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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

おしゃれでかわいくてちょっと不思議――フランス生まれの「リサとガスパール」が愛される理由【後編】

2023.06.08

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キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回取り上げるのは、フランス生まれのキャラクター『リサとガスパール』。アン・グットマン、ゲオルグ・ハレンスレーベン夫妻の絵本から生まれたリサとガスパールは、2000年代に百貨店や製パン会社のイメージキャラクターになり、一躍人気に。今年3月からは、新訳版の絵本が河出書房新社から刊行され、注目を集めている。『リサとガスパール』のこれまでとこれからについて、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の担当者とともに深く掘り下げていこう。

後編では、新絵本シリーズや富士急ハイランド「リサとガスパール タウン」10周年イベントなど、直近の取り組みについて聞いた。さらに、新絵本シリーズの発売を記念した、俳優・杏さんによるYouTube動画の撮影裏話も語る。

  • 高橋プロフィール写真

    高橋美里

    Takahashi Misato

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 齋藤プロフィール写真

    齊藤 亮

    Saito Ryo

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

日本初上陸作品も! 河出書房新社から新絵本シリーズが登場

──(前編からつづく)今年に入り『リサとガスパール』の新絵本シリーズの刊行が始まりました。3月には第1弾として、6年ぶりの新作となる『リサとガスパール オペラざへいく』と、シリーズのなかでも人気の高い『リサとガスパールのレストラン』の新訳版の2冊が同時に発売され、注目を集めています。新絵本シリーズが刊行されることになった経緯を教えてください。

高橋:日本では、2000年から2019年まで『リサとガスパール』の旧絵本シリーズが刊行されていました。その後しばらく途絶えていましたが、『リサとガスパール』は絵本から始まったIPですから、私たちとしても絵本の刊行は強く望んでいたんです。

そんななか、フランスの出版元であるアシェットとの交渉がまとまり、河出書房新社から新たに絵本が刊行されることになりました。私たちSCPも、河出書房新社の皆さんとは「完全版 ピーナッツ全集」でお付き合いがありますし、編集者の方も新絵本シリーズに熱意を持って取り組んでくださって。今年の3月、ついに新絵本シリーズが発売されました。今後も5月、7月、9月、11月と隔月で刊行される予定です。

リサガス書影
リサガス書影

3月に発売された新訳版『リサとガスパール オペラざへいく』と『リサとガスパールのレストラン』。

──新絵本シリーズでは、訳が一新されているそうですね。

高橋:『リサとガスパール オペラざへいく』は、初めての邦訳となります。ほかの作品も、旧シリーズと同じく石津ちひろさんが訳を担当されています。同じ訳者の方ではありますが、訳はまるごと新しくなっているので、ぜひ読みくらべていただきたいですね。

なぜ新訳になったかというと、2000年に絵本が刊行された当時は、まだ国内で『リサとガスパール』の認知度が低かったためです。当時は絵本で初めてリサとガスパールに出会う方が多かったので、原文にはない「わたし リサ、ぼく ガスパール」といった自己紹介を加えることもありました。

それから20年以上経ち、今では『リサとガスパール』は広く知られ、国内でも愛されるキャラクターに成長しました。どちらがリサでどちらがガスパールかご存じの方も増えたので、今回は原文により近い表現で訳されました。

また、旧シリーズでは日本の読者に馴染みやすいよう、原文からかなり変更している部分もありました。例えば「ケンケンで100メートル競走」を「かけっこ」にするなど、よりわかりやすく訳されていたんですね。当時はそういった訳のほうが読みやすかったと思うのですが、今は原文に近い訳でも受け入れられる土壌ができています。フォント(字体)も、新訳版ではシンプルになりました。

リサガス高橋写真

しかし、新旧シリーズのどちらの訳にもそれぞれの良さがありますし、どこがどう変わっているのかを見てみるのも楽しいので、きっとファンの方なら両方揃えたくなると思います。

──日本では6年ぶりの新作になりますが、フランスでは今も新しい作品が刊行されているのでしょうか。

齊藤:そうですね。日本で最後に出版されたのは、2017年の『リサとガスパール とうきょうへいく』ですが、フランスではその後も新作がコンスタントに発売されています。今回、河出書房新社が新シリーズを発売されることになったので、今後日本で未発売の絵本が刊行されることも期待したいと思います。

──まだ発売されたばかりですが、絵本の新シリーズが発売されることについて、ファンの方からはどんな反響がありましたか?

高橋:日本では6年ぶりの新刊でしたので、SNSなどでも「待ってました!」「うれしいです!」という声が多数あがっています。また、日本で絵本の新シリーズが始まることについては、原作者のアン・グットマンさんとゲオルグ・ハレンスレーベンさんもとても喜ばれていました。

加えて、絵本の発売に合わせてプレゼントキャンペーンを実施したところ、通常の倍近い千数百もの応募があり、『リサとガスパール』というIPの底力を改めて感じました。「自分の子どもにプレゼントしたい」「保育士なので、子どもたちに読み聞かせたい」といったコメントをいただき、ファンの皆さんも絵本の発売を待ち望んでいたんだなと実感しますね。

リサガス5

それと今回の絵本には、「リサとガスパール通信」という冊子が付いています。第1号は「日本の読者のみなさまへ」という作者からのメッセージが掲載され、日本語訳と一緒に、アンさん直筆のフランス語原文も載っています。表紙はゲオルグさんの描き下ろしのイラストで、「河出書房新社」という漢字までご本人が描き込まれていて、とても素敵なんです。

しかも、この「リサとガスパール通信」の描き下ろしイラストは、当初は新シリーズの初回の2作品に入る第1号のみの予定でしたが、大好評だったため編集担当の方がお願いして、毎号、描き下ろしてくださることになりました。こうしたやりとりができるのも、現役の作者さんならではですよね。

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ゲオルグさんが「河出書房新社」の文字まで描き下ろした「リサとガスパール通信」。

齊藤:お話しした通り、アンさんもゲオルグさんも本当に日本のファンの方々のことを考えてくださるんですよね。SCPが『リサとガスパール』の公式Instagram(新しいタブで開く)を開設したときにも「おめでとう」というメッセージとともに、描き下ろしのイラストを投稿してくださいました。

SNSでもなんでも、取り組みが決まったものにはアンさんもゲオルグさんも楽しんで参加してくださる。その姿勢がとても有難いなと感じています。

リサガス7

原作者のアトリエを俳優・杏さんが訪問

──新絵本シリーズの発売を記念して、5月25日から俳優・杏さんのYouTubeチャンネル「杏/anne TOKYO」(新しいタブで開く)でアンさん、ゲオルグさんのアトリエを杏さんが訪問するスペシャル動画が公開されています。この企画は、どのような経緯で実現したのでしょうか。

杏/anne TOKYO
【リサとガスパール】パリのご自宅訪問 大好きな絵本の作者さんに会えました!

高橋:杏さんは、現在お子さん3人とフランスで暮らしていらっしゃいます。俳優として活躍する以外にも、イラストや歌、お料理も大好きでとても多才な方。以前から、私たちが考える『リサとガスパール』ファンのペルソナにぴったり合致すると思っていました。いつかコラボしたいと願っていたところ、新絵本シリーズが発売されることになり、「今だ!」とオファーをさせていただきました。

しかも、杏さんに企画を提案したところ、杏さんがフランスに渡る際、お子さんに『リサとガスパール』のDVDをフランス語で聞かせていたというエピソードをいただいたんです。これはもう、ぜひ原作者との対談を実現させたいと思い、猛烈な勢いで交渉させていただきました(笑)。結果、オファーを快諾していただき、フランスでの撮影までスムーズに漕ぎ着けたんです。

──動画では、原作のおふたりに杏さんがインタビューをされているのでしょうか。

高橋:そうですね。さらに、前半にはアンさんとゲオルグさんのお宅訪問のような場面もあります。おふたりのご自宅は、庭が広くて、アトリエも素敵で、キッチンのインテリアはおふたりがDIYで作られていたりと、パリの憧れが詰まったようなお家でした。杏さんも「こんなお宅、パリで見たことがない」と驚いていらっしゃいましたね。

また、この動画では『リサとガスパール』の紹介だけではなく、杏さんの目線で素敵なインテリアを紹介していただいたりと見どころが詰まっています。

──撮影時の裏話など、本編では語られていないエピソードがあれば教えてください。

高橋:動画では、ゲオルグさんと杏さんによるイラストのセッションも行なったんです。最初はゲオルグさんが描いた絵に、杏さんが描き足すことを想定していましたが、杏さんが「それは畏れ多い」と恐縮されて。そこで、ゲオルグさんが「じゃあ、僕が杏さんの絵に描き足すよ」と提案してくださって、急遽杏さんが描いたご自身の愛犬の絵にゲオルグさんがリサとガスパールを描き足すという流れになりました。

そこのやりとりは動画には入っていませんが、とてもライブ感があって印象的でしたね。原作者のおふたりが気さくな方たちだということは、先ほどもお話ししましたが、杏さんも同様に気さくで、でも、動画の制作には熱心に取り組んでくださり、人気の理由がわかった気がしました。動画では、完成した絵もご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください。

「リサとガスパール タウン」10周年のテーマは“花”

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──2023年7月には、富士急ハイランドの「リサとガスパール タウン」が開業10周年を迎えます。こちらでは、どんな記念イベントを行なう予定ですか。

高橋:アニバーサリーイヤーなので、年間を通して“花”をテーマに10周年記念イベントを開催していきます。既に第1弾が始まっていて、“花×お祝い”というテーマで10周年原画お披露目イベントを6月25日(日)まで開催しています。その後も、“花×水”など、季節に合わせてテーマが変わっていきます。

齊藤:企画は富士急ハイランドの「リサとガスパール タウン」チームの皆さんが考案されたものですが、ご相談を受けて我々もイベント制作に参加して一緒に作り上げていきました。もともと「リサとガスパール タウン」には大きな花畑があり、季節の花々を植えていっせいにその色に染めるというイベントが好評だったんです。そこで、お祝いにもふさわしい“花”がテーマになりました。

タウン内のフォトスポットでは、花で作った“10”というモニュメントと一緒に写真を撮ることもできます。ここで撮影するとバックに富士山とエッフェル塔も写り込むので、大好評のようですね。花畑に“10”の文字が描かれた、ゲオルグさん描き下ろしのメインビジュアルも、とても素敵に仕上がっています。

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「リサとガスパール タウン」の10周年記念ビジュアル。

高橋:「リサとガスパール タウン」では、そのメインビジュアルを使ったグッズやケーキなども販売しています。また、隣接する「ハイランドリゾート ホテル&スパ」には、『リサとガスパール』の世界観を体感できる「リサルーム」「ガスパールルーム」もあり、絵本の世界に入り込んだかのような気分が味わえる、とってもかわいいお部屋なんです。

ちなみに、ホテルやカフェ、「リサとガスパール タウン」のあちこちに、開業の際にゲオルグさんが書いたイラストもあるので、遊びに行かれる際には、ぜひ探してみてください。

原作者の人柄がそのまま表われた作風

──今後、『リサとガスパール』はどのように日本での展開を広げていく予定ですか? さらにファンエンゲージメントを高めていくための施策などがあれば教えてください。

高橋:動くリサとガスパールをお見せしたいと考え、昨年秋から「レタスクラブ」(KADOKAWA)の公式Instagram(新しいタブで開く)で、ふたりが料理を手伝う動画を投稿しています。より多くの方にリサとガスパールを知っていただくためにメディアに取り上げていただき、ふたりのかわいさを伝えていきたいと考えています。

新しい絵本シリーズも始まったことですし、今後はキッズ、ベビー、ファミリーにもしっかり作品の魅力を届けていきたいですね。

齊藤:絵本のターゲットはお子さんや子育て世代ですが、そもそも『リサとガスパール』は油絵のイラストが魅力的で、大人にも響く魅力があります。そういった方々に向けた商品展開も引きつづき大事にしていきたいと思います。

──最後に、改めて『リサとガスパール』の魅力を語っていただけますか。

高橋:“かわいいキャラクター”ということだけではくくれない、アートのような魅力がありますよね。絵本のなかにはフランスの名所もたくさん出てきて、1ページ1ページが絵画のようです。こうした魅力も、お伝えしていくのが私たちの仕事だと思っています。

齊藤:まずひとつが、絵本を読むと想像をかき立てられる世界観ですね。これはストーリーを考えているアンさんが生み出す魅力で、次の展開が読めない、なぜこうなるのかな? 気になることが多いけど……かわいい! 言葉で説明するのが難しいんですが(笑)、それが計算されていない魅力なのかもしれないです。

もうひとつは、デザイン性の高いゲオルグさんの描く絵ですね。油絵でパリの街並みが描かれているのも魅力ですが、そこにキャラクターを当たり前のように馴染ませるのは、なかなか難しいことだと思います。

例えば、リサとガスパールが白と黒ではなかったり、もっと顔の表情が豊かだったりしたら存在感が出すぎて、油絵で描かれた情景ときっと馴染まないんじゃないかと思うんですね。そんな絶妙なバランスが保たれているからこそ、『リサとガスパール』は大人にも長く愛されるキャラクターになったのではないかと思います。

高橋:原作のおふたりの人柄や自由な発想が、作風にも表われていますよね。

齊藤:本当にそうだと思います。私は、アンさんとゲオルグさんがキャラクターを描いてビジネスとして成功させようという狙いを持っていたら、今の『リサとガスパール』は生まれていなかったのではないかと思うんです。おふたりの人生観、子育ての経験、パリに住んでいる環境があってこそ生まれたキャラクターだと思います。原作のおふたりの人柄がそのまま表われているからこそ、リサもガスパールもここまで魅力的なキャラクターになったのではないでしょうか。

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文・取材:野本由起
撮影:冨田望

関連サイト

『リサとガスパール』オフィシャルサイト
https://www.lisagas.jp/(新しいタブで開く)
 
『リサとガスパール』公式Instagram
https://www.instagram.com/gaspardetlisa_official/(新しいタブで開く)
 
『リサとガスパール』公式オンラインショップ
https://www.gaspardetlisa-shop.jp/(新しいタブで開く)
 
河出書房新社『リサとガスパール』新絵本シリーズ
https://web.kawade.co.jp/column/60590/(新しいタブで開く)
 
リサとガスパール タウン
https://www.fujiq.jp/area/lisagas/(新しいタブで開く)
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ
https://www.scp.co.jp/(新しいタブで開く)

©2018 Anne Gutman & Georg Hallensleben / Hachette Livre
©2018 Sony Creative Products Inc.

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