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Eyes on

夏川椎菜:声優、アーティスト活動から小説家デビューと書籍化――作品執筆への思いと文学ルーツに迫る

2020.10.12

今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る「Eyes on」。

第6回は、声優、アーティストとして活動する夏川椎菜。2018年に小説家デビューを飾った彼女の初の連作小説集『ぬけがら』(ひよこ文庫)がこのほど書籍化された。文筆家としても豊かな才能を発揮する彼女に、自身の文学のルーツや作品執筆への思い、そして、今見据えている未来について話を聞いた。

  • 夏川椎菜

    Natsukawa Shiina

    1996年7月18日生まれ。千葉県出身。声優、歌手、小説家として活躍中。TVアニメ『ハイスクール・フリート』、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』などに出演。3人組声優ユニット「TrySail」の一員としても活動中。

小学3年生のとき読書にハマるきっかけになった推理小説

――声優、アーティストとして活躍中の夏川椎菜さんに、今回は小説家としてのお話を伺いたいのですが、子どものころからかなりの読書家と伺っています。小説との出会いは?

最初のきっかけは、小学校3年のときに父からクリスマスプレゼントにもらった子ども向けのシャーロック・ホームズシリーズの『緋色の研究』(アーサー・コナン・ドイル)を読んだことです。そこから推理小説が好きになり、アガサ・クリスティーや江戸川乱歩の作品を読むようになりました。小学生にはちょっと文章が難しかったので、わからない言葉を辞書で引きながら、自分なりに解釈して読んでいましたね。

特にびっくりさせられたのは、アガサ・クリスティーの作品。どんでん返しに驚きました。文章でこんなに心を揺さぶられることがあるんだと感動して、そこからほかの作家の小説やノンフィクションの作品も読むようになりました。

その当時読んだ作品のなかで印象に残っているのは、ノンフィクションだと乙武洋匡さんの『五体不満足』。小説だと、泣けると評判だった重松清さんの『ナイフ』も印象的でしたし、中学生のころには当時ブームだった山田悠介さんの刺激的なホラー作品も読み漁りました。

――今好きな作家を挙げるとしたら?

一番好きなのは伊坂幸太郎さんです。読者が考察する余地を残しながらも答えを少しずつ出していくような作品が特に好きですね。推理小説も同じで、全部が全部キレイに解決してしまうお話だと、ちょっと物足りなく感じてしまうんです。“これは結局、どういうことだったのかな?”と、自分で考えるられる余地、遊べる余地が残されている小説が良いですね。湊かなえさんや宮部みゆきさんなど、ちょっとドロドロとした人間の本性を描写する作家さんも大好きです。

『ぬけがら』書籍化記念の書店訪問中にパシャリ!

セルフプロデュースした写真集をモチーフに執筆した小説『ぬけがら』

――そんな読書好きの夏川さんが、実際に小説を書くことになったきっかけは?

ずっと雑誌でエッセイを書かせていただいたり、自分のブログで長文を書いたりはしていましたが、小説は2018年に、「monogatary.com」に声がけいただいて、声優の徳井青空さんと一緒に出演したイベントで“初デートの別れ際”というお題をもとに短編小説を披露しあう企画があって、そのために『16時50分』を書いたのが最初でした。

その後、同じ「monogatary.com」の企画で“最低な出会い、最高の恋”をテーマにした短編恋愛小説『たった3日で恋ですか』を書かせていただいて、そこから長編の『ぬけがら』に繋がりました。初めは、小説の書き方というのがまったくわからなかったので、私が文章を書くときに必ず使っているスマートフォンアプリに、思い付いたことをとにかくバーッと書いて、編集者さんに送っていました(笑)。

9月3日に行なわれた刊行記念オンラインイベント「ぬけがらの向こう側」より1枚!

――今はどういうふうに執筆されています?

今も基本的には、プロットとなるような骨子はスマホで書いています。思いついたシーンやストーリーの流れをとにかく文字にしているだけなので、誰にも見せられないくらいぐちゃぐちゃな文章で(笑)。そこから推敲を重ねて、お話がわかりやすくなるよう半分くらいまで削り、パソコンで清書して編集者さんにお見せしていますね。『ぬけがら』もそうやって書きました。

――『ぬけがら』では、登場人物が皆、魅力的にいきいきと描かれています。物語の内容やキャラクターはどうやって考えられたのでしょう。

『ぬけがら』は、私がセルフプロデュースした同名の写真集(2019年2月発売/主婦の友社刊)をもとにした小説なんですね。“どんな写真集にしようか?”という打ち合わせのときに、ナチュラルな生活感があって、すごくリアルなものにしたいと考えたんです。でも生活感があり過ぎると生々しくなってしまうので、物語性というか、写真の並びのなかになんとなくの起承転結、軽いストーリーラインを考えていったんです。

そのストーリーというのが、下宿をしている、とある女の子の物語でした。夢を叶えたい女の子がこんなふうに頑張っていたんだよという、その下宿を旅立つまでの1年間を、四季を通しての写真で表わせたら、というコンセプトでした。

――その小説版として、主人公が生活している1年間の日常風景を、短編ごとに描いていったんですね。

はい。なので小説の『ぬけがら』に出てくる主人公は、ほぼほぼ私のような人で、舞台となっている場所も写真集に出てくるシチュエーションを踏襲しています。その上で、主人公以外の人物やエピソードを考えていきました。だから何もないところから小説を書くよりも、少しだけラクをさせてもらえたかもしれないです(笑)。

装丁のこだわりについて説明中!

日常で出会った見知らぬ人を登場人物のモデルに

――とは言え、主人公以外の登場人物はゼロから生み出したもの。どうやって作り上げていったのですか。

キャラクターを考えるときは、電車のなかや道ですれ違った見知らぬ人をモデルにすることが多いです。例えば第2編「初恋のシャンプー」に出てくる小説家を目指している男の子は、私が地下鉄に乗っているときに見かけた男の子がモデルになってます。小説を読んでいたんですが、すごく物静かそうで、ごく普通の格好の男子中学生だったんですけど、どこかすごく画になる少年で、こういう男の子を自分の小説で書きたいと思いました。

――たたずまいに惹かれたんですね。

そうですね。見た目の印象から、“その人がこんな人だったらいいな”と妄想して(笑)、キャラクターを作り上げていきます。地下鉄で見かけたその黒髪の男子中学生も、見た目からして、きっと女の子が気になって気になって仕方ない年ごろだろうけど、でもそれが表には出せない性格なんだろうな……と自分のなかで想像をして、小説の登場人物に落とし込みました。

第4編「タカビシャとパッチ」に出てくる写真家志望のタカビシャも、専門学校が並んでいる道ですれ違った、印象深い女の子をモデルにしています。ボーイッシュな格好と攻撃的なメイクから、何かしら芸術系の学校の人なんだろうなという雰囲気が、すごくカッコ良かったんです。きっと口調はこんな感じで、ちょっと劣等感があってプライドをこじらせているところがあって……と勝手に想像をふくらませて、登場してもらいました。

――情景描写が鮮明なのも『ぬけがら』の魅力だと思います。どの物語を読んでも、短編映画のような情景が広がります。

私も頭のなかで映像を流しながら書いていました。「タカビシャとパッチ」には、パッチが川で石を投げていて、それを遠目からタカビシャが見ているシーンが出てくるんですが、私の頭のなかでは、その場面を、新海誠監督のアニメで再現していました(笑)。

今回は写真集撮影で実際にその場所に行っているので、イメージしやすかったですね。カメラ割りとかも意識しながら、頭のなかでキャラクターを動かして、しゃべらせながら執筆していました。

声優、作詞、小説という活動の共通点とそれぞれの面白さ

――普段からアニメや映像作品で実際にキャラクターを演じている、役者さんならではの感性が、クリエイティブにいかされているように思えますね。ほかに声優さんとしてのお仕事が、小説にいかされたと実感することはありますか?

具体的に考えたことはないんですが……キャラクターを表現する際はアニメだといろいろな部分が誇張されますし、実際に自分が体験することができないキャラクター、例えば魔法使いやアイドル、人ならざるものを演じる機会も多い。そこから、キャラクターとしてのセオリーや基本的な考え方を知ることはできますね。

例えば、アニメに出てくる魔法使いはこういう性格をしている、とか。逆に、そのテンプレートを知っているからこそ、そうじゃない裏切りのあるキャラクターを考えて、お話を膨らませることはできるかもしれないですね。

――それをリアルな人間観察にプラスできるのが、小説家としての夏川さんの魅力や強みかもしれないですね。ではアーティスト活動ではいかがでしょうか。夏川さんは作詞もされていますが、小説と作詞には共通点はありますか?

自分が思っていないことは書けない、というのは大切な共通点ですね。小説も歌詞も、良いものが書けたなと思うものは、自分の考えがちゃんと反映されています。

『ぬけがら』重版決定のサプライズ!

――では違うところは?

言葉を連ねるという意味では、書き方が根本的に違いますね。小説は書きたいことはほぼすべて書ききれて、そこからちょっと含みを持たせたり、考察する余地を持たせるために文章や単語を抜いていくんですが、歌詞はそもそも短いフレーズでどう気持ちを表現するかなんですね。音符2個分に言葉を込めるために、自分のなかの辞書の引き出しを、ワーッと検索する作業がある。作詞のほうが、誇張したり、飛躍した比喩を入れたりしても成立しやすいという違いもあります。

例えば、「ホームラン」という言葉は、小説だと野球用語としての意味が前面に出てきますが、歌詞なら一発逆転とか爽快な気持ちを一言で表現できる。そこは小説とは違う、作詞の面白さだと感じます。

――小説も作詞も、言葉に常に敏感でいなければならないのも共通点ですね。

そうですね。そこは作詞を経験して見つけたこと、気づけたことでもあります。本当に些細な言葉遣いや語尾、句読点がついてるかついてないかだけでも、表現は変わってくるんですね。それは小説でも言えることで、単語の並べ方や台詞をどう書くかでも、受ける印象がまったく変わるんです。言葉のチョイスは、小説でもすごく意識しています。

さらに編集さんから花束贈呈のサプライズも!

目標は“すべてが夏川椎菜”と言える作品を世に出すこと

――そのこだわりを意識すると、『ぬけがら』をさらに深く楽しめますね。とくに書籍版は、1編1編が手紙のように箱に入れられたような装丁にもこだわっていて、夏川さんから素敵なプレゼントをもらったような感覚になります。

私も、書籍化は熱望していました。電子書籍は手軽に読めますけど、紙の本は心に刻みつけられる感覚が大きくて、作り手のぬくもりをダイレクトに感じながら、手元に残してもらえるので。今回の装丁は「ひよこ文庫」さんからのご提案でしたが、読者の皆さんにもすごく好評でうれしいです。

今回、書籍を出したことで、いろいろな書店さんにもコーナーを作っていただけましたし、書店訪問ができて店員さんとお話できたのもとても新鮮でした。初めてオンラインで開催した出版記念イベントでも、読者の方の感想をダイレクトに聞けて、自分のクリエイティブが認めてもらえた気がしてすごくうれしかったです。

書籍版には、書き下ろしの後日譚も追加しています。『ぬけがら』全編が伏線になるような、どんでん返し的な結末を考えてから書いたお話なので、ぜひ驚いてほしいですね(笑)。

――そして早くも次回作への期待が高まりますが……構想は?

ぜひやってみたいと思っている設定があるので、次はそれを形にしたいですね。私は中学で演劇部だったんですが、場面転換の少ないワンシチュエーションものを演じるのが好きだったんです。なので、そのまま演劇にできる小説を書いてみたい。ジャンルとしても、自分が好きなホラーやミステリー調のものにも挑戦したいですね。

――声優、アーティスト活動ではどんな目標がありますか?

声優としては、もっとたくさんの作品で多くのスタッフさんと関わり合いながら、さまざまなことを吸収したいです。役柄も、今まではヒーロー側やキレイな役柄が多かったですが、今後10年、20年と声優をやっていくためにも、嫌なお局感のあるキャラや、クセのあるキャラが演じられるようになりたいです。

そして歌は私にとって、自分の気持ちや感情をオブラートに包まず表現できる場。作詞も自分の気持ちだけでなく、いつか誰かの気持ちを代弁できるようなものを書けるようになれたら良いなと思います。お芝居、歌、小説、どれも私にとって大切な表現の場所です。一番の目標はオールハンドメイド! “すべてが夏川椎菜”と言える作品を世に出すことができるようになれたら良いですね!

オンラインイベント、お疲れさまでした!

 

文・取材:阿部美香

※インタビュー取材は、リモート会議アプリケーションを使用して行なった。
 

『ぬけがら』

夏川椎菜(著)
 
ひよこ文庫
 
デビュー小説「たった3日で恋ですか」を収録した恋愛小説アンソロジー『最低な出会い、最高の恋』でその才能が高く評価された声優・夏川椎菜。電子限定リリースで話題を呼んだ自身初の小説集『ぬけがら』を待望の書籍化!
 
同タイトルのセルフプロデュース写真集『ぬけがら』の世界観をモチーフに、少女の成長と旅立ちを描いた、切なくて爽やかなとびきりの感動作。電子限定リリースの「ぬけがら」に、主人公の「その後」を描いた書き下ろし「新人ちゃんと先輩」を特別収録!
https://www.m-on-books.jp/book/id013694

関連サイト

夏川椎菜ソニーミュージックオフィシャルサイト
https://www.natsukawashiina.jp/
 
夏川椎菜オフィシャルブログ「ナンス・アポン・ア・タイム」
https://ameblo.jp/natsukawashiinablog/
 
417Pちゃんねる
https://www.youtube.com/channel/UCSdVtmKcfuKTJ1C209-VnLA
 
ひよこ文庫オフィシャルサイト
https://hiyoko-bunko.com/
 
ひよこ文庫オフィシャルTwitter
https://twitter.com/hiyoko_bunko
 
monogatary.comオフィシャルサイト
https://monogatary.com/
 
TrySailオフィシャルTwitter
https://twitter.com/trysail_staff
 
TrySailオフィシャルYouTube
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