イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

2023年で40周年――『タマ&フレンズ~うちのタマ知りませんか?~』が愛されつづける理由【後編】

2023.07.11

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回注目するのは、今年で40周年を迎えた『タマ&フレンズ ~うちのタマ知りませんか?~』(以下、タマ&フレンズ)。小学生の学習ドリルや裁縫箱などでおなじみのタマたちは、ファンと、そしてソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)とともに時を刻んできたキャラクターだ。

昨年からマーケティングを担当するSCPの 佐々木智恵子に話を聞きつつ、その誕生秘話や心温まるファンとのエピソードも交えた40年の歴史を明かしつつ、アニバーサリーイヤーを彩るイベントやコラボ企画に迫っていく。

後編では、40周年記念施策の数々を紹介するとともに『タマ&フレンズ』の今後について聞いた。

  • 佐々木智恵子プロフィール画像

    佐々木智恵子

    Sasaki Chieko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

「Get Wild」のミュージックビデオにタマたちが登場!

──今年、『タマ&フレンズ』は40周年を迎えました。既に行なっている記念施策について教えてください。

4月にTM NETWORKとのコラボ動画を公開し、大きな反響をいただきました。TM NETWORKはグループ結成が1983年で、『タマ&フレンズ』と活動を開始した年が同じなんです。1980年代に一世を風靡したソニーミュージックグループの仲間……と言ったらおこがましいですが、どちらもコアなファン層が同世代なんですよね。

双方にとって、相乗効果が生まれるコラボ動画になれば良いなと思って取り組みました。結果的に、「TM NETWORKとタマがコラボしたコンサートグッズを作ってほしい」などの声がファンの方々から上がりましたし、当時を知らない若者世代の方たちからも「エモい」「かわいい」といったコメントを多数いただきました。

TM NETWORK+TAMA AND FRIENDS

こうしたコラボができるのも、『タマ&フレンズ』がSCPのオリジナルキャラクターだからです。お預かりしているキャラクターでは、このスピード感で、この企画を取りまとめることはできなかっただろうと思います。今後もいろいろなコラボを実現し、既存のファン層だけでなく多方面に訴求する施策ができたらと考えています。

──そもそもTM NETWORKの“TM”が、“多摩”に由来するというのはファンにはよく知られたエピソードですよね。“多摩”と“タマ”で、見事なコラボだと思いました。

『タマ&フレンズ』40周年ということで、上長から「タマはソニーミュージックグループの飼い猫のような存在。グループシナジーをいかしてコラボレーションを促進すべき」とお題を与えられていたんです。

そんななか、「今、シティポップや1980年代の楽曲を集めたコンピレーションアルバムがヒットしているから、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)と相談してみては?」という話になり、ブレストを行なうことになりました。そのなかで、TM NETWORKの担当者から「TM NETWORKも、間もなく結成40周年を迎える」という話になったんです。“TM”=“多摩”でタマともかかっていますから、何かの形でコラボしましょうと話が発展していきました。

そうして今回実現したのが、TM NETWORKでも特に人気のミュージックビデオ(以下、MV)「Get Wild」とのコラボです。以前にもダンディ坂野さん、スギちゃん、小島よしおさんが「Get Wild」のMVに登場するコラボ動画がありましたが、今度は『タマ&フレンズ』のキャラクターを登場させることに。

ちょうど4月8日が楽曲の記念日としては初となる「Get Wildの日」に認定されたので、その日にSMLと同タイミングでリリースを出し、コラボ動画を公開したところ、さまざまなメディアに取り上げられました。どちらのファンにも喜んでいただくことがきましたし、宣伝効果も絶大。企画は大成功となりました。今後も、40周年を記念したユニークなコラボを企画していますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

──そのほかに、現在取り組んでいる施策はありますか?

7月16日(日)まで、タマを車両にデザインしたラッピングタクシー「タマ TAXI」が20台ほど都内を走行中です。ソニーグループのS.RIDE株式会社と組み、3週間限定で配車アプリ「S.RIDE(エスライド)」を使ってラッピングタクシーを呼べる施策も実施したのですが、こちらも大きな反響を得ています。

アプリのトップ画面でタマのアイコンをタップするとラッピングタクシーを呼び出せる仕組みだったのですが、そのタップ率が「S.RIDE」のこれまでのコラボ企画のなかでもかなり上位に入ったそうです。社用でタクシーを利用される男性にも『タマ&フレンズ』が浸透しているので、皆さんが興味を持ってタップしてくださったのだと思います。タマの認知度がさまざまな層で高いことが、改めて証明されました。

40周年を記念した催事やムック本も

──今後予定している40周年記念企画があれば、教えてください。

6月22日から、40周年記念催事「うちのタマ知りませんか?Happy 40th Anniversary展」がスタートしました。『タマ&フレンズ』にとっては初めての有料イベントで、今まで一般公開していなかった貴重な資料も展示しています。

具体的には、絵本の原画、アニメのセル画、かつてショップにお渡ししていた商品受注カタログ。さらに、1980年代、1990年代の貴重なグッズも展示するため、「これ、持ってた!」と皆さん喜ばれると思います。さらに、フォトスポットも用意していますし、とにかく盛りだくさんの内容です。もちろん物販コーナーでは、限定商品を含む最新グッズの販売を行ないます。

イベントは大阪・あべのハルカス近鉄百貨店(ウイング館9階催会場)からスタート(7月4日に終了)していて、7月12日(水)から7月25日(火)までは東武百貨店 池袋本店(8階催事場)で開催します。

──大阪会場は、初日から盛況だったようですね。ほかには、何かありますか?

7月26日(水)には、宝島社からムック本が発売されます。こちらには付録としてノベルティが同梱されるのですが、これがなんと裁縫箱! かつて小学校でタマの裁縫箱を使っていたファンの方からすれば、たまりませんよね。サイズは当時のものより小さめで、完全な復刻版ではないんですが、縫い針やメジャーなどもしっかり入っています!

タマ&フレンズムック本

7月26日(水)に、宝島社から発売されるムック本。

本に関しても、これさえ読めば『タマ&フレンズ』のすべてがわかるという充実した内容です。キャラクターの歴史や相関図、ここでしか読めないトリビア、SCPの社員がかつて描いたタマのイラスト、昭和的ガーリー文化研究所のゆかしなもんさんのコメントも掲載された、まさに『タマ&フレンズ』のバイブルになっています。あとは私たちからのご提案で、とあるファンの方にも本の制作にご協力いただきました。

──ファンの方のご協力とは、どういった内容でしょうか?

『タマ&フレンズ』を長年、応援してくださる八木さんという方がいらっしゃって。八木さんは、30年以上にわたりSCPの『タマ&フレンズ』担当者宛に、直筆のイラスト入りのお便りを送ってくださっているんです。イラストとコメントは、タマたちへの愛情にあふれていて、もうこのお便りを見ているだけで私はうれしくて涙が出てきます。

1年に1度のペースで、送ってくださるようになってからは、ほぼ毎年なので、いただいたイラストは既に30枚以上あるのですが、ケースに収納されて『タマ&フレンズ』代々の担当者に受け継がれていく、私たちの大事な宝物なんです。

そしてこのたび、八木さんに直接ご連絡をして、ムックに登場していただくことになったんです。お電話を差し上げたら、ご家族が出られたのですが「ああ、タマの!」とすぐにご理解いただいて。ご本人も最初は驚かれていましたが、「うれしいです」と言ってくださり、インタビューにお答えいただくことになりました。ムックでは、八木さんが送ってくださったイラストも掲載しています。私が『タマ&フレンズ』の担当になって、一番感動したできごとでした。

制約を設けず、何にでも挑戦したい

──先ほど「『タマ&フレンズ』はSCPのオリジナルIPなので、自分たちが決めたことに対してどんどんチャレンジができる」というお話がありました。とはいえ、キャラクター性や世界観を損なわないよう、気を配ることもあるのではないかと思います。『タマ&フレンズ』らしさを守るため、大切にしている考え方はありますか?

世界観を壊さないようにするというより、タマたちがいろいろな世界で活躍できるよう、バックアップしていきたいと考えています。もちろんキャラクターのかわいらしさを損なうようなことはしませんが、「これはダメ」「あれもダメ」と規制をかけることは基本的にするつもりがなくて。

今年2月からはボートレースのキャンペーンキャラクターになりましたし、タマのラベルが貼られたお酒も発売されます。子ども向けのキャラクターだとなかなかチャレンジができないことも、タマたちならできるはず。そう思って、日々取り組んでいます。ただし、ファンの方たちを失望させるようなことはしないというのは大前提としてあります。

佐々木智恵子画像2

また、時代の流れとともにトレンドも移り変わります。同じキャラクターでも、パステルカラーが流行れば淡い色に、くすんだ色が流行れば落ち着いたトーンのビジュアルを作るのは、よくあることです。ずっと変わらない姿を保ちつづけるのも良いですが、時代の変化にともない、新しい姿を見せるのもファンの皆様の期待に応えることにつながると思います。

『タマ&フレンズ』も、今年タマたちが2本足で立っている新しいビジュアルを発表しました。また、洋服を着たビジュアルも公開しています。大変好評ですし、こういった新しいクリエイティブも積極的に作っていこうと心掛けています。

なので『タマ&フレンズ』に関しては、「嫌われたらどうしよう」の精神ではなく、「もし受け入れられなかったら、また違う形でご提案しよう」という気持ちで常に挑戦を意識して、タマたちのいろいろな魅力をお見せしていきたいと考えています。

──SCPでは、今後『タマ&フレンズ』というIPをどんな存在にしていきたいと考えていますか? これからのビジョンを教えてください。

キャラクタービジネスにおいては、アニバーサリーイヤーを迎えるときに打ち上げ花火のようにさまざまな企画を行ない、その後は次の周年まで大人しくなるというケースもときにはあります。でも、そうではなく、『タマ&フレンズ』は右肩上がりの成長を改めて目指していきたいと考えています。6月からスタートした「うちのタマ知りませんか?Happy 40th Anniversary展」も、今後巡回を予定していますし、来年もどんどんつづけていきたいです。

また、これは私の夢ですが、新作のアニメも作りたいですね。数年前に1分のショートアニメを作りましたが、原点に返ってTVシリーズのアニメが作れたら最高です。

──お話を伺っていると、佐々木さんご自身も『タマ&フレンズ』の大ファンのようです。『タマ&フレンズ』のどんなところがお好きで、どういったところを見てほしいですか。

やっぱりアニメをご覧いただきたいですね。「うちのタマ知りませんか?Happy 40th Anniversary展」でも、テレビシリーズを編集したダイジェストアニメを流しますし、物販コーナーでも過去のアニメのDVD、Blu-rayを販売しています。ぜひお買い求めいただき、『タマ&フレンズ』の世界観を味わっていただきたいです。

「うちのタマ知りませんか?Happy 40th Anniversary展」大阪会場画像2

「昔の町はこういう牧歌的な雰囲気だったな」と懐かしさを感じますし、お子さん世代にもこの空気を感じてほしい。世代を超えて、『タマ&フレンズ』の世界観を伝えていければと。そして私たちは、これまで受け継いできたバトンを、次の世代につなげていくという責任感を持って『タマ&フレンズ』をこれからも大事に育てていきたいと思います。

──歴代の担当者から、『タマ&フレンズ』を扱う上でのルールとか教えみたいなものはあったのでしょうか?

特にありませんでしたね。なぜなら、これまで『タマ&フレンズ』は、そのときどきの担当者たちの自由な発想と、さまざまなアイデアで成長させながらバトンをつないできたからなのだと思います。

ただ、私がマーケティング担当になったとき、歴代の担当者のなかでもっとも長く『タマ&フレンズ』を担当していた大先輩にご挨拶をしたら、「SCPの歴史を背負うことになりましたね」と言われました。やっぱり『タマ&フレンズ』は、SCPという会社を象徴するキャラクターなんだと気持ちが引き締まりました。

──佐々木さんは、5年後、10年後、20年後の『タマ&フレンズ』担当者にどのような形でバトンを渡したいですか?

今年よりも来年、来年よりもその先に向けて、さらにマーケットを拡大し、認知度を上げていくことが命題です。それが、『タマ&フレンズ』の担当者として責任を果たすということだと思います。今年は催事やコラボ動画などに取り組みましたが、今後も今までにない企画にチャレンジし、あらゆる層に向けた普及活動をしていきたいですね。

“常にチャレンジする姿勢を忘れない”――そのことは『タマ&フレンズ』の現担当者として、しっかり次の世代に引き継いでいきたいと思っています。

タマ&フレンズのグッズ画像

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

関連サイト

タマ&フレンズ公式サイト
https://www.tamaandfriends.jp/(新しいタブで開く)
 
公式Twitter 三丁目のタマ町内会
https://twitter.com/tama_friends/(新しいタブで開く)
 
公式Instagram 3丁目のタマ町内会
https://www.instagram.com/tama_friends_official/(新しいタブで開く)
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ
https://www.scp.co.jp/(新しいタブで開く)

©Sony Creative Products Inc.

連載キャラクタービジネスの心得

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!