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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

新ビジュアルで新世代にも認知を拡大――『きかんしゃトーマス』が進む次のステージとは?【前編】

2022.12.23

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キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回は、子どもたちに愛されつづける『きかんしゃトーマス』をフィーチャーする。原作は、1945年にイギリスで刊行されたウィルバート・オードリー牧師による『汽車のえほん(原題:The Railway Series)』シリーズ。その後、鉄道模型を用いた人形劇アニメになり、1990年には日本でも放送開始。さらに、2009年以降はCGアニメに移行した(日本では2010年より)。

そして、2022年12月24日から放送がスタートする新シリーズからは、2Dスタイルのアニメにフルリニューアル。2023年3月10日には劇場版『映画 きかんしゃトーマス めざせ!夢のチャンピオンシップ』の公開も予定されている。

『きかんしゃトーマス』は、なぜ長年親しまれてきたビジュアルを一新するのか? 『きかんしゃトーマス』の歩み、作品に込められたメッセージを紐解きつつ、その未来像を探っていこう。

前編では、『きかんしゃトーマス』の国内マスターライセンス契約を有するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)が、これまで展開してきたキャラクター認知拡大の取り組みについて聞く。

  • 朝倉精吾

    Asakura Shogo

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

アニメ化を機に商品化権を獲得

──『きかんしゃトーマス』は、2020年に75周年を迎えた歴史あるIPです。SCPは、いつからどのような形で『きかんしゃトーマス』に関わってきたのでしょうか。

日本では、1990年にフジテレビ系列で『きかんしゃトーマス』の放送がスタートしました。SCPは、その翌年に商品化権を獲得し、そこから『きかんしゃトーマス』との関わりが始まっています。

──当時のSCPは、『きかんしゃトーマス』にどのような可能性を見出し、商品化権を獲得したのでしょう。

昔のことなので私も伝え聞いたこととしてお話ししますが、当時、SCPでは『タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~』や『バイキンクン』などのオリジナルキャラクターを生み出してビジネスを展開していました。そんななか、キャラクタービジネスのさらなる拡大を目指して、海外作品のライセンスビジネスを手掛けることになったんです。

その最初期のIPが、『セサミストリート』『きかんしゃトーマス』『ピングー』。この3作品を皮切りに、今では『ピーナッツ』『ピーターラビット』『リサとガスパール』など、海外IPのライセンスビジネスが広がっています。そのため、SCPにとっても『きかんしゃトーマス』の商品化権獲得は大きな転機となるできごとでした。

ビジュアルをフルリニューアルする『きかんしゃトーマス』。

──SCPが『きかんしゃトーマス』のライセンスビジネスを手掛けるようになってからの、市場の変化について教えてください。

『きかんしゃトーマス』は、ウィルバート・オードリー牧師が1945年にイギリスで刊行した『汽車のえほん(原題:The Railway Series)』シリーズが原作です。日本でも1973年にポプラ社から翻訳、出版されて長年愛読されていますが、当時は絵本を中心にした展開だったので、現在のように幅広い世代に知られるキャラクターではありませんでした。認知が拡大したのは、やはり1990年のテレビ番組の放送開始ですね。

その上で、SCPも1991年からグッズの制作、販売を展開するようになり、当時は自社制作も行なっていましたが、SCPの1社展開では企画するグッズにも限界があります。そこで、各業界のメーカーの皆様とライセンス契約を結び、グッズ展開を拡大。現在では、玩具、文具、寝具、アメニティ、アパレル、飲食からレジャー施設に至るまで、さまざまな業界で展開される人気キャラクターになりました。テレビ放送との相乗効果で、これほど大きく成長できたのは、素晴らしいことだと思います。

──主力の商品は、どのカテゴリになるのでしょうか。

やはり、玩具の人気は高いですね。なかでも『きかんしゃトーマス』の世界観を最も体感しやすい、タカラトミーの「プラレール」シリーズは根強い人気商品です。

アニメと体験型イベントの両輪で市場が拡大

──『きかんしゃトーマス』は、今では老若男女が認識する人気キャラクターと言えますが、ここまで国内での人気が定着した理由はどこにありますか。

大きくふたつの理由があると考えていて、ひとつは時代性です。昨今は、ネットを主体としたメディア、サービスの普及で、新しいキャラクターが次々に登場しては消えていく、コンテンツ消費の激しい時代になっています。

でも、『きかんしゃトーマス』が生まれた当時、主力メディアは紙と電波でしたし、ひとつのキャラクターがじっくり育つ土壌があったように思います。絵本からスタートしてテレビ放送に至り、グッズ展開で市場を拡大する。それが、お子さんを中心としながら、複数の世代にまたがって支持される、現在の状況を生み出した要因だと思います。

また、それに付随して現在まで大きな途切れなく映像コンテンツが放送、上映されていることも重要ですね。当初の人形劇からCGアニメにビジュアルが刷新されましたが、2000年からは劇場版も制作されていますし、こちらは来春公開される『きかんしゃトーマス めざせ!夢のチャンピオンカップ』で18作目となります。新しい映像作品が常態的にあることも、多くのお子さんに受け入れられた要因だと考えます。

劇場版『映画 きかんしゃトーマス めざせ!夢のチャンピオンシップ』(2023年3月10日公開予定)

──SCPでは、映像作品についてどういった関わり方をしているのでしょう。

基本的には、権利元のマテル社が制作したアニメを日本語版制作チームがローカライズし、それを放送しています。SCPは監修として関わっています。

──人気が定着したもうひとつの要因を教えてください。

レジャー業界とのコラボレーション、具体的には1998年に「富士急ハイランド」内に「トーマスランド」が開業されたことですね。「富士急ハイランド」では、『きかんしゃトーマス』の世界観を体験できるアトラクションなどが楽しめます。いわゆる“聖地”が開業したことも人気が定着する要因でした。

『きかんしゃトーマス』は、お子さんが興味やあこがれを持ちやすい機関車をモチーフにしたキャラクターで、トーマスやその仲間たちと直に触れあえる体験型のレジャー施設やテーマパークとの相性が良いというのは、『きかんしゃトーマス』の大きな強みだと思います。

実際、こうした体験型施設やイベントは、その後も広く展開してきました。埼玉の新三郷にある屋内型テーマパーク「トーマスタウン」や、大阪の和泉、岐阜、札幌にある「トーマスステーション」では、トーマスに乗って周回するアトラクションをはじめ、お子さんたちが体を動かして遊べる遊具などもあり、人気のプレイスポットになっています。

また、2014年からは静岡の大井川沿線を走る大井川鐵道で、蒸気機関車のトーマス号を運行する「DAY OUT WITH THOMAS」もスタートしました。こちらは毎年期間限定で開催されるイベントで、当初は夏休み期間を中心に実施していましたが、好評のため2015年からは冬季運行もスタートしています。「DAY OUT WITH THOMAS」は、トーマスが本物の蒸気機関車として走るわけですから、お子さんたちだけでなく一緒に来場する保護者の方々もその迫力に驚かれていますね。なかには、お子さんよりも興奮している保護者の方もいらっしゃいます(笑)。

映像作品を見て、グッズに触れるだけでなく、体験する場も提供することで、お子さんだけでなく子育て世代の方々にも認知を拡大することができた。それが『きかんしゃトーマス』が今でも愛されている理由だと思います。

大井川鐵道を走る「きかんしゃトーマス号」。

2022年8月から「きかんしゃトビー号」も仲間入り。

非認知能力へのポジティブな効果

──大井川鐡道のお話も出ましたが、やはり乗り物好きのお子さんが、『きかんしゃトーマス』に興味を持つことが多いのでしょうか。

その点については我々も興味があったので、SCPと「NPO法人 東京学芸大こども未来研究所(以下、こども未来研究所)」の共同研究プロジェクトとして、『きかんしゃトーマス』を学術的に研究しました。

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「きかんしゃトーマス」と子どもの非認知能力の関係――その研究から見えた教育の未来像

子どもたちに『きかんしゃトーマス』のアニメを見てもらい、プラレールなどで友達と一緒に遊んでもらいながら、その行動分析を行なったところ、子どもの非認知能力※の向上に関係があるのではないかという結果が出ました。要するに、子どもたちのコミュニケーションツールとして『きかんしゃトーマス』を役立てることができるということがわかってきたのです。

『きかんしゃトーマス』には、大きな機関車、小さな機関車など個性豊かなキャラクターがたくさん登場します。そのうちの誰かに自分を投影することができたり、こうしたキャラクターが、ときにはいろいろな失敗をしながら周囲と関わっていく。そんなストーリーが、子どもたちの心に響いているのではないかと考えられます。

※学力テストなどでは数値化できない能力。「意欲的である」「社会性がある」といった性格的な特徴のようなものを指し、幼児期の遊びや生活のなかで伸ばすことが大事だとされる。非認知能力の向上は、将来の学びやキャリアの成功に影響することが多くの研究結果で示されている。

──朝倉さんご自身は、『きかんしゃトーマス』のどういうところに魅力を感じていますか?

私は大人になってから『きかんしゃトーマス』の世界に触れました。語弊があるかもしれませんが、不思議な存在ですよね。まず、機関車に顔が付いているというのがユニークじゃないですか(笑)。それが、原作者であるウィルバート・オードリーさんの一番の発明だと思います。機関車を擬人化し、「あの機関車は実はこういうことを考えて働いているんじゃないか」と想像力を膨らませている。そういった作者の思考に触れられるところに魅力を感じますね。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

© 2022 Gullane (Thomas) Limited.
© 2022 HIT Entertainment Limited.
© TOMY  「プラレール」は株式会社タカラトミーの登録商標です。

関連サイト

きかんしゃトーマス公式サイト
https://www.thomasandfriends.jp/(新しいタブで開く)
 
YouTube きかんしゃトーマスチャンネル
https://www.youtube.com/thomasandfriendsjp(新しいタブで開く)
 
Twitter きかんしゃトーマス【公式】
https://twitter.com/ThomasNo1_JP(新しいタブで開く)
 
映画 きかんしゃトーマス めざせ!夢のチャンピオンシップ
https://movie2023.thomasandfriends.jp/(新しいタブで開く)
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ
https://www.scp.co.jp/(新しいタブで開く)

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