名古屋文化に精通するライターが『コメダ珈琲店』の魅力を説く
2018.10.04
外部企業
2018年は、ソニーミュージックグループが生まれて50年という節目の年。本連載「50年の歩み ~meets the 50th Anniversary~」は、同じく50年という歴史を歩んだ企業、商品、サービスを取り上げ、その歴史を紐解くことで、「時代」を浮き彫りにするという特別企画だ。
創立50周年を迎えた『珈琲所コメダ珈琲店』の始まりから今後までを語ってもらったシリーズ5。
今回は、「みんなが知ってる“コメダ”のみんなが知らないこと」と題して、「へぇ~! そうなんだ」と手を打ちたくなる「コメダのコネタ」を紹介していく。
みんなが知ってる“コメダ”のみんなが知らないこと<前編>
①『コメダ珈琲店』で落ち着く理由は、山小屋風の内装に隠されている?
②ビジネスニーズにバッチリ応える“都心型コメダ”が渋谷に存在する
③ソフトドリンクの長ぐつグラスは創業者が探し回ったこだわりの一品
④ミックスジュースが入るフォトジェニックな容器、その名は「ダルマグラス」
⑤ブレンドコーヒーのカップは、本格志向の有田焼
『コメダ珈琲店』は、店内の壁やテーブルが木とレンガで構成された山小屋風の内装が印象的。『コメダ珈琲店』で落ち着きを感じる背景には、この木の割合を示す「木視率(もくしりつ)」が深く関係している。
「木視率」とは、室内で周囲を見渡した際、内装として木が見える割合をパーセンテージで示したもの。
この割合が高いほど、人は安らぎを感じてリラックスできるのだという。『コメダ珈琲店』の一般的な店舗の木視率は40%以上。一般的な住宅が約20%と言われることから、単純に倍以上の数値になる。
「コメダ珈琲店 渋谷宮益坂店」の装いは、ほかの『コメダ』とは大きく異なっている。『コメダ珈琲店』と言えば、山小屋風のゆったりとした雰囲気が特徴だが、ここは“ラグジュアリー感のある都心型”。
実際に訪れてみると、おしゃれなガラス張りで、『コメダ珈琲店』共通のウッディ感があまりない。出店場所が変われば、お客さんが求めるものも違う。東京のような都心では、郊外型店舗とは異なる距離感や、くつろぎの空間が必要とされる。「コメダ珈琲店 渋谷宮益坂店」は、その両者を実現するためのモデル店舗なのだ。
ちなみに、『コメダ』の東京オフィスはこの店舗の真向かい。コメダ社員も気軽に利用することで、顧客目線で店舗運営のヒントを得る狙いがあるという。また、自動つり銭機やタッチパネルでのセルフオーダーシステムなど、いままでの店舗にはないサービスも導入して、モデルケースの役割も担っている。
『コメダ珈琲店』のこだわりは、味だけではない。ドリンクを入れるグラスにも、『コメダ珈琲店』ならではのアイテムを使用している。
なかでも、「メロンソーダ」や「クリームソーダ」を入れた “ブーツグラス”は印象的だ。
これは、創業時に食器メーカーとの商談で出された一般的なジュースグラスでは面白みがないと考えた創業者の加藤氏が、「お客様に喜んでもらいたい」という思いで、食器メーカーや百貨店などを回って見つけたものだという。
オレンジジュース、フルーツと牛乳が混ざる「ミックスジュース」、甘夏の果肉がたっぷり入った「サマージュース」――初めて注文した人は、ドリンクが入ったその容器の見た目に驚くだろう。
これらのジュースは、赤い蓋がかぶさった丸いグラスに入って提供される。その名も「ダルマグラス」。レトロ感のある形状は、ブーツグラスに並びかわいいと評判だ。
『コメダ』オリジナルのダルマ型のグラスは、『コメダ』の通販サイトで購入できる。
「ブレンドコーヒー」のカップやソーサーを裏返してみたことがあるだろうか。一見すると普通のカップに見えるが、カップの裏底には“有田焼”の文字が書かれているのだ。コップに描かれた「コメダおじさん」などの絵柄は、職人が一つひとつ転写しているという。
みんなが知ってる“コメダ”のみんなが知らないこと<前編>
⑥「ブレンドコーヒー」には砂糖とフレッシュを入れるのがコメダ流
⑦『コメダ』なら“名古屋式モーニング”を濃く味わえる!
⑧『コメダ』は喫茶店業界で唯一、自社パン工場を持っている
⑨大定番「シロノワール」の生地64層に隠されたこだわり
⑩かき氷なのにバター風味!? 「シロノワール」の味を完全再現した「シロノワール氷」があった
『コメダ珈琲店』で最も親しまれている飲み物と言えば、やはり「ブレンドコーヒー」。全国どの店舗で飲んでも変わらないその味を求めに足を運ぶ人は多い。
この「ブレンドコーヒー」を飲む際に推奨されているのが、「砂糖とフレッシュを入れる」こと。
その理由は、フレッシュにあった。『コメダ珈琲店』で出されるフレッシュは、一般的な植物性油脂のものではなく、高乳脂で品質の高いフレッシュを使用している。しっかりとした味わいのコーヒーに、濃厚なフレッシュと砂糖の甘味が加わることで、バランスの良い味に仕上がるのだ。ブラック派でも飲みやすい、“誰が飲んでもおいしい味”を目指した結果を、ぜひ味わってほしい。
焼きたてのトーストにゆで玉子。これが名古屋の喫茶店では当たり前に存在するモーニングだ。
しかし、『コメダ珈琲店』では、トーストのお供を「定番 ゆで玉子」「手作り たまごペースト」「名古屋名物 おぐらあん」の3種類から選択できる。
「たまごペースト」は毎朝店舗で手作りされている。「おぐらあん」を選べば、自分で小倉トーストを作れる。県外の人は食べる機会の少ない小倉トーストを気軽に食べれらるため人気が高い。
コメダのモーニングでは、開店から午前11時までドリンクを注文すると、無料で焼きたてのトーストとゆで卵がつく。ここに『コメダ』のこだわりが隠されている。無料で食べてもらうものだからこそ、美味しくて品質の良いものを食べてもらいたいという強い気持ちがあるのだ。
そのこだわりを追求した結果、『コメダ』は自社でパン工場を持ち、品質の高い専用の小麦粉を使用して自社製のオリジナルパンを作るまでに。
特に、モーニングで提供される“山食パン”はトーストすることで外はサクッと、中はもっちりとした食感を味わうことができる。美味しさ・品質にこだわった、この“山食パン”のファンは多く、今では持ち帰り販売もしているほどだ(一部店舗をのぞく)。また、耳まで柔らかく仕上げているため、サンドイッチも耳付きで提供している。
カットにも、『コメダ珈琲店』の“ひと手間をかける”こだわりが詰まっている。パンは、スライスすると水分が飛んで劣化し傷みやすくなる。そこでパンを、工場ではなく各店舗でスタッフが1枚1枚スライスしているのだ。
こうしたパンへのこだわりが高じ、ついにはパンを主役としたコッペパン専門店『やわらかシロコッペ』をオープン。全国11店舗(2018年9月20日時点)で、『コメダ』らしいこだわりが詰め込まれた美味しいコッペパンに好みの具材を挟んで味わうことができる。
ちなみに、現在の一番人気の具材は、名古屋の定番「小倉マーガリン」。もちろん、使用している小倉あんは、『コメダ珈琲店』で使っているのと同じものだ。
『コメダ珈琲店』の看板メニュー、「シロノワール」に使われるデニッシュパンも、『コメダ』のパン工場で作っている。通常、デニッシュパンの生地は24層や36層が一般的だが、「シロノワール」ではさらにきめ細かい64層の生地を使用している。
その理由は、きめ細かい生地にすることで、温かいデニッシュパンの上に添えられた冷たいソフトクリームをよく染み込ませるため。デニッシュの甘さと、ソフトクリームのあっさりとした味わいがほど良いバランスを保ち、長年愛されるおいしさが完成するのだ。
毎年、『コメダ』ファンが楽しみにしている期間限定メニューのひとつに、かき氷がある。定番の「いちご」や今夏限定の「マンゴー」、「カフェオレ」など、その年によってさまざまな異なるフレーバーが提供されており、いずれも追加のトッピングでソフトクリームや練乳、ゼリーなどを添えてリッチに楽しむのがおすすめ。
そこで異彩を放っていたのが、味も見た目もアレにそっくりな「シロノワール氷」だ(2018年夏のかき氷で新登場。9月中旬販売終了 ※販売終了時期は店舗により異なる)。
茶色のシロップがかかったかき氷に、ソフトクリームとさくらんぼがトッピングされたその姿は、まさに「シロノワール」。メープル入りの特製シロップを下のかき氷にかけ、上にのったソフトクリームに、実際に「シロノワール」で使用するメープル風シロップをかけている。
ひと口食べると口いっぱいにバターの風味が広がり、かき氷なのに「シロノワール」を食べている感覚に。夏の定番かき氷と『コメダ』の定番を組み合わせた新境地が開拓された。
みんなが知ってる“コメダ”のみんなが知らないこと<前編>
⑪「ターゲット層はありません」あえて決めないそのこだわりとは?
⑫子供向けの絵本のラインナップが豊富な『コメダ』がある。そのワケは?
⑬すべての常連客の好みを完璧に記憶する、レジェンド店長がいた
⑭『コメダ』の応接室――そこはまさに『コメダ珈琲店』だった
⑮社長が密かに『コメダ』の店舗でコーヒーを淹れている
「どういう客層を狙っていますか?」
「いや、客層なんて狙ってないよ。誰でも利用できるお店にしたいんだ」。
これは、当時の経営コンサルタントと創業者・加藤太郞さんとの会話だ。
飲食店に関わらず、何かビジネスを始める際は、サービスを提供する相手となる“ターゲット”を定めるのが基本中の基本。しかし、『コメダ』は違った。誰にでもくつろいでもらえるように、あえてターゲット層を定めないのだという。
老若男女問わず、気取らずのんびりできる場所としてありたい、そう心から願う想いがこのエピソードからうかがえる。
『コメダ珈琲店』には、自由に読める新聞や雑誌が棚にズラリと並んでいるが、そのラインナップは店舗によって異なる。
それは、“主要な新聞や雑誌を揃えつつ、その地域の特性に合った”ものを置くことを方針にしているから。
実際、近所に幼稚園や保育園がある店舗には、子ども向けの絵本が多数取り揃えられている。ほかにも、地域によって異なるスポーツ新聞(名古屋なら中日スポーツ、関西ならデイリースポーツなど)も置いてある。
「あっ、あのお客様は熱いのが苦手だから気をつけて」。
『コメダ珈琲店』には、長年通う常連客が多い。その一人ひとりの定番オーダーを覚えているレジェンド店長も存在する。記憶した常連客の数は100人以上。
「ブレンドコーヒーとピーマン抜きのミニサラダのお客様」、「バターなしのパンとフレッシュなしのブレンドコーヒーのお客様」など、常連客の細かな好みまで記憶しているというのだから恐れ入る。
記憶しているその情報は、ほかの店員にも共有され、よく焼いたトーストにジャムを付けるお客さんが来店すれば、すぐに出せるよう、先回りして準備を始めたりもしているそうだ。
大きめなテーブルに1人掛けもしくは2~3人掛けのソファが置いてある部屋。会社の応接室を連想しなさいと言われれば、多くの人がそういうイメージを持つだろう。
しかし、『コメダ』の応接室は一味違う。応接室そのものが『コメダ珈琲店』なのだ。
フカフカの赤いソファーに木のテーブル、そしてウッディーな壁――まさに“いつものコメダ珈琲店”がそこにはある。「お店にいるようにお客様にくつろいでもらえれば」という言葉通り、取材であることを忘れて、ついついリラックスしてしまう空間であった。
2013年に就任以来、『コメダ珈琲店』の社長、臼井興胤(うすいおきたね)氏は週に一度は某店舗でコーヒーを提供しているという。なぜ、社長が現場に立ち続けるのだろうか。
その理由は、接客などの数値やデータだけではわからない現場の実態を知るためだという。元旦には厨房で皿洗いをしたり、店の前で温めた甘酒をお客さんに振るまったこともあったという。「現場が命」という信念のもと、この毎週の現場仕事がこれからも続いていく。
次回は、名古屋文化に詳しいライター・大竹敏之氏による、名古屋の喫茶文化からコメダの見どころまで、おすすめメニューの試食レポとともに紹介していく。
取材/文:中川美紗(ゴーズ)
撮影:増田慶
掲載されている価格(税込)は、名古屋本店のものです。
価格は店舗によって異なります。
詳しくはコメダ珈琲店公式Webサイトをご確認ください。
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