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連載Cocotame Series

次世代ロック研究開発室

京都発! アートな感性とノスタルジーが融合した超個性派バンド『バレーボウイズ』

2018.10.01

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次世代を担う先鋭的なアーティストを世に放つマネジメント&レーベル「次世代ロック研究開発室」(以下、次ロッ研)の特集第3回は、京都精華大学の卒業生を中心に結成された、京都在住の男女混成6人組バンド「バレーボウイズ」をピックアップ。

京都のバンドらしい独自の音楽性とスタイルに魅せられた、次ロッ研A&R/ディレクター・富樫陸さんへのインタビューと、「次ロッ研 presents 第二回研究発表会」でのライブレポートをお届けする。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

バレーボウイズ

写真左から高山燦(Gt)、ネギ(Vo&Gt)、九鬼知也(Gt)、オオムラツヅミ(Vo)、武田啓希(Dr)、前田流星(Vo)。前田とネギが中心となって、京都精華大学の学園祭「木野祭」出演のために2015年結成。哀愁漂う昭和歌謡テイストのメロディーを、男女混声6人組の“合唱”スタイルとはっちゃけたパフォーマンスで届ける。

出会いは“インスタ”の間違いフォローから

ソニー・ミュージックエンタテインメント 次世代ロック研究開発室 富樫 陸

ソニー・ミュージックエンタテインメント
次世代ロック研究開発室
富樫 陸

――富樫さんは、バレーボウイズといつ、どのように出会ったのですか?

富樫:キッカケは本当に偶然なんです。2016年のことなんですが、ある日、僕のInstagramのアカウントにフォローかいいねをしてきた人がいたんです。知らないアカウントだったので、誰だろう? と思って辿ってみたら、知らないバンドの名前が出てきて……。

――それがバレーボウイズだったんですか?

富樫:そうなんです。後で聞いたら、ネギくんが個人のアカウントとバンドのアカウントを間違えて、やっちゃったらしいんですけど(笑)。

――奇跡的な出会いですね。

富樫:本当にそうですね。当時、僕は自分の会社(DUM-DUM)で音源制作やライブ企画、マネジメントなどをやっていたこともあって、彼らがどんな音楽をやっているのか何となく気になりまして。調べてみたら、どうやら京都のバンドらしいぞと。

さらに、SoundCloudやYouTubeに楽曲がアップされていたので、聴いてみたら……すごく良かったんですよね。それで、ライブやイベント制作をメインで担当している同僚が、彼らとコンタクトを取って、東京のライブイベントに呼んでみたんです。

すると、初めての東京でのライブにもかかわらず、50人ほどの動員があって。これは面白いなということで、そこから1年間くらい、つかず離れずの距離感で、彼らの音楽活動をゆるくサポートするようになりました。

――そこからバレーボウイズは、2017年にライブオーディション「TOKYO BIG UP!」でグランプリを獲得。「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」ではROOKIE A GO-GO枠で初出演といった快進撃が続きましたね。『次ロッ研』には、その後、合流することに?

富樫:そうですね。僕が以前、ソニー・ミュージックレーベルズにいたこともあって、その時のつながりで『次ロッ研』側から声がかかり、そんな面白いバンドを見てるなら一緒にやろうということになって、今年1月からバレーボウイズと一緒に『次ロッ研』所属になりました。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

――富樫さんは、バレーボウイズのどこに一番惚れ込みましたか?

富樫:じつに独特で、じつに京都らしいところですかね。“遊びがある”というのかな。

――京都は昔から学生サブカルチャーがずっと根付いていますよね。京都出身のミュージシャンも、くるりを筆頭に10-FEET、モーモールルギャバン、夜の本気ダンスや岡崎体育ら、非常に個性的な顔ぶれが思い出されます。

富樫:バレーボウイズもまさにそうで、世間の流行とは無縁のところで、自分たちの音楽やパフォーマンスを磨いているのが魅力ですね。型にハマらない、しっかりまとめない独特の空気感が、本人たちから自然に滲み出てくる。

やっている音楽も、メロディーや歌詞に青臭さやエモさがこもっていて、完璧ではないのに完成されている。イマドキのバンドに交じると、とても異質で面白い。

京都在住であることが新しさに繋がる

――バレーボウイズの独特な個性は、『次ロッ研』の“尖ったアーティストを世に送り出す”というポリシーにも合致すると感じました。そのオリジナリティは、どこから生まれたのでしょうか?

富樫:やはり京都在住というのは、大きいと思います。京都は若者文化だけを見ても東京とは違い、周りからのノイズが少ない。

とくに彼らが今も暮らしている左京区周辺は、山からサルやシカが降りてくるような、とてものどかな土地で。彼らが東京に出てきていたら、まったく違うバンドになっていったんじゃないかと思います。

――京都という土地柄が彼らの個性を育む。そこが新しいと?

富樫:ええ。また音楽的にも、彼らは一人ひとりの趣味嗜好がまったく違っていて、だから斬新な合唱スタイルが採り入れられたのだと思います。その感覚もまた面白く。本当に雑食なので、すべての要素が重なり合っています。

ソングライターのネギくんは、好きな音楽がARASHIさんだったり、浜田省吾さんだったりと、今の若いバンドとはひと味違う。

だからノスタルジックな歌謡曲感、昭和感もナチュラルに詰め込まれ、ポップスとして伝えられる。そのアティテュードもじつにパンクだなと感じました。音楽に対する姿勢が、天然に“オルタナ”なんですよね。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

――演奏やパフォーマンスには、60年代~70年代のフォークロックテイストや、80年代のニューウェーブテイストもひしひしと感じます。若者は新鮮に受け取り、年配のロックファンは懐かしく聴いてしまいます。

富樫:そうですね。フォークっぽさはすごくあるんですが、ネギくんは純粋なフォークソングを聴いてこなかったというのも、また面白くて(笑)。何かの真似ではなく、すべてが完全にオリジナルとして昇華されているのが、バレーボウイズの魅力だと思います。

――その上で、音楽活動を活発にしていくマネジメント面から考えると、ずっと京都にいることはデメリットではないですか?

富樫:いえ、そうは思わないですね。今は現場マネージャーが、1週間の内ほぼ半分くらいは、京都に住んでいる状態なんですが(笑)、彼らの音楽にとっては、京都で曲作りすることが重要で、今はその体制を崩したくないです。

――それでは富樫さんは、これからバレーボウイズをどう育てていきたいですか?

富樫:2018年は、ライブ活動も非常に精力的にこなしていて、彼らの音楽の届け方にも、大きな変化が見られました。今まではステージの2、3列目くらいまでにしか伝えられてなかったように思いましたが、今は客席の後ろのお客さんにまでしっかり自分たちを伝えよう、歌を届けようという意識が高まってきているように見えます。

そもそもマイペースなバンドなので、ライブでもスロースターターだし、アウェイにも強くなかったですが、そこはどんどん成長しているので、これからも伸びていくと思います。

――具体的な目標は何かありますか?

富樫:基本ですが、まずは良い音源をしっかり作って出す。さらに彼らには、良い意味でのバライエティ感、お茶の間感があるので、紅白歌合戦に出たり、ドラマの主題歌を担当したりといった幅広い活動も視野に入れています。今すぐでなくても、数年後を目標にしっかり成長していってくれればと思います。

そのためにも、彼らの本領が発揮できるライブは一回一回をもっとしっかりとしたライブにしていきたいですし、大きな野外ステージがよく似合うバンドなので、ワンマンもそういうステージでできることを目標にしていきたいですね!

――世代を超えたアピールができそうですね。

富樫:そうですね。若いバンドの成長をサポートしていく上で一番喜びを実感できるのは、やはりライブだと思うので。お客さんの歓声とステージの一体感が生まれ、何かが大きく動く空間、瞬間に立ち会えるのは、A&Rとしての醍醐味です。

とくにバレーボウイズのような個性の塊には、面白い仕掛けを一緒に考えたいという、ワクワクする気持ちが自然と湧いてきます。今後の彼らの活躍を楽しみにしてください。

バレーボウイズ・ライブレポート

「次ロッ研 presents 第二回研究発表会」、2組目に登場したのは、京都在住の個性派バンド・バレーボウイズだ。バンド名からも、ただ者ならぬ雰囲気が漂っている。まずはスクリーンで、彼らの成り立ちが紹介される。ムービーの作りも面白い。

前田流星(Vo)と高山燦(Gt)が住んでいる京都の家にカメラが潜入。京都精華大学の卒業生であるふたりは、シェアハウスで一緒に暮らしながらデザインや作品の制作も行なっているのだとか。バレーボウイズのCDジャケットも高山がデザインしたもの。渋谷WWWで行なわれた自主企画ライブの模様も流れたが、のどかに合唱する彼らの様子は、60年代から70年代の学生フォーク集会を思わせる雰囲気で、芸大生らしいサブカルでユニークなセンスが、そんなところからも漂ってくる。

映像が終わるとアコースティックギターの牧歌的なフレーズが鳴り響き、大所帯のメンバーが配置に着く。前田の「京都から来ましたバレーボウイズです、よろしくお願いします」の挨拶から、7月に発売された2ndミニアルバム『なつやすみ’18 猛暑』のオープニング曲「アサヤケ」がスタート。

アコースティックで西海岸風のクラシカルロック的サウンドにのせたどこか懐かしいメロディーが、フォーキーで分厚いコーラスと融合し、スケールの大きな音楽へと駆け上がっていく。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

昨年、フジロックのROOKIE A GO-GOへの出演も話題となった彼らの音楽は、まさにフジロックのような開放的なフェス空間によく似合いそう。奏でる音の時代感と雰囲気はむしろ、愛と自由とハッピーを謳った60年代末のウッドストック・フェスだろうか。

ドラムがスティックでカウントを刻み、2曲目の「卒業」へ。「♪いつまでたっても 大人になれやしねぇ!」と声を合わせ、エバーグリーンな青春を歌う彼らのルーズでラフなサウンドが、じつに心地良い。

パフォーマンスやビジュアルも、昨今の若いバンドには珍しい泥臭さとアングラな雰囲気が漂っていて面白い。全員、非常にラフないでたちなのだが、なかでも短髪のボーカル・前田が着ているのは、青い3本線のジャージ。顔をしかめ、モニターに足を掛けて前のめりに歌い、飛び跳ねる。紅一点のボーカル・オオムラツヅミは、真っ赤なロングのワンピースを翻し、前衛舞踏のようにひらひらと手を揺らしながら、謎のダンスを踊っている。熱さとクールな見た目のインパクトも独特だ。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

この日は、来場者にバレーボウイズをはじめ、出演した『次ロッ研』所属4組の曲が収録された名刺代わりとなるカセットテープも配布されており、アットホームなMCでは、カセットのジャケットデザインをした高山が、「家に帰ってめちゃめちゃ見てください!」とアピールしていた。

シンとした会場に、深い残響を残すドラムのビートがゆったりと響き、前田が「あと少しですが、全力でやります」と静かに語る。儚さを帯びたアコースティックギターの音にのせて、始まったのは「ひがしのまち」だ。前田の伸び伸びとした歌声に重なるメンバーの力強い“合唱”に、甘酸っぱい想いがわき上がる。スケールの大きなコーラスに、ローファイなエレキギターの野太く歪んだ音が絡み合う。精緻なアンサンブルではないからこそ、突き刺さってくるエモーション。ステージを歩き回るオオムラのパフォーマンスもより激しくなる。

次世代ロック研究開発室 次ロッ研 バレーボウイズ

そして、エモさがクライマックスを迎えたところで、前田が喉を枯らしそうな大声でラストナンバー「人間大好き」をコール。それまで溜め込んだものを一気に吐き出すような、激しいロックンロールナンバーが鳴り響く。前田がカラダを折り曲げながら何度も叫び、ジャンプし、マイクスタンドを蹴り倒す。演奏と合唱はますます激しさを増し、カオティックに魂を放出し続ける。シリアスで静かな熱とアグレッシブでパンキッシュな熱を両立できるのも、バレーボウイズの魅力なのだと実感できるステージだった。

さて、次回の特集4回目は、若干20歳、沖縄出身の新世代ラップヒーロー「Rude-α」の魅力を、『次ロッ研』担当者の生の声と『第二回研究発表会』ステージのレポートでお届けする!

バレーボウイズ公式サイト(新しいタブで開く)

ライブPhoto: Hiroyuki Dozono

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