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連載Cocotame Series

IPを生み出すレシピ

ソニーミュージックが取り組む多次元アイドルプロジェクト、『UniteUp!』ができるまで【後編】

2023.04.01

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「IPビジネス」の源泉となるオリジナルキャラクターや作品を生み出そうとする人たちに焦点を当てる連載企画「IPを生み出すレシピ」。

今回は、2023年1月よりTVアニメのオンエアがスタートした『UniteUp!』をフィーチャーする。『UniteUp!』は、ソニーミュージックの「新規IP創発プロジェクト」から生まれた多次元アイドルプロジェクト。アニメという2次元と、リアルなキャストという3次元をミックスさせながらさまざまなコンテンツが展開されていく。

アニプレックス(以下、ANX)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)など、グループ各社の枠を超えて制作された『UniteUp!』はどのように生まれたのか。作品プロデューサーを務めるANXの瓜生恭子と、キャストのマネジメントを担当するSMEの室里香に話を聞いた。

後編は、実際のキャストとリンクしたキャラクターやストーリー、音楽の制作過程を語ってもらった。

  • 瓜生恭子プロフィール写真

    瓜生恭子

    Uryu Kyoko

    アニプレックス

  • 室 里香プロフィール写真

    室 里香

    Muro Rika

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

2D×3Dでキャラクターとキャストがリンクする

前編からつづく)――『UniteUp!』というプロジェクトにおいて、瓜生さんはアニメ作品のプロデューサーとして、どのような作品を目指していたのでしょうか。

瓜生:このプロジェクトは、最初から「2D(2次元のアニメ)×3D(3次元のキャスト)」というコンセプトを立てていました。アニメのキャラクターとリアルなキャスト、アニメのなかで流れる楽曲と現実世界で展開する楽曲といった2D×3Dのリンクを大事にしていこうと。それはキャストのオーディションからはじまり、アニメのストーリーを作る上でも、楽曲を作る上でも心掛けていたことですね。

――『UniteUp!』には、11人のアイドルと、ふたりの元アイドルが登場します。具体的に、どのようにキャラクターを開発していったのでしょうか。

瓜生:今回はキャストのオーディションと並行してキャラクターの開発を進めていきました。私もこういう作り方はしたことがなかったのですが、1次オーディションの時点ではそれぞれのアイドルグループの方向性をざっくりと決め、2次オーディションを実施するときに、キャラクターの造形や体形、大枠のプロフィールを決めたんです。それをもとにキャストの最終選定を行ないました。

そして決まったキャストの皆さんにはインタビューを行なって、ご自身についてのいろいろな話を聞き、それをキャラクターの設定に反映させています。例えば「プライベートの時間の使い方」「仕事への考え方」「音楽業界を志した理由」「将来の夢」などは、キャスト本人のものを反映している部分もたくさんあります。また、アニメのキャラクターが書く文字はすべて、キャスト本人が書いたものを使っています。

室:キャラクターにはそれぞれサインが用意されているのですが、そのサインはキャストが考えたものなんですよね。出身地も、キャラクターとキャストが同じだったり、そういったところもリンクさせています。

瓜生恭子、室 里香写真1

瓜生:最終的に『UniteUp!』のキャラクター像は、かなり実際のキャストに近くなった……というか、ほとんどキャスト本人と同じというキャラクターもいます。

室:キャラクターが歌う楽曲も、キャスト本人のポテンシャルに合わせて作られているところがあると思います。

瓜生:それぞれのグループの音楽制作チームから「この楽曲のこのフレーズは、このキャストに歌わせたい」といったリクエストがあって、その歌い分けに合わせて、アニメで描かれるステージパフォーマンスを変えたこともありました。

――キャストに合わせてキャラクターと楽曲を調整し、2次元と3次元を融合させようとしたわけですね。

瓜生:“PROTOSTAR”というユニットは、オーディションの時点では王道アイドルという設定でした。でも、音楽制作チームから「YouTubeでプロモーション展開する上でソロの曲がほしい」という意見が出て、それで各自がソロで活動していたという経歴に変更したんです。さらに、「“歌ってみた”動画を投稿してみたい」というA&R(アーティスト&レパートリー:音楽アーティストをさまざまな面でサポートしながらヒットへ導く音楽業界の業種)からの提案もあって、もともと彼らはインターネット上で活動するソロの“歌い手”だったという設定にしました。

そうやって、アーティストや音楽をプロモーションする視点からキャラクターを作っていった部分もあって。本当にいろいろな人の意見を取り入れながらキャラクターが作られていきました。こんな作り方は、私も初めての体験でしたね。

TVアニメ『UniteUp!』第6話挿入歌|「YOU」PROTOSTAR

ユニットごとに異なるレーベルのA&Rが担当

――各ユニットの楽曲はどのように作られているのでしょうか。

室:インターネットの歌い手からアイドルを目指す“PROTOSTAR”、ダンサーとしての経験が豊富な実力派“LEGIT”、バンドアイドルの“JAXX/JAXX”、そして彼らの事務所を運営している伝説的なアイドル“Anela”。それぞれのユニットごとに担当A&Rも所属レーベルも違っていて、“PROTOSTAR”はソニー・ミュージックレコーズ、“LEGIT”はNeOFRONT、“JAXX/JAXX”はエピックレコードジャパン、“Anela”はSACRA MUSICの所属になります。

基本的に若手のスタッフたちがA&Rを担当していて、お互いに切磋琢磨しているんです。おのずとそれぞれのグループの楽曲に、レーベルごとのカラーの違いも出ていて面白いと思います。

PROTOSTAR、LEGIT画像

PROTOSTAR(左)/LEGIT(右)



JAXX/JAXX、Anela画像

JAXX/JAXX(左)/Anela(右)

瓜生:グループのカラーに合わせて音楽チームが選定されているので、グループの個性がすごくはっきりしましたよね。実際に楽曲を作ってもらうと、4つのグループが全然違う雰囲気になるんだと改めて感じました。

室:各レーベルのスタッフは、キャストから「普段はどんな音楽を聴いているのか」「どんなテイストの楽曲を歌ってみたいか」「どんな歌詞を書いてみたいか」「どんな方向性で音楽活動していきたいか」といったことをヒアリングした上で、楽曲制作に取り組んでいます。もちろんアニメに登場するキャラクターやユニットのイメージを表現することが前提なんですが、しっかりとキャストとディスカッションしながら楽曲を作っているので、キャストの皆さんも楽曲に思い入れを持ってくれているんですよね。

瓜生:キャストとディスカッションをしながら作品を作っていくことは、これまであまり経験がありませんでしたし、こんなにキャストの一人ひとりについて詳しく知ることもなかったので、それも新鮮でしたね。

室:瓜生さんの言う通り、キャラクター開発のやり方も含めて、それぞれのキャストはこの『UniteUp!』に声優として関わっているだけではなく、プロジェクトの一員として関わっている感覚が強いと思います。だからこそ、完成したアニメを実際に見たときの感動はすごく大きかったんじゃないかなと。

『UniteUp!』画像1

誰が見ても楽しめるアイドルアニメ

――アニメのストーリーはどのように作っていったのでしょうか。

瓜生:ストーリーも、牛嶋(新一郎)監督をはじめアニメ制作のスタッフがキャストにヒアリングをしながら作っていきました。映像としてもなるべく地に足がついたものになるように、現実世界とのリンクを意識的に行なっています。

例えば、劇中に出てくる場所は現実に存在していて、彼らがライブをする場所も実際にあるライブハウスを取材させていただいて、それを劇中に登場させています。そうやって現実を作品のなかに取り入れることで、キャラクターたちが本当にこの世界で生活しているように感じられるような映像をアニメスタッフが描いてくれました。もちろんエンタテインメントなので、突拍子もない行動や現実ではあり得ないような展開もドラマの上でありますが、ファンタジーになりすぎないバランスになっていると思います。

感情面でも、清瀬明良の心情の変化を中心に、キャラクターたちの成長物語という王道のストーリーを丁寧に描いています。牛嶋監督がこだわっているのは、「男性アイドル作品でありながら、性別にとらわれずに見て楽しめる」ということ。誰もが楽しめるドラマとして、たくさんの要素を散りばめて作り込んでいます。

瓜生恭子、室 里香写真2

――清瀬明良の実家の銭湯の「菊之湯」というネーミングは、キャストである戸谷菊之介とのリンクも感じますし、とても細かいディテールまで作り込まれているなと感じました。いっぽうで清瀬明良のお母さんはアニメ的な楽しさのあるコミカルなキャラクターで、この作品を彩っています。

瓜生:お母さんは清瀬明良のアイドル活動を応援するポジティブな性格なんですが、そういう決断ができるキャラクターならではの要素があちこちに盛り込まれているんですよね。朝食にパイナップル味噌汁を作ってみたり(笑)、ちょっと不思議なところがあるから、アイドルを目指すこともあっさりオッケーしちゃう。視聴者が「このお母さんならそうなるよな」と納得できる要素を一つひとつ浮き彫りにして、キャラクターの個性が作り込まれています。

――ストーリーが進むにつれてキャラクターたちが成長していきます。キャストの皆さんもアフレコを重ねるごとに成長されていますか。

室:実は、オーディションのときからカメラを回していて。そこには彼らの変化がはっきりと記録されています。レッスンを始めたころとはみんな雰囲気がだいぶ変わりました。

瓜生:最初は学校のクラスメイトみたいな感じでしたよね。ずっと一緒にいましたから。

室:みんな仲良しですね。オーディションのころから3年ぐらいが経ちましたが、若い彼らは顔つきが相当変わっていると思います。性格はそんなに変わっていないんですけど(笑)。

インターネットやSNSという時代性を意識

――『UniteUp!』を制作するにあたって、現代のアイドルシーンや音楽シーンなどは意識されていましたか?

室:そうですね。この作品は時代性をものすごく意識しています。例えば、今の新人アーティストは、やっぱりインターネットやSNSでの活動をベースにメジャーシーンに進出するというケースが非常に多くなりました。じゃあ、そういう要素を作品にも取り入れようということになりましたし、プロモーションにおいてもSNSをしっかり活用するようにしています。

『UniteUp!』画像2

瓜生:コロナ禍においてはアイドルやアーティストのライブ活動もリアルではなく、配信というかたちで展開することが増えましたよね。そのおかげで配信に大きく注目が集まっていた時期だったと思います。この作品でも、“歌ってみた”動画の配信者だった主人公たちが、リアルに人前に立つ葛藤や喜びを感じる部分もドラマとして描こうと思っていました。そういう意味では、今の時代にアイドル活動、音楽活動をする人たちの状況に近いものを表現として取り入れていきたいなと。

――プロモーションもとてもこまやかにされています。キャラクターそれぞれにTwitterアカウントがあって、各話のストーリーの進行に合わせて更新されていたり、キャストのトーク付きの上映会を各話ごとに実施するなど、作品内外の魅力を伝えようとされていますね。

室:せっかくだから、やれることは全部やりましょうというスタンスではありますね。YouTubeだけでなく、TikTokでの取り組みも積極的に行なっています。特にANXの宣伝チームはすごく頑張ってくれていて、キャラクター一人ひとりのTwitterアカウントをリアルタイムで更新していたり、めちゃくちゃ細かく動いているので作業量が半端じゃないなと。これから音楽面でのプロモーションが本格化するので、各音楽レーベルの宣伝チームも競い合うように頑張っていこうと準備しているところです。

――『UniteUp!』のプロジェクトは、これからも発展していくかと思いますが、おふたりがこのプロジェクトに関わって感じたことを教えてください。

室:『UniteUp!』はスタッフもキャストも「はじめまして」の人が多くて、そういう人たちとゼロからプロジェクトを作っていけるというのは、本当にご縁とタイミングに恵まれたなと思っています。まだまだ『UniteUp!』のプロジェクトは始まったばかりですし、ここからもっともっと新しいことに挑戦していきたいと思っています。

私はソニーミュージックに入って、いろいろなグループ会社を異動してきましたが、その経験をいかして楽しいことができると思うと、とても有り難いですね。これから何ができあがるのか、何を達成できるのか、すごく楽しみです。

瓜生:今回、ソニーミュージックの各社のスタッフと取り組んだことが、とても大きな経験になりました。例えば、グループ内のどの会社とどの会社に声を掛けたら、どんな新しい企画ができそうだとか。『UniteUp!』以外でも、新しいアプローチで企画を作っていくことができそうな予感がしています。そういう意味で、今までになかった視点を持つことができました。これからがますます楽しみになりましたね。

文・取材:志田英邦
撮影:冨田望

©Project UniteUp!

関連サイト

『UniteUp!』公式サイト
https://uniteup.info(新しいタブで開く)
 
『UniteUp!』 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@UniteUpOfficialYouTubeChannel(新しいタブで開く)
 
『UniteUp!』公式Twitter
https://twitter.com/project_uniteup(新しいタブで開く)
 
『UniteUp!』公式Instagram
https://www.instagram.com/project_uniteup/(新しいタブで開く)

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