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エンタメビジネスのタネ

飯能市長と語る地方創生につながるエンタメの活用法【後編】

2021.02.06

最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

今回は、『Hanno Green Carnival』や『ムーミンバレーパーク』、さらには学校教育の現場で開催される「ミュージカル教育プログラム」など、埼玉県飯能市とソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が、地方創生を目指して官民共同で取り組むさまざまな施策に注目。

2013年より埼玉県飯能市長を務め、同市をより住みやすい街へと成長させるために尽力する大久保勝市長と、飯能市役所で企画部長として現場を統括する新井洋一郎氏、そしてSMEで現場担当を担う丸子由佳に集まってもらい、エンタテインメントの恒常的な社会貢献の可能性について話を聞いた。

後編では『ムーミンバレーパーク』、そして飯能市の小中学校で実施している「ミュージカル教育プログラム」について伺った。

※本記事の取材は、11月24日に行なったものです。

  • 大久保 勝氏

    Okubo Masaru

    埼玉県飯能市長

  • 新井洋一郎氏

    Arai Yoichiro

    埼玉県飯能市 企画部長

  • 丸子由佳

    Maruko Yuka

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    経営企画グループ事業戦略チーム

飯能市とSMEの縁が深まった『ムーミンバレーパーク』

──『Hanno Green Carnival』とは別に、2019年に飯能市にオープンした『ムーミンバレーパーク』では、SMEがエンタテインメント・パートナーとしてパークの運営に協力させていただいています。パークを運営する株式会社ムーミン物語とSMEを引き合わせてくださったのが飯能市と伺っています。

新井:はい。どちらもエンタテインメントをビジネスにされているので、何かご一緒できることがあるのではないかと思い、『ムーミンバレーパーク』が飯能市にオープンすることが正式に決定した際に、ご紹介させていただきました。

丸子:『Hanno Green Carnival』がきっかけで素晴らしいご縁をいただきました。『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』の管理事務所の扉を叩いて本当に良かったです(笑)。

──飯能市にとって『メッツァビレッジ』や『ムーミンバレーパーク』の存在というのは、どういう意味を持っているのでしょうか。

大久保:日本全体で少子化や人口の減少が進むなかで、街に魅力を感じていただき、地域全体を活性化させるためには、ひとりでも多くの方に飯能市に来ていただいて、飯能市がどういう街かを体感してもらうことが必要です。

そのための中核を担っていただいているのが『メッツァビレッジ』や『ムーミンバレーパーク』だと我々は考えています。現在、飯能市の地方創生計画は「10年間の基本構想」を基にしていますが、まさしく『メッツァ』を中心とした街づくりを想定していて、そこに“人を楽しませる”ことをビジネスとされているムーミン物語やSMEの皆さんとのご縁ができたことは本当にありがたかったですね。『Hanno Green Carnival』と同様に、人を楽しませることができれば、おのずとそこには人が集まってきますから。

丸子:ムーミン物語の皆さんをご紹介いただいたあとは、『ムーミンバレーパーク』でさまざまな取り組みをご一緒させていただいています。現在は、パークのクリエイティブ・ディレクターを務める小栗了さんを演出家としてご紹介させていただいたり、パークのメインテーマ曲やショウで使用する楽曲を制作したり、冬季限定で開催されているアトラクション『アドベンチャーウォーク ~ムーミン谷の冬~』では、ソニーグループ全体でコンテンツ制作に協力させていただきました。

こうやってご縁が広がったのも、大久保市長はじめ、飯能市の皆様が民間企業との協力体制をしっかりとバックアップされているからだと感じています。

大久保:良いものはしっかり受け継いで、守るべきものは守り、攻めるべきところはどんどん攻めていかないといけないと考えています。一連の取り組みで言えば、飯能市にはムーミンの世界観に通じる“北欧”をテーマにした『トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園』という素晴らしい財産があって、これがあったからこそムーミンという世界的に人気のキャラクターを呼び込むことができました。

さらには、今年の夏に『ノーラ名栗』というアウトドアサウナやバーベキュー、グランピングなどフィンランドの文化を体験できる市営の施設もオープンしています。まさかオープンのタイミングで新型コロナウイルスの問題が発生しているとは計画したときには思いもしなかったですが、“飯能の豊かな自然×北欧”をテーマに、行政としてブランディングに努めています。そこには、民間企業の皆様のご協力は不可欠なので、こちらとしてもできる限りのことをしていかなければいけないと考えています。

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子どもたちの成長が、飯能市の学校を魅力的にする

――SMEは今、飯能市との取り組みとしてエンタメ×エデュケーションをテーマにした「ミュージカル教育プログラム」を実施しています。こちらの実施に至った経緯をお聞かせください。

大久保:飯能市の山間地域で公立の小学校3校を1校に統合するという話があり、そのときに地域の皆さんとふたつのお約束をしました。

ひとつが統合したあとの跡地を有効活用するということ。使われなくなった大きな建物というのは、そのまま放置してしまうと廃墟のようになって、見た目にも治安にも良くありません。これについては民間企業とも協業して、地域の皆さんの声も聞きながら、土地と建物を有効活用する道筋を作っているところです。

それともうひとつが、ほかの地域からも通いたい、通わせたいと思われる魅力ある学校づくりを行なうということでした。これについてもさまざまな施策を行なっていますが、その内のひとつにSMEの皆さんにご協力いただいている「ミュージカル教育プログラム」も挙げられます。

新井:公立学校ですから、学習指導要綱に則った上で、魅力ある学校をつくるにはどうしたら良いかと考えていたときに、SMEの皆さんから「ミュージカル教育プログラム」のお話を伺いました。SMEの皆さんは既に飯能市内の私立高校(私立大川学園高等学校)で、このプログラムを実施されていたので、我々も見学させてもらい、校長先生をはじめとした現場の先生方のお話も伺って、「これは取り入れてみよう」ということになったんです。

丸子:私たちの「ミュージカル教育プログラム」は、いわゆるプロの育成を目的にしたレッスン的なものではなく、歌とダンスと芝居を通じて自己表現能力を高めていくなかで、自分の内面性への気づきを促し、コミュニケーション能力を高めようとするものです。

大川学園での取り組みは対象が高校生だったので、プログラムの内容も“自分の経験や挫折を芝居で表現して、客観的に周りから見てもらう”という内面的な成長に焦点をあてたものになっていましたが、小学生や中学生に向けたもっとわかりやすいプログラムもご用意していたのでご提案しました。

新井:特に我々の印象に残ったのは校長先生のお話しです。「最初は照れたり、戸惑ったり、自分を表現することに躊躇していた子どもたちが、プログラムの進行とともに歌にもダンスにも芝居にもどんどん積極的になって、自分の意見をみんなの前で言えるようになり、友だちと一緒に作品づくりを楽しんでいました」とおっしゃっていて。実際、我々も現場で生徒たちのそういう姿を見て、このプログラムの価値を知ることができました。

丸子:大川学園では3年目となる「ミュージカル教育プログラム」を行なわせていただいて、先日最後の授業が終わったんですが、今回は、生徒全員から自身のエピソードをヒアリングして、それに合わせて台本を作り、文化祭で発表するというものになりました。

最初はあまりしゃべらず、目も合わせられなかった生徒たちが、笑顔で打ち解けて、表現することの楽しさを語る。練習も最初は“やらされている感”が漂っていたのが、最後には自主的に集まって練習を行ない、パフォーマンスとしても非常に高いものを見せてくれました。こうやって生徒たちが変わっていく姿を見られるのは、本当に感動しますね。

新井:生徒たちの表情は最初と最後では全然違いましたね。

丸子:はい、自主性を引き出せるプログラムになっていると思っています。

――実際のプログラムはどんな内容だったのでしょうか。

丸子:中学校では「総合的な学習の時間」を割いていただいて、1年生から3年生までの全校生徒に対して、ダンスと歌、芝居をする時間を設けました。SMEからは、私たちのほかに劇団番町ボーイズ☆のメンバー3人、プロのダンサー、そしてクリエイター集団のSoymilkの方にも来ていただいて指導にあたりました。

新井:劇団番町ボーイズ☆の皆さんがイケメンなので、最初は女生徒たちが照れていたりして、なかなか動けなかったんですよね(笑)。でも、講師の皆さんがコミュニケーションをしっかりとってくれて、少しずつ打ち解けていってる姿が傍から見ていてわかるんですよね。最後は一緒にショウを作りあげる仲間という感じになっていって、素晴らしいプログラムでした。

丸子:台本のセリフは生徒たち一人ひとりに“人生とは”というテーマで考えてもらうんですね。そこに個性がすごく出ていました。ミュージカルはフィクションの世界ですが、自分自身の物語を入れ込むことによって感情移入がしやすくなります。そして自分の素の部分を表現することへの抵抗感がなくなっていきます。

“人生とは”という問いに、ある生徒は「家族です」と言って、お母さんのエピソードを話してくれたり、ある生徒は「学校の仲間です」といってその想いを語ってくれる。それぞれのエピソードと背景がセリフや舞台上でのパフォーマンスに滲み出てくるので、私たちも感動させてもらいました。

新井:実施した学校は山間地域にあり生徒も全校生徒で数十人と多くありません。だから、子どもたちは小さいころから同じ顔触れで、グループのなかでの関係性がある程度固まっているんですね。でも、今回のような試みを行なうと「あの子はこんな一面をもっているんだ」「あの子はこんなことができるんだ」と、子どもたち同士でも新しい気づきにつながっていたようです。

――実際に「ミュージカル教育プログラム」を飯能市内の各校で実施してみて、手応えはいかがですか?

新井:非常に好評でしたね。子どもたちにとっては、ソニーミュージックグループが手掛ける純度の高いエンタテインメント・プログラムを受講できること自体が、貴重な体験になっていました。その上で、このプログラムが刺激となり、自分の将来像のなかにエンタテインメントという分野が入るようになれば、子どもたちの可能性を広げることにつながります。こうした取り組みを通じて、通いたい、通わせたいと思える学校づくりにつなげていければと考えています。

子どもたちの成長が学校教育を進化させる

――『Hanno Green Carnival』や「ミュージカル教育プログラム」、間接的ではありながら『ムーミンバレーパーク』など、飯能市とSMEの取り組みも多岐にわたっています。今後の展望をお聞かせください。

新井:現場のアイデアとしては、『ムーミンバレーパーク』で実施されている「Sound AR」をもっと活用したいと考えています。既に、飯能駅から『メッツァ』に向かう路線バスで楽しめる期間限定のスペシャルコンテンツとして「ウィンターワンダーランド ローカルバス乗車特典ストーリー」が配信されていますが、これを飯能市全体の魅力を伝えるコンテンツに応用できれば面白いことができるかもしれない。

繰り返しになりますが、緑豊かな自然は飯能市の魅力のひとつに挙げられます。例えば山歩きのときに、「Sound AR」で飯能市の土地の歴史や地理的な特徴を伝えることができれば、飯能に対する興味や愛着を高めていただけるのではないかと思います。

エンタテインメント×自然、エンタテインメント×エデュケーションなど、SMEの皆さんが培ったノウハウを存分にいかしていただいて、飯能市の魅力を高めるコンテンツを生み出し、地方創生につなげていければと考えています。

丸子:新井さんがおっしゃる通り、「Sound AR」はもっと活用方法があると思うので、コンテンツ内容を含めてご提案していきたいと思います。また、「ミュージカル教育プログラム」も我々がやっているのはまだ「点」だと思っていて、まずは続けていくことで「線」にしていきたいです。

その上で、最終的な目標としてはエンタテインメント×エデュケーションで「面」となる取り組みにまで進化させて、全国の教育現場に取り入れていただけるような展開にしていけたらと考えています。そのためにも、飯能市の皆さんと一緒にコンテンツの魅力を高めていきたいと思います。

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大久保:我々は行政として飯能市の魅力を広く発信していくことと、飯能市で暮らす方々の満足度を高めていくこと。この両方にしっかり取り組んでいかなければいけません。

SMEの皆さんと取り組む教育、『メッツァ ビレッジ』や『ムーミンバレーパーク』といった娯楽施設の拡充は、その取り組みのなかの大きな柱です。地方創生に対する官民共同の取り組みは、全国の自治体でも行なわれていますが、飯能市はそのなかでも一歩先行く存在でありたい。やれることは、一番先に手を挙げてやってしまおおうという意気込みで取り組んでいきますので、今後も飯能市の試みに注目していただけたらとうれしいですね。

困難を“未来を切り拓く推進力”に変えて――大久保市長


  • 本記事の取材は、2020年11月24日に行なっている。その後、2度目の緊急事態宣言を受けて、大久保市長に改めて現状を踏まえた未来への取り組みについてお考えを伺った。   

    ――世界中が困難の時を迎えていますが、現状をどのように捉え、この状況を未来にどのようにつなげていくべきだとお考えですか。

    日本も含め、いまだ世界中で大変多くの人々が新型コロナウイルス感染症の影響に苦しんでおり、悲しいニュースを目にしない日はありません。

    しかし現状は、決して先の見えない暗いトンネルを歩いているという状況では無くなったと感じています。ワクチンの開発が進み、本市でも市民の皆様へのワクチン接種に向けた体制整備を進めているところです。ワクチン接種が進めば状況はかなり良くなるはずで、今がまさに正念場と言えるでしょう。

    これまでの間、私たちは互いに協力し合いながら、そしてさまざまに工夫しながらこの状況に対応してきました。例えばテレワークは、今やニューノーマルとして多くの人が活用しています。もちろん、テレワークに課題がないわけではありませんが、テレワークの普及によって、今後の私たちの働き方やライフワークバランスはより良くなるのではないでしょうか。

    もし、新型コロナウイルス感染症が発生していなかったとしたら、テレワークの普及は今よりも遅れていたことでしょう。

    つまり、私たちは困難を『未来を切り拓く推進力』に変えることができるということです。そして困難を乗り越えるために行なってきたさまざまな工夫を、未来に繋げていくことが大切であると思っています。

    ――コロナ禍がつづいていますが、市民の皆様にはどのような行動、心がけを求めますか。

    市民の皆様におかれましては、これまでも「マスクの着用」や「3密の回避」などの基本的な感染防止対策に努めていただいておりますが、新型コロナウイルス感染症からご自身を守り、身近な人を守るためにも、引き続き感染防止対策に努めていただくとともに、国、県からの要請(不要不急の外出や県境をまたぐ移動の自粛等)にご協力くださいますようお願いいたします。

    新型コロナウイルス感染症の感染拡大に歯止めをかけ、医療崩壊を防ぎ、一日も早い日常を取り戻すために、市民の皆様、事業者の皆様のご理解とご協力を宜しくお願いいたします。

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

関連サイト

Hanno Green Carnival 公式facebook
https://www.facebook.com/Hanno-Green-Carnival-1725979167685844/
 
Hanno Green Carnival 公式Twitter
https://twitter.com/greencarnival_
 
トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園
https://www.city.hanno.lg.jp/akebono
 
ムーミンバレーパーク・メッツァビレッジ公式サイト
https://metsa-hanno.com/

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