ANXゲーム事業前編PCバナー画像
ANXゲーム事業前編SPバナー画像
連載Cocotame Series
story

ゲームを作る人たちのココだけの話

アニプレックスはいかにして家庭用ゲーム事業に参入したのか?

2025.10.02

  • Xでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

スマホアプリゲームに加え、家庭用ゲーム機向け、PC向けゲームタイトルも複数発売しているアニプレックス(以下、ANX)。

特にゲームパブリッシャーとしてのANXは、ゲーム業界においてどのような視点に重きをおいてビジネスを展開し、ゲームという“エンタテインメント=感動”をファンに届けようとしているのか。

今回は家庭用ゲームパブリッシング事業にフォーカスし、これまでの道のりを紐解きながら、ANXの家庭用ゲーム事業について、「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」シリーズなどを担当するプロデューサーに話を聞いた。
※本インタビューは2025年7月に実施しています。

  • ANX西野プロフィール写真

    西野英樹

    Nishino Hideki

    アニプレックス

記事の後編はこちら:ゲーム市場が変化していくなか、制作を進めるうえで大事にしていることをプロデューサーに聞いてみた!

2021年、家庭用ゲームソフトを初めてリリース

──ANXは、アニメ以外にもゲーム、実写映画、舞台、グッズ開発など幅広いエンタテインメントビジネスを展開しています。そのうえで、ゲームパブリッシング事業においては、スマートフォンゲームに限らず家庭用ゲーム、PCゲームからも話題作が生まれていますが、そもそもANXはどのような経緯で家庭用ゲームのパブリッシング事業に参入したのでしょうか。

PCゲームに関しては、2019年にノベルゲームブランド「ANIPLEX.EXE」から『徒花異譚(あだばないたん)』と『ATRI -My Dear Moments-』がリリースされていましたが、Nintendo SwitchやPlayStation®といった家庭用ゲームの展開としては、2021年に発売したNintendo Switch版ダウンロード専用ソフト『毎日♪ 衛宮さんちの今日のごはん』が最初のタイトルとなります。

その後、同年に『月姫 -A piece of blue glass moon-』と『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のリリースを行ない、本格的に家庭用ゲーム市場に参入しました。

自分は、中途採用でANXに入社し、当初はほかのアプリゲームの運営を行なっていたのですが、別担当から引き継ぐかたちで『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』も担当することになりました。

真剣な表情で話すANX西野

──アニメ『鬼滅の刃』は2019年に放送が始まりましたが、2021年に『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』を発売したということは、早期から企画は動き出していたんですね。

当時、ANXではアニメ作品のIPをゲーム化する動きが活発でした。

『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』に関しては、IP特性や合いそうなゲームジャンルなども考慮して、アニメ作品のゲーム化に定評のあるサイバーコネクトツーの皆さんと、“全世界で楽しんでもらえるような家庭用ゲームタイトルとして検討を進めよう”ということで企画がスタートしました。

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable ©「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」製作委員会

──話にあった『毎日♪ 衛宮さんちの今日のごはん』、『月姫 -A piece of blue glass moon-』、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』が同じく2021年に発売され、以降も複数のタイトルが家庭用ゲームとしてリリースされています。

2021年はANXの家庭用ゲーム事業にとっても大きな年だったと思います。家庭用ゲームを無事にリリースすることができた、というのはもちろんのこと、あくまで国内のパッケージ版に限定された話ではありますが、『月姫 -A piece of blue glass moon-』と『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』の2タイトルを発売したパブリッシャーとして専門メディアに評価していただいて、家庭用ゲームパブリッシャーとしてのANXという一面を、業界やゲームファンの皆さんに認知していただけたのではないかと思っています。そうした積み上げが、その後の展開にも繋がっていくという意味で大きな1年になったのではないかと考えています。

ANX家庭用ゲームタイトル一覧

家庭用ゲーム事業に参入した経緯とは?

──『Fate/Grand Order』をはじめ、既に人気スマホアプリゲームを複数手がけていたとはいえ、家庭用ゲーム市場は商習慣なども異なり、立ち上げには苦労したのではないですか。

ご指摘の通り、家庭用ゲーム事業に関する知見やコネクションがまったくなかったので、上長と一緒に手探りでビジネススキームを勉強していきました。

毎年9月に開催される国内最大級のゲームエキシビション『東京ゲームショウ』では、会期4日間の内、前半の2日間で開催されるビジネスデイに参加し、まずはプラットフォームビジネスを手がける企業のビジネスブースに予約を入れて「アニプレックスという会社なのですが、家庭用ゲームタイトルを発売したいと考えておりまして。どうすればいいでしょうか……??」と相談に伺うところから始めました。

ゲームをリリースするまでのフロー、つまり“この時期までにこれをやっておかなければいけない”という手順や内容がまったくわかっていませんでしたし、話を聞くのと実際にやってみるのもまた違うので、何度もパブリッシャー向けのドキュメントを読んだり、ときにはお電話をさせていただいて間違いがないか、抜けや漏れがないかの確認をしたりと必死に情報収集とその理解に努めました。

例えば、そもそもゲームパッケージはどうやって製造するのか、1本あたりの利益やコストがどうなるのかのビジネススキームの理解、開発に使うゲームエンジンを提供する企業とは、どんな契約をどんなプランで結ぶのがベストなのかという検討から、その契約書の読み解きも必要になってきます。

さらには、家庭用ゲームの宣伝はどのようなタイムライン、内容で行なうのが良いか、翻訳やデバッグ、海外販売のビジネスパートナーとの座組みについて、そのほか社内での家庭用ゲーム商品の経理的な処理をどのように行なうのかなども含めて、理解しなくてはならないこと、考えることがとても多くて……。社内のコーポレート部門の皆さんとなんとかひとつずつクリアにしていきましたが、とにかく立ち上げは苦労しましたね(苦笑)。

ただ、ゲームのリリースにあたって、マスター(ゲームの完成データ)のプラットフォーマーへの提出やダウンロード版のストアの登録といった部分に関しては、2020年にソニー・インタラクティブエンタテインメントから、ANXのゲーム事業部に数名が出向してサポートしてくださることになり、それ以降、PlayStation®︎に関してはもちろんのこと、ほかのプラットフォームについてもその分野に精通している皆さんにご協力いただきながら進めることができたので、本当に有り難かったです。

身振り手振りで話すANX西野

──特に『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』は海外でも同時発売だったので、翻訳やさまざまな国と地域の文化に合わせたローカライズも大変だったのではないでしょうか。

そうですね。ANXではアニメ作品の海外展開を行なっていますが、アニメ作品の場合は、各エリアのライセンシーに作品をお預けするかたちで展開することが多いです。

ゲームの場合はアニメと展開方法が異なるので、アニメのライセンシーとは異なるパートナーを探す、もしくは自社で行なう、という形になります。また、海外版の翻訳をどこにお願いするのか、海外でのパッケージ製造や流通はどうするのかといったノウハウも国内同様、まったくない状態からのスタートでした。

『毎日♪ 衛宮さんちの今日のごはん』ではダウンロード版のみの展開であったことや対応言語数や展開地域がそこまで多くなかったこともあり、北南米でアニメーションビジネスを展開する現地法人・Aniplex of Americaや ANX上海と協力して自社中心に進めましたが、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』については、パッケージ版の発売や展開も必須と考えていたので、海外のパブリッシングに知見が豊富なセガの皆さんとプロジェクトをご一緒させていただくことになりました。

セガの皆さんとご一緒させていただいたことはプロジェクトの進行を円滑に進めることはもちろん、個人としても会社としても家庭用ゲームビジネスの知見を広げるといった意味で大きな意義があったと考えています。

広告や宣伝についても、“この地域ではGIFの動画が流行っている”“ここでは公式サイトはあまり見られないから簡易的な造りでいい”など、それぞれの国と地域の特性に合わせたアドバイスをいただきつつ、ANX側からはIPに即した施策、という観点で意見をお伝えするなどのコミュニケーションをさせていただいています。

『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』場面写真

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable ©「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2」製作委員会

アニメづくりとも共通するANXのゲーム事業の特徴

──ANXのゲーム事業の特徴を教えてください。

大手パブリッシャーでは、全タイトルを担当するわけではないですが社内に開発スタッフや開発チームが存在しており、不具合を確認するデバッグ部門や海外展開を行なうためのローカライズ部門を擁していることが多いかと思います。

いっぽうでANXは基本的に企画部門、つまりプロデューサーと宣伝スタッフのみが自社のスタッフで、あとは外部との連携や委託となります。そのため、よりプロデュース会社としての側面が強いという性質があります。

この体制は、自社内で解決できないことが多いというデメリットがありますが、さまざまなゲームデベロッパーやクリエイターの方々と臨機応変にパートナーシップを組み、デバッグやローカライズ、海外販売なども含め、さまざまな座組でビジネスを行なえるというメリットがあります。面白い企画があれば、フットワーク軽く動ける、その企画にあったビジネスの座組を作ることができるというのが特徴だと思います。

──アニメ制作スタジオやアニメクリエイターの個性に合わせて作品を提案し、一緒に生み出していく。ANXのアニメの作り方に共通する部分がありますね。

似ていると思います。アニメ制作に関して言うと、ANXには、A-1 Pictures、CloverWorksというアニメスタジオがありますが、それに縛られることなく、作品にとって最適なスタジオとご一緒することができます。自由度高く座組を検討できるのは、アニメもゲームも共通しているところですね。

腕を組んでポーズをとるANX西野

後編では、ゲーム制作を進めるうえで大事にしていることについて話を聞いた。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

関連サイト

 

 

連載ゲームを作る人たちのココだけの話