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連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

世界唯一のオフィシャルストアもオープン! 『セサミストリート』がキャラクターを通して伝えるDE&I【前編】

2024.01.15

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キャラクタービジネスを手がけるうえで、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回は、1969年から50年以上にわたり、子どもたちに向けて良質なコンテンツを届けてきた『セサミストリート』とソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の取り組みにフォーカスする。

2023年11月30日にオープンした世界唯一のオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」について紹介するとともに、『セサミストリート』が伝えるメッセージ、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン:多様性、公平性、包括性)への考え方を聞いていく。

前編では、「セサミストリートマーケット」の見どころについて担当者たちに語ってもらった。

  • 曽我謙介氏プロフィール画像

    曽我謙介氏

    Soga Kensuke

    セサミストリートジャパン合同会社

  • 吉田麻鈴氏プロフィール画像

    吉田麻鈴氏

    Yoshida Marin

    セサミストリートジャパン合同会社

  • 曽根 基プロフィール画像

    曽根 基

    Sone Hajime

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

『セサミストリート』とは

『セサミストリート』キービジュアル

“すべての子どもたちがかしこく、たくましく、やさしく育つよう支援する”を基本理念に、アメリカの非営利教育団体セサミワークショップが展開する子ども向け番組。1969年にアメリカでテレビ放送がスタートし、世界150以上の国と地域で放送、配信されている。日本では、現在U-NEXT、YouTubeで番組を配信中。“セサミストリート”に集まるキャラクターたちの日常を描き、ときには差別や偏見、いじめ、そのほか世界中で起きているさまざまな社会問題もエピソードに織り交ぜ、子どもたちにDE&Iの精神を伝えている。

50年以上の歴史を持つ教育コンテンツ

──曽我さん、吉田さんはセサミストリートジャパン合同会社に在籍されています。おふたりは、『セサミストリート』にどのような形で関わっているのでしょうか。

曽我:『セサミストリート』は、1969年に設立されたアメリカの非営利教育団体セサミワークショップ(以下、SW)が展開する番組をベースにしたIPです。日本法人は2020年に設立され、本部と同じ理念のもと活動しています。私はディレクターという立場で、事業の戦略構築、開発や運営などを担当しています。

曽我謙介氏画像1

吉田:私は2016年にアメリカのSWに入社し、2021年からセサミストリートジャパン合同会社でマーケティングマネージャーを務めています。加えて『セサミストリート』の日本語版制作、小学校向けカリキュラムの開発なども担当しています。

──曽根さんは、2021年から『セサミストリート』の国内ライセンシングエージェントを任されているSCPのチームリーダーということですが、具体的な役割を教えてください。

曽根:私はデザイナー職でSCPに入社し、『PEANUTS』などのキャラクタービジネスに関わってきました。2021年にSCPがライセンシングエージェントになってからは、『セサミストリート』のクリエイティブ担当になり、2022年3月からプロデューサーを務めています。日本におけるライセンスビジネス、オフィシャルショップをはじめとするタッチポイントの戦略など、『セサミストリート』のキャラクタービジネスの拡大に取り組んでいます。

──曽根さんの『セサミストリート』との出会いを教えてください。

曽根:テレビはあまり見ない家庭で育ったので、NHKで放送されていた番組を見た記憶はないのですが、学生時代に『セサミストリート』の人形がついたペンをいくつか持っていました。アメリカっぽさがあって、私のなかで海外に対する憧れを喚起させるグッズでしたね。

それと昨年、ニューヨークで『セサミストリート』のパペットを制作しているジム・ヘンソンスタジオを視察したとき、その周辺に既視感があって……思い起こすと、20代前半で当時アメリカに住んでいた姉のもとに遊びに行ったことがあったのですが、その近辺がまさに姉が住んでいたエリアだったんです。

今思うと、そのころから『セサミストリート』への道は、既につづいていたのだと思いました(笑)。

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──『セサミストリート』の近年の活動を教えてください。

曽我:NHK Eテレの特番に『セサミストリート』のキャラクターたちが出演するなど、メディアでの露出が増えていますね。昨年の11月に『おかあさんといっしょ』とコラボレーションしたときには、『セサミストリート』がSNSでトレンド1位になりました。

『おかあさんといっしょ』に出演するセサミストリートの仲間たち

『おかあさんといっしょ』に出演するセサミストリートの仲間たち

そして2023年11月には、世界で唯一のオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」が池袋のサンシャインシティ 専門店街アルパ1階にオープンしました。また、全国を巡回する展覧会も開催していて、こちらは2024年の春に松屋銀座でも開催される予定です。アメリカではずっと高い人気を保っている『セサミストリート』ですが、日本でもリブート活動が確実に実を結びつつあると感じています。

すべての子どもたちが“かしこく、たくましく、やさしく”

──現在、国内での『セサミストリート』の認知度はどれくらいでしょう。

曽根:認知度は高いですね。特に関西エリアは、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」などで目にする機会が多いことから数字が伸びます。ただ、現在はYouTubeに「セサミストリート日本公式チャンネル(新しいタブを開く)」があるのと、U-NEXTでの独占配信は行なわれていますが、地上波での放送がないので、メインターゲットとなる未就学児や小学校低学年世代へのアプローチはまだまだ不足していると考えています。

逆に20代後半からお子さんたちの親御さん世代の方たちからの支持のほうが熱いぐらいなので、引きつづきメディアへの露出や番組を見てもらう機会創出を増やしつつ、「セサミストリートマーケット」などでも、キャラクターやグッズの魅力を発信して、認知度、商品欲求度を高めていきたいと考えています。

吉田:日本では1971年からNHKでテレビ番組の放送が始まっているので、「懐かしいキャラクター」というイメージが根強いんですよね。曽根さんの言う通り保護者世代以上の認知度は高いですが、次の世代のファンをもっと育てていかなくてはいけない。そういった背景もあり、子ども向けの教育プログラムも始めています。

小学校でワークショップを開催したり、コミュニティ内でイベントを行なったりという草の根活動を約2年つづけてきましたが、SCPとライセンシングエージェント契約を結んでからはメディアでの大きな露出も増え、マクロとミクロの両方からアプローチできるようになりました。

吉田麻鈴氏画像1

──ワークショップでは、どのような活動をしているのでしょうか。

吉田:小学校では、キャリア教育や多様性の学びをはじめ、「夢を叶えるために時間やお金、努力にはどういう意味があるのだろう」など、さまざまなテーマで答えのない問いを考えるカリキュラムを実施しています。例えばお金の使い方で言えば、「必要なものと欲しいものって同じですか?」とか「思いやりのあるお金の使い方ってどういうものだと思いますか?」といったテーマについて、小学1年生から6年生まで授業を行なっています。

曽根:大人が一緒に考えても面白いテーマですよね。

曽我:例えば「これから海に行きます。欲しいものと要るものを持ってきてください」と言うと、水着やゴーグル、浮き輪などを挙げる子どもがたくさんいます。でも、泳げる子からすると浮き輪は必要ありませんし、泳げなかったり、体調が悪かったりすれば水着が要らないという子もいるでしょう。ディスカッションをするなかで、「そういう考え方もあるんだ」「そういうときに私はこうしようかな」と考えが広がっていきます。「こうしなさい」と指示するのではなく、考えるためのヒントを与えていきたいと思っています。

吉田:子どもたちこそ柔軟な考え方ができます。しかも、答えはひとつではないし、正解、不正解は人それぞれの場合がある。ディスカッションをしながら、「自分にとっては欲しいものだけど、ほかの人にとっては必要なものなんだ」という気づきから、多様性について考えてもらうきっかけづくりを行なっています。

ワークショップを行なうセサミストリートの仲間たち

ワークショップの様子

ワークショップの様子

──テレビ番組やワークショップの根底にあるSWの理念、子どもに向き合ううえで大切にしている考え方についてお聞かせください。

吉田:SWのミッションは“すべての子どもたちがかしこく、たくましく、やさしく育つよう支援する”です。SWでは、2022年から活動方針を“One Sesame”と定義し、全世界・全チームがひとつになって、より良い社会をつくるために、次の世代を大切に育てていこうと活動の重点テーマを決めました。

そして、教育的価値、社会貢献、ソーシャルインパクトを全世界で最大化するために、テレビ番組などのコンテンツ制作からマーチャンダイジングまで、このテーマを軸に展開しています。

世界唯一のオフィシャルストアがオープン

──『セサミストリート』の世界観に触れる新たな場として、2023年11月30日にはオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」がオープンしました。こちらはどういうショップでしょうか。

曽根:グッズ販売、カフェ、ワークショップが複合した世界で唯一の『セサミストリート』オフィシャルストアです。その1号店が池袋のサンシャインシティにオープンしました。店舗面積は約100坪。ジェラートピケなどを展開する株式会社マッシュスタイルラボと契約し運営を行なっていただいています。

「セサミストリートマーケット」オープニングイベント

「セサミストリートマーケット」オープニングイベント

──マッシュスタイルラボの方々とは、以前からお付き合いがあったのでしょうか。

曽根:そうですね。SCPがライセンシングエージェントやライセンス契約を結んでいる『PEANUTS』や『ジョエル・ロブション』などのグッズを作っていただいていました。SCPが『セサミストリート』のライセンシングエージェントになった際にご相談したところ、SWの理念、多様性を重んじる姿勢に共感していただき、今回、ショップの運営に携わっていただくことになりました。

ショップの運営にあたり、マッシュスタイルラボのプロデューサーの方と一緒にアメリカに行き、パペットの制作スタジオ、SWのオフィスも視察してもらっています。SWのオフィスの前には「セサミストリート」と名づけられたストリートがあるのですが、一緒に歩いて現場の空気を感じながら「セサミストリートマーケット」の構想を議論していきました。

コンセプトは“Discover=発見”

──「セサミストリートマーケット」のコンセプトを教えてください。

曽根:マッシュスタイルラボからご提案いただいたのは、“Discover Sesame Street World”というコンセプトでした。ただグッズを買いに行く、カフェを利用するということだけでなく、『セサミストリート』の世界観を体感して、“Discover=発見”につなげていただく価値を提供していくという意図が込められています。

──「セサミストリートマーケット」ではグッズ販売とともにカフェも併設され、ワークショップも開催されます。それぞれについて詳しく聞かせてください。まず、カフェではどんなメニューが提供されるのでしょうか。

曽根:テーマパークに設置されたものを除くと、『セサミストリート』の常設カフェは世界初ではないかと思います。キャラクターの顔を再現したかわいいドーナッツ、ピザ、サラダ、スープなど軽食メニューが充実していますし、味だけでなく素材にもこだわっています。

吉田:食べることはSWのミッションにもある、子どもたちの“たくましさ”に直結します。保護者の信頼を得るためにも、子どもたちの体に良いメニューを材料の段階からひとつずつ丁寧に監修しています。

曽我:SWには、食品に関して非常に厳格なガイドラインが存在しています。マッシュスタイルラボのご担当者にも最大限ご理解いただき、そのガイドラインをベースにしながら見栄えも華やかでおいしいメニューを開発していただきました。

──グッズに関してはいかがですか? 「セサミストリートマーケット」のオリジナルグッズも用意されているのでしょうか。

曽根:基本的にすべてオリジナルグッズです。現在は200点ほどのアイテムをご用意しています。

──おすすめのグッズを教えてください。

曽根:ぬいぐるみのバリエーションが豊富なので、ぜひチェックしていただきたいですね。日本ではエルモ、クッキーモンスター、ビッグバードが定番ですが、マッシュスタイルラボの皆さんがセサミストリートに登場する個性豊かなキャラクターを商品化してくださり、クッキーモンスターのフードトラックで働くゴンガーというキャラクターまで企画されたのには驚きました!

番組のアーカイブを見て研究してくださったそうで、もしかしたら世界で初めてぬいぐるみ化されたキャラクターもいるかもしれません。サイズもさまざまなので、楽しく選んでいただけると思います。

販売されているぬいぐるみ

吉田:いつもオスカーの横にいるミミズのキャラクターや、エルモが大切に持っている人形など「このキャラクターにもこんなかわいさを見出してくれるんだ!」という気づきがあって面白かったです。

曽根:「それはちょっと攻めすぎでは……?」と感じるものもありましたが(笑)、さまざまなニーズに応えるラインナップになっていると思います。皆さんの“推し”を見つけてもらいたいですね。

──ぬいぐるみ以外にも、いろいろなグッズがありますよね。

曽根:そうですね。アパレル、雑貨、文房具などさまざまです。クリスマスなど季節イベントに合わせたグッズも発売していきます。ジェラートピケとのコラボアイテムも先行販売されたり、常に新しい発見のあるショップになっています。

──ワークショップは、どんな内容になるのでしょうか。

曽根:親子で体験して、学んで、いろいろなことを感じていただくワークショップをご提供していきたいと考えています。具体的な内容はマッシュスタイルラボの皆さんと一緒に進めておりますので、もう少しお待ちください。

吉田:ワークショップでも“Discover”がテーマになっているので、新しい“好き”を見つけていただきたいです。

曽我:押しつける内容のワークショップではなく、楽しみながら学ぶ。遊んでいたら、いつのまにか気づきが生まれていたというようなワークショップになると良いですよね。

遊びながら多様性を感じられる場に

──内装や店舗のつくりなどで、こだわったポイントがあれば教えてください。

曽根:SWのオフィスがあるニューヨークの街並みを意識しました。『セサミストリート』に出てくる「HOOPER'S STORE(フーパーズストア)」を再現したり、クッキーモンスターやビッグバードの毛や羽の質感を再現したランプを設置したりと、隅々まで楽しんでいただけます。等身大のキャラクターフィギュアもあり、2m以上のビッグバードもお出迎えしてくれます。

──“Discover”がコンセプトという話がありましたが、皆さんは「セサミストリートマーケット」でどんなものを見つけてほしいですか?

曽根:まだ『セサミストリート』の番組を見たことのないお子さんにも、グッズやカフェのメニューを通して、まずは『セサミストリート』の魅力を発見し、好きになってもらいたいと思います。そこから自分に似たキャラクターを見つけて愛着を感じてもらったり、番組に興味を持ってもらえたりしたらうれしいですね。

曽我:SWでは1969年からアメリカでテレビ番組を放送していて、当時から多様性を尊重した番組制作を行なってきました。日本でも最近、多様性という言葉をよく耳にしますが、まだ言葉が先行しているように感じます。また、多様性というと構えてしまう人もいるかもしれませんが、そもそもそんなに難しい話ではないはずです。

例えば『セサミストリート』に、赤や青のキャラクターがいるのも多様性。小学校のワークショップで、いろいろな考えを持つ子どもがいて、違う意見を聞いて、自分ならどうするだろうと考えるのも多様性です。

グッズを選ぶとき自分はこれが好きだけど、友達はこっちが好きだと言う。好みが違うという体験すらも多様性を受け入れるきっかけづくりとなり得ます。「セサミストリートマーケット」がそういった機会を提供しつづけていく場になってくれたら良いなと思います。

吉田:『セサミストリート』のテレビ番組は、“Co-viewing”、つまり親子で一緒に観ることを大切にしています。テーマパークやワークショップでも、親子やきょうだい、友達と一緒に体験することを大事にしているんですね。

日本でも、そういう場所が新しくできたことが素直にうれしいです。一緒に訪れる家族や友達だけでなく、ショップやカフェの店員さん、そこでできる友達とも一緒に多様性を体験できる場になったら良いなと思っています。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

関連サイト

『セサミストリート』公式サイト
https://www.sesamestreetjapan.org/(新しいタブを開く)
 
「セサミストリートマーケット」公式サイト
https://sesamestreetmarket.jp/(新しいタブを開く)
 
『セサミストリート』日本公式チャンネル
https://www.youtube.com/sesamestreetjapan(新しいタブを開く)
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ 公式サイト
https://www.scp.co.jp/(新しいタブを開く)

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