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音楽カルチャーを紡ぐ

『トップガン』『フットルース』……80年代映画を彩ったヒット主題歌の魅力と功績【後編】

2022.05.25

音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。

今回は、80年代映画の主題歌&テーマ曲を収録したコンピレーションCD『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』を制作した担当者と、Webマガジン『otonano』のエディターで、1980年代カルチャーに造詣の深いライターが、当時の思い出とともに収録曲の魅力をクロストーク。当時の空気感や、音楽史における80年代映画主題歌の位置づけが見えてくる。

後編では、それぞれのナンバーワン楽曲選出と、今、80年代映画主題歌に焦点を当てる意義を語る。

 

  • 佐々木 洋

    Sasaki Hiroshi

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 安川達也

    Yasukawa Tatsuya

    ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド
    Webマガジン『otonano』編集部

『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』


 

1980年代に、日本で大ヒットを記録した80年代映画主題歌、テーマ曲を網羅したコンピレーションCD。2022年5月27日より新作が公開される『トップガン』主題歌の「デンジャー・ゾーン」(ケニー・ロギンス)、映画の同名主題歌「ゴーストバスターズ」(レイ・パーカーJr.)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』主題歌「パワー・オブ・ラヴ」(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース)といったヒット曲の数々を、全40曲収録している。高品質Blu-spec CD2仕様の2枚組。歌詞、対訳、解説が充実した冊子付き。

「愛は吐息のように」は劇中で何度も流れる

前編からつづく)──『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』の収録曲から、映画と音楽のマッチングが素晴らしいと思う楽曲を、メジャーなものとマニアックなものでそれぞれ挙げてください。まず佐々木さんは?

佐々木:僕は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)の主題歌で、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ」ですね。物心ついてから今まで多くの映画を見てきましたけど、ベスト1は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなんです。

Huey Lewis & The News - The Power Of Love (Official Video)

でも、第1作の主題歌である「パワー・オブ・ラヴ」は、実は僕の“サントラ哲学”にはまったく反してるんですよ。

というのは、僕は、作品を見たときに感じるエモーションが、そのまま曲につながってるものが好きなんです。例えば、『ロッキー4/炎の友情』(1985年)の主題歌「ハーツ・オン・ファイヤー(炎の友情)」は、トレーニングしてるシーンや、敵役のドラゴを倒したあとのフィナーレなど、見てるほうも気分がアガるときにかかるじゃないですか。ああいう使われ方が良いんですよね。

いっぽう、「パワー・オブ・ラヴ」は、劇中でほとんど使われてないんです。そういう、イレギュラーではあるんですが、映画そのものが好きなのと、自分がより洋楽を好きになるきっかけになった曲なので、トータルに考えて、自分的なベストとしてはこれを選びます。この曲は、グルーヴ感のあるアレンジで、ソウルフルじゃないですか。で、ブリッジになったとたん流麗なハーモニーが入るっていうのも新鮮でした。洋楽の良さを知ったという意味でも、すごく印象深いです。

変化球で1曲挙げるなら、シリーズ2作目『ランボー/怒りの脱出』(1985年)の主題歌「心のかけら」です。

安川:それは変化球ですね(笑)。

佐々木:というのも、当時は映画館で気に入ったものを今みたいにサブスクですぐ聴いたりできなかったじゃないですか。サントラも、『フットルース』(1984年)『トップガン』(1986年)クラスだと地元のレコード屋で買えるけど、ほとんどの作品は売ってなくて。なので「心のかけら」の音源は手に入れようがなかったんです。これは、シルベスター・スタローンの実弟、フランク・スタローンが歌っていて、すごく良い曲なんです。

映画の内容の、この国は強いけど自分は報われないっていうランボーの強さと悲しさが、この曲の雰囲気に含まれてるんですよ。報われないランボーという男の悲しみが、曲の悲哀と合っててすごい好きでした。

安川:なんでヒットしなかったんですかね。まあ、シングルカットされたかもわからないので、今回収録されているのは貴重ですよね。

佐々木:確かに大ヒットするようなポップソングではないんです。でも僕は好きだったので、テレビ放送されたときに、イヤホンジャックからラジカセにつないで録音しました(笑)。今回、自分が『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』を制作するにあたって、せっかくなんで推しのレアトラックは入れようと。

──では安川さんは?

安川:メジャーどころで言うと、僕は『トップガン』の劇中歌、ベルリンの「愛は吐息のように~トップガン・愛のテーマ」ですね。リリースされたのが、自分が高校1年生の多感な時期だったので、この曲を聴くと当時好きだった女の子のこととか、あのころの胸キュンな感じとともに思い出されます。

Berlin - Take My Breath Away (Official Video)

この曲、映画のなかでも何回も流れるんですよ。マーヴェリック(トム・クルーズ)とチャーリー(ケリー・マクギリス)のラブシーンのたびに流れる。こんなに同じ曲が何回も流れる映画は、ほかに見たことないですね(笑)。

──ベルリンというグループ自体、それまで人気のあるグループではなかったですが、この曲のヒットで大ブレイクしました。

安川:それこそ、ボーカルのテリー・ナンは、のちに「この曲はいろんな人の人生を変えた曲かもしれないけど、私の人生が一番変わった」って言ってますからね。そりゃそうですよね。主題歌の「デンジャー・ゾーン」よりもヒットしましたからね。

──そう考えると、映画と音楽、アーティストにとっても、サントラがあらゆる可能性を広げるターミナル的な存在だったなと思います。

安川:それは大いにありますね。あとマニアックなところで言うと、僕はジョン・キャファティーが大好きなんです。スタローンに気に入られて、『ロッキー4/炎の友情』の主題歌「ハーツ・オン・ファイヤー(炎の友情)」、「コブラのテーマ~アメリカズ・サンズ」(ジョン・キャファティー&ザ・ビーバー・ブラウン・バンド)など、たびたび彼の主演作に起用されましたけど、エモーショナルなアメリカンロックを奏でるアーティストとしては、1980年代だとブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドに次ぐと思ってるんですよ。スプリングスティーンの二番煎じと言われてしまうのは、音も似てるんで仕方ないんですけどね(笑)。

佐々木:キャファティー、僕も大好きなんですが、スプリングスティーンがレジェンドとされているのに対して評価が低いんですよね。「コブラのテーマ~アメリカズ・サンズ」も、改めて歌詞を見たらアメリカの社会問題をきちんと歌ってて、しかも声もスプリングスティーンみたいにカッコ良くてすごいと思うんですけど。

安川:1980年代半ばに、庶民の生活を歌った“スモールタウンロック”ブームがあったじゃないですか。スプリングスティーン、ジョン・メレンキャンプ、ブライアン・アダムス、ヒューイ・ルイスなどが代表格ですが、ジョン・キャファティーはそのトップチームには全然入れなかった。

ジョン・キャファティー&ザ・ビーバー・ブラウン・バンドは、もともとは、『エディ・アンド・ザ・クルーザーズ』(1983年)というミュージカル映画の覆面バンドだったんです。主演のマイケル・パレが歌えなかったんで、代わりにジョン・キャファティーがカッコ良い声で歌っていた。

Eddie And The Cruisers - On the Dark Side (Official Music Video)

その声にスタローンが惹かれたんですね。まあ、「ハーツ・オン・ファイヤー(炎の友情)」は、本当はスプリングスティーンに歌ってほしかったんでしょうけど、歌うわけなかっただろうし(笑)。彼がスプリングスティーンほどスター性のあるルックスじゃなかったというのも残念で。だからMTV時代には向かなかったのかもしれないですね。裏方バンドマン的な感じも僕は好きなので、マニアックな楽曲ナンバーワンはジョン・キャファティー&ザ・ビーバー・ブラウン・バンドの「コブラのテーマ~アメリカズ・サンズ」ですね。

CDが記憶を呼び起こすトリガーになってほしい

──『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』に封入されているライナーノーツに、安川さんが1992年の夏に仲間と80年代映画ゆかりの地を巡った話が書かれていました。80年代映画好きの男子4人が、サントラをかけながらアメリカ西海岸を旅する様子が興味深いです。

安川:単純に映画が大好きだったんで、やっぱり映画の舞台に行きたくなるんですよ。その土地に行けば、あの場所に立てば、主人公と同じような気持ちになれるのかなとか、ほんとそれだけの気持ちで、友だち4人と行ったんです。

──今で言う聖地巡礼ですよね。

安川:そうです。それを4人分まとめてやったら、結果的に40カ所くらい回ることになったっていう(笑)。その思い出話をライナーノーツに書かせてもらったんです。結局あれで何を得たかと言ったら、別に何も得てないんですよ。でも、そういうことじゃないんですよ。何か明確な目的があったというわけじゃなく、自分の好きだった映画の舞台ってなんだったんだろう? っていうのを、1個1個その場で感じられれば良いっていうだけのことだったんです。

佐々木:この原稿をもらって読んだとき、超感動したんです。収録曲について解説するような、いわゆるライナーノーツではないんですけど、僕が今という時代に、なぜわざわざこのようなCDを作ってリリースするかってことを、すごく言葉にしてくれてるなと思えたんです。

CDを手に取ることで、映画を見たときのことや、曲を聴いたときに自分が感じたこと、当時の彼氏、彼女や友だちのことなどを思い出してほしい。記憶を呼び起こすトリガーにこのCDがなってくれたら良いなと思ったんです。安川さんの旅行記は、すべての人の共通体験ではないけど、多くの人が感じたであろう、あの曲、あの作品への思いが、すごく私的でありながら、誰にでも通じるようなエモーションで書かれているなと思ったんです。ほんと、当時の安川さんの友だちグループに一緒にいたかったと思いましたね(笑)。

安川:まあ実際は、旅行中「早く行け!」とか半分ケンカしてましたけどね(笑)。でも楽しかったですよ。

佐々木:あと、また地域差の話になるんですが、僕なんかだと、地元が横浜の安川さんと違って、海外に行く前に、まず島根から東京に出なきゃいけないっていうのが大きなハードルになるんです。中学生くらいだと、どんなに好きでも海外に行くなんて考えられなかったから、自分の住んでるところに閉塞感を感じてた部分もありました。唯一、映画を見たり、サントラを聴いて想像してる時間だけが、自分が“世界にいる”って感じられたんです。だから余計に羨ましいなと思いますね。

友だちから「『トップガン』の続編楽しみだな」

安川:実はこのライナーノーツ、今回36年ぶりに『トップガン』が復活することとつながってるんです。当時一緒に行って撮影を担当していた友だちが、『トップガン マーヴェリック』の映画公開のニュースを見て思い出して、この旅の映像をDVDに焼いて送ってきてくれたんです。そこに「『トップガン』の続編楽しみだな」って書いてあったんですよ。ちょうどその昔の映像を見てるときに、佐々木さんからライナーノーツの依頼をもらったので、じゃあこのときのことを書こうと思ったんです。

『トップガン マーヴェリック』(2022年5月27日公開)©2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

佐々木:僕は安川さんと、10年以上前から80s関連の作品をいろんな形で語り継いでいきたいって話していて、パッケージとしても、『ナンバーワン80s』シリーズや『ジャパニーズ・シングル・コレクション』シリーズを手掛けてきました。

でも、いわゆるコンピレーションCDって、ストリーミングが浸透してきたことにともなって、もう作るのは厳しいかなと思っていた時期もあったんです。そしたら2020年にコロナ禍になって、40代、50代のいわゆる働き盛りの多くの方がステイホームになった。その方たちが、自分が若いころに接していたエンタメを反芻してみようという時間ができたのかもしれません。それもあってか、ステイホーム期間に僕が過去に作ってきた80sのコンピなどがAmazonとかで再び売れ始めたんです。それで、やっぱりCDのニーズって、あるところにはあるんだなと思ったんですよね。

そんなときに『トップガン』の続編がいよいよ公開されることになって。誰もが知ってる、あの時代を象徴する作品の続編なので、まさに安川さんの友だちが手紙をくれたみたいに、みんなが盛り上がるタイミングになるなと思ったんです。じゃあ、このタイミングでもう一度あの時代の映画の主題歌を総決算してみようと思ったのが、今回『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』を作るきっかけでした。

2022年5月5日に米・サンディエゴにて行なわれた『トップガン マーヴェリック』ワールドプレミアでのトム・クルーズ。©2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ワールドプレミアでのケニー・ロギンズ。『トップガン マーヴェリック』劇中でも、再び「デンジャー・ゾーン」が起用されている。©2022 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

──やっぱり映画や音楽って記憶のスイッチになりますよね。

佐々木:そうなんですよ。僕はレコードやCDも好きだし、ストリーミングでもよく聴きますし、どっちも利用してるんです。でも、目的によって視聴形態を変えることで、それぞれ聴いたときに受け取る感情も変わるんですよね。単純にプレイリストから聴くだけじゃなくて、CDを手に取ることで、そこに伴う思い出とかイメージとかも一緒になって甦ると思うんです。なので、このCDから、映画だったり当時のことを思い出してほしいなと思います。

安川:当時は、映画を見るためには映画館に行かなきゃいけなかったし、テレビ放送とかビデオ化までは1~2年待ったりしなきゃいけなかった。サントラを買うにしても、店に買いに出かけなきゃいけない。すべて、自分が何かを体験しなきゃいけなかったんです。ストリーミングやネット注文が当たり前になった今の感覚だと無駄なように思えるかもしれないですけど、そういう時間こそが愛おしいものだったんですよね。

今、ストリーミングやサブスクで見たり聴いたりする映画や音楽も素晴らしいけど、そことは確実に違うものがあったと思うんです。そんな1980年代の息吹が詰まった映像と音楽の一体化した作品を、同世代の方たちはもちろん、いろんな世代の人に触れてほしいなとすごく思います。

文・取材:土屋恵介
撮影:荻原大志

リリース情報


 

『ナンバーワン80sムービー・ヒッツ<1980-1990>』
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関連サイト

『トップガン マーヴェリック』公式サイト
https://topgunmovie.jp/
 
Webマガジン『otonano』
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https://otonanoweb.jp

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