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連載Cocotame Series

芸人の笑像

しゃばぞう:おじさん、おばさん、コバナシアキラ。変幻自在のキャラをライブで磨きあげる【後編】

2022.12.01

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ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちにスポットを当て、ロングインタビューにて彼らの“笑いの原点”を聞く連載「芸人の笑像」。

第18回は、現在48歳、世間に定着しつつある“SMA芸人”のイメージを裏付けるおじさん芸人のひとり、しゃばぞう。自身が生んだいくつもの個性的なキャラクターで、ライブ会場を沸かせつづけているベテラン芸人だ。2021年は、マツモトクラブ、もじゃとのユニット、マンプクトリオで『キングオブコント』の準決勝にも進出。芸歴20年を超えた孤高のピン芸人のこれまでと、現在の心境を聞く。

後編では、SMA所属後の活動や自身のネタについて、そしてマンプクトリオ結成の裏側も明かす。

  • しゃばぞう

    Shabazou

    1974年7月7日生まれ。埼玉県出身。血液型B型。身長177㎝。体重98㎏。趣味:オートレース、読書。特技:料理、オートレース予想。

SMAは最終手段だと思っていた

前編からつづく)フリー芸人時代が5年ほどつづいたあと、40歳を過ぎたしゃばぞうは、改めて新天地を求めて事務所所属の道を探り、オーディションを受け始める。しかし……。

「爆笑問題さんのタイタンとか……40歳を過ぎたおっさんが新人に混ざって、オーディションもいろいろ受けました。でもそこのマネージャーさんも、僕のことを知ってるんですよね。『あれ、石井光三オフィスにいましたよね?』と。やっぱり、ほかの事務所に長いこといた芸人は、そうそう歓迎はされないし、喜んで40過ぎのおっさんを採ってくれるところもない。これは困ったなと思っていたところで、昔からの知り合いで、月に1回くらいライブで会うカンカン(TOKYO COOL)さんが、見かねて声を掛けてくれたんです。『事務所を探してるなら、SMAだったらいつでも入れるよ』って」

だが、親切な先輩芸人に誘われたものの、「カンカンさん、ちょっと待ってくださいよ」と、しゃばぞうはすぐにその誘いに乗らなかった。いや、気持ち的に乗りきれなかったというのが、正直なところだったらしい。

「SMAは最終手段だと思ったんですよ。今でこそSMAは名前を知ってる人も多いし、人気者がいる事務所のイメージになりつつあるけど、僕ら世代にとっての当時のSMAは、カンカンさんには申し訳ないけど、本当にゴミ溜めみたいな事務所でね(苦笑)。あんなヤツまで入れんのか! みたいに思ってました。だからほんとに抵抗があって……。でも、このままではどうにもならないし、最終的にはカンカンさんに、平井(精一/SMA芸人部門・部長)さんを紹介してもらうことになりました。そうしたら、平井さんも僕のことを知っててくれて『おう、来たか。泥水すすってきたか』って言われちゃいましたね」

それが今から7年前の2015年。SMA芸人・しゃばぞうとして、新しい一歩を踏み出したのだった。所属する前は、おっさん芸人の吹き溜まりだと思っていたSMAだったが、実際に入ってみると?

「やっぱり入って良かったですね。ネタをちゃんと作るようになったんで。いっとき、テレビでネタ番組ブームがあったじゃないですか。『エンタの神様』とか『爆笑レッドカーペット』とか。そういうところにちょこちょこ出してはもらえてたんですけど、結局、ああいう番組のネタ時間ってせいぜい1分、2分。劇場のライブだと数分以上のネタが必要になるから、自分のなかでワケわかんなくなっちゃってたんですよ。それで、ショートネタブームみたいなのが終わったときのために、ちゃんとしたネタを作りつづけてないとダメだなってことがよくわかった。

SMAに入ったら、とにかく新ネタのネタ見せが毎月毎月あるし、僕は今でも毎月最低10本はライブに出てるくらい、劇場のお客さんの前でやるのが好き。そういうことに、SMAに入って改めて気付けたのは、良かったですね」

しゃばぞうがピン芸人として追及しつづけている“おやじキャラ”のひとりコントは、かなり個性的だ。白のシャツに茶色のズボン(決して“パンツ”などというカッコ良い呼び方はできない)と冴えない背広。くすんだ色の腹巻きを巻き、なぜか派手な赤い蝶ネクタイと青いキャップを被っている“横山一郎”が代表的なキャラクターだ。ひと言、ふた言しゃべるたびにおやじギャグを連発し、自分で「違うか! ガハハハッ!」と大笑い。最初は、ただの濃いおやじキャラのバカトークに笑わせられるが、だんだんと横山一郎の人生のバックストーリーが明らかになっていく。その物語は方向を変え、オチには哀愁漂うどんでん返しも待っている。決してカッコ良くはない、冴えないおやじの“笑って泣かせる”ペーソスが、しゃばぞうコントの真骨頂だ。

「まぁ、“横山一郎”が、お客さんには一番知ってもらっているネタでしょうね。実はおじさん以外にも、いろいろキャラはあるんですけど、テレビ番組とかのオーディションに通るのは、結局おじさん。今日も横山一郎の衣装で写真を撮ってもらいましたけど、最近はこの格好も実はあんまりしてなくて。なんか着替えるのが面倒くさくなっちゃってますけどね(苦笑)」

ちなみに、そのペーソスあふれるネタは、いつどのように考えていくのかと聞くと、「そうですね……なんすかね……天から降りてくるんですかねぇ(笑)?」と天才肌を見せつけながら、飄々と語る。

「ちょっと良い話っぽいことをネタに盛り込むっていうのも、特に意識してやってるわけじゃないんですよ。なんかこう……やっぱり、降りてくるとしか言えないですね」

いきなりの準決勝進出で『さすがマツクラ!』

現在、彼のネタ動画はYouTubeの「しゃばチャンネル」にもアップされているが、しゃばぞう自身にお気に入りを聞いてみると、まずあがったのが「スピーチ」だ。例の“横山一郎”が甥の結婚式でお祝いのスピーチを披露するのだが、口を開けば下ネタが飛び出し、新郎と新婦のなれそめが風俗店の客と従業員だったことまでバラしてしまうが、最後はなぜか“イイ話”で締めくくられてしまうという、しゃばぞうらしい泣き笑いネタだ。

「これは『エンタの神様』でもやりましたけど、結構昔、適当に作ったネタなんですよ。下ネタなんで、ライブでやるとほんとウケます。落語家さんと一緒のライブなんかだと、なおさらウケますね。コントなんですけど、落語をわかりやすくやってるみたいだって。

たまに浅草の東洋館で東京演芸協会がやっている『他流寄席』っていうライブにも呼んでもらえるんですけど、そのときは“コバナシアキラ”というキャラで出るんです。小林旭の真似をしながら小噺をやるんですが、じいちゃん、ばあちゃんのお客さんにめちゃめちゃウケて、舞台の袖に、知らない師匠たちが集まって来てました(笑)。だから、将来は寄席とかが向いてるのかもしれない。今はまだ若い人相手のライブに出ていたいんですけどねぇ(苦笑)」

コンビ時代からネタ作りを担当し、今は毎月、ひとりコント用の新ネタを作りつづけているしゃばぞうだが、ここ2年、マツモトクラブ、もじゃと結成したコントユニット“マンプクトリオ”で『キングオブコント』に出場したことも話題となった。ちなみに彼にとって、自分以外が作ったネタを披露するのは、このマンプクトリオが初なのだそうだ。

「ずっと自分が書いたネタしかやってこなかったから、人の書いたセリフは覚えられないんじゃないかなと思ったんですけど、意外と俺こういうこともできるんだなって、自信にはなりましたよね。ただね、マンプクのネタはマツクラが書いてるもんだから、もう完全にマツクラスタイル。録音したセリフに合わせてしゃべらなきゃいけないのが、とにかく難しいんですよ」

そもそも、マンプクトリオの出発点は、しゃばぞうともじゃのふたりユニットだった。

「実は、マンプクトリオで最初に出た『キングオブコント2021』の前から、もじゃとふたりでやってみようという話をしてたんですよ。でも2020年までは、臨時のユニットでは出られないルールがあって諦めてたんです。そうしたら、2021年になってルールが変わって、もじゃから『ユニットで出れるようになりましたから、出ますか?』と聞かれたんです。正直言うと、そのときには俺はもう熱が冷めてたんですけど(笑)、もじゃが『出ましょうよ!』と言ってきて。しかも『マツクラさんからもユニットで出ないかと誘われたんですけど、断りました、しゃばさんとやるから』って言うんですよ。でも、あの人気者のマツクラが一緒にやろうと言ってくれてるなんて、もったいないじゃないですか! それでもじゃに、『マツクラも巻き込め! 巻き込め!』って言って、組むことにしたんです。『いいか、お前らふたりでじゃなくて、3人でだからな!』って(笑)」

その結果、『キングオブコント2021』では準決勝進出を果たす。

「僕も半信半疑だったんですけど、いきなり準決までいっちゃった。すげーな、コイツ! さすがマツクラ、天才だな! って思いましたよね。ただね~、もじゃのほうがね、それまで仲良く遊ぶ友達ではあったけど、マンプクトリオをやってから、正直、一緒にネタをやる相方としては、相当嫌いになりましたね(笑)。なんかね、セリフ覚えにすげー厳しいんですよ。しかもマツクラ側に立って、『あそこ間違えてましたよ』とか、いや~な言い方するんです。マツクラももじゃも劇団で役者やってた人たちだから、稽古もめちゃめちゃやるし、なんか面倒くせーんです(苦笑)。だから……僕はもうあのユニットはやらないかもしれないなぁ。稽古するの、面倒だしなぁ。あと、もじゃがイヤってのもあるしなぁ(笑)」

やりたいお笑い……考えたことない

では、しゃばぞう自身が今考えている「こういうお笑いをやりたい」という野望はあるのだろうか。

「うーん……。やりたいお笑いかぁ……考えたことないなぁ、うん、考えたことないです(笑)。そのときそのときに、思い付いたことをやってるだけなんで。まぁ、ライブに出るのは楽しいし、それはずっとつづけたい。で、ネタを作ったからには金にしたいと思うんで、そうすると単独ライブを定期的にやって……とにかく金にしたい! ってことかなぁ。だから、まずは売れたい。それはもう、ずっと思ってますし、たぶん、死ぬまで売れたいと言いつづけるでしょうね。

今はYouTuberにも憧れてるんですけど、YouTubeってネタ動画は誰も見てくれないんですよね。しかも単独ライブとかでやったネタを動画にしようとしても、BGMとかが著作権に引っかかる場合もある。ネタも毎回進化させてるから、古いネタをあげるのもなぁ……というのが悩みどころで。もういっそのこと、ネタじゃない動画でもやってやろうかとも思うんですよね。最近僕、『ONE PIECE』の考察動画ばっかり見てて。ああいうのに、ちょっと憧れてたりします(笑)。あとは……やっぱりテレビにも出たいし」

錦鯉を筆頭にSMAのおじさん芸人が話題となっている今、クシャッとした笑顔が魅力のしゃばぞうも、かわいいおじさん芸人として、いつテレビで脚光を浴びてもおかしくはない。ちなみに、どんなテレビ番組に出たいかと聞くと、なんとも意外な答えが返ってきた。

「あれ、出たいですよね……出川(哲朗)さんが、電動バイクで旅する『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』。芸人同士で飲んでると、みんな言いますよ、あの番組には出てみたいって。なんか心温まるし、あれに出れたら売れた証だな! って思うんですよ。芸人がトークで頑張る番組も、憧れないわけじゃないけど……俺は、そういうとこで勝負するタイプじゃたぶんないんで(苦笑)」

そんなしゃばぞうは今、12月7日に東京・新宿ハイジアV-1にて開催される単独ライブ『しゃばたん』に向けて、ネタを磨いている最中だ。

「内容はいつも通りで、コントをやらせてもらいます。いつものおじさん、おばさんも出ますし、コバナシアキラも出てきます。あと、単独ライブではよく映像ネタもやってまして、僕がオートレースに行って10万円以上勝ったら、お客さんにキャッシュバックするという企画をやってるんですよ。あれがとても盛り上がる。本当に大勝ちして、お客さんの入場料分を肩代わりできたこともあります。本当なら、ギリギリ勝って8万円とかだと、僕も儲かって良いんですけどね(笑)。新ネタもたくさんやるので、ハラハラドキドキしたい人にも、ぜひ観に来てもらいたいですね」

文・取材:阿部美香

ライブ情報


 
「しゃばたん」
 
12月7日(水)
新宿ハイジア V1
予約・購入はこちら(新しいタブで開く)

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