アニプレックスはいかにして家庭用ゲーム事業に参入したのか?
2025.10.02


スマホアプリゲームに加え、家庭用ゲーム機向け、PC向けタイトルも複数発売しているアニプレックス(以下、ANX)。
特にゲームパブリッシャーとしてのANXは、ゲーム業界においてどのような視点に重きをおいてビジネスを展開し、ゲームという“エンタテインメント=感動”をファンに届けようとしているのか。
後編では、ゲーム制作で大事にしていることを家庭用ゲーム事業を推進し、「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」シリーズなどを担当するアニプレックスのプロデューサーに聞いた。
※本インタビューは2025年7月に実施しています。
目次

西野英樹
Nishino Hideki
アニプレックス
記事の前編はこちら:アニプレックスはいかにして家庭用ゲーム事業に参入したのか?
──ANXの社内にゲーム開発の専門部署を置かず、デベロッパーとなるゲーム開発会社とパートナーシップを結びプロジェクトを進行しているということですが、日ごろ、どのようなコミュニケーションをしていますか?
パブリッシャーとデベロッパーの関係でありがちなケースとしてよく耳にするのが、いわゆる“発注者”と“受注者”という構図になってしまうことです。そうなってしまうと、お互いの目的意識がずれてしまい、プロジェクトを成功させるのが難しくなってしまうことが多いのではないかと個人的には考えています。
そういった意味でまずはお互いが同じ方向を向きやすいような座組づくりを行なったうえで、こまめにコミュニケーションを取っていくことで目指す方向性のずれがないようにしていく、ということを意識しています。
どんなコミュニケーションを取っていくかは担当によって異なりますが、自分としては面白い、魅力的なゲームを作るためにお互いが納得するまで意見をぶつけ合える関係性を築くことを特に大事にしています。
──制作期間が長いので、開発会社の方々と目線を合わせておくのは非常に大事なことですね。
はい。ただ、お互いが納得するまで意見をぶつけ合える関係性というのも築くまでには時間がかかるので、当たり前ですが、自分の意見だけでなく、相手の意見もきちんと聞いて理解する、そのうえでフラットな目線で議論や判断をするように心がけています。
相手が納得してない気がする、というときは「○○さんはこれでいいと思いますか?」など意見を振ってみたり……。相手からしたら面倒だなと思われるかもしれないのですが(苦笑)、「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」シリーズでご一緒しているサイバーコネクトツーの皆さんとは先方の社風もあって、とても円滑にコミュニケーションを取れていると思っています。
また、我々がゲームの開発という点においては専門家ではないので、状況を都度把握する意味も含め、わからないことやこちらから見えていないことを教えてもらう、ということもコミュニケーションとしては大事だと思っています。
──ゲームの中身のお話も具体的にされていくと思うのですが、ゲームの操作感や面白さを言語化して伝えるのは、難しそうですね。
確かに難しいです。ただ、難しいなかでもコミュニケーションにおいて意識しているのは、可能な限り具体的に、自分なりの根拠や理由を持って意見を言うということです。
例えば「この演出、なんとなく微妙ですよね」と言っても、どこが微妙なのかわからず、開発会社の方を困らせてしまうだけ。きちんと、なぜそう感じるかの理由を伝え、具体的な代案やイメージを提案するように心がけています。その代案がハマらなくても、その案を叩き台に有益な議論につながっていくことが多いので、自分のセンスのなさには目をつぶってでも具体的に提案してみることを日々行なっています。
また、ゲームの専門家ではないなりに自分のなかでチェックするポイントや軸はある程度決めています。例えば「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」シリーズで言えば、作品のファンの方がキャラクターを違和感なくカッコ良く魅力的に感じられるか、アクションゲームなのでアクションに気持ち良さを感じられるか、そしてゲームを進めるうえでストレスを感じずに遊べるかの3つです。
この3点をチェックするうえで、自分が意識しているのは、可能な限り俯瞰の視点で制作物を確認したり、ゲームをプレイしてみたりすること。開発会社の皆さんは日々開発に向き合っているがゆえに、ときには客観視するのが難しくなってしまうこともあるので。
ただ、自分も至らない点が多いため、例えば作品性やキャラクター性といった部分は原作、アニメ関係者の皆さんにもチェックをしていただきながら、日々自分の足りない観点や知見を実感しながら、少しずつでも成長できるように取り組んでいます。
──最新作『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』についても聞いていきます。今作の手応えをどのように感じていますか?
前作『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』は、アニメ『鬼滅の刃』を初めてゲーム化したタイトルでした。評価していただいた部分も、改善すべき点もそれぞれありましたが、今作ではどちらについてもよりブラッシュアップできた正当続編と言えるタイトルになっていると思います。
具体的には、やはりサイバーコネクトツーの皆さんが心血を注いで開発してくださったグラフィックや演出周りが特に目を引くと思います。前作も、ユーザーの皆さんから高く評価していただきましたが、今作ではよりパワーアップした表現やゲームならではの体験ができるような新たな演出バリエーションの追加などを行なっていますので、ぜひ注目してください。
また、アクションゲームに不慣れな方でもキャラクターを自在に動かし、簡単な操作で爽快感あふれるバトルと演出が楽しめるというコンセプトは前作から変わっていませんが、ゲームを初めて触れる方だと操作しにくかった部分を調整したり、いっぽうで、ゲーマーの方にもやり応えを感じていただけるような仕様を追加したり。続編タイトルということで、登場するキャラクター数が前作よりも多いことや、やり込み用の新モードの追加などもありますので、物量としても前作を超える内容を収録しています。
──開発会社であるサイバーコネクトツーの技術が、特に発揮されているポイントはどこになりますか。
グラフィックや演出面は既に触れてしまったので、別なポイントとしては、ワンボタンで“呼吸”の技を出せることだと思います。ゲームで技を出すには、複雑なコマンド入力が必要なことが多いですよね。でも、本作の場合はひとつのボタンを押すだけで“炎の呼吸 伍ノ型 炎虎”のような大技も出せます。さらに、移動しながらボタンを押せば、また別の技も出せます。
発売前にジャンプフェスタやアニメジャパンなどで行なった試遊イベントでは、ゲーム操作に不慣れな小さなお子さんでもボタンを押すだけで大技を発動することができ、喜んでくださっている姿を見ることができました。
長らくアニメ作品のゲームを手がけてきたサイバーコネクトツーの皆さんだからこそ、ユーザー層を理解したうえで“シンプルな操作でもカッコ良く戦える!”ということをしっかりと味わえる設計にできたのだと思います。
──操作が簡単なアクションゲームは、「ボタンを押すだけのゲーム」と言われることもありますが、この点については、どのように考えていますか。
ボタンを押すだけでかっこいい技が出せる、という操作性になってはいるものの、より強い相手に勝つために工夫するポイントなどは用意されているので、普段よくゲームをする人でも自分のプレイスキルを追求できるゲーム性になっています。
本作をプレイしてくださる方はどんな方が多いか? を考えたときに、やはりこのゲームは『鬼滅の刃』という作品を好きな方々が多いと考えられます。竃門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助といった魅力的なキャラクターたちのカッコイイところ見たいという方々に楽しんでもらえるようにしたい、というところを一番に置きながら、アクションそのものの難度を上げるのではなく奥深い駆け引きができるようなゲーム性にしよう、そしてそのなかでの魅せ方を徹底的に追究しよう、という話になりました。
アニメ作品をゲーム化するにあたっては、ユーザー=ファンであることを忘れずに、そしてファンが何を求めているのかを見誤らないように気をつける、という考え方は、非常に大事なことだと思っています。まだまだ至らないことも多いですが、このことは常に意識するようにしています。
──発売後の施策なども考えていますか?
プレイいただいている皆さまに参加いただける大会のようなものを定期的に開催できたらと考えています。またリリース後にどんなアップデートをしていくかも開発と並行して検討や準備を行なっています。
※2025年9月18日に無償のアップデートでバーサスモード”対戦”に「鬼舞辻無惨」が追加。また、有償ダウンロードコンテンツ『「無限城編 第一章」キャラクターパス』 の制作も発表されている。
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※公式の大会となる「『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』公式オンライン大会~最強への道~」を10月4日に開催することが発表されている。
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──近年は、家庭用ゲームの買い方、遊び方も変わってきました。その点については、どのように考えていますか。
プラットフォームごとの特徴、特性はありつつ、ユーザー目線で見たときのプラットフォームの差は少なくなってきていると感じます。
かつては“このハードでなければ、このゲームは遊べない”ということが多々ありましたが、今ではハードの垣根はもちろん、家庭用ゲーム機だけではなくPCやスマートフォンでも遊べるゲームが増えてきています。
ゲーム開発の難しいところとして、特に近年は開発規模が大きくなっているため、“企画してから発売するまでに数年単位で時間がかかる”ことが挙げられます。タイトルを最大化していくために、市場やプラットフォームの動向も考慮したうえで企画を検討したり、開発中でも都度方針を検討、調整したりすることがより求められるようになってきていると思います。
──先ほど発売後の施策の話もありましたが、現在は家庭用ゲームも発売後にアップデートなどが継続して行なわれるケースが増えてきていますよね。
はい。ハード面でのプラットフォームの垣根が低くなってきているだけではなく、運営を継続していくことが前提のスマートフォン向けのアプリゲームと従来買い切り型であった家庭用ゲームの違いについても徐々に境目がなくなってきていると感じています。
よく社内でも話を聞きますが、ゲームに限らず、さまざまなエンタテインメントがあるなかで何を楽しむのか、というユーザーの可処分時間の奪い合いが起きている状況も背景にあるのかなと思います。今はサブスクで映像も音楽も楽しめますし、ゲームにおいてもサブスクのような仕組みで、無料で遊べるタイトルが遊びきれないほどあります。そういったなかでどうやってこのゲームタイトルを選んでもらうのか、ということをよりシビアに考えていく必要性が高まっていると思います。
──ゲームでヒットを生み出すのが、年々難しくなっていると言われますが、今後ANXではどのように家庭用ゲーム事業を展開していくのでしょうか。
会社としての考えではなく、個人的な考えとしてお伝えしますが、市場が非常に難しくなってきているなかですので、やみくもにタイトルをリリースするのではなく、ユーザー、開発会社、そして我々パブリッシャーが“三方良し”になるよう企画を精査し、発売する価値のあるゲームを生み出していく、ということの重要性が今まで以上により高まっていると感じています……と、言うは易し、でそれを行なうのが難しいのですが。
そのうえで、個人レベルで意識できることとしては、自分が担当するタイトルは責任をもって、検討できることや行なえることはすべて覚悟を持って取り組む、ということだと考えています。
ANXはアニメ製作から始まった企業ですが、最近は実写映画『国宝』のヒットをはじめ、多方面にビジネスを展開しています。ソニーミュージックグループ全体で横展開を広げ、アニメを中心としたIPを新たなステージに押し上げていくことも、自分たちの仕事だと思っています。
家庭用ゲーム事業は、あくまでその手法のひとつであると考えているので、何かにとらわれることなく、今後もANXらしいゲーム事業が展開されるよう、いちプロデューサーとして頑張っていきたいです。
記事の前編はこちら:アニプレックスはいかにして家庭用ゲーム事業に参入したのか?
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
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