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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

木で育む自然を大切にする心――「おもちゃ美術館」と「ピーターラビット™」が届けるメッセージ【前編】

2023.09.08

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キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回取り上げるのは、全国12カ所に拠点を置く「おもちゃ美術館」と「ピーターラビット™」とのコラボレーションイベント『自然となかよし ピーターラビット™』。

木の文化を継承し、自然を大切にする心を次世代へとつなげる「おもちゃ美術館」と、“Friend to Nature ~ピーターラビットの暮らす自然が、いつまでも守られますように~”というメッセージで、自然を愛する想いを伝えるピーターラビットの理念が共鳴し、今回のコラボレーションが実現した。

本イベントについて、「東京おもちゃ美術館」館長の多田千尋氏と、国内で「ピーターラビット」のライセンスビジネスを展開するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)のスタッフに話を聞いた。

前編では、コラボレーション企画が立ち上がるまでの経緯、イベント内容について語ってもらう。

  • 多田千尋プロフィール画像

    多田千尋氏

    Tada Chihiro

    東京おもちゃ美術館館長

  • 原田健至プロフィール画像

    原田健至

    Harada Kenji

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 三浦由貴プロフィール画像

    三浦由貴

    Miura Yuki

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

コラボレーションイベント『自然となかよし ピーターラビット』

コラボレーションイベント『自然となかよし ピーターラビット』イメージ画像

「東京おもちゃ美術館」をはじめとする全国12館の「おもちゃ美術館」にて、「ピーターラビット」との触れあいワークショップを通して、自然を大切にする思いを伝えるイベント『自然となかよし ピーターラビット』を順次開催中。絵本『ピーターラビットのおはなし』シリーズの紙芝居、端材を使った「木のペンダントづくり」、「ピーターラビットのふれあいグリーティング」などが各館で行なわれる。

おもちゃ美術館の“木育”×自然を愛するピーターラビット

──今回、全国の「おもちゃ美術館」と「ピーターラビット」とのコラボレーションにより、『自然となかよし ピーターラビット』というイベントが実現しました。まず、「おもちゃ美術館」はどういった活動をされている施設なのか教えてください。

多田:「おもちゃ美術館」は、美術教育の専門家だった私の父、多田信作が1984年に立ち上げた施設です。父は小学校教師や保育士の美術教育を指導、育成する立場でしたが、「人間が初めて出会う芸術は、おもちゃである」という考えにもとづき、幼少期からアートやおもちゃに触れてもらいたいと、東京都中野区に「おもちゃ美術館」を設立しました。その後、2008年に閉校した新宿区立四谷第四小学校の校舎だった建物に移転し、「東京おもちゃ美術館」として再スタート。地域の方々が戦前から大切にしてきたこの場所で、子どもたちの豊かな心を育む取り組みを行なっています。

そして東京から始まった「おもちゃ美術館」が全国各地に広がり、現在では北は岩手から南は沖縄まで全12館がオープンしています。2010年からは、林野庁が推進する木育(もくいく)事業に携わり、木のおもちゃに触れる体験や木工ワークショップなども行なっています。

赤ちゃんにとって、お母さんのぬくもりに一番近いのが木だと言われています。木とふれあうことで、日々の暮らしに木を取り入れることの大切さ、ひいては日本の森林環境、木材活用などの課題についても考えていただきたいと思い、日々取り組んでいます。

多田千尋画像1

──原田さんと三浦さんは、今回のコラボレーションイベントにおいてどのようなことを担当しているのでしょうか。

原田:私は「ピーターラビット」のキャラクタービジネスで、マーケティングやブランディングの担当をしています。今回はプロデューサーという立場でイベントに関わりました。

三浦:私は「ピーターラビット」のクリエイティブを担当しています。今回は制作物の作成、イベント開催前のイメージ撮影のディレクション、スタイリングなどを行ないました。

──『自然となかよし ピーターラビット』の取り組みは、どのようにして始まったのでしょうか。

原田:「ピーターラビット」の絵本はイギリスの作家、ビアトリクス・ポター™さんが約120年前に描き始めたシリーズです。ビアトリクス・ポターさんは自然保護活動に熱心で、自身の絵本で得た収益などでイギリスの湖水地方に広大な土地を購入して自然を守るトラスト活動(※)に力を注いでいました。自らピーターラビットの人形を作って特許を申請し、その収益も活動に投じていたそうです。そのため、ピーターラビットは「世界最古のライセンスキャラクター」とも言われています。そうした活動のかいもあって、今も湖水地方には美しい自然が残っています。

このような作者の理念、絵本のなかに息づくメッセージをより広く知っていただきたいという思いから、SCPでは昨年、“Friend to Nature ~ピーターラビットの暮らす自然が、いつまでも守られますように~”というメッセージを掲げ、サステナビリティ活動を行なってきました。そんななか、「おもちゃ美術館」の活動を知り、「ピーターラビット」の理念と合致していると考え、お声掛けさせていただいたという経緯です。

※トラスト活動
トラスト活動とは、自然環境や歴史的建造物の保護・保全を行ない、次世代へ残すことを目的とする活動。1895年にイギリスで設立された非営利団体「英国ナショナル・トラスト」が始めた取り組みで、ビアトリクス・ポターもその理念に賛同し、活動に参加していた。

原田健至画像1

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ピーターラビットというIPとの親和性

──原田さんと三浦さんは、「おもちゃ美術館」の皆さんの活動に対してどんなイメージを持ちましたか?

原田:“木育”をテーマに活動され、赤ちゃんに木のぬくもりを伝えていること、自然の大切さを発信していること、世代を超えて楽しめる施設を運営されていることに共感しました。「ピーターラビット」の絵本も3世代にわたって読み継がれているので、そういう意味でも相性はぴったりですよね。

三浦:実は、私が「東京おもちゃ美術館」を知ったきっかけは、友人がInstagramに投稿していた写真でした。友人の子どもが遊んでいる写真を見て、「あ、こんな素敵な場所があるんだ」と思い、私も子どもと一緒に遊びに行ったんです。“木育”という言葉を初めて知ったのも、そのときでした。ちなみに、施設内の「赤ちゃん木育ひろば」は0~2歳児しか入れず、私の子どもはオーバーしてしまっていたので、もっと早く木育に出会いたかったです(笑)。

多田:当館にいらしてくださっていたんですね。ありがとうございます。

三浦:すごく楽しませていただきました。こちらに遊びに来る親御さんは、お子さんを木に触れさせたいという思いがあったり、ナチュラル志向で自然環境にも興味をお持ちだったりするケースが多いのかなと思って。「ピーターラビット」というIPとも親和性が高いと感じましたし、今回の取り組みはそういった方々にも直接アプローチできる絶好の機会だと思いました。

三浦由貴画像1

──多田館長は、SCPという会社や、扱っているキャラクターについて、何かイメージをお持ちでしたか?

多田:最初の出会いは『ピーナッツ』でした。スヌーピーが美しい森林づくりを応援する「フォレスト・サポーターズ」のメンバーになったとき、「東京おもちゃ美術館」と一緒にスヌーピーの木のおもちゃを作ったんです。新進気鋭のおもちゃ作家、小松和人さんにデザインをお願いして、大変好評でした。その取り組みが2011年だったので、実はSCPの皆さんとは10年以上前から接点があったことになります。

──「ピーターラビット」というIPや、その世界観に関してはいかがでしょう?

多田:実を言えば、子どものころに「ピーターラビット」の絵本を読んでいた記憶はほとんどありません。ただ、私が20~30代のころに所属していたさまざまな研究会には、自然保護や環境教育について研究しているメンバーが多かったので、彼らから原作者のビアトリクス・ポターさんやトラスト活動についてよく話を聞いていました。ですから私は、「ピーターラビット」と聞くと、キャラクターよりもビアトリクス・ポターさんのトラスト活動がまず思い浮かびます。

ビアトリクス・ポターさんは、莫大な収益を自然保護活動に投じ、湖水地方の土地を購入することで乱開発を防ぎました。とても具体的で、斬新な手法ですよね。その後、日本でもトラスト活動が広がりましたが、こうした方法でも自然を守れるということを広く伝えたのは彼女の功績だと思いますし、偉大な方だなと思います。

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3つの遊びが、自然について考えるきっかけに

──ここからは、全国の「おもちゃ美術館」を巡回している『自然となかよし ピーターラビット』について詳しく伺います。絵本『ピーターラビットのおはなし』シリーズの紙芝居、「木のペンダントづくり」ワークショップ、ピーターラビットのふれあいグリーティングという3つのイベントが行なわれているそうですが、それぞれどのような内容でしょうか。まずは、紙芝居について教えてください。

三浦:絵本『ピーターラビットのおはなし』シリーズの紙芝居を、お子さんに読み聞かせています。私も実際に拝見しましたが、スタッフの皆さんの読み聞かせがとても上手で、お子さんの心を捉えるように語り掛けているのが印象的でした。一方的ではなく、心が通じ合うような話し方が素敵でしたね。

多田:紙芝居の読み手は、おもちゃ学芸員と呼ばれる「おもちゃ美術館」のボランティアスタッフです。ボランティアとは言え、「おもちゃ学芸員養成講座」を受講しなければ務めることができません。おもちゃ学芸員の登録者数は、「東京おもちゃ美術館」だけで400人弱、全国では2,000人近くもいます。こうしてご自身の“時間を寄付”してくださるおもちゃ学芸員により、「おもちゃ美術館」は支えられているんです。

原田:それは素晴らしい取り組みですね。

ピーターラビット紙芝居読み聞かせの様子

多田:この取り組みを、私たちは「市民性創造活動」と呼んでいます。地域住民が当事者意識を持って、その地域のミュージアムを支えていくという仕組みを全国に作りたかったんですよね。

三浦:ちなみに今回、おもちゃ学芸員の皆さんはお子さんたちと一緒に、紙でできた「ピーターラビット」の耳をつけてイベントを盛り上げてくださっていますが、あの耳も今回の施策のひとつです。耳をつけたちびっこピーターたちが館内を駆け回っていて、その楽しそうな姿を見て、イベントの盛況ぶりを実感しました。

ピーターラビットとおもちゃ学芸員のみなさま

──つづいて「木のペンダントづくり」ワークショップについて教えてください。

三浦:木の端材にやすり掛けをしたあと、「ピーターラビット」のスタンプを押して、ペンダントにします。紙やすりで木を磨く作業のなかで、実際に木に触れたり、木の香りを感じたりと、五感で木を体験できる人気のワークショップです。

多田:自分の手で仕上げたということを実感してもらうためのワークショップです。自分で一生懸命に紙やすりを掛けて、最後にスタンプを押して、自らの手で完成させる。この満足感は、生涯心に残ってくれるのではないかと思います。

ワークショップ「木のペンダントづくり」イメージ画像

──ピーターラビットのふれあいグリーティングも大盛況のようですね。

原田:「ピーターラビット」とふれあい、一緒に写真が撮れるイベントです。「東京おもちゃ美術館」では整理券を求めて1時間前から並ぶ方がいらしたり、お気に入りのぬいぐるみを持って遊びに来るお子さんがいらしたりと大人気でした。

三浦:「ピーターラビット」に会えるという喜びや興奮が、お子さんたちからあふれ出ていましたよね。「東京おもちゃ美術館」では「ごっこファーム」という木でできたおもちゃの野菜の収穫遊びができるスペースで触れあっていただきましたが、お子さんたちが何も言われなくても、自然とその場にある野菜のおもちゃをピーターラビットの口に持っていっていたのが印象的でした。

こどもたちがピーターラビットに木のにんじんをあげている様子

多田:やっぱり食べさせたくなるのでしょうね(笑)。このスペースでは木工職人が作った木の大根やニンジンなどを収穫するごっこ遊びができるのですが、これまでは収穫してザルに入れるまでがゴールだったんですね。それが、今回は食べさせるところまで発展したのが面白い現象でした。お子さんは、例外なくピーターに食べさせていましたから。

三浦:「ピーターラビット」の象徴的なアートに、ラディッシュ(二十日大根)を食べているものがありますが、ファームにはちょうど大根のおもちゃがあるので、それを食べさせるとアートをリアルに再現できるんです(笑)。ファンの方にも喜んでいただけると思います。

──この3つのワークショップが、全国すべての「おもちゃ美術館」で展開されるのですね。「東京おもちゃ美術館」での模様をご覧になって、原田さん、三浦さんはどう感じましたか?

原田:とても多くのお子さんに参加していただき、大変うれしかったです。改めて「ピーターラビット」は子どもたちにも愛されていると実感しました。

三浦:このイベントを通して、お子さんの笑顔が増えていることを肌で感じました。今、世の中では、サステナブルな取り組みの重要性がさかんに言われていますが、実際には何をどうすれば良いのかわからない方も多くいらっしゃると思います。

しかし、例えば「ピーターラビットに出てくる動物たちが好きだから、自然を大切にしよう」と思っていただければ、自然環境について考えるきっかけになるかもしれません。小さなタネではありますが、そう思ってくださる方がひとりでもいれば、今回の取り組みはより意義が高まるのではないかと感じました。

「ピーターラビット」が全国をめぐれば、各地で化学反応が起きる

──『自然となかよし ピーターラビット』は全国を巡回しています。各地の「おもちゃ美術館」での楽しみ方を教えてください。

多田:全国には、「ピーターラビット」の世界観にフィットする「おもちゃ美術館」がたくさんあります。例えば、岩手の「花巻おもちゃ美術館」なら、宮沢賢治のふるさとと「ピーターラビット」が出会うとどんな化学反応が起きるのか気になりますよね。沖縄の「やんばる森のおもちゃ美術館」は、世界自然遺産の森に囲まれているので、こちらも「ピーターラビット」との相性が良さそうです。山口の「長門おもちゃ美術館」は、詩人の金子みすゞの故郷。しかも海に面しているので桟橋があって、入館者はキッズクルーズ船に乗ってクルーズも楽しめるんですよ。

花巻おもちゃ美術館画像

花巻おもちゃ美術館

長門おもちゃ美術館画像

長門おもちゃ美術館

新しくオープンした施設では、高知の「佐川おもちゃ美術館」にご注目いただきたいですね。NHKの連続テレビ小説『らんまん』で話題の植物学者、牧野富太郎は佐川出身。この地に「おもちゃ美術館」を作るからには植物学のエッセンスを入れようということで、牧野富太郎がこよなく愛した花、バイカオウレンをモチーフにした木の遊びを取り入れました。木製の花でバイカオウレンの群生を再現して、花摘み遊びができるようにし、さらに花をひっくり返すとコマ遊びができるようにしたところ、子どもたちが夢中になって遊んでくれているようです。

佐川おもちゃ美術館画像

佐川おもちゃ美術館

──お話を聞いているだけでワクワクしてきます。

多田:今回のイベントを通して改めて感じましたが、「ピーターラビット」は幅広い世代に知られているというのが強みですよね。お子さんはもちろん、パパもママもおじいちゃんおばあちゃんも知っている。つまり、ピーターラビットを柱とした多世代交流が生まれるんです。これは、「おもちゃ美術館」にとっても大変ありがたいこと。「ピーターラビット」が全国の「おもちゃ美術館」をめぐることで、各地でいろいろなドラマが生まれそうで、私自身もワクワクしています。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

自然となかよし ピーターラビット™

・檜原森のおもちゃ美術館(東京都):2023年9月20日(水)~26日(火)
・やんばる森のおもちゃ美術館(沖縄県):2023年10月28日(土)~11月3日(金)
・木曽おもちゃ美術館(長野県):2023年11月11日(土)~19日(日)
・讃岐おもちゃ美術館(香川県):2023年11月23日(木)~29日(水)
・徳島木のおもちゃ美術館(徳島県):2023年12月4日(月)~10日(日)
・焼津おもちゃ美術館(静岡県):2023年12月21日(木)~25日(月)
・那賀町山のおもちゃ美術館(徳島県):2024年1月30日(火)~2月4日(日)
・佐川おもちゃ美術館(高知県):2024年2月10日(土)~16日(金)
・長門おもちゃ美術館(山口県):2024年2月23日(金)~27日(火)
・花巻おもちゃ美術館(岩手県):2024年3月14日(木)~19日(火)

スケジュールは、予告なく変更になる場合があり、各美術館の休館日やイベント詳細など、最新情報は各館のWebサイトにて確認できる。福岡、東京での開催は終了。

全国のおもちゃ美術館に関する情報サイトはこちら(新しいタブを開く)

関連サイト

ピーターラビット™日本公式サイト
http://www.peterrabbit-japan.com/(新しいタブを開く)
 
ピーターラビット™日本公式サイト“Friend to Nature”特設サイト
http://www.peterrabbit-japan.com/nature(新しいタブを開く)
 
ピーターラビット™日本公式Instagram「ピーターラビット™のいる暮らし」
https://www.instagram.com/peterrabbit.jp/(新しいタブを開く)

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