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宇多田ヒカルのライブをオカモトショウ(OKAMOTO’S)が語る【特集第4回】

11月6日〜12月9日にかけて、全6都市12公演で14万人を動員した、宇多田ヒカルの全国ツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」。

Cocotameで特集してきた「宇多田ヒカルのライブを語る」も最終回。今回は、10周年を迎えるOKAMOTO’Sのボーカル オカモトショウが、ファンとして、同じくステージに立つミュージシャンとして、宇多田ヒカルのライブを記す!

オカモトショウが記す

オカモトショウ/プロフィール

ロックバンド、OKAMOTO’Sのボーカル。メンバー全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモトを名乗る。2010年、1stアルバム『10’S』でメジャーデビュー。2019年は、10周年イヤーに突入し、1月9日に8thアルバム『BOY』を発売後、6月27日、日本武道館での公演が決定。

はじめて生で観る、宇多田ヒカルのライブだった。

音楽に意味があるかどうかすら気にしたことがなかったころから聴いていたが、ちょうど自分でお金を稼いで人生に自由が生まれたころが彼女の人間活動期間中だったため、生でそれを観る機会が本当に皆無だった。ここ近年の精力的な活動(本当にうれしい!)の流れを見ていて、「ライブもやるかな?」と期待をふくらませていたところに、「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」の発表。彼女のことを知らない人を探す方が難しいこの日本で、しかも人間活動期間を経てのライブ。そりゃチケットは完売。心踊らせながらライブを観に行った。

彼女の歌を生で聴けた感動はすごかったし、その20周年を振り返るようなセットリストの壮絶な大勝ち感もあった。でも、何より感動したのはその“宇多田ヒカル”という存在を、会場に集まった大勢のお客さんが観に来ていた“感じ”だ。大きな会場でのライブ、しかも自身の周年、とくればそれなりに大掛かりな仕掛けや、ショーとしてのド派手な演出があってもおそらく文句を言う人は誰もいなかっただろう。だが、彼女のショーはあくまでシンプルに、歌がきちんと聴こえて、歌う宇多田ヒカルがそこに立っているのが「見える」「感じられる」ということに徹しているようだった。みんな、ただただ彼女を見たくて来たのだ。彼女の歌を聴きたくて来たのだ。

「自分がそこにいて、自分であるということに価値がある状態」、「自分が自分のことを歌って、それをみんなが求める状態」には、どんなミュージシャンも憧れを持つはずだ。宇田多ヒカルのライブはまさにその実現であり、非常に無垢で、尊いライブだったと思う。

個人的なハイライトとしては、デビューアルバムのタイトル曲「First Love」から最新アルバムのタイトル曲「初恋」を続けて演ったくだりだった。アルバムジャケットのデザインも含めて『First Love』を意識していたであろう、“初恋”というテーマ。「First Love」から20年の時を経て歌う宇多田ヒカルの「初恋」は、決して昔を懐かしむものでなく、今新たに燃え盛る恋を歌っているのだ。彼女が、「常に前へと進んでいる」ということ。ファンとしてこんなにうれしいことはない。

15歳でデビューして、誰も経験したことがないような記録的ヒットを出した宇多田ヒカル。大きすぎるヒットを生み出したアーティストは、その代償としてヒットの苦しみも同時に背負ってしまうものだと思う。「前作を超えなければ」「昨日の自分より良くならなければ」と、さまざまな重圧の中、苦しみながら、本当に自分が感じて表現したかったことと向き合う余裕すらないまま、混沌の中に落ちていく。偏見かもしれないが、そういうミュージシャンやアーティストの姿というのは珍しくない。そんな偏見を吹き飛ばすように、彼女のこれまでのアルバム、楽曲たちは本当にすばらしいもので、昔を懐かしむことなく常に進化してきているのだ。

もちろん、人間活動を経て、出産を経験し、再始動したあとも、その姿勢は変わっていない。これは非常に稀有なことで、時代を越えて「今のこの人が、最強!」と、ずっと思わせてくれることがどれだけステキで難しいことか! 同じモノを作る身として本当に憧れるし、自分自身もそうありたいと思う。宇多田ヒカルは、前人未踏の記録となった大ヒットを否定することももちろんない。それは、『初恋』という最新アルバムのタイトルにも表れているし、過去を今につながる伏線にまで昇華させることができたからこそ、ライブでこの2曲を連続して歌うことができたのではないか。

「ホンモノだよね、この人」という時、その“ホンモノ”という言葉にはいろいろな意味が含まれていると思うが、その1つとして自分でいられるかどうかということも大きな要素ではないか、と個人的に思っている。ミュージシャンやアーティストが、ステージにあがりマイクを握る、大勢の知らない人の前にさらされた時に、つい演じてしまうというのは、よくあることで、自分の経験を省みてもよくわかる。ステージ上では、自己防衛的な側面や、自分をよく見せたい見栄の部分が出てきたりもする。とにかく意識しようがしまいが、どこか不自然になってしまうのだ。それは当たり前のことで、普段の生活とステージの上とでは全く違う状況なのだから、自然でいられる方がおかしい。

いちばんパワーを持つのは、あたり前の自分を表現する時ではないかと、最近になって思う。つまり、演じている自分や、こうでありたいという自分をどんなにがんばって表現したところで、それはただの理想でしかなく、どこか嘘くさくなってしまう。そのくさみというのは、容易に伝わってしまうし、絶対に嘘はバレてしまう。どこかこっ恥ずかしくなってしまうような雰囲気をどうしても醸し出してしまうのだ。決してフィクションを否定しているわけではなく、どうやったら他人に自分にとってあたり前の、自分にしかない特異点を伝えることができるか、その核となる部分や言葉にならないモヤモヤとした部分を表現することができるか、という点においては、フィクションであってもなくても、偽らずに真っ直ぐ伝えることができれば、その人にしかできないいちばんの表現となって、それがその人の個性となり、パワーとなると思うのだ。

彼女のライブMCでは、「何話そうとしたか忘れちゃった!」などのテヘペロな場面もあり、非常にキュートだったのだが「こんなMCが許されるなんて!」と、少し驚いた部分でもある。ライブにおいての“許す”“許さない”というのは、誰が決めることでもなく、否応無しに放った瞬間に会場の空気が決めるものである。宇多田ヒカルの気の抜けたMCで、その会場は和んだ。それは、彼女がこれまでいかに、張り詰めた感情も、こみあげてくる感情も、喜びも苦しみも含め、さまざまな感情を自然に発信してきたか、いかに自分を偽らずに曲やデザイン全ての世界観でそれを表現してきたか。その証明だったように思う。これは初めの方に書いたことにもつながってくることだが、本当にこんな存在はいないと思う。改めて奇跡だと思った。

昨今の音楽ビジネスの市場縮小というのは時代の移り変わりを表している。メディアがいくらゴリ推したところで要らないものは要らないよ、というムードや、インターネット以降の個人が発信と受信を行える世の中特有の「本当にほしいもの以外要らない」姿勢が大きく影響していると思う。それによって、CMソングや映画主題歌など、過去のヒットメイクの王道手法が購買に結びつくこともなく、それぞれがバラバラに自分の好きなものを聴いて、買いたいものを買っている。それは、音楽好きからしてみたら、ある種の健全さをも感じる状態を生み出しているように思う。そんな世の中において、むしろ価値があるとされるものは、「自分の足で立って自分で考えて表現されているのもの」もしくは「少なくともそう見えるものたち」であるように感じる。ようは“臭さ”のないものの方を見抜いた上で、選ぶ人ばかりということだ。そりゃ、自分で探せるし、自分で選べる時代だから、当たり前のことなのだけれど。

そんな時代に、宇多田ヒカルが、今、改めて観客に求められているという事実は、正しい結果だと思う。彼女には嘘くささのかけらもなければ、どこまで掘り下げても、いくつ新曲が世に出ても“宇多田ヒカル”という存在そのもので、そこには彼女の姿しかないからである。そんな彼女を、歌う姿を、生で観られたことは感動的だったし、そのお客さんたちの姿を見て、同じようにステージに立つ身として、さらに感動したライブだった。こんな20周年を自分も迎えてみたい。

本当におめでとうございます! これからの活動も楽しみにしています。

――オカモトショウ(OKAMOTO’S)

ライブ写真=岸田哲平(12月5日さいたまスーパーアリーナ)

OKAMOTO’S最新情報

CD.info
8thアルバム『BOY』

2019年1月9日発売。OKAMOTO’S がデビュー10周年というアニバーサリーイヤーに突入。10代でデビューした彼らが、自身の少年期から青年期を経て、大人になっていくなかで、メンバーの想いをBOYというタイトルに込めた。

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『BOY』【通常盤】の購入はこちら

LIVE info.
「OKAMOTO’S 10周年記念特別公演 ~ハマ・オカモト”に”大感謝祭!~」
3月12日 なんばHatch

「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”」
6月27日 日本武道館

詳細はOKAMOTO’S公式サイトをご覧ください。

宇多田ヒカル最新情報

12月9日、幕張メッセで行なわれた「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」のライブの模様は、1月27日21:00より「BSスカパー!」にて放送。「MUSIC ON! TV」では、3月10日20:00よりツアードキュメンタリーも加えた完全版が放送される。また、宇多田ヒカルのPlayStation®4 VR向けコンテンツ「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 – “光” & “誓い” – VR」として、「光」と「誓い」のライブライブパフォーマンスがPlayStation®4 VR向けに配信決定。有料会員サービスPlayStation®Plusの加入者には「光」のVR映像の先行配信が12月25日にスタート。「誓い」は2019年1月18日に「光」とともに一般向けに無料配信が行なわれる。

PlayStation®4用ソフトウェア(PlayStation®VR 必須)『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 – “光” & “誓い” – VR』「光」のダウンロードはこちらから
※PlayStation®Plus(PS Plus)加入者向けにPlayStation™Storeで先行配信


1月18日にスクリレックスとのコラボ曲「Face My Fears」がシングル発売。同曲はゲームソフト「KINGDOM HEARTS III」のオープニングテーマとして使用される。このジャケットは、ディレクター・野村哲也が描きおろしたもの。同シングルに収録される「誓い」「Don’t Think Twice」は配信中。3月6日にはシングル「Face My Fears」のアナログ盤の発売も決定。

 

関連リンク

宇多田ヒカル 公式サイト
宇多田ヒカル 公式Twitter
宇多田ヒカル 公式Instagram

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