フィロソフィーのダンス:アイドルシーンで異彩を放つ、音も人もファンキーな4人組
2020.10.02
今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る「Eyes on」。
第4回は、メジャーデビューから約1カ月、一度見たら忘れないザ・リーサルウェポンズに注目。赤いバンダナを巻き、片言の日本語で曲とライブを盛り上げるフロントマン、サイボーグジョーと、楽曲制作とプロデュースをする、ヘルメットをかぶったアイキッド。素顔が謎に包まれたふたりが登場。
ザ・リーサルウェポンズ
The Lethal Weapons
80~90年代カルチャーをモチーフにしたバンド。2019年1月、東京都中野区にて結成。2020年8月26日「半額タイムセール」でメジャーデビュー。以降、8㎝CDでのシングル3カ月連続リリース中。11月6日に、東京都・キネマ倶楽部にてワンマンライブを開催する。
(写真左)サイボーグジョー:ボーカル。アメリカ・オハイオ州出身。
(写真右)アイキッド:プロデュース&ギター。群馬県出身。
──ザ・リーサルウェポンズの成り立ちから聞かせてください。
アイキッド:もともとジョーとは近所の居酒屋で知り合って。それで、都立家政のブックマートっていう古本屋の店長から「曲を作ってくれ」って頼まれたときにボーカルがいなくて、ジョーに頼んだんですよ。そのミュージックビデオ(以下、MV)撮影のときに、ジョーが思った以上に面白くて、これは何かできそうかなと思ったんです。
「都立家政のブックマート」
サイボーグジョー:あのとき、MV撮影が最高に楽しくて、こういうの毎日つづきたい、映画やろうよ! って、アイキッドセンセイに言いました。
アイキッド:だけど、当時彼は日本語がしゃべれなくて、これじゃ一緒にやるのは無理だなって思ったんです。そのあと1年くらい、一緒にゲームしたりして人間性を見てたんですけど、なかなか良いヤツだなと思って。それから1年後に日本語もしゃべれるようになって、これは一緒に何かできるなと、改めて誘いました。高田馬場のミカドっていうゲームセンターで、「ジョー、バンドやるぞ!」って言ったら、彼はゲームに夢中で「あ~、いいよ~」って。
サイボーグジョー:アッハハハ(笑)。
アイキッド:で、2年くらい曲を書いては歌ってもらうというのを繰り返し、そろそろ本格的にやろうかなってなったのが去年の1月です。「80年代アクションスター」という曲のMVを作って、そこから今に至ります。
──80年代をグループのテーマにしたのはなぜだったんですか。
アイキッド:もともと僕が80'Sが好きだったんです。映画とかアニメとか、アメリカのカルチャーが大好きで、ずっと外国人と面白いことをしたかったんです。ジョーは見た目がマイケル・J・フォックスみたいだったので、それで彼に80年代っぽい格好をさせました。ジョーは80'S好きなの?
サイボーグジョー:80'Sは好きだけど、ヴァン・ヘイレン、ボン・ジョヴィ、モトリー・クルーとかセンセイの好きなバンドは全然好きじゃない。
──いきなりの否定ですね(笑)。
アイキッド:というのも彼はパンクスで、こっちはヘヴィメタルが好きだから、音楽の趣向は全然違うんです。
サイボーグジョー:小さいころ80年代に過ごしてたけど、アイ・アム・90'S。でも、センセイの影響で私の80'Sの気分蘇った。サイボーグジョーになったとき、やっぱり80'S最高! ってなりました。
アイキッド:結構、私がジョーを染め上げてるところはありますね。僕は、日本文化よりアメリカ文化のほうが好きで、彼は日本好きなアメリカ人なんですよ。
──ふたりの間で、文化の逆転現象が起きてると。
アイキッド:でも共通言語は多いんです。彼はアメリカのアニメとかも普通に見てるんで。だから、「ここは“アダルトスイム”の雰囲気で」って言うと通じるんです。
サイボーグジョー:びっくりしたよ。日本で“アダルトスイム”知ってる人ほとんどいないから。
アイキッド:『ビーバス&バットヘッド』とか映画の『ビルとテッドの大冒険』とか、ああいうバカな感じが好きなんです。あとMVも小道具とか手作りしてiPhoneで撮ってるんですけど、あの映画『Be…』なんだっけ?
サイボーグジョー:あー『Be Kind Rewind』。
──『僕らのミライへ逆回転』ですね。
アイキッド:これに出てくる“スウェーデッド・フィルム”をやりたいっていうときも、それがどんなものか知ってたから話が早かった。イメージが伝わるのがめちゃめちゃ早いのが、彼とやっててすごく良いところですね。
──それはバンドをやる上でとても大事ですね。ちなみに好きなメタルは?
アイキッド:メタルは全般聴きますけど、メガデスの4枚目『ラスト・イン・ピース』が一番好きです。あとはシンセサイザーミュージック、喜多郎とかのニューエイジが好きです。もっと言うと、2011年ごろからアメリカの西海岸で流行ったシンセウェイヴっていうジャンルが好きで。
──シンセウェイヴも80'Sをモチーフにした音楽ですね。
アイキッド:あのざらついた感じを、もうちょっと世間様に向けてできないかなと思ったんです。なのでうちの音楽は、シンセウェイヴの上にヘヴィメタルが乗って、さらにLAメタルのシャウトが乗ってる感じです。
──組み合わせ方が面白いです。
アイキッド:その組み合わせの上に、オモシロ外国人がいるっていう(笑)。そこに関していうと、戦前の日本にバートン・クレーンっていう、“酒が飲みたい、家に帰りたい”って歌をべらんめぇ口調で歌ってヒットしたアメリカ人がいるんです。その再来を作りたくて、現代に彼のスピリットを90年ぶりに降臨させました(笑)。
──予想外すぎる角度からの降臨ですね(笑)。では、サイボーグジョーさんが好きな音楽は?
サイボーグジョー:THE BLUE HEARTS大好き。COBRA、LAUGHIN’NOSEとか80'Sのジャパニーズパンクは最高だと思う。アメリカンパンクは、オペレーション・アイヴィー、NOFX、ランシドとか、最近だとティーンエイジ・ボトルロケットが好き。あとエクスプローディングハーツってバンドのひとつだけのアルバムが、私の一番のパンクアルバム。ひとつ&最高! やっぱりセンセイと違うね、テイストが。
アイキッド:でも、ふたりの共通点がアンドリューW.K.なんですよ。アンドリューW.K.は、パンクの要素も持ちながら音のキックとかがメタルなんです。コード進行も似てますね。ジョーはテクニックの人じゃないから、なるべく5~6個の簡単なメロディで曲を作ってます。
サイボーグジョー:アハハハ(笑)。
──ある意味、今までに無いところをやってますね。
アイキッド:そうですね。やる意味も無いようなところを探して掘り起こしてる感じがします(笑)。ただ、面白いとこに行くまで結構な試行錯誤をしてるんですよ。サビも1曲につき3~4つは必ず作ってるし。目指すのは、耳馴染みの良いもの、15秒でサビが終わるみたいな感じの曲です。一発で覚えやすいものしか作ってないですね。
──サイボーグジョーさんは歌うときどんな気持ちで歌ってますか?
サイボーグジョー:歌詞の意味がわかると覚えやすい。でも、「特攻!成人式」は一番難しい日本語。なんで“特攻”なのに“ぶっこみ”言うの? センセイどういう意味? って聞いた。
アイキッド:一応説明しましたけど、そもそも意味無いから、とにかくローマ字で覚えて歌ってくれって(笑)。
──歌詞は、基本インパクトのあるワードの連発ですよね。
アイキッド:うちは、日本語もデタラメだし、英語も中学2年生レベルなんで。J-POPもデタラメ英語ばっかりじゃないですか。だったら全然デタラメでも良いじゃないかって。たまにあえて誤用法と知ってて書いたりしますし。でも、外国人が歌ってるから本物っぽく聴こえるっていう。
サイボーグジョー:(いきなり)日本人の皆さんは、ゴー・トゥ・ヘヴンってわかりますか?
アイキッド:わかるよ。
サイボーグジョー:ああそうか、オッケー。僕の好きな表現です!
──急でしたけど、サイボーグジョーさんの好きな言葉がわかりました(笑)。MVを制作するときにこだわっていることはなんですか?
アイキッド:なるべく曲の小節とジャストで画面が切り替わるようにして、毎小節笑わせるものを出してます。でも、MVにこだわりって特には無いかも。結局は曲が大事なので、こだわってるのはそこだけですね。
──とにかく曲が命だと。
アイキッド:そうです。メロディラインと作詞のハマり方が、このバンドの命だと思うので。MVも台本は無いですから。当日、こんな感じで動いてって指示して、彼がアドリブで動くっていうラフな感じで作ってます。
──ちなみにサイボーグジョーさんは演技の経験はあるんですか。
サイボーグジョー:バンドの前、アメリカで舞台いっぱいやりました。ステージアクターだった。
アイキッド:そこで僕が選んだっていうのもあるんですよ。僕はボーカリストはいらなかった、フロントマンが欲しかったんです。
──なるほど。YouTubeで大きな反響が来たときはどう思われましたか。
アイキッド:確信を持ってジョーを誘ったので、絶対ウケる自信はあったんです。ただ、一番汚い曲がバズったのは予想外でした(笑)。
──「きみはマザーファッカー」は再生回数104万回を越えていますね。
「きみはマザーファッカー」MV
アイキッド:あれが代表曲になっちゃって(笑)。アルバム『Back To The 80's』の中の激辛スパイス曲って位置づけだったんです。コードも超簡単に作ったし。
サイボーグジョー:ほかの曲は「ちゃんと歌って」って言われるけど、あの曲は、どんな声で歌ってもいいって言われました。でも、バズってびっくりした(笑)。
──ザ・リーサルウェポンズは、ライブもすごく盛り上がりますよね。
アイキッド:それは初めから盛り上がるように曲を作っていて、さらに彼がライブでブースターになってるから盛り上がらないわけがないんです。
サイボーグジョー:ライブはほんとに天国だと思います。日本でとても好きな言葉がある……一体感! 最高の楽しいエネルギーが流れる、ほんとにいい言葉。私の日本語はペラペラじゃないけど、お客さんと通じる、フィジカルで。
アイキッド:それで良いんだよ。日本人はパーフェクトマンは嫌いだから。Cプラスくらいがちょうど良いんだって。
サイボーグジョー:アイ・アム・Cプラスジョー!
アイキッド:なんかかっこ良いな(笑)。
──そんなザ・リーサルウェポンズですが、8月のメジャーデビュー・シングル「半額タイムセール」から3カ月連続でシングルをリリースしています。9月のシングルが、先ほど話にも出た「特攻!成人式」です。
アイキッド:これは一番深いところを言うと、地方に見られる所得格差、学歴格差というのは親から子へループしてるってことを成人式を迎える若者に向けて歌った曲です(笑)。
「特攻!成人式」
──社会問題ですね(笑)。さらに3枚目が10月28日にリリースされるそうですが。
アイキッド:次は「押すだけDJ」っていう曲が出ます。スクラッチもロングミックスもしない、ただボタンを押すだけのDJの歌です。DJだけじゃなくて、胡散臭い職業そのものを皮肉ったというか。
──ほとんどの曲が、笑える要素がありつつシニカル目線の入ったフラストレーション爆発系ですよね。
アイキッド:ゾンビ映画も現代社会の反映だったりするし、それと同じですね。
──実は批評性の高さが、このグループの本質なのかなと。
アイキッド:そうなんです。でも、そこに気づく人はごく少数ですけどね。みんな、「マザーファッカーってバカなバンドがいるー」って、9割そんな感じです(笑)。
──では、ザ・リーサルウェポンズの今後の野望を聞かせてください。
サイボーグジョー:僕は、ワールドツアーをやりたい。メニーメニー国に行きたい! それで世界中で一体感作る。それ最高すぎ! いいね~!
アイキッド:現状維持ですかね(笑)。
文・取材:土屋恵介
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