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連載Cocotame Series

芸人の笑像

スタミナパン:男子中高生が笑うようなネタが一番僕らっぽい【後編】

2022.08.18

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ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第16回は、おじさん芸人の存在感が強いSMA内では十分若手と言える30代コンビ、スタミナパン。『キングオブコント 2022』では、順調に準々決勝まで駒を進めている彼ら。SMAのライジングスターとも言うべきふたりの素が存分に表われるインタビューをお届けする。

後編では、ネタに対するこだわりと、コンビの在り方を語る。

  • スタミナパン

    Sutaminapan

    (写真左より)麻婆/1989年7月20日生まれ。神奈川県出身。身長169㎝。体重115㎏。トシダタカヒデ/1989年6月7日生まれ。千葉県出身。身長178㎝。体重58㎏。

現実味のない設定を形にしていく

前編からつづく)スタミナパンのコントは、現在、公式YouTubeチャンネル「スタミナパンのアゲパン」で公開されているネタ動画を見てもわかる通り、テイストの幅は広い。恋人にプロポーズするため、ワインも料理も一流の予約の取れない人気レストランを訪れた男(トシダ)だったが、店員(麻婆)がトイレに行く際にいちいち「ウンチ行ってきまーす!」と叫んでしまうという、トンデモな情景を切り取ったネタ“レストラン”のように、日常生活で見かけそうな設定をヒネったネタが多い。最近では『キングオブコント2022』2回戦で披露した、意識の高い新任のカリスマ上司(麻婆)の言っていることがまったく理解できない部下(トシダ)が登場するネタでも、部下の焦りを斬新な手法で表現し、笑いを呼んだ。

かと思えば、芸人本人が声だけで出演し、自分たちのコントネタを気鋭のクリエイターとのコラボアニメーションで見せるバラエティ番組『アルピーテイル』でもオンエアされた“腕相撲”のように、鎖で繋いだ緑色の化け物(麻婆)を見世物にしている山師(トシダ)が、客から金を取って化け物と賭け腕相撲をさせるという、シュールで現実離れした設定のネタもある。彼らのネタ作りは、麻婆がコントの設定を持ってきて、そこからふたりで内容を話し合って決めていくスタイルだ。

「ただ、僕も前はコントの設定を考えて持っていってたんですけど、なんか違うと麻婆が一向に採用しやがらないんですよ。だから設定を作るのはやめたんです。なのにコイツ、1→10(イチジュウ)より0→1(ゼロイチ)のほうが偉いって、すごくマウント取ってくる。その先は一緒にネタを作っていることに変わりないのに、自分がネタを作ってるんだって言いたがるんですよ。なので、そこもこの記事を読む皆さんには、声を大にして言っておきたいですね(笑)!」(トシダ)

そうトシダが主張するように、設定以降のネタ作りは共同作業。コンビとしての仕事がないときでも、毎週1日は必ず会って話をしているそうだ。

「新ネタ用の設定が思い付いているときは、キャラを入れて会話をしてセリフを作っていきますし、あらかじめ設定を考えていなくても、その場で“こういうのやってみたいな”と言いながら、なんとなくキャラ設定からやってみて、モノになるかならないかを判断していくこともよくあります」(麻婆)

「麻婆の考える設定は、だいたい現実味がないものが多いんです、そんなのできないだろ? っていう。でもそういうふうに発想が飛んでるからこそ面白いので、そこを何とかして形にしていくことが多いですね」(トシダ)

男子中高生にウケるネタをやりたい

先に挙げた“レストラン”も、ふたりとも飲食店のアルバイト経験があり、お客さんにわからないよう隠語を使ってきた体験があるからこそのリアリティとファンタジーの狭間の面白さが際立っている。一流の飲食店の店員が下ネタを連呼するという“ありそうでない”設定を形にした良い例だろう。

「“レストラン”は、まぁ下品なんですけど(苦笑)、一番僕らっぽいネタだと思うんですよ。僕はやっぱり、中高生ぐらいの子が笑ってくれるのが一番うれしいし、その年ごろの男子にウケるネタをやりたいので」(麻婆)

「でも、テレビでやるネタとしてはコンプラギリギリなんですよね。“レストラン”のネタも、最初は『ウンコ』と言ってたんですけど、それだとテレビじゃできない。幼児語の『ウンチ』ならOKだと言われて、改訂版を作ったんです。YouTubeのネタ動画で一番再生数のある“腕相撲”に至っては、腕相撲をするのを嫌がっている化け物を鎖に繋いで、無理矢理金儲けをするというのは、まぁ虐待になってしまうので、ネタ自体がテレビではアウト。麻婆の見た目をディスるネタもあるんですけど……ご時世的にそれも厳しくなってきている。そこはちょっと悩ましいですね」(トシダ)

「下世話なネタが好き」という部分は一致しているものの、スタミナパンのふたりの話を聞いていると、体型だけでなく性格も正反対なことに気が付く。お笑いコンビの定石としては、ぽっちゃり体型のボケ役は、どこか大らかで天然なイメージがあるが、麻婆はチャキチャキとドライにトシダをツッコミ、発言にも毒っ気が光る。いっぽう、しっかり者に見えるツッコミ役のトシダは、穏やかさを漂わせながら、会話にボヤキふうの小ボケを入れ込む、飄々とした雰囲気がある。ネタの面白さだけでなく、見た目のイメージや役どころと本来の彼ら=“平場”の立ち回りとは、ギャップがあるのも彼らの面白さだと感じる。

「性格は確かに、お互い“なにそれ?”と思うことは結構ありますね。例えばそうだなぁ……LINEのやり取りとか。トシダさんは、僕が“ありがとうございます。”とLINEに書くと、“語尾にビックリマークがついてないのが嫌だ!”とか“スタンプ付けろ!”とか言い出すんですよ。怒ってるみたいに思っちゃうからって(笑)。まぁ僕も性格は良いほうじゃないですけど(苦笑)、そういうところでの喧嘩は、いまだにありますね」(麻婆)

「麻婆は僕の前だと、ちょっと格好つけるんですよね。同い年の僕のことを“トシダさん”って“さん”付けで呼ぶのも不満と言えば不満だし……要するに僕は、もっと仲良くやりたいんですよ(笑)。せっかく同級生でコンビを組んだんだから。でもそういうのには全然乗ってきてくれないし、もともと友達同士ってわけでもないので、もう諦めてますけどね(苦笑)」(トシダ)

喧嘩するほど仲が良いというが、ふたりが小さなことで言い合っているのを眺めていると、ツンデレカップルの痴話喧嘩のようにも見えて、微笑ましささえ感じる。だが合わない部分があると自覚し、細々としたぶつかり合いがありながらも、それぞれのコンビ芸歴のなかでスタミナパンが一番長くつづいているという事実は、芸人としてのふたりの相性の良さを表わしているようにも思える。

スタミナパンはとてもSMAっぽい

この『芸人の笑像』の連載ではSMAという事務所について、いろいろな所属芸人に話を聞いてきたが、誰もがSMAの魅力のひとつとして、先輩後輩が分け隔てなく話し合えるアットホームな雰囲気を挙げる。30代後半から40代がボリュームゾーンだったSMA芸人の一員に20代で入り込んだスタミナパンにとって、SMAはどんな事務所に映っているだろうか。

「ほかの芸人たちからはよく、『スタミナパンはとてもSMAっぽい』って言われるんですよね。どういう意味かは僕らもよくわかっていないんですけど……おそらくですけど、“地下芸人感”が強いんでしょうかね。キラキラが足りないっていうか(笑)」(麻婆)

「でも、それも考えようかなと。それこそ今、若手でバンバンきてる人って、マヂラブ(マヂカルラブリー)さんもそうだし、モグライダーさんもそうだし、“地下芸人”を売りにしてるじゃないですか。しかも錦鯉さんが『M-1』を獲ってからは、ますますSMA芸人が注目されているわけだから、ようやく時代が僕らに追いついてきた、と言って良いですよねぇ」(トシダ)

そうトシダが、まるで売れっ子大御所アーティストのインタビューのように格好をつけて言うと、すぐさま麻婆が「だったら俺ら、もうちょっと売れててほしいけどな!」と自虐ツッコミを入れてくるのも、“らしい”ところだ。

「でも、そういう地下っぽさ? 空気感が僕らに合ってたと今は思うんですね。確かに、所属前に周りに言われたように、ほかの事務所でやったほうが良いのかな? と、頭をよぎったことも正直あったんですけど、“Beach V”もすごく楽しいし、先輩もみんな良い人だし、ほんと雰囲気が良いんですよ」(トシダ)

「ただ……良すぎるからダメってこともあるかもなとは思いますよね。実力ある先輩たちが上のほうにずっといるんで、そこをバンと跳び越えられるように頑張らないといけない。それこそ昔は、事務所ライブでも“いつまでこんなにベテランの皆さんが、俺らと同じライブに出つづけるつもりなんだろう?”と思ってましたけど、そろそろ僕らも後輩からそう思われそうな年になってきちゃったんで(苦笑)」(麻婆)

そう語るふたりに、芸人としての野望は何かと聞いてみると、まずは現在、予選が開催されている『キングオブコント』はもちろん、「賞レースで結果を出すこと」だと完全一致している。

「今は本当に『キングオブコント』のことしか考えられていないですけど……その先の夢だと、僕はめちゃめちゃテレビっ子なので、やっぱりテレビに出たいですね。僕がお笑いやってるのも、有名になりたいからなので(笑)。だから、こういうインタビューを受けるのも、めちゃめちゃうれしいんですよ。自分のことをもっとみんなに知ってもらいたいから。『ガキ使』(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!)でときどきやってる“24時間インタビュー”とか、ぜひ出てみたいですね」(トシダ)

「僕は昔から芸人さんのラジオが好きでしたから、深夜ラジオで番組を持ってみたいです。テレビだと……コント番組もぜひ。あと今日、町中華で飯を食う写真を撮ってもらって気付いたんですけど、グルメ番組でめっちゃ食レポしたいかな。ただ、この体型なんで街ブラはキツイので、歩かなくて良いヤツをお願いしたいです(笑)」(麻婆)

「もうひとつ、やってみたい仕事はエロですかね。一時期、ネット番組でもセクシー系をやってたんですけど、僕ら、いまどき珍しくエロいことができるコンビなので、体験レポートとかもむしろやりたいんですよ。最近、お笑い芸人はみんな小綺麗になっていますけど、僕らはそういうタイプじゃないので、SMAのコンプラが許してくれるなら、ぜひやらせてほしい。マネージャーにもそう言っとかなきゃ(笑)!」(トシダ)

文・取材:阿部美香

関連サイト

公式サイト
https://sma-owarai.com/s/beachv/artist/h016?ima=5612(新しいタブで開く)
 
YouTube
スタミナパンのアゲパン
https://www.youtube.com/channel/UCY0iYZ94rb1kKkMqeGOhvIw(新しいタブで開く)
 
Twitter
麻婆
https://twitter.com/mabo198907(新しいタブで開く)
 
トシダタカヒデ
https://twitter.com/katanarashino(新しいタブで開く)

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