『スヌーピーミュージアム』リニューアルで165点のグッズが新登場! おすすめポイントを聞く【前編】
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ソニー・クリエイティブプロダクツ
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キャラクタービジネスを手がけるうえで、知っておきたい心得をその道のプロたちに聞いていく連載「キャラクタービジネスの心得」。
今回は、1969年から50年以上にわたり、子どもたちに向けて良質なコンテンツを届けてきた『セサミストリート』とソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の取り組みにフォーカスする。
2023年11月30日にオープンした世界唯一のオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」について紹介するとともに、『セサミストリート』が伝えるメッセージ、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン:多様性、公平性、包括性)への考え方をお伝えしていく。
後編では、『セサミストリート』を通した啓発活動、今こそ子どもたちに伝えたい大切なことについて語ってもらった。
曽我謙介氏
Soga Kensuke
セサミストリートジャパン合同会社
吉田麻鈴氏
Yoshida Marin
セサミストリートジャパン合同会社
曽根 基
Sone Hajime
ソニー・クリエイティブプロダクツ
──(前編からつづく)ここからは、『セサミストリート』のDE&Iについて伺います。これまでDE&Iに関してはどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。
曽根:2023年は“We Belong / For Each Other(お互いのために)”をテーマに活動を行ないました。
毎年4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーなのですが、『セサミストリート』では、5年前から東京タワーでの啓発イベントに毎年参加しています。会期中は東京タワーが自閉症のシンボルカラーであるブルーにライトアップされるほか、今年は『セサミストリート』と東京タワーのコラボイベント「We Belong」を実施しました。
期間限定ポップアップストアや移動物販車「セサミストリートトラック」を出店したり、東京タワーを彩る333匹の鯉のぼりのうち、40匹を『セサミストリート』の鯉のぼりにして多様性を表現したりと、さまざまな取り組みを行ないました。
さらに、NHK Eテレの番組に出演中の5人組SDGs子どもユニット・ミドリーズが、『セサミストリート』のキャラクターとともに世界自閉症啓発デー日本実行委員会公式ソング「We Belong わたしたちのうた」を披露するライブパフォーマンスも行ないました。『セサミストリート』には自閉症の特性があるジュリアも登場するので、エルモたちと一緒に啓発メディアイベントを盛り上げることができて良かったです。
──取り組みへの反響はいかがでしたか? 『セサミストリート』の理念が浸透していると感じたエピソードなどがあれば教えてください。
吉田:私が一番印象に残っているのは、2022年の世界自閉症啓発デーに合わせて公開した「THE FIRST TAKE」です。日向坂46のメンバーの方々と『セサミストリート』のエルモ、クッキーモンスター、ジュリアがコラボレーションしたのですが、その際ジュリアが自閉症だという説明は入れなかったんですね。
“『セサミストリート』の仲間として「THE FIRST TAKE」に参加した”というシンプルな打ち出し方でしたが、「ジュリアは自閉症のキャラクターだよね。この子がここにいることで、多様性を表現しているんだ」といったコメントが視聴者の方からあって。そういう声が自然とあがっていることが、価値ある変化だなと思いました。
セサミストリート×日向坂46 - 上を向いて歩こう / THE FIRST TAKE
──コメントがたくさんついていましたね。
吉田:そうなんです。“自閉症だからその場にいる”のではなく、“みんながいる場にその子がいる”ということに対して、たくさんのポジティブなリアクションをいただいて。「その人の個性を尊重するって自然なことで、大切なことだよね」と発信していただき、とてもうれしかったです。
──SCPでは、さまざまなIPを通じてサステナブルなメッセージを数多く発信しています。やはりキャラクターを通すことで、メッセージも伝わりやすくなるのでしょうか。
曽根:そうですね。キャラクターによってマッチするフィールドは異なりますが、『セサミストリート』では多様性を強く訴求するなど、IPの特性に合わせたメッセージの打ち出し方があると考えています。
それに、キャラクターを介すことでメッセージが柔らかく伝わり、咀嚼しやすくなる一面もありますよね。「差別をなくそう」と直接伝えることもできますが、キャラクターたちが語りかけることでメッセージが子どもたちにスッと入ってくるのではないでしょうか。
『セサミストリート』のジュリアも、自閉症が彼女のアイデンティティということではなくて。ジュリアという子がいて、彼女には自閉症という特性がある。あくまで主語は“ジュリア”であるということなんですね。『セサミストリート』を通して、そういったこともわかりやすく伝わると思います。
吉田:『セサミストリート』の世界観のなかで語られるからこそ、それぞれの違いや多様性について考えやすいと思うんです。「エルモやクッキーモンスターは私たちと見た目がまったく違うけれど、興味が似ているな」、「アビーのお家は、両親が離婚して再婚後に兄弟ができたんだ」と自分や周りの子の事情とキャラクターを重ね、「自分が『セサミストリート』の世界にいたら、こんなときどうするだろう」と考える。そして、それを実生活に置き換えてみる。こうした循環から子どもたちに多くの学びを得てもらえたらと考えています。
曽我:2022年には、東急電鉄沿線の主要駅で『セサミストリート』のキャラクターを使ったカルタをモチーフにした広告が登場しました。いろいろなキャラクターが登場し、“おたがいのおきにいりであそぼう”“みんなともだちになれるよ”といったメッセージを伝えたんですね。
それをご覧になった方々が「『セサミストリート』には、こんなキャラクターもいるんだ」「このメッセージ、良いよね」とSNSなどで発信してくださり、我々としても『セサミストリート』に触れていただくだけでなく、皆さんがいろいろな気づきを得てくださったことに喜びを感じました。
ほかにも、東京都人権プラザの子どもの人権に関する展示のナビゲーターに、『セサミストリート』を採用していただきました。“人権とは何か”“子どもはこういった人権に守られている”と伝えたくても、子どもの場合、こういった複雑なテーマについては文字だけではなかなか頭に入ってきません。それがキャラクターを通すことで、より身近なものとして理解してほしいと思い、それぞれの活動を行なっています。
こうした取り組みができるのも、ライセンシングエージェントであるSCPの皆さんがSWの理念をしっかり理解してくださっているからこそだと感じています。
──2021年にライセンス契約した際、お互いの理念について話し合う機会があったのでしょうか。
曽我:「『セサミストリート』と、こういう取り組みを行ないたい」という非常に分厚い提案書をいただきましたね。SWの理念を具体的なプランに落とし込んで提案していただき、我々としてもすごく想像力をかき立てられたのと同時に、とても興奮したのを覚えています。
曽根:やはり僕ら世代からすると、「『セサミストリート』=英語教育のテレビ番組」という先入観があります。でも、IPを深く知るにつれ、それだけではないということがわかりました。
『セサミストリート』は、多様性について世の中が話題にする前からその重要性を伝えてきました。ようやく時代が『セサミストリート』に追いついてきたのだと思います。そして、そういった側面を打ち出せば『セサミストリート』ならではの展開ができると考えました。
もちろん、SCPはビジネスとして『セサミストリート』に関わるわけですから、SWの理念やメッセージを大切にしつつ、「セサミストリートマーケット」をはじめビジネス面での取り組みについても、さまざまなご提案をさせていただきました。
──改めて『セサミストリート』は1969年の番組放送開始当初から、多様性について標ぼうされてきました。そのうえで、時代に合わせて常に意識をアップデートする必要性があると思います。意識のアップデートという点で、SWの皆さんが何か取り組みをされていることがあれば教えてください。
吉田:近年、SWではDE&Iオフィスを開設しました。これまでコンテンツ制作に携わってきたスタッフのなかからDE&Iを取り仕切る担当者が選出され、全員が一から研修を受け直しています。また、コンテンツ、グッズ、カルチャーや人に関する取り組みはすべて審査委員会を通すようプロセスも一新しました。
象徴的だったのは、番組で「差別と憎しみは人を傷つける。絶対にいけないことだ」というメッセージをストレートに打ち出したことです。これまで『セサミストリート』では、キャラクターの背景などに多様性を加え、ある意味遠回りな方法で多様性を伝えることが多かったんですね。
例えば青や黄色のキャラクターを登場させることで、いろいろな肌の色の人がいることを伝えてきました。ですが、近年は黒人や韓国系アメリカ人など、子どもたちがパッと見て「あ、自分と同じだ」とわかるようなキャラクターも登場させています。
その背景には、やっぱり「ダメなものはダメ」とはっきり言わなければいけないという強い想いがあるからです。「みんなと仲良くしよう」「みんなで素敵な場所を作ろう」ということも当然伝えつづけますが、状況によっては「君が取った行動はいけないことだ」としっかり伝えなければならない。そこに、長くつづいている差別の歴史を、今ここで断ち切らなければいけないんだというSWの強い思いを感じました。
──それでもやはり差別は根絶できず、世界では紛争が絶えません。事実としては知っていても、真実はわからない事象もたくさんあります。そこを変えられるのが教育だと思いますが、『セサミストリート』というIPが果たすべき役割についてどうお考えでしょうか。
吉田:今でこそ「多様性を尊重しましょう」という言葉があちこちで語られるようになりましたが、『セサミストリート』は開始当初から番組内の街並みで、いろいろなキャラクターが共存する多様性を当たり前のものとしてきました。
それまでアメリカでは、テレビは白人社会の人たちが映し出される場でした。でも、そうではなく、自分の身の回りにはいろいろな人がいるじゃないかとリアルに表現してきたのがこの番組であり、その考え方は現在に至るまでずっと受け継がれています。
そんななか、2020年にアフリカ系アメリカ人が白人警察官に首を圧迫され、死亡する事件が起き、人種差別反対運動「Black Lives Matter」が広がっていきました。このころから、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン:多様性、包括性)」の考え方に、「E(エクイティ:公平性)」が加わるようになりました。
私がコンテンツを作るなかで感じているのは、多様性があるからこそ、教育の機会を公平に与えなければならないということです。暴力、差別はすべていけないことだと伝えながら、次の時代を生きていく子どもたちにしっかり考える力、自分たちで答えを見出す力を身につけてほしい。考える力、問題解決力、コミュニケーション能力など、真実を追究する力だけではなく、全体を俯瞰できる力を養ってもらえたらと願っています。
──ほかに、子どもに多様性をわかりやすく伝えるうえで、どのような工夫をしていますか?
曽我:字幕や吹替では、子どもにもわかりやすい言葉を使って翻訳するようにしています。また、これは『セサミストリート』全体に通じることですが、「このテーマはまだ子どもが知るには早いよね」と大人が一方的に決めつけず、フィルターをかけずにすべての情報を伝えていくよう心がけています。ただ、その際には大人目線ではなく、子ども目線で伝えることを注意していますね。
吉田:『セサミストリート』では、その国の文化やニーズに応じたコンテンツを提供することを大切にしています。例えば日本では「同じ地域で育った身近な子でも、正月に食べるお雑煮の味は全然違うよね」など、ごくごく日常的なことからも多様性に気づくようなストーリーにローカライズして伝えています。
もうひとつ大事にしているのが、エビデンスに基づいたコンテンツを提供することです。日本でも早稲田大学をはじめとする大学の先生方に監修していただいたり、自閉症について扱うときは厚労省に確認していただいたり、各国でエビデンスに基づくコンテンツを提供しています。
──SCPとしては、今後、『セサミストリート』のIPビジネスを拡大しつつ、DE&Iにどのように取り組んでいきたいと考えていますか?
曽根:『セサミストリート』はまさしく多様性のコンテンツで、ほかのIPとも共存しやすいのが特徴です。いろいろなキャラクターやアーティストと同じ画面に収まることができるんですね。
『おかあさんといっしょ』とコラボできたのも、こうした理由からです。YOASOBI with ミドリーズの「The Swallow ツバメ~ワールドバージョン」でコラボするなど、ソニーミュージックグループならではの取り組みができるのも大きな強みですし、これからもどんどん新しい施策にチャレンジしていきたいです。
吉田:『セサミストリート』は、もともと音楽と親和性の高いコンテンツなので、日本でも、ぜひ多くのアーティストとコラボできたらうれしいですね。
曽根:最終的には“『セサミストリート』のフェス“ができると良いですよね。音楽だけでなく、最近はスポーツチームとのコラボグッズも発売していますし、まだまだコラボの可能性は広がりそうです。
曽我:我々は理念を曲げて収益を求めることはありません。ただ、その理念を広く知っていただくためにタッチポイントやビジネスを拡大させる必要はあります。SCPの皆さんにお力添えをいただきながら、新しい領域を見つけていきたいと思っています。
文・取材:野本由起
撮影:干川 修
『セサミストリート』公式サイト
https://www.sesamestreetjapan.org/
「セサミストリートマーケット」公式サイト
https://sesamestreetmarket.jp/
『セサミストリート』日本公式チャンネル
https://www.youtube.com/sesamestreetjapan
ソニー・クリエイティブプロダクツ 公式サイト
https://www.scp.co.jp/
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