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連載Cocotame Series

IPを生み出すレシピ

ソニーミュージックが取り組む多次元アイドルプロジェクト、『UniteUp!』ができるまで【前編】

2023.03.31

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「IPビジネス」の源泉となるオリジナルキャラクターや作品を生み出そうとする人たちに焦点を当てる連載企画「IPを生み出すレシピ」。

今回は、2023年1月よりTVアニメのオンエアがスタートした『UniteUp!』をフィーチャーする。『UniteUp!』は、ソニーミュージックの「新規IP創発プロジェクト」から生まれた多次元アイドルプロジェクト。アニメという2次元と、リアルなキャストという3次元をミックスさせながらさまざまなコンテンツが展開されていく。

アニプレックス(以下、ANX)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)など、グループ各社の枠を超えて制作された『UniteUp!』はどのように生まれたのか。作品プロデューサーを務めるANXの瓜生恭子と、キャストのマネジメントを担当するSMEの室里香に話を聞いた。

前編は、ゼロから始まった企画会議やキャストのオーディションなど、グループ各社が連携しながら進められた制作の舞台裏に迫る。

  • 瓜生恭子プロフィール写真

    瓜生恭子

    Uryu Kyoko

    アニプレックス

  • 室 里香プロフィール写真

    室 里香

    Muro Rika

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

UniteUp!』とは?

「UniteUp!」キービジュアル

ソニーミュージックが手掛ける多次元アイドルプロジェクト。2021年11月に公式YouTubeチャンネルが開設され、2023年1月よりTVアニメのオンエアがスタート。
 
歌が大好きな高校生の清瀬明良。動画配信サイトにアップした彼の歌声を聴いて、芸能事務所がスカウトにくる。そこは引退した伝説のアイドル“Anela(アネラ)”がアイドル育成のために立ちあげた芸能事務所だった。そして清瀬明良は直江万里、五十鈴川千紘とともに“PROTOSTAR(プロトスター)”というグループを結成することに。同じ事務所に所属するグループ、“LEGIT(レジット)”“JAXX/JAXX(ジャックジャック)”と切磋琢磨しながらアイドルデビューを目指す。

会議室に集まって「さあ、何をしよう」

――『UniteUp!』はソニーミュージックの「新規IP創発プロジェクト」のひとつですが、室さん、瓜生さんはどのような経緯で参加することになったのでしょうか。

室:「新規IP創発プロジェクト」は、ソニーミュージックの各社を横断して新しいコンテンツ、IPを生み出そうという取り組みです。私は2019年にこのプロジェクトが立ちあがったときからコアメンバーとして参加していました。

瓜生:私もこのプロジェクトがスタートしたときからの参加メンバーです。私は、今までにオリジナルアニメやアイドルアニメを手掛けた経験がありましたし、室さんはタレントやアーティストのマネジメントを数多く手掛けられてきました。そこに音楽制作の統括として、アニソンアーティストや楽曲を多く手掛けられているSMLのプロデューサーも入られて。その3人が初期のコアメンバーとして会議を重ねながら企画を練っていきました。最初は本当に何もない、ゼロからの打ち合わせでしたよね。

室:会議室に集まって「さあ、何をしよう」というころから始まって。

瓜生:それぞれがデータを持ち寄ったり、ほかの作品を研究したりして、いろいろなアイデアを出し合っていきました。でも、そうこうしているうちにコロナ禍に突入してしまって。会議室に集まれない期間は、リモート会議でブレストをしていました。

室:そうやっていくうちに、だんだんと方向性が絞られてきて、「アイドルをテーマにしよう」ということになったんです。そしてアニメを作るならば、まずはキャストのオーディションからということになりました。

瓜生:さらに、オーディションと並行してキャラクターの開発を進めることで、全体の方向性も固めていくことになったんです。

TVアニメ『UniteUp!』PV第2弾

アフレコの初歩から学んだキャストたち

――オーディションの段階では、テーマが“アイドル”ということだけで、まだどんな作品にするかは決まっていなかったんですね。

瓜生:はい。1次オーディションのときは、とりあえずキャラクターの人数と、それぞれのグループの方向性だけを決めました。第1グループは王道アイドル、第2グループはヒップホップやダンスをメインとしたグループ、第3グループはバンドアイドル。今の『UniteUp!』の基本形が、ここで定まった感じでしたね。

室:アイドルをテーマにした作品だから、当然キャストは歌を歌うよね、ということで音楽統括のプロデューサーを中心に、ソニーミュージック内の各音楽レーベルから若手のA&R(アーティスト&レパートリー:音楽アーティストをさまざまな面でサポートしながらヒットへ導く音楽業界の業種)が集まって、ユニットごとに楽曲制作を担当してくれることになりました。

そして、キャストのオーディションも、3つのグループのイメージを想定して進めることになったんです。その時点では、オーディションで参加者に演じてもらう原稿も、キャラクターのセリフではありませんでした。

『UniteUp!』画像1

瓜生:まだストーリーを作ってなかったですからね。あくまで1次オーディションは、参加者のお芝居と歌、人柄などを知るためのものでした。

室:参加してくれたキャストの皆さんも、このオーディションが結局何を目的にしているのかよくわからないまま受けてもらう状況で。さらに、アニメのキャストを決めるオーディションというわりには、すごい人数のスタッフが集まっていたので、ますます困惑させてしまったかもしれません(笑)。

瓜生:アニメ関係のスタッフだけでなく、各グループのA&Rなど音楽スタッフも来てましたからね。個性的な人もたくさん集まっていました(笑)。

室:このときオーディションを受けてくれたキャストは、いずれもソニーミュージックの各社に所属している人たちでした。なかには声優を目指している人もいましたが、映像や舞台の俳優、シンガー・ソングライターなども多くいて。

そういった人たちがアニメをはじめ2次元のキャラクターにキャスティングされること自体が珍しいでしょうし、マネジメントの視点で言うと、キャストにとっては大きなチャンスになります。だからこそ、オーディションで選ばれたキャストの育成はしっかりやらないといけないと考えていました。

室 里香写真

――オーディションのあとはキャストを声優として鍛えあげていくという、明確なビジョンがあったんですね。

室:最終的にオーディションで選ばれたキャストは、声優経験のない人がたくさんいましたが、なかには経験者もいて。例えば、アニメ『チェンソーマン』で主人公のデンジ役を演じた戸谷菊之介(UniteUp!:清瀬明良役)は、その時点で既に声優の活動をしており、アフレコの経験もありました。

とは言え、ひとつのユニットに経験者と未経験者がいて、レベルが違う状態はなかなか大変です。そこで経験のレベルによってクラス分けをして、アフレコのレッスンを行ないました。呼吸法を学んでもらったり、キレイな発声を助けるストレッチ、「アフレコとは?」といった座学も実施して、皆さんに受けてもらいましたね。

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瓜生:座学ではアフレコの初歩から学んでもらいました。「アフレコするときはボールド(どのキャラクターが今喋っているのかを示すマーク)が出るので、それが表示されている間にセリフを言うんですよ」とか。

室:さらに、『UniteUp!』はアニメだけでなく、実際にキャストがライブパフォーマンスをすることも想定していたので、アフレコの次はダンスのレッスンも始めました。ダンスも初挑戦の人がたくさんいたので、振り入れの前に基礎訓練を重ねて。これも初歩からのスタートでしたね。

「Uniteしよう!」が合言葉

――瓜生さんは、これまでにもアイドルをテーマにしたアニメ作品を手掛けていますが、『UniteUp!』ならではの違いはどんなところにあると思いますか。

瓜生:アイドルのアニメ作品に限定した話ではありませんが、アニメを1本制作して世に送り出すまでにはたくさんの工程があって、多くのスタッフが関わります。そして、ひとつの作品に関わる人が多くなればなるほど、チームごとの分業制のようになっていき、それぞれが個別に動いていくことが多いんですね。

でも『UniteUp!』の制作はそうならなくて、キャストもアニメスタッフも音楽スタッフもみんな同じひとつのチーム、ひとつのグループとして一緒に動いていったのが新鮮でした。念のために補足しておくと、チームが個別に動くことが悪いと言っているわけではなくて。ANXが通常のスキームでアニメ作品を制作すると、それぞれの役割が既に決まっているなかで作品の完成から放送、2次利用展開というゴールに向かっているので、みんなが違うルートを辿っていても到着地点は同じになります。つまり、アニメ制作に特化したチームが作品を手掛けていくということです。

しかし『UniteUp!』は、先ほどお話しした通りソニーミュージックを横断したプロジェクトなので、音楽を作る会社、アニメを制作する会社、キャストをマネジメントする会社などから、それぞれ専門のスキルや知見を持つスタッフがチームに集まってきていて、それこそ個別に動いてしまうと、横で何が進行しているのかがわからなくなってしまいます。それを回避する意図もあって、グループとして動いていったというのもあるのですが、やはりそれぞれのフィールドで活躍されている方たちとご一緒できたのは刺激的でした。

瓜生恭子写真

――ソニーミュージックを横断したプロジェクトで、シナジーが発揮されたということですね。

瓜生:音楽制作の担当者もキャストのマネジメントも、みんながすごく近くにいて、それぞれがその道のプロフェッショナルなのは、やっぱり心強いですよね。例えば「ライブパフォーマンスをしたい」と言ったら、プロジェクトメンバーが「こんなダンサーが振付をしてくれるよ」と推薦してくれたり、「こういう楽曲にしたい」と言ったら「こんなコンポーザーがいるよ」と提案してくれる。

そして、プロジェクトが具体的に進めば進むほど、協力してくれるスタッフも増えていって、最終的には、SMEやSMSでライブ制作やイベント運営を手掛けるスタッフの皆さんも参加してくれました。プロジェクトの規模がどんどん膨らんでいって、こんな機会は滅多にないなと。たくさんの新しい出会いがあるプロジェクトだなと感じています。

室:今となっては、プロジェクトのメンバー全員を集めたら、会社の一番大きな会議室にも収まりきらないくらいの規模になっているでしょうね(笑)。

瓜生:すごい人数ですよね。

室:ただ、残念だったのはプロジェクトの進行中にコロナ禍に入ってしまったので、スタッフ全員がリアルで会って交流を深める機会がないまま、実制作に突入してしまったことです。最近、それぞれの現場でようやく顔合わせをしています。

『UniteUp!』画像2

――会社の枠をこえた協力体制を敷きながらひとつの作品を作ってみて、おふたりの手応えはいかがですか。

瓜生:ANXでアニメ作品を制作するときは、プロデューサーとしての自分の仕事は社内で完結することが多く、ソニーミュージックのほかの会社の人たちと協力して何かを作るということが少なかったように思います。

もちろんアニメの主題歌や挿入歌にソニーミュージックのアーティストや楽曲が起用されることは多くありますが、なかなか音楽制作の現場に立ち会うことはないので、交流する機会もなくて。でも今回ご一緒して、グループ内にこんなにたくさんの会社と部門があったんだと、改めて気付きました。

そしてANXの社内だけで話をしていたら、おそらく実現できなかっただろうと思うこともたくさんありました。もちろん会社ごと、部門、部署ごとに仕事の仕方も考え方も違いますし、持っている知識もビジネス領域も違います。そういう違いを擦り合わせられたことも、とても良い経験になりましたし、勉強になりました。

瓜生恭子、室 里香写真

室:今回のようなグループ横断プロジェクトは過去にも何度かあったと聞いていますが、ここまで本格的にグループ各社が協力した取り組みは、私が入社してからは初めてだったんじゃないかと思います。私もSMLにいたころに、アニメの主題歌や挿入歌の制作を担当したことがありますが、作品の中身も含めて一緒に作っていくという経験はありませんでした。それこそ瓜生さんとも、このプロジェクトが初対面でしたし。

瓜生:そうですよね。

室:今回、一緒に取り組めたスタッフは、年代も持っているスキルも、仕事に対する考え方も違います。私はチームのなかではベテランの部類に入ると思うのですが、現場のスタッフ同士、人と人とを繋いでいくのが自分の役割だと感じていて。「せっかくだからみんなで楽しくやりましょう!」と声を掛けて、全員がうまくかみ合うことで、新しいものが生み出せれば良いなと思っていたんです。『UniteUp!』というプロジェクトをチャンスだと捉えて、これからますます盛りあげていきたいですね。

瓜生:みんなで“Unite(団結)”していきましょう!

室:そうそう、「Uniteしよう!」っていうのが私たちの合言葉になっているんですよ。これからも“Unite”していきたいですね。

『UniteUp!』画像3

後編につづく

文・取材:志田英邦
撮影:冨田望

©Project UniteUp!

関連サイト

『UniteUp!』公式サイト
https://uniteup.info(新しいタブを開く)
 
『UniteUp!』 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@UniteUpOfficialYouTubeChannel(新しいタブを開く)
 
『UniteUp!』公式Twitter
https://twitter.com/project_uniteup(新しいタブを開く)
 
『UniteUp!』公式Instagram
https://www.instagram.com/project_uniteup/(新しいタブを開く)

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