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エンタメ業界を目指す君へ

SAOプロデューサーが語るアニメ制作現場の“リアル”と業界が今求める人材像【前編】

2020.08.17

エンタメ業界の最前線で働く人々から現場の生きた情報を聞き出し、お届けする連載企画「エンタメ業界を目指す君へ」。

今回は、7月にアニプレックス(以下、ANX)の主催で開催された初の海外向けオンラインイベント「Aniplex Online Fest」(以下、AOF)のプログラムとして配信された「How to Produce Anime(アニメの作り方)」の模様をレポート。

さらに、イベントに登壇したアニメ制作スタジオA-1 Pictures(以下、A1P)のプロデューサー・金子敦史に追加インタビューを実施して、「日本のアニメの独自性と可能性」について自身の考えを聞いた。

Aniplex Online Festとは?

 
ANXが主催となり、7月4日~5日にかけて開催された海外向けのオンラインイベント。英語と中国語のふたつの言語で配信され、アニメやアニソンの制作話から、アニソンアーティストの出演、ANXの新作アニメ情報など、盛りだくさんのプログラムで届けられた。海外向けでありながら、日本でも視聴は可能で、多くのアニメファンから注目を集めた。

AOFのプログラム「How to Produce Anime」をレポート

AOF内でひとつの番組として配信された「How to Produce Anime(アニメの作り方)」。このプログラムは、アニメができるまでの過程を解説するという内容になっており、アニメ業界を志す人々にとっては、多くのことを学ぶことができる貴重な映像でもあった。まずは、こちらの内容からレポートしていこう。

登壇者は以下4名のプロデューサー。

  • 黒崎静佳

    Kurosaki Shizuka

    アニプレックス

    主な制作参加作品:アニメ『アルドノア・ゼロ』、『Fate/Grand Order 絶対魔獣戦線バビロニア』

  • 丹羽将己

    Niwa Masami

    アニプレックス

    主な制作参加作品:アニメ『エロマンガ先生』、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』

  • 金子敦史

    Kaneko Atsushi

    A-1 Pictures

    主な制作参加作品:アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』、劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』

  • 辻 俊一

    Tsuji Toshikazu

    CloverWorks

    主な制作参加作品:アニメ『PERSONA5 the Animation』、劇場版『冴えない彼女の育てかたFine』

8年前の企画が未放送――オリジナル作品の企画立案が難しい訳

一言でプロデューサーと言っても、作品の全体プロデュースや宣伝、Blu-rayやDVDを販売するパッケージビジネスを行なうANXと、実際にアニメを制作する現場であるA1PやCloverWorks(以下、CLW)では、同じプロデューサーという立場でありながら、仕事の内容やスタイルは大きく異なる。そんな4人が、それぞれの視点で「アニメ作り」について語った。

まずは、制作のスタート地点となる「企画」の立ち上げ方の解説から。黒崎(ANX)は、企画には三つのスタンダートがあると語る。

「ひとつ目は出版社からご提案を受けて、原作をアニメ化するケース。ふたつ目は我々プロデューサーが面白いと思う作品を見つけてきて、原作出版社にご提案をしてアニメ化するケース。三つ目はアニメスタジオのプロデューサーや監督からご提案を受けて、アニメ化を進めるケースです」

これに加えて、レアケースとして完全なオリジナル作品が企画されることもあるという。ただし、完全オリジナル作品は各スタッフがやりたいことを盛り込んだシナリオ開発からスタートするため、その分、時間も労力もかかる。丹羽(ANX)はアニプレックスに入社した8年前に立ち上げながら、未だに放送に至っていないオリジナル企画もあると述べた。企画立案はすべての作品のスタート地点。企画の在り方が、作品の方向性を決めていくとも語られた。

企画の立ち上げについて説明をする黒崎(ANX)(画面左)。

原画に込められたフェチズムを生で体感できるのがプロデューサーの特権

続いて4人のプロデューサーは、アニメができるまでの具体的な工程を解説した。まず「企画」から「脚本(活字によるドラマ設計とセリフ)」を開発し、アニメのスタッフが「絵コンテ(画面の設計図)」を用意。そこからアニメーターが、作品に登場するキャラクターたちの表情や芝居をカットごとに作画する「原画」や「動画」といったセクションに続いていく。

そして描かれた「動画」を彩色する「仕上げ」、背景美術とキャラクターが描かれた「動画」を合成する「撮影」といったセクションを経て、最後には「編集」され、「音響効果」が加えられてアニメが完成する――という解説が行なわれた。

そこで辻(CLW)は、劇場版『冴えない彼女の育てかたFine』のライブシーンの「原画」や「動画」、そしてそのカットの設計図となる「タイムシート」を実際に披露。これでほんの1秒の動きに対しても、十数枚の絵が描かれていることがよくわかる。しかも、その1枚1枚が人の手によって丁寧に描かれていることをアピールした。

番組内で紹介された『冴えない彼女の育てかたFine』ライブシーンの原画。

タイムシートについて説明をする辻(CLW)。

タイムシートにはアニメシーンを制作するための詳細が記載されている。

金子(A1P)は「カットを担当するアニメーターの引く線によって、細かい好みやフェチズムが原画に込められていることがあります。そのこだわりはアニメーターによって十人十色で、『このアニメーターが描くとこのキャラはこうなるんだ、この動きはこうなるんだ』という驚きが常にあり、そこが現場でハッキリと感じられるのはアニメーションプロデューサーを初めとする制作の役得だと思います」と熱弁。

絵で描かれたキャラクターが動き出す瞬間の喜びや驚き、その動きへのこだわりこそが、アニメ制作の面白さであると語ってくれた。

アニメ制作に携わる人はこんな瞬間に喜びを感じている

最後にイベントに登壇した4人のプロデューサーは、アニメ制作に関わっていて喜びを感じる瞬間をそれぞれの視点で語った。

黒崎(ANX)「自分の関わった作品が、参加したクリエイターの代表作になること」
丹羽(ANX)「イベントでシリーズの次回作を発表したときのファンの歓声」
金子(A1P)「一緒に仕事をしてみたいと思っているクリエイターが、作品に参加してくれたとき」
辻(CLW)「もともとアニメが好きで業界に入ってきたので、この仕事ができ、続けられていること」

プロデューサーを起点としながら、そこに多くのスタッフが集うことでアニメの作品は作られていく。プロデューサーの重要性を改めて感じさせるプログラムだった。

イベントでの次回作発表の瞬間に湧き上がるファンの歓声が忘れられないと丹羽(ANX)は語った。

SAOはなぜ海外でもこれほど人気なのか? 現地のファンに聞いてわかったこと

ここからはA1Pのプロデューサー、金子敦史の追加インタビューをお届けする。「日本のアニメの独自性と可能性」、そして今、アニメ業界が求めている人材像について自身の考えを聞いた。

――金子さんも出演された「AOF」ですが、このイベントは英語と中国語で全世界に向けて配信され、話題になりました。このように海外で日本のアニメが注目を集めている理由はなんだとお考えですか。

劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』を作っているときに、伊藤智彦監督やキャラクターデザインの足立慎吾さんと一緒に、海外で開催されたアニメイベントに招待されたことがありました(2016年9月にオーストラリアで開催された「MADMAN ANIME FESTIVAL」)。

そのとき、僕らも「なぜ、海外で『ソードアート・オンライン』がここまで人気なのか知りたい」と現地のファンに尋ねたんです。そこで聞いた答えから、自分なりに考えたのは(日本のアニメは)“現実からの誇張の仕方が上手い”のではないだろうか、です。

例えば『ソードアート・オンライン』にはVRヘッドセットが登場して、主人公たちはVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)の世界で、生き残りをかけた戦いをします。「仮想現実の世界に入り込んでゲームをする」という感覚は、決して遠い未来の出来事じゃないんです。その「現実世界でゲームに没入する感覚に、ひとつだけ大いなるフィクションを混ぜる」といった設定が、世界共通で受けている部分ではないかと思いました。

劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』のときはAR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)のゲームが劇中に登場しました。同時期に『ポケモンGO』などのARゲームが世間で流行し、その「フィクション」がとても身近なものになりました。この「フィクション」を描くことが、アニメというメディアは得意なんです。アニメならではのファンタジックな描写や派手なアクションなどによって「大いなるフィクション」が自然と描けるんだと思います。

金子がアニメプロデューサーを担当する「ソードアート・オンライン」シリーズは世界中で人気を誇る。 ©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ SAO-A Project

世界から注目を集める日本のアニメ業界が抱える大きな課題

――金子さんが出演した番組「How to Produce Anime(アニメの作り方)」では、日本のアニメの制作現場が語られました。海外と日本ではアニメ制作のスタイルに違いはあるのでしょうか。

海外の制作現場に詳しいわけではありませんが、間違いなく日本のアニメは独自のスタイルを持っていると思います。日本は70年近くセルアニメーション(「セル」といわれる透明なシートに作画する手法。作業のデジタル化が進んだ現在でも、日本では多くのアニメスタジオがその手法を継承して制作が進められている)の歴史があって、そこに関わるスタッフは独自の技術を蓄積しています。

それこそベテランのアニメーターは芸術レベルの技術力を持っています。今や海外のスタジオでは全て3DCGによるアニメ制作が当たり前になっていて、世界的ヒット作にもCGアニメ作品が目立ちますが、日本のアニメーターが類稀なる技術をもって手掛けるフィルムは、そうした最先端の映像にも決して負けない、十分に世界に通用するものであると思っています。

ただし、そこには問題もあって、そういった技術を持つ人材が、高い評価や報酬を得られるような体制になっていないという現実もあります。そこは日本のアニメ業界がずっと抱えている課題のひとつだと感じています。

――AOFでも金子さんは現場スタッフの重要さを語られていました。「人が描く力」が日本のアニメの独自性を生んでいるということですね。

そうですね。でも自分としてはこの独自性も今後は見直していかないといけないと思っています。年々思うのは、紙と鉛筆で作画をするアニメ制作も時代とともに変わってきていて、変化を受け入れていかないと業界として衰退していってしまう状況になりつつあると思っています。

日本のアニメ業界が衰退しかねない――。金子の危機感はどこから来るのか。そしてその危機をどのように乗り越えていこうとしているのか。後編では、金子が考えるアニメ業界の展望を語ってもらう。

文・取材:志田英邦

関連サイト

Aniplex Online Fest
https://aniplex-online-fest.com/
 
TVアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」公式ウェブサイト
https://sao-alicization.net/
 
A-1 Picturesオフィシャルサイト
https://a1p.jp/

©2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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