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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

2023年で40周年――『タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~』が愛されつづける理由【前編】

2023.07.10

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キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回注目するのは、今年で40周年を迎えた『タマ&フレンズ ~うちのタマ知りませんか?~』(以下、タマ&フレンズ)。小学生の学習ドリルや裁縫箱などでおなじみのタマたちは、ファンと、そしてソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)とともに時を刻んできたキャラクターだ。

昨年から『タマ&フレンズ』のマーケティングを担当するSCPの 佐々木智恵子に話を聞きながら、その誕生秘話や心温まるファンとのエピソードも交えた40年の歴史を明かしつつ、アニバーサリーイヤーを彩るイベントやコラボ企画に迫っていく。

前編では、『タマ&フレンズ』の過去と現在にフォーカスを当てながら、これまでの歩みを振り返る。

  • 佐々木智恵子プロフィール画像

    佐々木智恵子

    Sasaki Chieko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

『タマ&フレンズ』とは?

タマ&フレンズ40周年ビジュアル
1983年、中高生を中心に話題を集めた雑貨ブーム(ファンシーグッズブーム)のなかで、SCPがオリジナル雑貨としてデビューさせたキャラクター。「うちのタマ知りませんか?」というキャッチフレーズと、飼い猫を探すポスターの絵柄で人気を博し、1980年代の学年誌連載、1990年代の劇場版やTVアニメ放送を通してキャラクターも増え、現在の『タマ&フレンズ』となった。今年デビュー40周年を迎えている。

特定の作者がいないSCPの“有形文化財”

──佐々木さんは、現在『タマ&フレンズ』のマーケティング担当ですが、プライベートでは、いつごろタマと出会ったのでしょうか。

まさに『タマ&フレンズ』が誕生してブームになった第一世代で、小学生のころにはよくグッズを買っていました。まさか自分が仕事で関わることになるとは思っていなかったので、担当になったときは本当にうれしかったですね。

佐々木智恵子画像1

──『タマ&フレンズ』は1983年に誕生していますが、改めてタマたちの歴史について教えてください。

『タマ&フレンズ』は、“うちのタマ知りませんか?”というキャッチフレーズとともに、1983年にオリジナル雑貨のキャラクターとしてデビューしました。当時はまだ昭和の時代でしたから、街の電柱などに“猫を探してます。見付けたらここに連絡してください”と個人情報がバッチリ書かれたポスターなどが貼られていたんですね。

それを見たSCPのクリエイターが、「これ、面白いかも」と新たなキャラクターの企画としてミーティングの場で提案したんです。その場で飼い猫を探すポスターのビジュアルを描きはじめ、それを見た上司が「面白いんじゃない? やろうよ」と。そんな軽いノリで、タマが生まれたそうです(笑)。そして、“うちのタマ知りませんか?”というポスターをビジュアルにした雑貨を発売したところ、たちまち大ヒット。これまでになかったコンセプトの商品だったので、一躍人気キャラクターになりました。

──その当時、SCPではほかにどんなキャラクターを扱っていたのでしょうか。

『レッツチャット』や『バイキンくん』というキャラクターが、既に人気になっていました。ただ、当時は可愛らしいイラストが描かれた雑貨がさまざまなメーカーから発売されているという形で、今のようにキャラクターがデザインされたグッズがあるのが当たり前というマーケットはできていなかったんです。

また、これらのグッズはファンシーショップ(若者向けに比較的安価な雑貨や文房具などが販売されているお店)で売られていたので、ファンシーグッズと呼ばれていた時代でした。そんななか、キャラクターグッズの流行を牽引したもののひとつが、『タマ&フレンズ』だったんです。

レッツチャット、バイキンクン

『レッツチャット』(左)/『バイキンくん』(右)

──当時から、『タマ&フレンズ』のバックグラウンドストーリーは考えられていたのでしょうか。

最初に“いなくなったタマを捜してください”というポスターのビジュアルを作り、それがヒットしたものですから、商品が出るたびにストーリーが付け加えられていきました。「次はタマを捜していなくなったポチも捜してくださいという展開にしよう」、「タマの住む3丁目の仲間たちを増やそう」などと、そのつど当時の『タマ&フレンズ』チームが一生懸命考えていたそうです(笑)。

うちのタマ知りませんか?画像

なので、最初から「こういう世界観で、こういう登場人物がいて」と設定が決められていたわけではなく、シリーズをつづけていくためにストーリーを考えていった、後付けというのが実情だったようです。

──SCPでは『PEANUTS』や『ピーターラビット』、『きかんしゃトーマス』、『リサとガスパール』など、原作のあるキャラクターも多く扱っていますが、『タマ&フレンズ』はオリジナルです。だからこそ、人気が出たらどんどん新しいキャラクターを登場させることができたんですね。

そうなんです。それがオリジナルキャラクターの強みですね。しかも、『タマ&フレンズ』には原作者がいません。一般的に、キャラクターには“この人が生みの親”というクリエイターがいますが、『タマ&フレンズ』はSCPの歴代クリエイター、ディレクター、商品企画担当者がアイデアを出し合って、みんなで作り上げてきたIPなんです。特定の作者がいない……言わばSCPの“有形文化財”ですね(笑)。

──緻密なマーケティング戦略などではなく、皆さんでワイワイ言いながら作られてきたキャラクターなんですね。

それこそ当時は、短パンにサンダルで出社するようなノリの人たちが、「虎柄の猫がいても、色合い的に面白いんじゃないか」「やっぱり妹分が欲しいよね」と、自由闊達に作り上げていったそうです。

デザイナーのひとりがコマイという名前だったのでそこからコマと名付けたり、クリエイターの学生時代の恩師がTVアニメのキャラクターとして登場したり(笑)。遊び心を取り入れて作ったからこそ、生き生きとしたキャラクターたちに育ってくれたのかもしれません。

タマ&フレンズ キャラクター一覧画像

学習ドリル、裁縫箱で小学生の認知度向上

──オリジナル雑貨で人気を獲得した『タマ&フレンズ』は、その後どのように発展していったのでしょうか。

SCPは当時、『タマ&フレンズ』のグッズを自社で製造、販売していましたが、ほかのメーカーからもライセンス商品が発売されるようになっていき、雑貨以外にも、大手メーカーから携帯型ゲームやボードゲームなどが発売されました。

──1983年の誕生当時から、安定した人気を保っていたのでしょうか。

そうですね。1990年代前半までは、人気が安定していました。なかでも『タマ&フレンズ』が一躍有名になったきっかけは、1988年に新学社の学習ドリルに採用していただいたこと。それまで学習ドリルの表紙は、犬や猫などの写真が主流でしたが、このとき初めてキャラクターが採用されたんです。

新学社は学習教材のトップメーカーですから、多くの小学生がこのドリルを使うことで、タマやポチといった個別のキャラクターの認知度も一気に高まりました。このドリルが大ヒットして、今に至るまで表紙を飾りつづけています。

また、新学社では小学生用の裁縫箱も作っていらして。1987年に『タマ&フレンズ』のイラストをプリントした裁縫箱を発売し、多くの小学生に普及したため、そのころの記憶をずっとお持ちの方、今も当時の裁縫箱を使いつづけているという方もいらっしゃいます。残念ながら、現在その裁縫箱は販売されていませんが、タマをご覧になると懐かしさを感じるという方も多いのではないでしょうか。

──1990年代に入ってからは、どのような展開がありましたか?

そのころから、SCPでは徐々に原作のあるキャラクターをお預かりして、そのキャラクターのブランディングも含めた、さまざまなビジネス展開を行なうライセンスビジネスの比重が高くなっていったんです。

また、当時はキャラクターグッズが大ブームでしたから、お預かりしたキャラクターたちで大きく業績を伸ばすことができました。そんな市場環境もあって、少しずつ社内でもタマたちの居場所が狭まっていき、細々とやっていた時期もありました。

──先ほどのお話ではないですが、オリジナルキャラクターのほうが自由度が高く、さまざまなキャラクタービジネスにチャレンジできそうなイメージですが。

1990年代になるとキャラクターブームが一気に盛り上がり、他社のキャラクターが台頭してきたため、タマたちの影が少し薄くなったという事情もあるかもしれません。あとは、自社でグッズを開発して販売するということは、同時に在庫を抱えるリスクも発生します。なので、自社開発商品は減らしつつも、ライセンシーの皆様からライセンス商品は引きつづき販売されていたという状況ですね。

──しかし、それでも『タマ&フレンズ』は根強く支持されていくわけですよね。

そうですね。10周年を迎えた1993年には、劇場版アニメ『3丁目のタマ おねがい!モモちゃんを捜して!!』が公開され、1994年からはTVアニメ『3丁目のタマ うちのタマ知りませんか?』の放送がスタートしました。

このTVアニメは、平成6年度の文化庁優秀映画部門「こども向けテレビ用映画部門」最優秀TVシリーズを受賞するほど良質な作品でしたし、この作品をきっかけに『タマ&フレンズ』を知ったという方もたくさんいました。私は今でも見返しますが、お腹を抱えて笑ってしまうお話や、ときにはほろりとさせられる感動的な話など、ストーリーが多岐にわたっており、本当に素晴らしいアニメ作品なんです。現在は、Blu-rayとDVDが発売されているので、気になった方はぜひ見ていただきたいですね。

タマ&フレンズバースデーパッケージ画像

──その後、『タマ&フレンズ』はどのように展開されていくのでしょうか。

正直に申し上げれば、2000年代前半から2010年ごろまでは、目立った取り組みは少なかった状況です。ただ、アニバーサリーイヤーではさまざまな施策を行なうため、そのタイミングでは盛り上がりを見せていました。

その後、2017年に擬人化プロジェクトの『うちタマ?! ~うちのタマ知りませんか?~』(以下、うちタマ?!)を発表して、このときに改めて大きな反響を呼びました。2020年にはソニーミュージックグループのアニプレックスや他企業と共同で『うちタマ?!』のTVアニメシリーズも放送され、『タマ&フレンズ』の存在感を示せたのではないかと思います。

ただ、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、1回目の緊急事態宣言が発令されたタイミングでもあったので、予定していた声優さんのイベントはほぼすべてキャンセルに。人気の声優さんが多数出演された作品でもあったので、その点は残念なことになってしまいました。

──『うちタマ?!』でタマたちが擬人化されると聞いたときは、正直驚きました。そういうやり方があったかと。

タマたちを擬人化することについては、従来のファンの皆様から戸惑いの声も上がりましたが、『タマ&フレンズ』はお話しした通りSCPのオリジナルキャラクターで、自由に展開できるのが強みです。だからこそ、新しいチャレンジには積極的であるべき。『うちタマ?!』が、『タマ&フレンズ』が再注目される起爆剤になってくれたと考えています。

佐々木智恵子画像2

お隣さんの飼い猫のような親しみやすさ

──『タマ&フレンズ』の現在のファン層は、どういった年代の方でしょうか。

1980年代のブームを体感している世代、つまり40代後半から50代前半の方々がコアなファン層ですね。当時、小学生だった方が今は親御さんになって、お子さんが使っているドリルでタマに再会し、親子2世代で楽しんでいただいているご家庭も多いようです。学習ドリルの卒業生が多いこと、擬人化アニメの影響から、公式Twitterのフォロワーの平均年齢は20代となっています。

──ビジネスとしては、キャラクターグッズの販売がメインになるのでしょうか。

ファンの方の多くはキャラクターグッズを通して、『タマ&フレンズ』を楽しんでいただいています。またグッズ以外では、各社のキャンペーンでもタマたちが活躍しています。例えば筑波銀行ではマスコットキャラクターを20年以上務めさせていただいています。また、医療容器や薬袋などを製造している全国シェアNo.1の金鵄製作所も、30年以上『タマ&フレンズ』を採用してくださっています。社会的信用や安心安全を問われる企業のマスコットキャラクターとして、長く愛されているのが『タマ&フレンズ』の大きな特徴です。

筑波銀行通帳画像1

筑波銀行のキャラクターを務める『タマ&フレンズ』。

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おくすり袋のビジュアルに起用されている『タマ&フレンズ』。

──『タマ&フレンズ』には、さまざまなキャラクターが登場しますが、人気順はどのようになっているのでしょう。

やはり、タマや幼なじみのポチの人気が高いですが、詳しい順位は公表していません。どのキャラクターにもそれぞれコアなファンがいらっしゃるので、順位をつける必要はないと思っています。

──ちなみに、佐々木さんが個人的に一番好きなキャラクターは?

タマ&フレンズぬいぐるみ画像

左から2番目がトラ。

トラですね! トラは、江戸っ子気質の子で「てやんでぇ」が口癖。喧嘩っぱやくて自分に正直なんです。喜怒哀楽がハッキリしているところが、とってもかわいくて大好きですね。それと、アニメの表情がまたたまらないんですよ。この子、目がちっちゃいでしょう? 黒目がちなほかのキャラクターに比べると表情を演出すのが難しいのですが、それも含めてかわいくて。

──グッズでは、どんなものが人気ですか?

やっぱりぬいぐるみは不動の人気です。あとはお菓子や雑貨、キーホルダー。最近はお薬手帳カバーも人気ですし、夏になるとタオルなどもよく売れます。最近発売された駄菓子セットも、昭和レトロなイメージとぴったりでとても好評です。

──『タマ&フレンズ』がこれだけ愛されつづける理由は、どこにあると思いますか?

やっぱり身近なところでしょうか。自分のご近所にいる猫、お隣さんの飼い猫のような親しみやすさ、安心感がありますよね。

──「3丁目のタマ」「うちのタマ知りませんか?」という最初のコンセプトから、キャッチーでしたよね。率直な印象を言うと、『タマ&フレンズ』という呼称よりも「うちのタマ知りませんか?」というフレーズのほうが記憶に残っています。

それはよく言われます。『タマ&フレンズ』と聞いても、このビジュアルが思い浮かばない方もいらっしゃるので、そこはマーケティングの課題ですね。

──いっぽうで、ビジュアルやキャラクター性は多くの方々の記憶に刻まれ、長く愛されています。

そうですね。小学生のころに学習ドリルを使ったり、大学生時代にグッズを持っていたり、皆さんそれぞれの思い出のなかにタマがいると思います。しかも、ただ懐かしいだけでなく、周年を迎えるたびに新たなタマの思い出で、記憶が塗り替えられていきます。そういう継続性も大きいですよね。派手ではないかもしませんが、どこかでさりげなく目にして「あ、タマだ!」となる。それは、40年間『タマ&フレンズ』を担当してきた先人たちのおかげだと思います。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

関連サイト

タマ&フレンズ公式サイト
https://www.tamaandfriends.jp/(新しいタブで開く)
 
公式Twitter 三丁目のタマ町内会
https://twitter.com/tama_friends/(新しいタブで開く)
 
公式Instagram 3丁目のタマ町内会
https://www.instagram.com/tama_friends_official/(新しいタブで開く)
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ
https://www.scp.co.jp/(新しいタブで開く)

©Sony Creative Products Inc.

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