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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

握手会に代わる新時代の交流を可能にしたアプリ『forTUNE meets』【後編】

2021.01.27

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ————。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

コロナ禍で握手会の自粛を余儀なくされた2020年初頭。特典付きCD購入サイト『forTUNE music』は、全国で再開を待ち望んでいるファンやユーザーに向けて、新しいサービスを立ち上げる必要があった。そこで集結したのが、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の佐藤祐貴、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の野原祟弘と阿部龍次郎、そしてソニー・ミュージックレコーズ(以下、SML)で乃木坂46のA&Rを務める吉田行孝たちだ。

後編では、実際に運用が始まってからの手応えや課題などを語る。

  • 佐藤祐貴

    Sato Yuuki

    ソニー・ミュージックソリューションズ
    デジタルビジネスカンパニー ECプランニング部1課

  • 吉田行孝

    Yoshida Yukitaka

    ソニー・ミュージックレーベルズ
    第1レーベルグループ ソニー・ミュージックレコーズ第三制作部

  • 野原崇弘

    Nohara Takahiro

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    コーポレートビジネスマーケティンググループ マーケティングオフィス

  • 阿部龍次郎

    Abe Ryujiro

    ソニー・ミュージックエンタテインメント
    コーポレートビジネスマーケティンググループ マーケティングオフィス

アーティスト自身もコミュニケーションを楽しめる

──急ピッチの開発に苦心されながらも、『forTUNE meets』は2020年9月、無事にローンチされました。

吉田:そうですね。乃木坂46は4回目の『46時間TV』生配信を皮切りに、ライブ生配信などのさまざまなオンラインによるイベントがスタートし始めたタイミングでした。そこで、まず最初に坂道グループのメンバーに集まってもらい『forTUNE meets』のテストを実施しましたが、メンバーたちからも予想以上に好評でした。その後、まずは乃木坂46と日向坂46が、コロナ禍で延期になっていた握手会の振り替えイベントから始めさせていただいて。メンバー自身も非常に楽しそうに取り組んでいましたね。

坂道グループの握手会は、これまで東名阪でしか開催しておらず、例えば北海道や沖縄県など遠方に住んでいる学生の方が、毎回飛行機に乗って来場するのも大変なことでしょうし、ずっと応援していただいているにもかかわらず、握手会までは足を運べないというファンの方もたくさんいらっしゃると思います。

でも、『forTUNE meets』でオンラインでも開催できるようになったので、今後は全国どこからでも参加が可能となり、今まで参加できなかった方たちもメンバーと直接コミュニケーションがとれるので、画期的なものになるんじゃないかと思っています。

野原:メンバーもそうですし、支える吉田さんたちもファンの皆さんに喜んでもらえるものを作るっていうのが当たり前のファーストプライオリティとしてあって。それ以外はないくらいのつもりなんですよね。僕たちも同じように思っているし、そういうアプリを作れたこと、作れる環境になっていることは非常に良かったと思います。

──オンラインイベントの現場はいかがでしょう? 実際に運営して気づいたことなどはありますか。

佐藤:ローンチ以降、30本くらいのイベントをやってきたんですが、阿部さんが全イベントの現場に来て、つきっきりでシステムを管理してくださるのが非常に助かっています。現場での「これってこうなりませんか?」というリクエストに応えて、可能なものはその場で調整してくださるんです。

『forTUNE meets』がアップデートをつづけられているのは、吉田さんやメンバーたちが建設的な意見を挙げてくださるのに加えて、それに応えられるエンジニアが現場に来てくださるというのがすごく大きい。ファンの方たちは常に“もっと楽しんでいきたい”という強い気持ちをもってイベントに参加されています。その熱量を、エンジニアである阿部さんに肌で感じてもらえるのは、『forTUNE meets』をブラッシュアップさせていく上でとても重要なことだと考えています。

阿部:僕がSMEに来て改めて感じたのは、エンジニアに求められているのは、クリエイターや現場で働く方々が、いかに使いやすいシステムを構築できるか、そして技術はそのためにあるということです。提供する側のツールが使いやすいものでなければ、ファンの皆さんに優良なサービスを提供できませんから。

また、『forTUNE meets』では海外のクラウドシステムを採用していますが、何か問題が起きたときに相談すると、「なんでそんな使い方するんだ?」と聞かれます。そこで「日本には握手会というイベントがあって、それをオンラインでやりたいんだ」と説明すると、「それは面白い!」と。先方のほうがすごく興味を持ってくれて、「それならこうしたらいい!」「これならどうだ?」といろいろなアイデアを出してくれるんです。

多くの人が熱量を高めることにテクノロジーが役立つのなら、国や文化が違っても、面白そうだとみんなが集まってくる。だから、さまざまな技術開発を行なっているソニーグループに、ソニーミュージックグループがあるということは非常に重要なことだし、自分が今そこで働けているのは、すごく良い経験になっているなと思います。

どうすればファンの要望に応えられるか

──実際にイベントに立ち会ってみて、具体的にはどんな課題が出てきましたか。

阿部:参加者がどんどん増えていくと、こちらが予想していなかった使い方をするユーザーが現われるということですね。想定の範囲を飛び越えられるのもエンタメの面白いところだと思うんですが、エンジニアからするとそれが事故の元になる可能性もあるので、その対応は迅速に行なうようにしています。

野原:システムとして不具合が起こるようなことはあってはいけませんが、目的はあくまで楽しんでいただくことなので、そのために守らなければいけないルールや必要なマナーとの間に立って、阿部さんがイベントのたびに格闘してくれていますよね。

阿部:どうすればファンの要望に応えられるのか、試行錯誤をどんどんやっていくしかないし、走りつづけることによって、もしかしたら、ソニーミュージックグループのデジタルサービスがより進化していくことにつながるかもしれないので、可能な限り現場に出つづけたいと考えています。

──アーティスト側からのリクエストは何かありましたか。

阿部:ユーザーのニックネームを書く欄があって、そこは文字数が多くなりすぎると全部は表示されないんですね。でもニックネームにメッセージを込めるファンの方もいるので、それを事前に全部見られるようにしたいとか。それは、メンバー自身がファンとつながった数秒の間に最高のパフォーマンスをしたいということなんですよね。これがトップアイドルなんだなって思いながら、いつも見てます。

あとは、ファン同士のチャットルームでも事前に何か告知できないかとか、来てくれた人だけが見れるものが作れないかとか、日々、いろんなアイデアをいただいてます。

これからもアップデートを重ねていく

──最後に今後の展望を聞かせてください。

佐藤:まずはトークという基本的なところから始まったアプリですが、『forTUNE meets』としては、トークだけじゃなくサイン会やチェキ会をできるようにしたり、リアルでも行なっていた特典会をオンラインでも開催できるようにしていきたいですね。また、デジタルならではの施策も企画して提案していきたいなと考えています。

野原:現在では、おかげさまで、坂道グループ以外のアーティストからもやりたいっていう声をかけていただけるようになりましたし、ソリューションとしてフィジカルに代わるものというよりは、新しい楽しみ方のひとつになるようなものを作っていかないといけないなと思います。みんなが使いやすくて、お客さんにも楽しんでいただけるものになるように、アップデートを重ねていければと思います。

阿部:通常の業務内での開発しかしていなかったら経験できなかったことがたくさんあったので、それはすごく楽しいことでした。今後もエンジニアとしてできる限りの協力をさせていただきたいです。あと、僕はこれとは別にスポーツ関連のプロジェクトにも参加しているので、ここで得た知見がそちらでもいかせるようにできればと考えています。

吉田:ファンの皆さんに喜んでいただけてますし、メンバーも『forTUNE meets』でのコミュニケーションを楽しんでいるので、まずは良いスタートが切れたかなと思います。今後は、ファンやメンバーからのリクエストでまだ全部は実現できていないものもあるので、一つひとつをクリアしていければ。ソニーグループの開発者が近くにいるのはすごく心強いので、お互いにリソースを出し合って、良いものに仕上げていければと思います。

それと、僕らレーベルとしては、いつか新型コロナウイルスの影響が収束して日常が戻ったときに、これまで開催してきたリアルな握手会も復活させることができると思っているんですね。たとえそうなっても、みんなで開発した『forTUNE meets』がなくなることはないですし、そのときはリアルな握手会と並行して、どちらも開催していければと思っています。コロナ禍だからこそ生まれたこのアプリを、今後もみんなで大切にして、イベントの企画のひとつとして使用していけたらと思いますね。

 

文・取材:永堀アツオ
撮影:下田直樹

関連サイト

forTUNE music
https://fortunemusic.jp/(新しいタブで開く)

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