イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

Eyes on

八木海莉:聴き手に寄り添うシンガーソングライター

2023.11.16

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る連載「Eyes on」。

今回は、放送中のTVアニメ『アンデッドアンラック』のエンディングテーマ「know me...」を歌うシンガーソングライター、八木海莉が登場。音楽を始めたきっかけから新曲制作の裏側にあった思いまで、飾らない言葉で語る。等身大の姿が垣間見られるオフショットも紹介する。

  • 八木海莉プロフィール画像

    八木海莉

    Yagi Kairi

    2002年9月5日生まれ。広島県出身。15歳で単身上京し、YouTubeで公開したカバー動画で注目を集める。2022年3月16日、シングル「Ripe Aster」でメジャーデビュー。11月15日、ニューシングル「know me...」をリリース。初の東名阪ツアー『八木海莉 One-Man Live Tour 2023 - know me... -』が12月9日よりスタート。

ギターを弾きながら歌いたい気持ちが強かった

――改めて、デビューまでの道のりから聞いていきます。八木さんは小さいころから歌うことが好きだったんですか?

好きでした。ずっと歌ってました。小学生のころはスクールに通っていたので、歌とダンスばかりを、夢中になってやってました。田舎だったので、ほかにすることがなかったんだと思いますけど(笑)。

――そのころから、将来は歌手になりたいと思っていたんですか?

いえ、ただ好きで歌ってただけだったんです。でも、小学6年生になったころ、成り行きでオーディションを受けたときに、舞台の上で歌ったことがとても気持ち良くて。そこから本気で目指そうと思いました。

――その後、中学3年生でギターを始めて、15歳のときにはもう上京してるんですね。

そうですね。ギターは、身近に弾いてる女の子がいたことと、昔、お父さんも弾いていたということもあって、自分もアコギを始めました。最初はギターが上手くなりたいっていうよりは、ギターを弾きながら歌いたいという気持ちが強かったですね。「家でカラオケができちゃうんだ」みたいな感覚で弾いてました。

――そのころはどんな曲を歌ってました?

西野カナさんの楽曲をよく歌っていました。当時は、女性シンガーは西野カナさんしか知らなかったんですよ。キーが高いから、歌ってて気持ち良かったです。

――上京も早かったですね。

小学生のときに通っていたスクールには小学生から大学生までいたんですけど、私はなぜか、今、この環境から抜け出さないとまずい気がしたんです。特にデビューが決まっていたわけではなかったんですけど。

――15歳で、すごい行動力と決断力です。

……とか言ってますが、実際は田舎から逃げ出したかっただけというのもあると思います。

八木海莉画像1

「基本、家から出ないんですよ。髪も自分で染めているので、鏡を見ながら仕上がりをチェックしているところです。ブルーが好きなので、ブルーの色を入れています」

――当時はどんな将来像を描いていましたか?

まだ全然想像できてなかったです。歌以外にもダンスとか演技とか、いろんなことをやっていました。いつか全部が結びついて、できることがあるんじゃないかなと思っていて。歌だけと決めていたわけではなかったので、“何か”ができれば良いなと思っていました。

――とにかく表現することが最初の目的だったんですね。

そうですね。上京してからは、DTMでオリジナル曲を制作し始めました。もともとカラオケ感覚でギターを弾いていたので、ギターで曲を作るっていうことが自分のなかであまりイメージできなくて。なので、DTM用のMIDIキーボードを買って、そこから曲作りを始めました。音楽を職業にしようって決めてからは、自分の曲を作ることに力を入れようと思いました。

――どのタイミングで音楽に専念することを決めましたか?

高校2年生ぐらいのときかな。いろいろやっているうちに、あんまり迷ってばかりいてもダメだなと思って、音楽1本に決めました。

YouTubeは自分の居場所ができで楽しかった

――少し話が前後しますが、上京した年にYouTubeのオリジナルチャンネルを開設して、アコギの弾き語りのカバー動画をアップし始めましたね。

曲を作りながら、YouTubeもやっていました。すごく楽しかったですね。見てくれる人が少しずつでも増えると素直にうれしいし、歌うことが好きなので、自分の居場所ができた感じで楽しかったです。

――特に印象に残ってる動画はありますか?

「夜に駆ける」(YOASOBI)が最初にたくさんの人に見てもらったカバー動画だったので、印象に残ってます。

夜に駆ける/YOASOBI(弾き語り)

あとは、ずっと真夜中でいいのに。とかヨルシカとか。弾き語りでボカロの曲も歌いました。当時はただただ楽しかったのでカバーばかりやっていたのですが、自分の曲ではないので、こっからどうしようかって考えていたときに、Vivyの話をいただきました。

――TVアニメ『Vivy -Fluorite Eye’s Song』ですね。歌でみんなを幸せにするAI、Vivyの歌唱を担当することになったときはどんな心境でした?

「え? アニメの曲をやれるんですか!?」って、めちゃめちゃ喜びました。何曲も歌わせてもらえたのがうれしかったです。

――オープニングテーマ「Sing My Pleasure」は初のオリジナルソングでもありますよね。

【期間限定公開】TVアニメ「Vivy -Fluorite Eye's Song-」ノンクレジットオープニング映像|「Sing My Pleasure」ヴィヴィ(Vo.八木海莉)

そうですね。今まではカバーも多かったので、カバーするアーティストさんの歌い方に一度寄せてから自分の歌い方にしてたんですけど、自分がオリジナルとして歌うっていうのはとても難しかったです。レコーディングも初めての経験だったので、「自分の声って、こんなんなんだ」って感じたり。その後、デビューが決まって、ずっと変わりつづけてるから不安、みたいな気持ちもちょっとありますけど、新しいことがどんどんつづいてるので、楽しくはあります。

――「ずっと変わりつづけてる」というのは?

弾き語りのカバーをひとりで始めたところから、いろんな人が関わってくださるようになり、楽曲を提供してもらうだけでなく、自分でも曲を作るってことになって。デビュー前から今の間にも作る曲がどんどん変わっていって……。ずっと全速力で走ってきたような感じではありますね。

八木海莉画像2

「シングル『know me...』に収録される『メタモルフォーゼ』のミュージックビデオのワンシーンです。熱帯魚が好きで、実家には私がすっぽり入れちゃうくらい大きい水槽もあるんですよ。好きな熱帯魚はベタです。すごくきれいなんですが闘魚なんで、2匹いると攻撃しあっちゃう。1匹でしか飼えない魚なんです」

――いろんな楽曲を歌うなかで、だんだん自分らしさみたいなものは見えてきましたか?

「これは好きだな」とか、「こうしたいな」っていう自問自答をして、ちょっとずつ見えてきているような気がします。それを言葉にすると……なんでしょうね。例えば、すごい悩んでる人がいたときに、何か言葉をかけるんじゃなくて、自分も同じだよっていう共感者がいるだけで救われるみたいな部分があると思うんです。そういう寄り添い方が好きだなというか、自分らしいなと思います。

――18歳でメジャーデビューが決まったときはどんな心境でしたか?

メジャーデビューは大きなことなんですが、環境が大きく変わったというわけじゃないので、実感はあまりなかったです。ただ、デビューというのはひとつステップを上がったってことだと思うので、頑張ろうっていう気持ちはありました。そこからは怒涛で、ババーっと来たなって感じてます。10代のときは本当に変化が多かったです。広島から東京に出てきたし、出てきてから新しいことを始めたし。20代はどうなっていくんだろう? っていう楽しみがありますね。

八木海莉画像3

「自分で作った粘土細工です。樹脂粘土で形を作って絵具で描いてます。何も考えずに没頭できるので細々した作業が好きなんですよね。『SELF HELP』のミュージックビデオに出てきたキャラクターや、『のうのうた』『健やかDE居たい』をモチーフにしたものなどを作りました」

――小学6年生で本気で歌手になりたいと思ってからの10代は、ご自身が想像した通りになりましたか?

全然違いますね。自分にはいつも憧れてる人がいて、自分がその人の年齢になったときには同じようになってるのかなって想像するんですけど、全然そうじゃなかったです。これはたぶん一生つづくんだろうなって思いながら、完璧主義者なので、早くそこに辿り着きたいと思ってます。

――完璧主義者なんですね。理想の自分ってどんなものですか?

いろんなことを淡々とこなしたいですね。感情の起伏がすごく激しいので、もっとさまざまなことをやりこなせるような人間になりたいと思っています。

「know me...」は「こんな曲作れるんだ、自分は」っていう感じ

――12月でメジャーデビューから丸2年になります。どんな2年間でしたか?

2021年にデビューして、EPを出して、3カ月連続配信して、初めてワンマンライブをして……。最初が怒涛だったぶん、2年目は自分のなかでは着実な印象です。一歩ずつ、ずっしりと階段を上ってる感じがしています。良い感じなのかな? ちゃんと順序よく階段を上れてるかなって思ってます。

――この2年間で特に印象に残っているできごとや、転機になったできごとを挙げると?

それこそ、今回のニューシングル「know me...」を作ったのが1年前なんですが、今聴いてもすごく良い曲ができたなって思うぐらい、自信の持てる大きな曲になりました。「こんな曲作れるんだ、自分は」っていう感じです。

八木海莉 『know me...』

――TVアニメ『アンデッドアンラック』のエンディングテーマとして放送中の曲です。

曲を作る前に原作を読んだんですけど、すごく好きな漫画になりました。愛が描かれている作品というのはたくさんあると思うんですけど、『アンデッドアンラック』は、主人公が誰にも触れられない状況から、唯一触れられる存在に出会うという物語で、とにかくその“愛”がすごいなって思って。曲も愛をテーマに作りました。

――作品に寄せて作ったんですね。

そうですね。あるシーンをイメージして作りました。ジーナ戦っていう、1回目の敵と戦うシーンをメインにヒロインの風子目線で作ったんですけど、いろんなキャラの目線にもなれるような曲になったなと思っています。

――歌詞と曲、どちらが先だったんですか?

いつもは歌詞を先に書くことが多いんですけど、この曲は原作を読んで、これは入れたいなっていうワードだけ先に出しておいて、曲から作りました。『アンデッドアンラック』にはよく月が出てくるんですよ。どのシーンにもきれいな満月が映っているんで、“月”を入れたいなと思って書きました。

――月は何を象徴していますか? 曲中に“見えぬ月”や“月並みの愛”というフレーズがあります。

月は大きく光って見えるけど、太陽がいて初めて光ることができる。そういう関係性を歌詞に入れたいなと思ったんです。

――風子とアンディの関係性ですかね。そこは愛でしたか?

愛だと思います。みんな誰かを守るために動いてるんですよね。1日目とかでお互いに信頼できるぐらい距離がどんどん詰まっていくんですけど、自分だったらできないだろうなって思って。今までもポップに愛を歌ったりはしてたんですけど、こんな純粋に、自分が愛を歌えるなんて思ってなかったです。

八木海莉画像5

「『know me...』のミュージックビデオ撮影のオフショットです。神奈川県のコスモス畑で撮りました。こんなに咲いたのは10年ぶりぐらいだそうで、すごく広くてきれいでした」

――タイトルにはどんな思いを込めましたか?

自分が、「愛って何だろう?」って考えたときに、“知ったつもりでいること”だということに辿り着いて、このタイトルにしました。

――わかりあうことではなく、知ったつもりでいること?

やっぱり人は100%お互いを理解することはできないと思うから。でも、「わからない」って言われるより、偉そうでも構わないから、知ったつもりでいてほしいなっていう。私もいつか、それくらい信頼できる人ができたら良いなと思っています。

――歌詞のなかにある“知った顔で笑っててよ”もネガティブな意味ではないんですね。

そうですね。人は、自分と同じような人がいるだけで救われる部分があると思うんですよ。ひとりぼっちなのはあなただけじゃないよっていう意味で書いてるので、ネガティブっぽいですけど、ネガティブな感じではないです、自分のなかでは。

――アニメの曲を書くことは、八木さんにどんな影響を与えてますか?

テーマがあって、そこに自分を照らし合わせて作ることで新しいものも見えますし、自分を知ることにも繋がるので、すごく良い機会だなと思います。アニメが好きなので、これからもアニメの曲を作りたいし、歌っていきたいです。

――今後はどんなアーティストになっていきたいですか?

自分なりの方法で、聴いてくれる人に寄り添えるような曲を作っていきたいです。自分で作ることは絶対やめたくはないし、ずっとやっていきたいですけど、いろんな人と曲を作っていくことで得るものも多いので、どっちもやっていきたいですね。

聴いてくれる人が私を拠り所にしてくださるなら、私を使ってもらいたいなと思います。今回の曲で言うと、孤独を感じていたり、生きづらいなと感じている方とか、そういう人たちへ届けば良いなと思います。もちろん、なんとなく好きだなだけでもすごくうれしいです。

――そして、12月には初の東名阪ツアーが開催されます。

自分のなかで大きい存在になった「know me...」という曲を持ってツアーを回れるのがうれしいですね。この2年でちょっとずつステージに立つ回数も増えたので、数だけではないとは思うけど、やればやるだけ良いものができるようになると思うので、今が一番良いライブができるんじゃないかと感じています。生で歌う今の「know me...」をぜひ、多くの方に聴いてもらいたいです。

文・取材:永堀アツオ

リリース情報

八木海莉「know me...」CDジャケット

©戸塚慶文/集英社・アンデッドアンラック製作委員会

「know me...」
発売中
試聴・購入はこちら(新しいタブで開く)
 
八木海莉「know me...」配信ジャケット画像
「know me...」
配信中
配信はこちら(新しいタブで開く)

連載Eyes on

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!