krage:『天宮賜福 貮』日本語吹替版、『俺だけレベルアップな件』エンディングテーマを歌う
2024.02.16
ソニー・ミュージックレーベルズ 他
今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る連載「Eyes on」。
今回は、シングル「Bricolage」でソロ活動を本格始動した石野理子へのインタビュー。2023年は、バンド・Aooo(アウー)の結成やドラマ『パリピ孔明』への出演でも印象を残した彼女。アイドルグループのアイドルネッサンス、そしてバンド・赤い公園での活動を経て再び動き出した23歳のシンガーとしての現在の心境と、プライベート写真を通して素の日常を聞く。
石野理子
Ishino Riko
2000年10月29日生まれ。広島県出身。2014年、アイドルグループ、アイドルネッサンスのメンバーとして活動スタート。2018年、同グループ解散後、バンド、赤い公園のボーカリストに就任。2021年に解散。2023年よりソロ活動を開始し、8月に、バンド・Aooo(アウー)を結成。また、ソロとして11月15日に楽曲「Bricolage」を配信したほか、ドラマにも出演するなど、幅広い活動を展開している。
――ソロ第1弾となる楽曲「Bricolage」がリリースされた今の心境から聞かせてください。
不思議な気持ち、感覚です。赤い公園の解散から2年が経ちましたが、最初の1年は、音楽活動をしたい気持ちはありつつ、自分の気持ちの整理が全然できなくて。1年前くらいからようやく、自分のやっていきたいことや見せていきたいものの輪郭がはっきりしてきました。
なので、結構、時間をかけて準備してきたものをようやく表に出していけるようになったかなって、じわじわと感じている段階で、これからだと思っています。そういう意味ではあまり大きな心境の変化はないですね。
――改めて伺いますが、約4年間活動したアイドルグループ、アイドルネッサンスと、その後2代目のボーカルとして加入した赤い公園というバンドは、石野さんにとってどんな存在になっていますか?
アイドルネッサンスのときは広島から東京に通っていたので、勉強と仕事だけしかしてない状況だったんですね。なので、変に思い悩まずに(笑)、みんなで大きいステージに立ちたいという目標に向かって、ひたむきに突き進んでいたという感じでした。日本のポップスをカバーするグループだったので、その曲たちの良さをもっと広めたいという純粋な気持ちがあったし、活動自体もすごく好きでした。
――13歳から始めたアイドルネッサンスが2018年2月に解散し、同年5月に赤い公園のボーカルとして、ロックフェス『VIVA LA ROCK 2018』のステージに立っています。
体感的には1カ月くらいしか空いていない感じでしたね。アイドルネッサンスが解散したのが高校2年生の冬だったので、歌いたい気持ちはあったんですけど、進学に向けて勉強もしないといけないなという時期でもあって。
周りからは「半年くらいの猶予はあるから、ゆっくり考えて良いよ」って言われていた最中に赤い公園に加入するお話をもらいました。驚きもありましたが、メンバーとも数回しか会えてない状況ではあったんですけど、赤い公園に入るって決めたときから、音楽を仕事にしていくんだっていう気持ちがよりいっそう固まった気がします。
――赤い公園での活動は約3年間ですね。
学ぶことも多かったし、とても楽しかった。これから音楽をしていく……表現者として、ステージに立っていく上では、かけがえのない時間を過ごしたなって思います。
解散が決まったときは無力感や閉塞感があったし、気持ちが閉鎖的になってしまって。自分を責めたりもしたし、その期間でありとあらゆるネガティブな感情を感じたと思います。
――その間も「音楽活動はしたい」という気持ちはどこかにありましたか?
そうですね。それだけは揺るがなかったです。私は、赤い公園のメンバーのことをすごくリスペクトしていて、その人たちに認めてもらえていたっていうことが自分の誇りでもあるので、メンバーからもらった思いを何とか自信に変えていきたいという気持ちがありました。
でも、ソロで自分が本当にできるのかっていう不安もあって。それまでグループやバンドにしか所属していなかったので、ひとりになったときに何ができるだろうかって考えたりしました。
正直、確実にまだ定まったとも思ってはいないんですけど、だんだんと、これまで経験してきたことをこういうふうに昇華したい、みたいなイメージができるようになってきて。ゆっくりとですけど、時間をかけて、想像力が働くようになってきた。自分の好きなものを思い出したし、これまで経験したことだけじゃなくて、普段の自分の姿を含めて、全部をソロ活動にいかしてみようという気持ちになっていきました。
――そこは最初からソロという考えでした?
もうそれしかないかなって思いました。ソロ以外はあまり考えられなかったですね。
――表立った活動のなかった2年間を経て、2023年よりソロ活動を開始し、1月にはドラマ『ブラザー・トラップ』のオープニングテーマ「ひとひら」と、挿入歌「ぬくもり」にフィーチャリングボーカルとして参加しました。
自分の曲の準備も少しずつ進めながらも、まだソロとしての方向性を模索しているタイミングで、お声がけをいただいて。この2曲は、2022年の年末の2日間で録ったんですけど、レコーディングがすごく好きなので、改めて、歌うことの喜びを感じました。うん、楽しかったな。「やっぱり楽しいな」っていう感覚でした。
――その後、5月にドラマ『スイートモラトリアム』に俳優として出演しています。演じることもソロ活動のなかのひとつとして考えていましたか?
ソロ活動をするって決めてからは、新しいことにも挑戦したいっていう気持ちはありました。私が映画やドラマを見ることが好きなことを周りの人も知っているので、「演技にも挑戦してみたら?」って言っていただいたりしていて。
アイドルネッサンス所属のときに映画『ファーストアルバム』で主演を務めさせていただいたり、赤い公園にいるときもお声がけいただいたことがあったんですけど、このタイミングで改めて本腰を入れて、向き合ってみようという気持ちでお芝居をさせてもらいました。
――ドラマ『スイートモラトリアム』の現場ではどんなことを感じましたか?
ドラマの現場は初めてだったんですけど、頃安祐良監督がアイドルネッサンスのころからすごくお世話になっている方だったので、しっかりとコミュニケーションを取ることができました。
スタッフさんの多さとかにどうしても緊張はしてしまうんですけど(笑)、演じることの楽しさみたいなものをちょっとずつ感じていったかなと思います。
――そして夏にはドラマ『パリピ孔明』の撮影もありましたよね。放送は最終回を迎えたばかりですが、ヒロイン・英子の熱狂的なファンで、孔明の“密偵・メガネ女子”として大活躍しました。
めちゃくちゃ楽しかったです! すごく素敵で愉快なドラマに参加させていただきました。ミュージシャンの方がたくさん出られていたり、普段はダンサーの方が歌ったり、ダンサーなのに踊らなかったりっていう、面白いことをしているドラマで。
みんながオープンなマインドで、新しいことに挑戦してみようっていう気持ちがあるのを感じたし、なによりも現場自体が和気あいあいとしてたんですよ。スタッフさんも「こんなに雰囲気の良い現場はなかなかない」って言ってたくらい本当に良い現場だったので、たくさん勉強させていただきつつ、楽しんだ撮影でした。
――演技の仕事も増えていますが、音楽活動とは区別して考えていますか?
少し前まではまったく別の仕事だなって体感してたんですけど、最近になって……それこそ『パリピ孔明』の現場を経験して、気持ち的にあんまり隔たりがなくなりました。別物みたいなふうに頭が思わなくなった感覚があって。フラットになった感じがあったし、お芝居だからって気張らなくなった感覚が少しあって。
なので、演技を見て初めて私のことを知ってくれた方が、音楽にも興味を持ってくれたら良いなって思うし、その逆も然りかなとも思ったりはしてます。表現をしている人として、みんなが面白がって見てくれたりしたら一番うれしいですね。
――音楽活動では、8月にボカロPとしても知られるすりぃ(ギター)とツキミ(ドラム)、YOASOBIのライブでもバンドメンバーとして活躍しているやまもとひかる(ベース)とのバンド・Aoooを結成しました。
皆それぞれ個人で活動をしているメンバーですが、ほかの3人がバンドを組もうってなっていたところに、ボーカルとして私にお声がけをいただいたんです。私も音楽の人との繋がりをもっと広げていきたいな、新しい刺激をもらいたいなっていう気持ちがあったので、ぜひ、ということで加入しました。
――ソロ活動とは別にバンドも並行してやっていくということですか?
バンドのメンバーみんなが同じモチベーションというか、個人の活動を主軸にしつつ、こういう楽しいこともやっていきたいみたいな感じで活動しているので、両方つづけていきたいです。
――フィーチャリングボーカル、俳優、バンドのボーカルを経て、ついにソロ第1弾となる楽曲「Bricolage」を発表しました。歌詞はご自身で手がけていますね。
赤い公園が解散して1年間ぐらいの無気力な感じ、現実と非現実の境目がわからなくなってくるような浮遊感みたいなものをサウンドに反映しました。歌詞は、ソロ活動をすると決まってから見えてきた将来への希望をサビに落とし込んでいます。
――2年間の空白の期間をそのまま歌詞にしていますよね。
そうですね。この曲を出さない限り、ほかの曲は出せないかなっていう気持ちがありました。この曲があってようやく次の曲が出せる、みたいな曲だと思っていて。ソロ活動をする上では、その2年間のことを隠すわけにもいかないし、自分にとってもその2年間のことを整理する上では必要不可欠な曲。スタートに必要だった曲かなと思います。
石野理子「Bricolage」Official Music Video
――心を塞いでしまった時期も、「歌いたい」っていう気持ちは変わらなかったとおっしゃっていました。
そうですね。1年間、本当に何も考えられなかったときも、歌いたいっていう思いは確固としてありました。ただ表現の仕方だったり、その気持ちの出力の仕方みたいなものがわからなくなっちゃってた感じでしたね。
――この歌詞を書き進めていくことで、その2年間抱いていた気持ちも昇華できましたか?
結構書き直したんですけど、最初は泣きながら書いてたんですね。何度も書き直して、だいぶ明るい仕上がりにはなったんですけど、その過程で、何か癒えてきたというか、心が治癒できてきた部分はあって。それこそ、感受性みたいなものが戻ってきました。
ただ、自分のことをつらつらと書いているので、もしかしたら共感してくれる人は少ないんじゃないかな、とも思っていて。正直、出すまでは、どう受け止められるのか、どういうふうに聴いてもらえるかはあんまりわかっていなかったんですよね。
もちろん、待ってくれているファンの方は、この2年間、私が何を思い、どういうふうに過ごしていたんだろうって気にしてくれてるかもしれないとは思っていて。だから、独白的だけど、きっと受け入れてもらえるだろうっていう希望を持って世に出して、ようやく聴いてもらえました。
――反響を受けてどう感じましたか?
しみじみしています。なんか感慨深いですね。こうやって、自分の経験が歌となって浸透していくんだなと、ソロ名義で曲を出す、その重さみたいなものを感じました。
――ジャケットは涙を流している写真ですよね。
あれは、うれし泣きですかね。歌詞を書いているときに流してた涙とはまたちょっと違う、悲壮感はない、明るい涙かな。歌いたいという気持ちがようやく解き放たれて、ちゃんと未来が見え始めて良かったなっていう安堵の涙だと思います。
――ボーカリストとして、俳優として、アーティストとして、今後の活動にも注目が集まっていますが、ご自身は今、どんな未来を見てますか?
ライブでたくさん歌いたいし、お芝居も成長した姿をお見せしたいと思います。歌とお芝居以外だと、声の仕事もやってみたいし、ファッション的なお仕事にも挑戦できたら良いなという理想を持っています。まずはたくさん曲を作れるように頑張りたいですね。
文・取材:永堀アツオ
「Bricolage」
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