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連載Cocotame Series

デビュー35周年!TM NETWORK×映像

アニメ×音楽の常識を変えたTM NETWORKと「シティーハンター」のコラボ<前編>

2019.04.04

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TM NETWORK(以下、TM)デビュー35周年。4月21日にはライブフィルム『TMN final live LAST GROOVE』が全国14都市34カ所の映画館で1日限定プレミアム上映されるなど、盛り上がりをみせるなか、CocotameではTM×映像を大特集!

2月9日に全国公開されたアニメ映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』が動員104万人、興行収入14.8億円を超えるという大ヒットを記録しているが、同作のエンディングテーマは、テレビアニメ「シティーハンター」が始まった1987年当初と同じ、TMの「Get Wild」が起用され、現代につながるアニメタイアップの流れを変えたコラボレーションの復活となった。

特集第1回では、同劇場版のプロデューサー若林豪と宣伝を担当した淀明子(ともにアニプレックス)、そして、現在TMのカタログ作品などを手がける福田良昭(ソニー・ミュージックダイレクト)にインタビュー。「Get Wild」と「シティーハンター」の画期的コラボについて語る。

  • 淀明子

    Akiko Yodo

    アニプレックス

  • 福田良昭

    Yoshiaki Fukuda

    ソニー・ミュージックダイレクト

  • 若林豪

    Go Wakabayashi

    アニプレックス

シティハンター

「Get Wild」×「シティーハンター」

――現在、ソニーミュージックでTM関連作品をご担当の福田さんは、EPIC・ソニーに1984年に入社されたそうですね。ということは、1stシングル「金曜日のライオン (Take it to the Lucky)」と1stアルバム『RAINBOW RAINBOW』の同時リリースで1984年にデビューしたTMとまさに同期という。

福田:そうですね、入社35年目で同期なんですよ。TMの音楽とはEPIC・ソニー時代に10年間付き合わせていただいたので、今年は『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』がヒットしたり、TMがデビュー35周年を迎えたりと、個人的にもすごく感慨深いです。

福田良昭

――TMの代表曲である「Get Wild」(1987年4月8日発売)は、テレビアニメ「シティーハンター」のエンディングテーマに起用され、現代に通じる「アーティストによるアニソンタイアップ」の先駆けとして評価されています。当時、「シティーハンター」のエンディングテーマに、TMはどのようにして抜擢されたのでしょうか?

福田:当時は、僕自身が担当ではなく直接タイアップを決めたわけではないので、当事者(西岡明芳氏)から聞いた話をしますね。

ポテンシャルはありながらも、デビュー3年目にしてブレイクしきれていなかったTMの音楽を世に広めるには、アニメとのタイアップが似合うだろうって直感的に閃いたそうなんです。当時は、アニメタイアップでアーティストの曲がヒットする方程式なんてまだなかった時代でした。

そのアイデアを温めていたら、読売テレビのプロデューサーの方と話をする機会があり、そこで「シティーハンター」の話が出たそうなんです。そのプロデューサーの方も、今までのアニメとアニメソング(以下、アニソン)の結び付き方とは違った音楽の使い方を「シティーハンター」ではやりたいと考えていたようで、そこでTMを提案してみたら、波長があったようです。そこからとんとん拍子で話が進み、エンディングシーンにオーバーラップするスタイルで「Get Wild」のイントロが流れ出す、あの名シーンが生まれたそうです。

EPICが築いた、アニメタイアップ発の大ヒット

――通常、アニソンはオープニングでもエンディングでも使われる尺が89秒という時間の制約があるそうなのですが、そのセオリーをオーバーラップという形で壊しているんですね。ところで「シティーハンター」シリーズでいうとTMに限らず、小比類巻かほる、岡村靖幸、大沢誉志幸、PSY・S、FENCE OF DEFENSE、そして小室哲哉のソロなど、EPIC・ソニーのアーティストの楽曲が「シティーハンター」作品から続々とヒットしていきました。

福田:なかなかありえない状況ですよね。なかでも「Get Wild」のヒットがきっかけとなって、それまでのアニソンの概念を変え、J-POPを世界観の合うアニメと組み合わせてタイアップを仕掛けていくという手法が生まれました。現在の音楽シーンでは当たり前のプロモーション施策となっていますよね。

「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ> -VOCAL COLLECTION-」

「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ> -ORIGINAL SOUNDTRACK-」

――今回、劇場版では「Get Wild」など、当時の楽曲のまま起用されていますが、「シティーハンター」の世界観はまったく古さを感じませんでしたし、今回の劇場版のヒットによって30年たっても通用することが実証されました。劇場版の大ヒットについての要因をどう考えていますか?

若林:今回、映画化に当たって企画書のコンセプトに“シティーハンターのベスト盤”という言葉を書きました。例えとして“ベスト盤”というキーワードを使ったんですけど、久し振りの「シティーハンター」でもありますし、往年のファンのみなさんに「これこれ!」って、あの世界観を思い出してもらいたかったんです。そして、当時を知らない方には「これがシティーハンターなんだ!」って思ってもらえるような純度の高い作品を目指しました。

――ストーリー部分は、時代設定が現代になっていつつも、いわゆる「シティーハンター」らしさ満載で、その世界観にこだわっていましたね。

若林:おいしい要素を詰め込もうと考えていました。今回、アニメとしては20年振りで、舞台設定は当時の新宿ではなく、現在の新宿です。同じキャラクターではあるけど、絵も刷新していますし、ストーリーも今の時代に合うものにしています。ただ、音楽だけはアレンジせず、当時のままの音楽を使うことで「シティーハンター」らしさが活きるのではと思っていました。制作スタジオのサンライズの小形プロデューサーも、最初から当時の人気曲をたくさん使用する構想だったそうです。それで、当時の原盤をそのまま使おうと、福田さんにお願いして使わせていただくことになりました。

シティーハンター

――映画冒頭で流れる、PSY・S「Angel Night 〜天使のいる場所〜」など、イントロが流れただけで一気に世界観に引き込まれました。映画を観た方のSNSでの反響もすごかったですね。

若林:ここまで大きな反響になるとは思っていませんでした。それと「音楽がとても良かった!」という感想が多かったのが非常にうれしかったですね。ちなみに当時のテレビシリーズを手がけた諏訪道彦さん(読売テレビ・プロデューサー)は、今回チーフプロデューサーという形で劇場版にも関わってくださっているのですが、当時「シティーハンター」を企画するときに影響を受けたのが、アニメ「キャッツ・アイ」だったとおっしゃっていて。

――「シティーハンター」と同じく、北条司先生が原作の作品ですね。

若林:「キャッツ・アイ」は杏里さんのオープニングで、それまでの(子供向けの)アニソンとはちょっと違った、アーティスト色の強い楽曲でヒットした流れが画期的でした。でも、「シティーハンター」では、もっと先へ行こうとしていたんですね。アニソンの歴史のなかで過渡期というか、変化のきっかけとなった曲が「Get Wild」でした。杏里さんの主題歌は大人っぽいけど、楽曲のタイトル自体が「キャッツ・アイ」で、歌のなかでも「キャッツ・アイ」という歌詞が連呼されているんです。そこはまだ既存のアニソンの流れを汲んでいたわけです。

シティーハンター

――たしかに「Get Wild」では“シティーハンター”という歌詞はありません。

若林:そうなんです。でも、都会のなかで孤独なんだけど強く生きる、というテーマ性はアニメとリンクしていて。そういう曲たちだからこそ、30年後の新しいストーリーにもなじみやすかったと思うんです。これが仮にサビで“シティーハンター”と入ってる曲ばかりだったらこうはならなかったでしょうね。普遍的なものだからこそ、音楽の個性もちゃんと感じられつつ、さまざまなシーンに合わせてベスト盤的に映画に起用することができました。

「STILL LOVE HER(失われた風景)」のゆくえ

福田:“ベスト盤”、まさにそうなるだろうなと予感していましたが、劇中で使われるそれぞれの曲がそれぞれの場面に、きっちりハマっていて絶妙でしたね。1本のサウンドトラックを映像として観ているような作品。

あるSNSの感想で僕が共感したのが、TMの「STILL LOVE HER(失われた風景)」という曲の使われ方。今回このインストが良い場面で流れるのですが、あの起用の仕方は鳥肌ものでした。しかも、この曲はエンディングでもサプライズ的に流れるという。

若林:福田さんにそう言っていただけてうれしいです。じつは「STILL LOVE HER(失われた風景)」をどう使うかは、全楽曲中で一番難しかったんです。

音楽の扱いは監督と音響監督、それと音響スタッフに委ねる場合もあるんですが、今回、楽曲をどのように使うかはこの作品の重要な要素だったので、プロデューサーも含め、みんなでかなり議論しました。そのなかで、最後まで決着がつかなかったのが「STILL LOVE HER(失われた風景)」の使い方です。じつは僕は劇中に使用する曲は全て歌入りで使いたかったんです。

でも、福田さんがおっしゃっている進藤亜衣という登場人物が自分の過去を語るシーンで、歌が入った曲が流れてしまうと、観ている人に亜衣の言葉が耳に入らなくなるのでは?という意見が出て。

――セリフと歌詞がクロスオーバーしてしまうと。

若林:そうですね。こだま兼嗣総監督は「このシーンだけは歌なしのインスト曲でいきたい」というので議論になりました。そこで小形さんが「監督の意見で劇中は歌なしにして、セリフに集中してもらうようにしましょう。そして、エンディングで『Get Wild』と(歌ありの)『STILL LOVE HER(失われた風景)』をかけましょう」と提案してくれて。もともと「STILL LOVE HER(失われた風景)」はアニメ版のエンディングテーマだったので、「Get Wild」のあとに「STILL LOVE HER(失われた風景)」があっても違和感がないよねと。それで、結果的に好評を得たエンディングテーマの二重構造ができました。それは、最初から狙っていたわけではなくて、あの現場の議論のなかで生まれた展開だったんです。

――「Get Wild」があれば、バランスをとって「STILL LOVE HER(失われた風景)」は削るという発想があってもおかしくないですよね。でも、「STILL LOVE HER(失われた風景)」という曲は、TMのファンにとって大事な曲で、人気投票をやっても上位にくるナンバー。セレクトしてくれたことが我々、FANKS(※TMファンの意)的にとてもうれしかったですね。

若林:僕は「STILL LOVE HER(失われた風景)」を絶対に使うべき曲だと思っていました。そこはTMの文脈だけではなく、「シティーハンター」作品のエンディングとしても極めて重要な曲で。歴代のエンディングで、あの曲だけ映像が実写なんですよ。当時の新宿の実写に、アニメのキャラを乗せるという感性、あのセンスはまさに「シティーハンター」らしさだと思っていました。

それで、今回の「STILL LOVE HER(失われた風景)」のエンディングも、今の新宿の実写映像を使用しています。実は、「STILL LOVE HER(失われた風景)」のエンディングでの使用が決まったタイミングが進行的にギリギリだったこともあって、その実写映像は昨年3月に「劇場版シティーハンター」制作発表時の特報映像で使用しなかった素材を使っているんです。そんな状況のなか、サンライズさんがテレビシリーズのエンディングへのオマージュになるような映像に仕上げてくれたのはうれしかったですね。

「Get Wild」を軸に展開したプロモーション

――なるほど。テンションが上がるエピソードですね。ちなみに、今回映画のプロモーション面においても、音楽を大事にされていましたね。

淀:「シティーハンター」のベスト盤というテーマがまずあったことで、当時の主題歌を挿入歌としてたくさん盛り込むというのは企画の段階で決まっていました。音楽があることで、さらに「シティーハンター」は盛り上がるという確信のもと、楽曲の商品化もアニプレックスとして企画していました。

併せてプロモーションでも音楽をフィーチャーすることで、アーティストのファンの方も巻き込んで祭りにすることができますよね。楽曲タイアップの担当者からも、「『Get Wild』が軸だろ!」とずっと言われていて。初期の予告編からずっと「Get Wild」推しでした。

我々のプロモーション以前に、「シティーハンター」と言えば「Get Wild」がイコールな存在になっていて、やっぱり「Get Wild」には勝てないんですよね。楽曲の強さを信じて、「Get Wild」を中心に宣伝展開をしました。TMの宇都宮隆さんと木根尚登さんには宣伝のご協力もいただき大変ありがたかったです。その上で作品を彩る楽曲のすばらしさを伝えねばと思い、音楽軸の特番を組んでみたり、いろいろな展開をさせていただきました。

――AbemaTVでの特番『劇場版公開直前!オリジナル特番「続・ミュージックシティーハンター in AbemaTV ~俺を呼んだのはアベマだろ?~」』では、みなさん楽曲への思い入れが半端なかったですね。「Get Wild」をはじめ、主要TM人気曲の作詞をされた小室みつ子さんも「Get Wild」だけでなく、「他の曲も良いからね!」とおっしゃられていて。

淀:そうですね。TMのメンバーのみなさんも、小室みつ子さんも当時は20代半ばぐらいで、それこそ「シティーハンター」に登場するキャラクターと自分たちの状況が近しいものであったというお話を伺ったりして。宣伝を担当させていただいて、本当に役得でした。感動しました。

取材・文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) 鼎談撮影=山本佳代子

特集第2回では、インタビュー後編をお届けする。

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◼アニメ映画『劇場版シティーハンター 』
大ヒット公開中!
https://cityhunter-movie.com/theater/(新しいタブで開く)
※ゲストの登壇はありません。
※詳しくはご覧になられる劇場までお問い合わせください。

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■「TM NETWORKデビュー35周年記念祭!ライヴ・フィルム『TMN final live LAST GROOVE 1994』(5.1ch HDリマスター版)一日限定プレミアム上映 #110107eiga」
日時:4月21日(日)開映15:30
※開場時間は、映画館によって異なります
http://www.110107.com/tmn_lastgroove(新しいタブで開く)

■TM NETWORK完全生産限定Blu-rayボックス
『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』 
2019年5月22日発売/(Blu-ray BOX)32,400円/ソニー・ミュージックダイレクト 
※1994年5月18、19日に行われた東京ドーム公演の映像作品『TMN final live LAST GROOVE』のほか、1985年に行われた「Dragon The Festival Tour featuring TM NETWORK」の東京・日本青年館公演や1980年代のライブ映像などを収録 
http://www.110107.com/tm_network_the_videos(新しいタブで開く)

(C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会

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