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連載Cocotame Series

新感覚の実写VR+立体音響コンテンツ『ダミヘになれるVR』開発チーム座談会

2019.04.25

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ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)とソニー株式会社(以下、ソニー)、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)などグループ各社が協力し、ノンゲームのVRコンテンツの実証実験や開発を行なう「Project Lindbergh(プロジェクト・リンドバーグ)」が生んだ、新感覚の“VR+立体音響コンテンツ”が話題を呼んでいる。その名も『ダミヘになれるVR』。

プレイヤーはVR映像によってダミーヘッドマイク(以下、ダミヘ/立体音響収録用マイク)になった気分を味わいながら、イケメンキャラクターが登場する立体音響音声ドラマや、人気男性声優が演じる収録現場の様子を鑑賞できる。本作は3月にスマートフォン版がリリースされ、5月10日にはいよいよPlayStation®VR(以下、PS VR)版が発売される。

臨場感あふれる映像が楽しめるVRモード開発エピソードを、発案者でありプロデューサーのSME・原田絵美、VR監修を手がけたSIE・姜美希さん、制作ディレクターの面白法人カヤック・岩田慎吾さん、VRコンテンツ開発エンジニアの面白法人カヤック・奥村檀さん、制作進行の面白法人カヤック・弘中ちひろさんに語ってもらった。

 

『ダミヘになれるVR』の斬新さはPS VRにとっても新たなチャレンジに

──Cocotameでは、「漫画家・倉橋トモとプロデューサーが語る『ダミヘになれるVR』の楽しみ方」対談で、原田さんの企画立案当初のお話を伺いましたが、そこでお話されていた、Project Lindbergh内で興味を示してくれた最初の方というのが、SIEの姜さんだったそうですね。

SME Project Lindbergh 原田絵美

原田:そうなんです。姜さんがSIEを通じて、『傷物語VR』や『キングダム ハーツ VR エクスペリエンス』などのVRコンテンツ開発に長けたカヤックさんを紹介してくださり、PS VR版の開発をお願いすることになったんです。

──『ダミヘになれるVR』はとても斬新な発想のVRコンテンツだと思います。最初に原田さんから企画を聞いて、皆さんはどう思われたのでしょうか。

姜:“面白い企画が来たな!”と思いました(笑)。Project Lindbergh内でもさまざまなVRコンテンツ企画を考えてきましたが、それまでの企画は技術ファーストのものが多かったんです。3Dステレオで人物を撮影すれば、VRヘッドセットを装着することで、近くにいないはずの人が近くに感じられる体験ができます。そういう技術は存在しますが、それにどういうコンテクストを付加して味付けをしたらコンテンツ化できるかを、悩んでいた時期でした。そこに原田さんが『ダミヘになれるVR』の企画を提案されてきて、「これなら技術を活かせる!」とワクワクしました。

原田:最初から反応してくれたのは姜さんだけでしたね(笑)。

姜:声優さんを起用することで、声優ファンという新たなPS VRのユーザー層獲得にもつながる、VRコンテンツとして新しさを感じました。

SIE 姜美希さん

岩田:僕は、自分のなかからは絶対に出てこない企画だと感じました。VRの女性ユーザーに向けての大きなチャレンジだなと。カヤックとしても、VRコンテンツには力を入れているので、挑戦したいタイトルだと感じましたね。

カヤック 岩田慎吾さん

面白法人カヤック 岩田慎吾さん

奥村:「ダミヘになりたい」という願望は、男性声優ファンの間では、ずっと言われ続けていたことなんです。私も声優さんのドラマCDを聞いて育ってきた世代なので、ダミーヘッドマイクの音声が生み出す臨場感は理解していました。それが、さらにVR映像になってしまったら……これはやばいと思いましたし(笑)、いちユーザーとしても、絶対に体験してみたいコンテンツ。ついに待ち望んでいた“時”が来たと、ワクワクしながらジョインさせてもらいました。

面白法人カヤック 奥村檀さん

弘中:私も、企画書を拝見したとき、「ダミヘになりたい」と感じる方々がいることは知っていたので、“ついに!”と思いました。

面白法人カヤック 弘中ちひろさん

岩田:たしかに、この作品を手がけることになり、市場調査も兼ねて一度Twitterで「VR」「ダミヘ」で検索をかけてみたんです。すると、2,000~3,000件のツイートが引っかかりました。そのタイムラインを遡ると、2014年くらいに既に「VR でダミヘのコンテンツを作ってほしい」という投稿がありました。求めている人が一定数いる、すごい企画なんだと、そこで認識を新たにしたんです。だからこそ、とくにユーザー心理の反映が必要なエンジニアには、ユーザーインサイトを捉えているスタッフが良いと思い、女性向けコンテンツをよくわかっている奥村に頼みました。ただ、今、話を聞いていて、奥村がそこまで男性声優さんに対する熱量が高いことは知らなかったので、ちょっと驚いています(笑)。

実写3D空間をリアルに作り込むためのこだわりとは?

──皆さんが、『ダミヘになれるVR』のVR映像開発でこだわったことは何でしたか? まずはエンジニアの奥村さんからお願いします。

奥村:最もこだわったのは、3D空間をいかに自然に表現するかですね。実写の人物映像と空間映像を合成してVR空間を作っていますので、デザイナーさんにナチュラルに見えるよう色彩調整をしてもらっていますし、プレイヤーがその空間にあたかもいる感覚になれる、臨場感を高めるための工夫もたくさん施しています。さらに大切なのが、音の位置情報です。VRモードは声優さんが動きながら演技されているので、その動きに合わせてどれだけ声をプレイヤーに近寄らせるか、どのくらいの音量で聞こえたらよりリアルかということには、かなりこだわりました。

原田:本作には、キャラクターの動く絵を見ながら音声ドラマを聴いていただく「イラストモード」と、今ご紹介しているVR映像の「VRモード」がありますが、声優さんの音声は別々に収録しています。「イラストモード」音声は、ダミヘを使用した立体音響で収録し、「VRモード」は、演技の映像と音声を同時に収録したので、声優さんの声はピンマイクで拾っていて……。

奥村:そのピンマイクで収録した音声を、後から3D空間の中で立体的に聞こえるように音像を作り、声優さんの動きに合わせて、音が聞こえる方向や位置を配置していきました。

「ホテルのエレベーター編」の野島裕史さんと野島健児さん。

「ホテルのエレベーター編」の野島裕史さんと野島健児さん

「観覧車編」の代永翼さんと津田健次郎さん。

「観覧車編」の代永翼さんと津田健次郎さん

──通常のダミヘ収録では、ダミヘの周りを声優さんが移動しながら喋るので、それが立体音響として聴こえるのですが、今回のVRはステレオマイクの音声を後からダミヘ風に立体音響化している。ふたつのモードの音響演出は、まったく逆の方向性だったんですね。

岩田:音声をポジショニングして3Dで聞かせることは、VRコンテンツではよくやる手法なんですが、ひとつのコンテンツで2種類の録音方法が体験できるVRコンテンツは、かなり珍しいです。カヤックとしても、音声を実写の人間の動きに合わせてポジショナルさせることは、初めての開発でしたね。

原田:役者さんがグッと前に近寄ってくるシーンで、どのくらいの音量差をつけるかは、相当こだわりましたよね。

奥村:原田さんからのディレクションも細かかったですよね。ただ、近ければ良いというわけじゃない。近寄ったときに音量を上げすぎると音が割れてしまうので、バランスを保つのが非常に難しかったです。

姜:私のこだわりも、根本的なところは奥村さんと同じですが、とくに苦労したのはUIの部分……メニューバーの表示でした。3D空間のどこにメニューバーを置けば、プレイヤーが疲れないか。その位置を探すのは苦労しました。

原田:PS VR版はスマホ版と違い、ワイヤレスコントローラ(DUALSHOCK®4)の○ボタンを押すとシークバーが出てきて、一時停止ができたり、L1ボタン、R1ボタンで早送りや読み返しができるんです。そのシークバーを含めて、メニュー画面を出したとき、プレイヤーのすぐ前にありすぎると感覚的に気持ちが悪い。遠くにありすぎると声優さんに近すぎて違和感がある。その距離を決めるのに、姜さんと奥村さんがずいぶん話し合っていましたね。

岩田:今の話にもあった空間演出という意味では、いかにユーザーがダミヘの気持ちになれるか、つまり声優さんの音声収録の現場に立ち会っている臨場感を演出できるかが重要だったので、撮影スタジオの選定、セット作りにもとことんこだわりました。

原田:体験していただくとわかりますが、演者さんの後ろのPAルームにスタッフがいるのも、より現場感を出すアイデアでした。

岩田:それと今回のスタジオも良かったですね。実写のVRモードでは、目線を上に向けるとモニタ画面に2Dのキャラクターイラストが合成されていて、前を見ると自分のために声優さんがアフレコしている様子が見られる。実際の演技が、どのようにイラストモードでアウトプットされるかという、ふたつの体験をひとつのコンテンツのなかで実現しています。その2D映像を綺麗に合成するためには、天井が高くて、誰が見てもスタジオ然としている空間が必要でした。

弘中:その2Dイラストモード映像と実写を組み合わせるのも、苦労でしたね。

原田:そうですね。声優さんが近づいたときに、声優さんの頭と合成するモニタの位置が重ならないよう、微妙な調節が必要で。

弘中:映像会社にはVRのシステムがないので、実際に奥村に映像を組み込んでもらい、それを参考に高さを調節するためのやりとりをしました。

原田:最終的には画面の縦横比を通常の16:9ではなく16:7の画角に切り取って、よく見えるように調整しています。とても地味な工程なんですが、こういった趣味性の高いコンテンツには、そういう細部のこだわりが絶対に大切です。

奥村:細かいところが気になってしまうと、コンテンツに集中できなくなりますからね。いかにユーザーに何も意識させず、空間に入り込ませるか。そこは実写VRならではの苦労だったと思います。

キャストも現場で初めて「こういうことか」と理解できた

──実際のVR映像収録現場は、いかがでしたか?

原田:声優さんたちも、皆さん撮影現場に来て初めて「こういうことなんだ」とおっしゃっていたのが印象的です。VR映像なので一発撮りですし、システム的に「カメラに近づきすぎず、でもできるだけ近づいてください」という制約もある。そこは姜さんに、現場でVRヘッドセットを装着してもらい、映像を確認しながら細かく指示を出してもらいました。

姜:画角の問題として、「台本をもう少し下げてください」とお伝えするんですが、「もう少し」の程度がどのくらいかは、実際にやっていただかないと分からないんです。映像がCGやアニメーションなら、おかしなところは後から直せるのですが、実写はやり直しが効かない。とても気を使いました。

原田:それを体感してもらうために、現場にPS VRを用意して、テスト映像をキャストさん全員に見ていただいてから本番を撮りました。そのおかげで、「こうやって目が合うとうれしいんだね」とか「近づくとドキッとするね」というユーザーの感覚的な部分を、ご理解いただけた。また、今回出演してくださった方々は全員、実力派の声優さんなので、演じ方のコツもすぐに掴んでいただけて、アクションもとても上手に演じていただきました。アドリブで動きをつけてもらえましたし、野島裕史さんにはウインクまでいただいて、感動しました。

──なるほど。それでは改めて、皆さんがお気に入りのシーンを教えていただけますか?

岩田:脚本的には、「観覧車編」のアナザーストーリーが好きです。パロディネタがたくさん出てきてニヤニヤしました。それとVRモードではないのですが、同じく「観覧車編」のイラストモードで、津田健次郎さん演じる刑事の鷹沢のネクタイが外れるシーンは、映像演出が面白いです。脚本の面白さとアニメーション表現が相まった、とても良いシーンになったと思います。

『ダミヘになれるVR 観覧車編』

『ダミヘになれるVR 観覧車編』

奥村:私も「観覧車編」が好きです。VRモードでは、津田健次郎さんが、おじさまがふと弱みを告白するシーンを演じられていて、それがとても良い。めちゃめちゃ素敵です!

弘中:私は、「ホテルのエレベーター編」が好きです。VRモードは、ラストで野島裕史さんと野島健児さんのご兄弟が、交互に近づいてくれるシーンがあって、何度も見てニヤニヤしてました(笑)。

姜:私も「ホテルのエレベーター編」のアナザーストーリーが好きです。大爆笑できるストーリーなので、ぜひ皆さんに見てほしいです。

『ダミヘになれるVR ホテルのエレベーター編』

『ダミヘになれるVR ホテルのエレベーター編』

原田:「ホテルのエレベーター編」のイラストモードの音声収録をSIEのスタジオでやったんですが、とても真面目そうな男性ミキサーさんが、アナザーストーリーでは声優さんがセリフを言うたびに思わず吹き出してました。それくらい面白い内容ですね(笑)。

──ぜひこの記事を読まれた方にも、PS VRで体験していただきたいですね。

岩田:そうですね。スマホ版もいいのですが、PS VR版はVRヘッドセットを装着するので、自分のためだけに人気声優さんが耳元で囁いてくれたり、自分のためだけに演技をしてくれる様子が、より臨場感をもって体験できます。仕事や勉強に疲れたとき、このコンテンツに浸っていただき、明日からを頑張る活力にしていただければ! 長く楽しんでいただけるコンテンツになったと思います。ぜひPS VRごと、お手に取っていただきたいです。

姜:近くに感じ得ない人を近くに感じられることが、このVRコンテンツの特長なので、ぜひ体験してもらいたいですね。また、PS VR版のVRモードには、スマホ版とは異なる、ちょっとした遊び心のあるシステムも組み込んでいるので、3D空間をぐるりと見回していただくと、面白い発見があると思います。

奥村:『ダミヘになれるVR』は、初めてドラマ CDでダミヘ音声を聞いたときよりも、大きな感動が得られると思います。なでなでもしてもらえますし(笑)、役者さんが手を差し伸べてくれると、思わずこちらも手を出してしまうくらい、臨場感がすごいです。

原田:そこもPS VR版ならではですね。VRヘッドセットは頭に装着するので、両手が空くんですよ(笑)。

弘中:だから、ついプレイヤーも動いてしまいますよね(笑)。私もこの開発に関わる前は、ダミヘを使ったコンテンツは嗜むレベルでしか知りませんでしたが、完成したVRモードを見たら、夢中になってしまいました。声と映像、VR ならではの臨場感は、声優好きでない人をもファンにさせてしまう力があると感じました。友達にもぜひ薦めたくなりましたね。

原田:PS VR版とスマホ版との大きな違いは、やはり映像の美しさにあります。キャストさんが演じているときの表情も本当によく見えます。PS VRでなければできないことも、しっかり盛り込んでいますので、ぜひ一度、体験していただければと。

──この『ダミヘになれるVR』をきっかけに、VRコンテンツのバリエーションもさらに増えそうですね。

原田:そうですね。『ダミヘになれるVR』によって、Project Lindberghにも新しい技術のノウハウができましたし、実写VRコンテンツとしては、PS VR専用タイトルで、デジタル声優アイドルグループ22/7(ナナブンノニジュウニ)が出演する『メゾン22/7』もあります。こちらは、22/7のメンバーがルームシェアして住んでいる一軒家に遊びに行って、メンバーと一緒にライブ映像を見る体験ができるコンテンツ。カヤックの岩田さんも制作に参加されていますので、アイドルファンの方にはそちらも楽しんでいただきたいです。今後もProject Lindberghでは、新しいVRコンテンツ制作に挑戦していきますので、ご期待ください!

※「PlayStation」および「DUALSHOCK」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
※PS VRを楽しむためにはPlayStation®4が必要です。
©Sony Interactive Entertainment Inc.

『ダミヘになれるVR』

本編原案:西門
アナザーストーリー原案:カレー沢薫
脚本:横山葵
キャラクターデザイン:倉橋トモ
開発:カヤック、ムービングクルー
製作:Project Lindbergh
発売元:SME
出演:【ホテルのエレベーター編】野島健児(エリオット役)、野島裕史(笠原役)
【観覧車編】津田健次郎(鷹沢役)、代永翼(木村役)
発売予定日:3月29日(スマートフォン版)/5月10日(PS VR版)
価格:スマートフォン版 各4,360円(税込)※専用ゴーグルセット販売のみ
:PS VR版 各3,240円(税込)※PlayStation™Storeでのダウンロード販売のみ
スマートフォン版専用ゴーグルセット取り扱い店:Sony Music Shop(新しいタブで開く)、アニメイト店頭およびアニメイトオンライン(新しいタブで開く)

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