イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

飯能市長と語る地方創生につながるエンタメの活用法【前編】

2021.02.06

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

今回は、『Hanno Green Carnival』や『ムーミンバレーパーク』、さらには学校教育の現場で開催される「ミュージカル体験プログラム」など、埼玉県飯能市とソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が、地方創生を目指して官民共同で取り組むさまざまな施策に注目。

2013年より埼玉県飯能市長を務め、同市をより住みやすい街へと成長させるために尽力する大久保勝市長と、飯能市役所で企画部長として現場を統括する新井洋一郎氏、そしてSMEで現場担当を担う丸子由佳に集まってもらい、エンタテインメントの恒常的な社会貢献の可能性について話を聞いた。

前編では、両者が取り組みを始めるきっかけとなり、2016年の初開催からこれまでに4回実施されているイベント、『Hanno Green Carnival』について振り返ってもらう。

※本記事の取材は、11月24日に行なったものです。

  • 大久保 勝氏

    Okubo Masaru

    埼玉県飯能市長

  • 新井洋一郎氏

    Arai Yoichiro

    埼玉県飯能市 企画部長

  • 丸子由佳

    Maruko Yuka

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    経営企画グループ事業戦略チーム

飯能市とSMEの出会いのきっかけになった『Hanno Green Carnival』

――そもそも飯能市とSMEが協力して、イベントやエデュケーションプログラムを手掛けることになったきっかけは何だったのでしょうか。

大久保:2016年に飯能市にある『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』と駿河台大学で実施したイベント『Hanno Green Carnival』がきっかけですよね。そこで丸子さんたちSMEの皆さんと初めてご一緒させていただいたと伺っています。

丸子:はい。『Hanno Green Carnival』が開催される約1年前に、SME内で「KIDSTONE」というブランドを掲げたエディケーション事業部が発足しました。そこで「『KIDSTONE』の象徴になるようなファミリーフェスをやりたい」という話があがり、関東近郊でイベントができそうな場所を探していたんです。

そうしたらお子さんを持つスタッフのひとりが、この『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』を見つけてくれまして。とても素敵な場所だから一回みんなで視察に行こうという話になり、行ってみたら全員一致で「絶対ここでやりたい!」となりました。

新井:その場でアプローチをしてくださったんですよね。

丸子:どういう手順を踏んだらいいかわからなかったので、ご迷惑とは思いつつも、管理事務所の扉を叩いて「私たちはこういう者で、こちらでイベントをやりたいんです!」とアタックしました。そうしたら「ここでは判断できないので、とりあえず市役所のこの部署に行ってもらえますか」と、丁寧にご案内いただいて(笑)。

それで改めてアポイントを取り、市役所に伺って『Hanno Green Carnival』をご提案させていただいたのが最初のきっかけになります。

文通から始まったムーミンの原作者と飯能市の関係

――『Hanno Green Carnival』が開催された『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』以外にも、飯能市には『ムーミンバレーパーク』があり、ムーミン物語の原作者であるトーベ・ヤンソン氏とゆかりが深い街と言えます。改めてトーベ・ヤンソン氏と飯能市の関係をお聞かせください。

新井:建設省(現、国土交通省)が「平成記念子供の森公園構想」というプロジェクトをスタートさせて、それぞれの地域特性をいかした子どものための公園作りをする自治体を募集したんです。そこで当時の飯能市の担当者がエントリーしようと考えまして。公園のテーマとなるものを探していたときに、緑豊かな飯能市の自然公園とムーミン谷の世界観がマッチするのではないかと思いついたんです。

それで、ダメもとでもトーベ・ヤンソンさんに一度お手紙を書いて、ご協力をお願いしてみようということになりました。すると、すぐにご本人の直筆でお返事をいただきまして、ご協力を快諾してくださったんです。そうして1997年7月1日に開園したのが『あけぼの子どもの森公園』です。

大久保:公園の完成後もトーベ・ヤンソンさんと市の交流はつづいて、7年にもわたりお手紙のやりとりをさせていただきました。飯能市役所には、今でもそのときのお手紙が大切に保管されているんですよ。

飯能市で大切に保管されているトーベ・ヤンソン氏の直筆の手紙。

新井:ちなみに、現在の『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』に改名したのは2017年6月1日で、ムーミンの著作権を管理しているムーミンキャラクターズ社から許諾を得て行なったという経緯です。

――北欧をテーマにした『メッツァビレッジ』や『ムーミンバレーパーク』が作られることになったのは、そうした経緯が大きかったのでしょうか。

大久保:そうですね。2014年ごろに、フィンテックグローバル社が、国内に北欧とムーミンをテーマにしたテーマパークをオープンさせるために、いろいろと場所を探されていました。そのときに飯能市にも足を運んでくださり、『あけぼの子どもの森公園』と宮沢湖を視察されて、「ここしかない!」と決めてくださったんです。

――一通の手紙から、すべてが始まっているんですね。

大久保:昔は飯能には「何もない」とよく言われていました。都心から1時間ほどの好立地だけど、緑と清流だけだねと。でも、市政が変わればこの街は変わると私は信じていました。そして、私が市長を務めさせていただくことになってから、民間企業の良い取り組みや面白いアイデアがあったらどんどん取り入れていくという方針に変えたんです。人が集まるのをただ待っているだけではなく、自分たちから人が集まる環境を作ることが大事だと考えました。

飯能を魅力ある街にするために、民間の企業の方々とも積極的に組んで、レジャーや観光だけでなく、教育や環境も含めて変えていく。そうすることで、子育て世代を含めた若い方たちにも飯能に住みたいと感じてもらえるような地域にしようと。『メッツァ』を誘致できたことは、そのひとつの成果と言えると思います。

新井:大久保市長は「民間企業の繁栄が市の繁栄につながる、そしてそれが市民の幸せにもつながっていく」という、わかりやすくて強いメッセージを出してくださったんです。「官と民を分けることになんの意味があるのか? 協力できることがあるならどんどんやっていこう」と。そこで一気に話が進んでいきましたね。

2015年には飯能に『メッツァ』ができると発表されて、ちょうどその街づくりを始めようとしているときにSMEの皆さんがいらっしゃって、『Hanno Green Carnival』のお話もいただきました。このイベントは子育て世代のファミリー層にフォーカスしつつも、『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』の“北欧”というテーマやムーミンとも相性が良いイベントだと感じました。そのため『Hanno Green Carnival』の提案は飯能市としても大歓迎だったんです。

『Hanno Green Carnival』が生み出した成果とは

■『Hanno Green Carnival』の関連記事はこちら
『HANNO GREEN CARNIVAL2018』~都内から約1時間で北欧の世界へ。「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」とは?~
大人も子どもも大興奮! 『HANNO GREEN CARNIVAL 2018』親子フェスをレポート

――1回目の『Hanno Green Carnival』は2016年8月6日、7日に開催され、アートディレクターにtupera tuperaさんを招き、来場者も7,000人を数える大きなイベントとなりました。

丸子:アーティストの方々にもご協力いただいて、ライブだけではないワークショップなども含め、さまざまなコンテンツを集めることができました。たくさんのお客さんに来ていただきたかったので、そういう意味では初回から良い結果が出せたと思います。

大久保:1回目はよりエンタテインメントの要素が強かった印象を持ちましたね。それと飯能市としては、SMEの皆さんのようなエンタテインメントの会社とご一緒するのはほぼ初めてでしたが、世の中の面白そうなことにアンテナを高く立てていて、やると決めたら「一気にやるんだ!」という推進力や爆発力をお持ちなんだなと、とにかく感心しました。

丸子:飯能市の皆さんのご協力もあって1回目は無事に終わりましたが、SMEとしてもこれは継続していかないと地域に馴染むことができないと感じていたので、「このイベントは長くつづけたいね」と話していました。

――それから2020年まで、過去5回『Hanno Green Carnival』が実施されていますが、特に印象に残っていることはありますか。

新井:丸子さんたちSMEのスタッフの皆さんが、終わったときに号泣されていたのは、すごく印象に残っていますね。

丸子:ありましたね(笑)。

新井:最終日でイベントも終わりが近くなってきたら、皆さんウルウルとされていて。すごい思い入れと情熱を持って、このイベントに取り組んでいただいたんだと実感しました。そんな丸子さんたちの姿を見て、我々も感動してしまうという(笑)。

丸子:あれは2018年の3回目でしたが、当時『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』の管理をされていたご担当者に清水さんという方がいらっしゃって。我々が最初にアポなしで飛び込んだときも、清水さんが対応してくださって、そこからずっとこのイベントに携わってくださったんですね。

清水さんはライブをやるなら公園のどこが良いとか、ワークショップをやるときはどうすれば森の木々を傷つけずにできるかなど、公園の保全をしっかりしながら、イベントを行なえる環境を作ってくださいました。イベントが無事に開催されて、すごくたくさんのお客様にも来ていただけたなかで、最後に清水さんのうれしそうな顔を見たら号泣してしまったんです。

――では、改めて『Hanno Green Carnival』を開催することで得られる成果と、今後、どのようなことをこのイベントに期待されているかを教えてください。

新井:実は『Hanno Green Carnival』を始めたころから、飯能市の人口の減少率が下がっているんですね。また、他県から引っ越してこられる家族が増えたというデータもありまして、そのなかには子育て世代も含まれています。

もちろんこの数字と『Hanno Green Carnival』を紐づかせることはできないんですが、それでも開催するごとに10,000人前後の来場者がいらっしゃいます。そのなかには、飯能に魅力を感じてくださった方、新しい発見をされた方が必ずいると思います。ワークショップをはじめとした催し物も毎年面白いものをご用意いただけるので、飯能の良いピーアールになっていることは間違いありません。

また、大久保市長が掲げている“女性と子どもにやさしい街づくり”と“教育に力を入れる”という方針とも、『Hanno Green Carnival』のテーマは合致しているので、この取り組みはぜひ今後もつづけていっていただけると有難いですね。

大久保:やはりこういった大きなイベントを通じて「飯能市は良いところだな」と感じていただきたいですね。我々は、魅力ある街づくりをして、都心から人を招いてこなければいけない。昨今では新型コロナウイルスの影響で、テレワークも広がっていますし、都心ではなく、緑がたくさんある飯能で良いじゃないかと。都心から1時間ほどでアクセスできる、この地域の良さを実感できる機会として『Hanno Green Carnival』には大いに期待しています。

後編につづく

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

関連サイト

Hanno Green Carnival 公式facebook
https://www.facebook.com/Hanno-Green-Carnival-1725979167685844/(新しいタブで開く)
 
Hanno Green Carnival 公式Twitter
https://twitter.com/greencarnival_(新しいタブで開く)
 
トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園
https://www.city.hanno.lg.jp/akebono(新しいタブで開く)
 
ムーミンバレーパーク・メッツァビレッジ公式サイト
https://metsa-hanno.com/(新しいタブで開く)

©HANNO CITY. All Rights Reserved.
©Moomin Characters ™

連載エンタメビジネスのタネ

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!