イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

キャラクタービジネスの心得

ピーターラビット™のコンセプトショップが軽井沢と京都にオープン――限定グッズや見どころを解説【後編】

2023.10.31

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

キャラクタービジネスを手掛ける上で、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。

今回は、「ピーターラビット™」初の常設コンセプトショップ『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』を取り上げる。イギリスの代表的な焼き菓子や紅茶、限定アイテムを含む多彩なグッズが並ぶこのショップは、2023年7月に軽井沢店、9月に京都・二寧坂店がオープン。外観や内装、限定グッズにそれぞれの地域色が表われていることも相まって、「ピーターラビット™」の新たな聖地として注目を集めている。

本記事では、『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』のオープンに携わったソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の担当者にインタビューを実施。「ピーターラビット™」初のコンセプトショップの詳細を聞いた。

後編では、「ピーターラビット™」という作品の魅力、今後の展開へと話を広げて聞いていく。さらに、『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』の運営を行なう株式会社寺子屋の担当者にも、京都・二寧坂店オープンの前日に話を伺った。

  • 原田健至プロフィール画像

    原田健至

    Harada Kenji

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 鹿間絵里プロフィール画像

    鹿間絵理

    Shikama Eri

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 森田安紀氏プロフィール画像

    森田安紀氏

    Morita Yasunori

    株式会社寺子屋

IPを盛り上げるためには聖地が必要

──(前編からつづく)『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』の軽井沢店、京都・二寧坂店の2店舗がオープンしました。今後、店舗数が増えることはあるのでしょうか。

原田:具体的なプランはありませんが、可能であればいろいろな観光地に出店したいと、個人的には妄想を広げています(笑)。「ピーターラビット」は日本全国にファンがいらっしゃるので、SNSでは「自分が住むエリアにも出店してほしい」というコメントをいただくこともあって。待ってくださっている方のためにも、いつか実現したいと考えています。

原田画像1

──キャラクタービジネスにおいて、ショップやカフェ、ミュージアムなどは“聖地”のような存在です。IPを盛り上げるうえで、今回のようなコンセプトショップはどんな効果をもたらしていますか?

原田:例えば、「ピーナッツ」には「スヌーピーミュージアム」や「SNOOPY Chocolat」をはじめ、さまざまなタイプの施設や店舗があり、全国各地でIPの魅力や世界観を楽しんでいただいています。「ピーターラビット」にもカフェはありますが、世界観をさらに深く伝えるには「ピーナッツ」のように、さまざまな切り口でIPを体験していただく必要があります。

その点、今回オープンした『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』は、立地柄訪れる修学旅行の学生や旅行中のカップルなど若い方々にも「ピーターラビット」を知っていただく機会を生み出せると考えています。たくさんの方が「ピーターラビット」に触れられるタッチポイントを、今後も増やしていきたいですね。

──原作者のビアトリクス・ポター™さんは、イギリス湖水地方の自然を保護するトラスト活動(※)にも力を入れていましたが、『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』でもサステナブルな取り組みや環境保護を意識していますか?

鹿間:まだ具体的な取り組みはありませんが、今後はサステナブルなグッズを徐々に増やしていくなど展開していきたいですね。エコバッグの活用はだいぶ世の中に浸透してきていると思いますので、やはりグッズの素材の再考など、細かい部分でも対応できそうなことは取り組んでいければと考えています。

※トラスト活動
トラスト活動とは、自然環境や歴史的建造物の保護・保全を行ない、次世代へ残すことを目的とする活動。1895年にイギリスで設立された非営利団体「英国ナショナル・トラスト」が始めた取り組みで、ビアトリクス・ポターもその理念に賛同し、活動に参加していた。

イギリスらしいユーモアを体感してほしい

──改めてですが、多くの人が「ピーターラビット」を最初に体験するのは、原作絵本なのでしょうか。

鹿間:そうですね。「おばあちゃんから絵本をプレゼントされた」「図書館で読んだ」という声をよく聞きます。実は「ピーターラビット」の絵本は、ほかのものと比べて小さいサイズなんですね。これはビアトリクス・ポターさんが発案したことで、子どもが手に取りやすい大きさにしているんです。図書館でも小さいから逆に目に留まるようで、めずらしさで借りるお子さんも多いようですね。

鹿間画像1

原田:最近では2018年と2021年に上映された映画『ピーターラビット』で知ったという声も聞こえてきます。コンテンツが増えたことで、認知度が上がりましたよね。「キャラクターは見たことがあったけれど、映画を見て初めてストーリーを知った」という方もいました。

──原田さんと鹿間さんの「ピーターラビット」との出会いも教えてください。

原田:私は、祖母の家に「ピーターラビット」のマグカップがあったのが出会いでした。

鹿間:私は、子どものころにテレビで見たアニメーションです。アニメーションでもピーターラビット特有の絵のタッチが描かれていて、大人になってからも楽しめる作品だと思いました。

──「ピーターラビット」の魅力については、どう捉えていますか?

原田:キャラクターたちの個性が魅力だと思います。見た目はリアルでかわいい動物たちなのに、おはなしの中ではいたずらをしたり、お店を経営していたり、駆け引きをしたり、人間らしい個性にあふれています。絵本については知れば知るほど、奥深い魅力があります。また、2022年に出版120周年を記念して、各地の美術館で「ピーターラビット展」を開催したのですが、原画を見て改めて絵の美しさに感動しました。普段「ピーターラビット」を扱っている私たちも、ビアトリクス・ポターさんの原画を拝見する機会は少なく、揺るぎない魅力があると感じました。

鹿間:私の場合、アニメで見てキャラクターとしては知っていましたが、初めてちゃんと原作を読んだのは、実はこの会社に入ってからなんです。ピーターのお父さんがパイにされてしまうというエピソードも知らなかったので、「え、結構ブラックな話なんだ」「こんなことまでしちゃうんだ」と驚きましたし、またそこにユーモアを交えた面白さも感じました。

最初の絵本『ピーターラビットのおはなし』以降も、結構ブラックなところがありますし、映画『ピーターラビット』にもそういう要素が散りばめられています。原作の絵本を読めば「ピーターラビット」の世界観に意外性を感じていただけると思うので、いろいろな人に知っていただき、イギリスらしいユーモアを体感していただけたら良いなと思います。

鹿間画像2

──『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』の内装やグッズのデザインを考えるときにも、そういった原作のエッセンスを取り入れているのでしょうか。

鹿間:そうですね。ピーターは“やんちゃないたずらっ子”なので、そういった雰囲気をどこかに忍ばせることもあります。軽井沢店では、ピーターのやんちゃさを感じさせる原作の文章を取り入れたり、京都・二寧坂店ではピーターが勢いよく跳んでいるような書き割りを置いたり、ときにはピーターと従兄のベンジャミンが小さくなっているシーンをどこかに入れてみたりと、普段グッズには使わないようなアートを積極的に使用しました。

──来店者が発見して楽しむような仕掛けもあるのでしょうか。

原田:あります。レジの周りやバックヤードにつづく通路、京都店はトイレなどにもイラストを配置しているので、お客様に隅々まで見てもらって、「こんなところにも!」と発見して楽しんでいただきたいですね。

原作者の生誕160周年を見据え、さまざまな施策に挑戦

──日本では、今回のコンセプトショップやカフェのように「ピーターラビット」の世界観に触れられる場所がありますが、「ピーターラビット」が生まれたイギリスには、ミュージアムなどはあるのでしょうか。

原田:ビアトリクス・ポターさんが暮らし、『ピーターラビットのおはなし』シリーズの舞台にもなっている湖水地方には、『The World of Beatrix Potter Attraction」というアトラクション施設があります。歩きながら「ピーターラビット」の世界観を体感できる施設で、絵本のシーンが大きな人形で再現されています。湖水地方を訪れたら、必ず足を運ぶまさに“聖地”のようなスポットです。

原田画像2

──今年に入り、今回のようなコンセプトショップのオープンや、全国のおもちゃ美術館と「自然となかよし ピーターラビット™」を開催するなど「ピーターラビット」に関する取り組みが活発化しています。「ピーターラビット」というIPを展開するうえで“Friend to Nature ~ピーターラビットの暮らす自然が、いつまでも守られますように~”というメッセージを伝えていますが、今後はどんな取り組みを考えていますか?

原田:引きつづき、おもちゃ美術館との取り組みも推進していきますし、来年以降も百貨店巡回イベントを計画しています。そういったなかで、“Friend to Nature”というメッセージももっと積極的に発信していきたいと考えています。

■関連記事はこちら
木で育む自然を大切にする心――「おもちゃ美術館」と「ピーターラビット™」が届けるメッセージ【前編】(新しいタブで開く)
木で育む自然を大切にする心――「おもちゃ美術館」と「ピーターラビット™」が届けるメッセージ【後編】(新しいタブで開く)

また、11月には“Friend to Nature”をテーマにした東京メトロのスタンプラリーが始まります。各駅をめぐりながら、「ピーターラビット」やビアトリクス・ポターさんのメッセージを知っていただき、自然の大切さについて考えていただく機会になればと考えています。

『ピーターラビット™東京メトロ スタンプラリー』キービジュアル画像

もちろん来年度以降も、全国規模でのイベントを実施していく予定です。まだ具体的にはお話しできませんが、ユニークなコラボも決まっていて、来年はもっといろいろなところで「ピーターラビット」に触れていただけると思います。

さらに先の話ですが、2026年にはビアトリクス・ポターさんの生誕160周年の記念の年を迎えるので、2025年ごろから少しずつ取り組みを広げていこうと、今から計画しているところです。2022年は絵本『ピーターラビットのおはなし』出版120周年だったので作品にスポットを当てましたが、今度は原作者であるビアトリクス・ポターさんに焦点を当て、彼女の絵や自然保護活動を取り上げる“原点回帰”の取り組みができたらと思います。今後の展開も、ぜひ楽しみにしていてください。

「ピーターラビット」のトラディショナルなイメージに和モダンを追加

さらに、SCPとともに『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』の企画・運営に携わる株式会社寺子屋の担当者、森田安紀氏にもショップにかける思いを聞いた。

――京都店のオープンより先行して軽井沢店が7月にオープンしましたが、現場でお客様の反応を見て、反響はいかがですか。

大変好評をいただいていて、修学旅行の学生の方々からご年配の方、さらには外国人観光客の皆様にも大変喜んでいただいています。コロナ禍で一度仕切り直しになったプロジェクトですが、無事にオープンできて本当に良かったなと思っています。

――来店された方々の反応や感想のなかで、何か印象に残っているものはありますか?

「グッズの種類が多くてびっくりした」というお声は、よく聞こえてきました。オリジナルアイテムも含めて、種類の豊富さとクオリティには自信を持っていますので、ファンの方に、一度は訪れていただく価値のあるショップになっていると思います。

――寺子屋は「ピーターラビット」以外にもキャラクター起用した店舗を展開されていますが、『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』はどういったコンセプトで開発されたのでしょう。

SCPの原田さん、鹿間さんとお話して“ピーターラビットのふるさと、イギリス湖水地方をイメージさせるショップ”というコンセプトがまず決まりました。その上で、我々としては「ピーターラビット」で描かれている豊かな自然と日本の和を融合させるイメージで、イギリスの代表的な焼き菓子と紅茶やコーヒー、そして限定のグッズをお客様にご提供していきたいと考えております。

森田氏画像1

――店舗の企画について、特にこだわった点を教えてください。

「ピーターラビット」は、絵本が出版されてから120年以上という長い歴史を刻んでいるトラディショナルなIPですから、現代の和モダンの世界観を融合させることについては特に意識しました。その上で、店舗開発、商品開発はSCPの皆さんと一緒に取り組ませてもらったので、我々だけの視点ではなく、権利元の妥協のない視点もしっかり含まれたクオリティが実現できていると思います。実際に店内を見て、その融合が生み出す空間を感じていただきたいですね。

――店舗だけではなく商品デザインにもこだわったとのことですが、軽井沢店で注目されているグッズやメニューはなんでしょうか。また、京都店のおすすめや見どころを教えてください。

軽井沢店では、パティシエの手作りで、当店限定のスコーンやクッキーなどの焼き菓子、リバティの生地で作った布小物が人気ですね。ショップの壁面のウォールアートもフォトスポットとして大変好評です。

京都・二寧坂店は、店内に設けている中庭のイートインスペースが特徴です。コーヒー、紅茶、カフェラテ、そしてなんといっても京都のパティシエが手作りで焼き上げた焼き菓子を、ぜひ、この中庭で楽しんでいただきたいです。二寧坂は清水寺につづく道で、お店もたくさん並んでいる観光スポットですから、歩き疲れたときの憩いの場にもご活用ください。

京都店テラス画像

――「ピーターラビット」だけが強調されているわけでなく、彼らが自然と佇んでいるような、落ち着いた素敵な空間ですね。さきほど軽井沢店の反響もお聞きしましたが、お客様の反応やグッズの販売状況など、寺子屋で運営されているほかのキャラクターショップとの違いはありましたでしょうか。また、『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』の立ち上げに携わって、改めて「ピーターラビット」というキャラクターに、どのような感想を持たれましたか。

単純な比較は難しいですが、お客様が商品を手に取り、よく吟味をされながら時間を掛けてお買い物を楽しまれている印象を受けました。その上で、グッズの種類も豊富ですから、たくさんお買い上げいただいているのが特徴だと思います。

また、「ピーターラビット」は魅力的なデザインアートが数えきれないほどたくさん存在するのと、IPの商品開発において厳正なアプルーバル申請で進行される手順に、作品の世界観の奥行きを感じました。

これはお恥ずかしい話なんですが、私は「ピーターラビット」の絵本を今までしっかり読んだことがなかったんですね。ですが、今回、担当をさせていただくにあたり、読み込ませてもらったら、すごく内容の濃い物語だということに気づきました。この素晴らしい作品のコンセプトショップに携わることができて光栄に思います。

――寺子屋の皆様は観光地におみやげ屋さんをはじめとする、さまざまなバリエーションの店舗を出店されていますが、これはそれぞれの地域としっかりとしたコネクションがないと、実現できるものではないと思います。そのなかでキャラクターを交えながら出店規模を拡大させるビジネスアイデアはどのように確立されてきたのでしょうか。

我々は、北海道から九州まで日本全国の有名な観光地に出展させていただいていますが、このような展開ができるのは、日本で愛されているキャラクターたちが世界中の方からも愛されている証拠だと考えています。多くの人から愛されるキャラクターたちは、カテゴリーショップやお土産屋さんなどさまざまな形、場面でビジネス展開するチャンスがあるのではないかと考えました。

森田氏画像2

また、実際にこのようなお店を出店することで、その地域全体との交流がより活発にできるということも感じています。そこで密なコミュニケーションをはかれると、その土地で必要とされているお店のイメージも知ることができるので、地域の皆さんに助けていただきながら、ビジネスを拡大できているなと実感しています。

――最後に「ピーターラビット」のファンの皆様に、メッセージをお願いします。

『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』では、「ピーターラビット」の歴史ある素晴らしい世界観を、日本の観光地を通じて、世界中の方々に発信していきたいと考えております。軽井沢や京都にお越しの際には、是非ともお立ち寄りくださいませ。スタッフ一同、心よりお待ちしております。

二寧坂店前画像(左から原田、森田氏、鹿間)

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

関連サイト

『Peter Rabbit™ SHOP&BAKES』公式サイト
https://peterrabbitshopandbakes.jp/(新しいタブで開く)
 
ピーターラビット™日本公式サイト
http://www.peterrabbit-japan.com/(新しいタブで開く)
 
ピーターラビット™日本公式サイト“Friend to Nature”特設サイト
http://www.peterrabbit-japan.com/nature(新しいタブで開く)
 
ピーターラビット™日本公式Instagram「ピーターラビット™のいる暮らし」
https://www.instagram.com/peterrabbit.jp/(新しいタブで開く)

(TM) & © FW & Co.,2023

連載キャラクタービジネスの心得

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!