石野理子:アイドルネッサンス、赤い公園を経てソロアーティストとして始動
2023.12.07
ソニー・ミュージックレーベルズ
今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る連載「Eyes on」。
今回は、アニメ『天宮賜福 貮』日本語吹替版エンディングテーマ「春想」、そしてTVアニメ『俺だけレベルアップな件』エンディングテーマ「request」が話題のシンガー・krageへのインタビュー。地元・北海道で音楽に目覚め、メジャーデビューを経て降り立った現在地、そして日本人と中国人のダブルというアイデンティティがシンガーとしての活動に与える影響についても語る。
krage
クラゲ
北海道出身。日本人の父と中国人の母の間に生まれる。2020年にオリジナル楽曲をデジタルリリースし、ソロでの音楽活動を開始。2022年4月、「HIBANA」でメジャーデビュー。2022年10月より放送されたTVアニメ『後宮の烏』のエンディングテーマ「夏の雪」で注目される。アニメ『天宮賜福 貮』日本語吹替版のエンディングテーマ「春想」と、TVアニメ『俺だけレベルアップな件』エンディングテーマ「request」(ともに配信中)のCDが2月28日リリース。3月17日からは初のライブツアーがスタート。
――今年の4月でメジャーデビューから丸2年を迎えます。これまでを振り返って、印象に残っている出来事はなんですか?
ふたつあるんですけれど、まずは、2023年1月に台湾で行なわれた、『台北国際コミック・アニメフェスティバル』に呼んでいただいたことです。海外でのライブは初めてだったのもあって、だいぶ緊張していたんですが、台湾の方々が温かく迎えてくださって。ライブだけではなく、サイン会もやったんですが、皆さん日本語で話しかけてくれるんです。
――krageさんは日本語と中国語、英語でも会話ができるんですか?
中国語と英語の日常会話は、少しぐらいは聞き取ることができますが、流暢に会話ができるほどではないので、日々勉強をしています。イベントでは、中国語で話しかけてくださる方もいたんですが、8割ぐらいの方が日本語で話してくれて、アジア圏のアニメへの熱量の高さと影響力のすごさにびっくりしました。
もうひとつは、今年1月から放送しているアニメ『天官賜福 貮』日本語吹替版のエンディングテーマ「春想」が多くの人に届いたと思えたことです。この曲は私が作詞をしたんですけれど、タイアップの曲で完全に自分だけで作詞するのは初めての試みだったんです。
作品に寄り添いつつ、それでいて作品を見ていない方にも伝わるような歌詞の塩梅に結構、悩んで。時間がすごくかかったんですけれど、作品のファンの方にも、作品を知らない方にも届いているなっていう実感があって、良かったなと思ってます。
krage - 春想 (Music Video) 【TVアニメ「天官賜福 貮」日本語吹替版 EDテーマ】
――YouTubeのコメント欄を見ると、原作のファンも曲を絶賛してますよね。「わかってくれてる」っていう意見が多かったです。
そうなんですよ。「何か違う」って言われたらどうしようと不安だったのですが、皆さんの声が温かくて安心しました。原作ファンの解釈も大事にしたいと思って、悩んで、時間をかけて取り組んだので、良かったです。
――ご自身にとってはどんな1曲になっていますか?
テーマが大きい、重い曲なんですよね。人をまっすぐに想う、壮大な愛の歌だと思ってるんですが、私はこれまで、あんまりラブソングを聴いてこなかったし、自分で書いたこともなかったんです。だから、最初は全然言葉が出てこなくて。
人のことを情熱的に想うような感情を、どうやって言葉にすれば良いのかがあまりわからず、出だしから悩んでしまったんですね。迷ったときは原作を見て考えるという作業を繰り返しました。
だから私自身、この歌詞を書いたことで、初めてこういう感情を知ったというか……。ちょっと言葉にするのが難しいんですけれど、人を想う気持ちを書いたことによって、私もその想いを学べた。すごくありがたい機会だったなと思います。
――中国の後宮を舞台にした2022年10月期のアニメ『後宮の烏』のエンディングテーマ「夏の雪」につづき、中国アニメとのコラボレーションが好評なことについては、ご自身ではどう感じてますか?
自分との親和性はあるなと思ってます。作品のファンの方に「日本と中国にルーツがあるんだ。作品にぴったりだね」って言ってもらえることがうれしいのもあるんですけれど、私自身が、自分のアイデンティティをいかせるっていうのが大きいです。
個人的には、“中華系の作品はkrageが楽曲で携わったら間違いない”っていう存在になりたいです。最近、中華系の作品が増えてきてるし、そういう作品が好きな方のなかで、最強の曲を持ってくる人みたいになれたら良いなと思ってます。
――「夏の雪」「春想」の2曲はバラードになっていますが、krageさんの音楽的ルーツというと?
ルーツは完全に洋楽ですね。最初に音楽をやりたいと思ったきっかけは、中学2年生のときに観たレディー・ガガさんの弾き語りのライブでした。でも、アニソンやボカロ系の曲も聴いてきたし、K-POPの曲やコンテンツも好きなので、自分のなかではジャンルの縛りはないですね。キラキラしたポップスはあんまり得意ではないですが(笑)、まずは何でもやってみたいなという気持ちでいます。
――krageさんが思う自身のアーティストイメージは?
ポジティブかネガティブかでいったら、ネガティブなほうの人間ではあるので、世界観がちょっとダーク寄りというか。“儚さと闇と毒っぽさ”が私のテーマですね。そういった要素があれば、楽曲のジャンルは問わずやりたいなと思ってます。歌詞の内容でいうと、「大丈夫だ。何とかなるぜ!」って無理やり元気づけるよりは、気持ちが落ち込んでいるときでも、その気持ちを肯定するような存在でありたいです。
――maeshima soshiのトラックにkrageさんがメロディと歌詞を制作した「東京Longing」は、まさに“儚さと闇と毒っぽさ”が同居する曲になってますね。新生活の不安や葛藤が、儚いけれどグッとくる言葉で描かれてます。
krage - 東京Longing(Official Visualizar)
2022年の8月に上京してきて、その翌年の4月にリリースした曲です。上京前は東京に勝手な憧れがあったんですよね。それが、思っていたのとちょっと違う部分があるなって感じて、ホームシックになったことがきっかけです。
――何が想像と違ってましたか?
そうですね、人がせかせかしていたり、流れが速すぎて圧倒されたり、ちょっと冷たい感じの人がいたりとか。街を歩いてると、酔っぱらってるサラリーマンとか、「うわ、現実だな……」って思うような場面を多々目にして。クリエイティブな面ではすごいけど、やっぱりこの街にはいろんな面があるんだなって、感じたことをそのまま素直に書いた歌になってますね。
――地元で活動しているミュージシャンもいますが、krageさんは上京を迷うことはなかったですか?
そうですね。お母さんがもともと東京でジュエリーデザイナーをやっていたこともあって、東京に行くことに対して反対もされず。地元でロックバンドをやっていたときに、コミュニティの狭さをちょっと窮屈に感じた時期もあったので、もっと伸び伸びやりたいという気持ちもありました。
――ソロになって、インディーズ活動を始めた直後に、YouTubeに「unravel」(TK from 凛として時雨)の歌ってみた動画を上げていますよね。
【東京喰種】TK from 凛として時雨 - unravel acoustic (Covered by krage)
中学3年生くらいのときにアニメ『東京喰種トーキョーグール』が好きで、オープニングテーマだった「unravel」をずっと聴いていたんです。でも、なかなか自分が納得できるようにうまく歌えなくて、それから何年か経って、ソロになったし、チャレンジしてみようと思って。
卓録りをして、自分でミックスして、最初はインスタに上げてたんですけれど、何となくYouTubeにも上げてみるかと思って、アカウントを作って、一発目に「unravel」をぽんって載せて、気がついたらすごい再生されていて。
――今や240万回再生を超えてますけど、この反響はどう受け止めていますか?
こんなに見てもらえると思ってなかったです。「『東京喰種トーキョーグール』の(霧嶋)董香ちゃんが歌ってるみたい」っていうコメントもあったり、皆さん、いろんな視点で聴いてくれていて。
何となくでYouTubeに上げたのに、こんなに多くの人に聴いてもらえるなんて、もっとちゃんとした環境で録れば良かったなってちょっと思いつつ(笑)。日本に限らず、いろんな国の人に自分の歌が届くっていうことを初めて実感した瞬間でした。
――その約2年後にメジャーデビューし、さらに時を経た今、TKプロデュース楽曲を歌うことになるという。
そうなんですよね。コメント欄にも、「ここからまさか、TKさんに楽曲提供してもらうことになるとは」みたいに書かれていて。見てくださってた方もびっくりだと思うんですけれど、私が一番びっくりしてます(笑)。まさかそんな日が来るとは! っていう感じです。
――決まったときはどう感じましたか?
「え? いいんですか?」っていうのが第一声でした。TKさんに憧れていたし、私が日本の音楽を聴くきっかけにもなった方だったので、すごすぎて逆に実感が湧かなくて。曲を書いてくださることになる前に、何回かライブを観させていただいて、ご挨拶もさせていただいたんですけれど、そのときもあんまり実感がなかったんです。
実感が湧かないまま、いつの間にか曲を提供してくださる展開になって。制作もどんどん進んで、はっきりとこの現実を認識しきれないままここまできた感じです(笑)。
――中学3年生でのTKとの出会いから、すごいストーリーですよね。
本当に予想外でした。制作中も夢のなかで話が進んでるんじゃないかって思うほどで。でも、いざ、レコーディングに入ると、そこにはちゃんとTKさんがいて、曲があって、歌ってる私がいて。これ現実なのか、みたいな。言葉にあんまり表わせないんですけれど、あのとき、「unravel」をカバーしたことで、こういう縁が繋がってくれたのかなと思いました。
――TKが作詞、作曲、編曲、プロデュースした「request」を受け取ったときはどう感じましたか?
「めちゃくちゃカッコ良い」っていうのが第一印象だったんですが、歌詞がちょっと私の性格的なものとリンクしている部分が多いんです。これを歌ったり、聴いたりしている自分が一番鼓舞されました。日々の出来事で悩んだり葛藤があったりしたら、「request」を聴いて、自分を励ましてます。「自分にはこの曲があるから大丈夫だ」と思える曲です。
krage - request (Music Video) 【TVアニメ「俺だけレベルアップな件」EDテーマ】
――特にどういった部分に共感しますか?
劣等感を抱えていて、自分が弱いというのを自覚しながらも、そんな気持ちと戦いたいし、世間とも戦いたいっていう気持ちが描かれているところですね。アニメ『俺だけレベルアップな件』のエンディングテーマなので、モンスターとの戦いを想像しちゃうかもしれないんですけれど、曲自体は現実世界を生きてる人ともリンクしています。それが私自身の心境にも合ってるし、多くの人にも感情移入してもらえるような曲になっていると思います。
――ダークでエモーショナルなロックなので、歌詞だけじゃなく、メロディやサウンドもkrageさんに似合っています。
今までの曲を知っている人には意外だと捉えられているかもしれないんですけれど、もともとロックが好きだったりもするので、自分的にはすごくしっくりきています。新しい私に挑戦しているということをお伝えはしているんですけれど、自分のなかでは、私のやりたいことをやっと出せたと思ってます。
――2月28日にリリースされるシングル「春想」には中国語バージョン、「request」には英語バージョンも収録されます。それも日本語、中国語、英語を歌い分けるkrageさんならではですよね。
そうですね。デビュー前にレーベルのスタッフと初めて会ったときに、「将来的に何かやりたいことはありますか?」って聞かれて、「曲を3カ国語バージョンで出してみたい」って答えたんですね。このタイミングで、中国語バージョンと英語バージョンを出せたのは、ひとつの目標が叶った瞬間でもあります。
――そして、3月にはライブツアー『Welcome To My Tone』が控えています。
初のツアーということもあって、初めて私の歌を聴きにきてくださる方が多いと思うんですよ。今回の2曲、壮大なバラードの「春想」と、ダークなロックの「request」で、krage の二面性や儚さ、毒っぽさは示せたと思うんですけど、これまでに発表してきた曲もジャンルに縛りがないので、ただ歌うだけでは伝わらないと思うんです。
なので、曲ごとに声の表情や見せ方を変えて、1曲1曲で観客を引き込むことができるライブにしたいなと思っています。曲調がバラバラなので、セトリにすごく悩んでますけど(笑)、全然違う曲でも歌ってる人は同じであり、その同じ人が曲によってこんなにキャラクターが違うんだっていうところを見せられたらなと思います。
文・取材:永堀アツオ
krage 1st Live Tour『Welcome to My Tone』
詳細はこちら
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