというのは、本当にありがたいことだ」

──80年代映画サントラは、ベテランアーティストの復権にも貢献したんですね。

安川:それこそ、1973年結成のアメリカのバンド、チープ・トリックも、同じく『トップガン』の劇中歌「マイティ・ウィングス」が、間違いなく1988年の大復活につながってますよね。

後編へつづく

文・取材:土屋恵介
撮影:荻原大志

リリース情報


 

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関連サイト

『トップガン マーヴェリック』公式サイト
https://topgunmovie.jp/
 
Webマガジン『otonano』
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https://otonanoweb.jp

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