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アーティスト・和田永の魅力を解く――マネージャーが語る異才の素顔【特集第3回】

2018.12.5

Interview

注目ワード
和田永

Artist/Talent

文化庁の芸術選奨メディア芸術部門で新人賞を獲得し、オーストリアにあるメディアアートセンター「アルスエレクトロニカ」が主催する世界最大のメディアアート賞、Prix Ars Electronicaと芸術と科学の優れた融合に贈られるStarts Prizeにて栄誉賞をW受賞するなど、新進気鋭のアーティストとして国内外から注目を集める和田永。

彼の様々なワークスを追いながら、その魅力に迫る特集第3回目は、和田永の歩みを最も身近でサポートしてきたマネージャーにインタビューを敢行。ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)の髙石陽二に、和田永の素顔を語ってもらった。

学生時代からその才能を開花

ソニー・ミュージックアーティスツ 第2マネジメント本部 チーフ 髙石陽二

ソニー・ミュージックアーティスツ
第2マネジメント本部 チーフ
髙石陽二

――髙石さんは現在、和田永さんのマネージャーを務められていますが、和田さんがSMAに所属されるきっかけは何だったのでしょうか?

髙石:2010年に和田くんが主宰するグループ“Open Reel Ensemble”が面白いから観に行かないか、と当時の上司に誘われたのがきっかけですね。当時は彼も大学生で、“Open Reel Ensemble”も5人組でした。その“Open Reel Ensemble”は、2009年に第12回文化庁メディア芸術祭協賛事業の学生CGコンテストで入賞も果たしていたというのもありますが、何より見た目にインパクトがあって非常に面白いなと。

2010年当時、和田くんは他に、テレビのブラウン管を叩いて演奏する“Braun Tube Jazz Band”というプロジェクトで、第13回文化庁メディア芸術祭のアート部門の賞を受賞していて、「10年にひとりの逸材」と評判だった和田くんのパフォーマンスに僕も惚れ込んでいたので、「誰か彼を担当しないか?」という声に、真っ先に手を挙げたんです。他にも彼を担当したいという人間は社内に何人かいましたね。

――「10年にひとりの逸材」と言われるのは、彼の作品に触れるとよく分かりますね。

髙石:和田くんは学生時代から、メディア芸術祭を筆頭にアーティストとしても既に有名でしたからね。僕も後から知ったのですが、和田くんとソニーミュージックグループとの付き合いは、じつはかなり古くて。彼がまだ中学生だった時代にも、ソニー・ミュージックパブリッシングにデモテープを送ってきていたんです。まさに早熟の天才ですよね。

――それはどんな音源だったのでしょうか?

髙石:その音源の存在を知って聴いてみたのですが、とても繊細で美しいインストゥルメンタルミュージックでした。しかも音楽性もとてもしっかりしている。今、彼が手がけているノイジーでインパクトのある家電楽器からは、ちょっと想像つかないかもしれません。その楽曲性もあって、ソニーミュージックグループ内では和田くんの才能に注目が集まり、その後もフォローし続けて、今に至ったという経緯があります。

Open Reel Ensemble
和田永(写真中央)、吉田悠(写真右)、吉田匡(写真左)の3人で2009年に結成された、古いオープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏する異色のグループ。オープンリールを「過去という異国からやってきたひとつの民族楽器」として捉え、コンピュータも取り入れながら、日々、新たな奏法を生み出している。

――学生時代から、才能を開花させていたんですね。

髙石:和田くん自身は、自分の生い立ちやヒストリーを積極的に表に出してはいないのですが、彼が卒業した中学・高校は、アーティストを多く輩出している一貫校。同じSMAのOKAMOTO’Sとは先輩・後輩の仲ですし、何より、“Open Reel Ensemble”のメンバーである吉田匡くんは、元OKAMOTO’Sです。さらに余談ですが、学生時代の和田くんは、生徒会長も務めたことがあるそうですよ。

子どもがそのまま大人になったようなピュアな感性

――髙石さんは、和田さんのアーティストとしての才能に惚れ込んでマネージャーに志願したされたとのことですが、和田さんの人間的な魅力はどこにあると感じていますか?

髙石:最大の魅力は、子どもがそのまま大人になったような純粋な感性の持ち主であるということですね。そして、ものづくりに対する意欲がとにかくすごい。彼の美術大学時代のエピソードを聞いたことがあるんですが、学校に来ると一日中、コツコツとひとりで何かを作っていて、気がついたら姿が見えなくなっていたりと、個性的な美大生が揃っている大学のなかでも、特別異色の存在だったそうです。

その独創性、精力的でありながら狂気的に活動に取り組む姿勢は、今もまったく変わっていません。ものづくり以外には、ほぼ興味がないんじゃないかというぐらいです(笑)。彼の才能を評価してくれるアーティストもたくさんいるのですが、欲がないというか、本当にマイペース。見ているこちらが慌ててしまうほどです(笑)。

――SMAでも和田さんのようなタイプのアーティストは珍しいのではないでしょうか。

髙石:そうですね。一応彼の表現の一環に音楽があり、実際に制作しているものも“電気”“家電”“電磁”という特別なキーワードがありますが、すべて楽器なんですよ。和田くん自身も打ち込みだけでなくギターを弾いたり、鍵盤を弾いたりできますので、所属はSMAの音楽セクションなんですが……手がけていることは既に、一般的に考え得るジャンルを軽々と超えてしまっていますよね。“Open Reel Ensemble”も“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”も、国内外で「メディアアート」としてたくさんの賞を受賞しているので、和田永=メディアアーティストと言うこともできますし、やっていることは音楽なのでミュージシャン/アーティストとも言える。

実際、海外で彼の活動が紹介されるときは、「サウンドアート」「デジタルアート」「メディアアート」「バンド」と、ジャンルもバラバラなんですよ(笑)。だからこそ面白い。既存のミュージシャン、アーティストができないこと、やらないことを、ナチュラルに実践できているのは、本当にすごいことだと思います。

――和田さん自身は、ご自分の活動をどうカテゴライズしていらっしゃるんでしょうね?

髙石:それは確認したことがなかったですね(笑)。ただ、今年の春、芸術選奨を受賞した際にこちらでインタビュー(参考記事:「芸術選奨受賞! 旧家電を楽器に転生させるアーティスト和田永の世界」)をしてもらったときに、彼が自分の脳内の世界観を語ってますが、本当に和田くんのクリエイティブの源は独創的なんです。

最近の“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”の活動では、古い家電を蘇らせることによる“祝祭”などがキーワードになっているのだと思いますが、既存のカテゴリーでは命名できないでしょうし、図り知れないのではと思います。

ただ、本人としては、まず「音の出るものに反応する」ことがあり、「人前で何かをする」「人と一緒に何かをする」ことが好きなんだろうと思いますね。その志向とものづくりへの欲求が融合して、今がある。これは僕の想像ではありますが、やはり音楽アーティストとしての欲求も高いのではないかと。楽器を演奏することは好きだし、曲を作ることにも積極的ですしね。

――“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”のように、前代未聞の音楽活動に多くの賛同者が集まる、そのカリスマ性も和田永のアーティストとしての魅力ですよね。

髙石:はい。まさにそうで、和田くんの人間力の強さ、カリスマ性はずば抜けています。クールな頭脳とあふれ出るパッションのギャップと、人間としての力強いピュアさが、人を惹き付けてやまないんですよ。僕もそこに惹き付けられているひとりです。

そしてマネージャーとしては、この“人間として一緒にいて楽しい”というのが、圧倒的なビジネスポイントにもなる。和田くんは自分で人を動かすわけじゃないんです。面白い和田くんが動けば、それを面白がって引き寄せられる人が、自然と周りに集まってくる。その代表例が、“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”。誰もが和田くんと一緒に“遊べる”から、一緒に家電楽器を作り、演奏するNicos Orchest-Labのメンバーが、今では東京、京都、日立で合計70人ほどいて、各地で自主的に活動を広げていっています。

和田くんの“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”の活動は、まず面白い人、アイデアを持つ人を見付けるために、現地に滞在して楽器創作やワークショップを行なう滞在型から始まったプロジェクト。それも誰もが「和田くん、面白いよな」と思う“人を巻き込む力”が、彼に天性として宿っているからでしょうね。もしも“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”に興味のある方は、Facebookページに気軽にコメントをいただければと思います。

海外からのオファーも殺到! 和田永の今後は?

――様々な方面で注目される和田さんの活動ですが、今後はどのような展開を考えていますか?

髙石:具体的なことから言うと、“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”に関しては、今年は11月に行なわれた鉄工島フェスを含め、年内もいくつかのイベントに出演していますし、12月にはYahoo! JAPAN Hack Day 2018への出演も決まっています。今後も、様々な場所、機会で“エレクトロニコス・ファンタスティコス!”は活動していくと思います。

“Open Reel Ensemble”に関しては、現在あまり活動は活発ではありませんが……5人体制時の過去の活動は、アルバムも出ていますし、「回典: En-Cyclepedia」(学研)という書籍にもまとまっていますが、3人体制になってからはライブが主体で、まだ作品と言えるものを世に出していません。来年くらいを目標に、映像や音源を作品化したいですし、ワンマンライブも企画中です。

そしてアーティスト和田永個人としても、海外からのオファーが非常に多いんです。彼も多くのプロジェクトに携わっていますし、全国を飛び回りながらものづくりをしているのでかなり忙しいのですが、できるだけ柔軟に対応していきたい。和田くん本人も面白そうなことはウエルカムな人なので。

――髙石さん個人としては、和田さんに今後、どのようなアーティストになってほしいですか?

髙石:「今のまま」でいてほしいですね。既に「アーティスト」としては、トップランナーとして成功していると思うんです。正直なことを言えば、現状、ビジネスとしてはまだまだ成長過程なので、今の良さのままでどう進めて行けるか? というのは課題のひとつですが、僕はそれも時間の問題だと思っています。和田くん自身も、近年の活動にはかなり手応えを感じていると思いますし、アートとものづくりを融合する彼の姿勢は、これからどんどんマジョリティに訴えていける力を持っています。今も水面下で、様々な企画やプロジェクトが動き出そうとしているので、来年以降の活動もぜひ楽しみにしてください。

和田永の公式サイト
和田永の公式Twitter
和田永の公式Facebook

Open Reel Ensembleの公式サイト
Open Reel Ensembleの公式Twitter
Open Reel Ensembleの公式Instagram
Open Reel Ensembleの公式Facebook

エレクトロニコス・ファンタスティコス!の公式サイト
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文・取材/阿部美香
撮影/篠田麦也

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