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キャラクタービジネスの心得

生誕70周年――今こそ『ピーナッツ』を通して伝えたい大事なふたつのメッセージ

2021.02.26

2020年10月2日、チャールズ M.シュルツ氏が描き出したコミック『ピーナッツ』が、連載開始から70周年を迎えた。エージェントとして、国内で『ピーナッツ』のライセンスビジネスを展開するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)では、このアニバーサリーイヤーを祝し、記念アイテムの発売や巨大スヌーピーのアドトラック『SNOOPY HAPPINESS FLOAT』の全国縦断など、さまざまな企画を実施してきた。

そして今後も、ピーナッツ公式オンライン検定『PEANUTS LOVERS CHALLENGE』の開催やゲームアプリ『SNOOPY Mogu-Mogu Restaurant』のリリースなど、新たな取り組みを予定している。

70年間ファンに愛され続けてきた『ピーナッツ』は、今後どのような展開を見せるのか。アニバーサリーイヤーを振り返りつつ、今後のビジネス的な展望と『ピーナッツ』というIPを通して伝えたいメッセージをSCPの越智秀樹に語ってもらった。

  • 越智秀樹

    Ochi Hideki

    ソニー・クリエイティブプロダクツ
    PEANUTS推進部
    部長

ファンの愛に支えられた『ピーナッツ』70周年

──2020年、『ピーナッツ』誕生70周年を迎えたSCPでは、「しあわせは、変わらない ともだちがいること。~Happiness is... lifelong friendship~」をテーマに、さまざまなプロモーションを展開されました。まずは、この言葉に込めた思いを聞かせてください。

70周年という節目の年を迎えられたのは、チャールズ M.シュルツ氏が描き出した『ピーナッツ』というコミックと、そのなかで生まれたキャラクターたちの存在、そして国境も世代も超えて『ピーナッツ』をずっと愛しつづけてくれたファンの皆様がいらっしゃったからこそだと考えています。

作中のキャラクターたちの友情や関係性が永遠に変わらないのと同じように、『ピーナッツ』とファンの関係もずっと変わらない。大切な友達のように永遠であってほしいという願いを込めて、今回はこの言葉を選びました。

──記念グッズの発売、イベントの実施、『完全版 ピーナッツ全集』の刊行など、さまざまな施策でアニバーサリーイヤーを盛り上げられてきました。越智さんのなかで特に印象に残っている施策はどちらでしょうか。

どれにも思い入れがありますが、特に大きな反響をいただいたのは『SNOOPY HAPPINESS FLOAT』の全国縦断ですね。約6mという巨大なスヌーピーとウッドストックを乗せたトラックが全国6都市を周り、各地域のファンの方々に喜んでいただくことができました。プロモーションとしての効果も非常に高かったように思います。現在は、南町田グランベリーパーク内に展示(期間限定)されていて、そちらでもフォトスポットとして活躍してくれています。

約6mという巨大なサイズのスヌーピーは迫力満点。南町田グランベリーパーク内で展示中。

──どこを走るかわからず“見つけたらハッピー”という感じでしたよね。SNSにも、多くの写真が投稿されていました。

アニバーサリーイヤーを彩るプロモーションなので、コアファンだけでなく一般の方にも興味を持っていただくチャンスと捉えました。そこで、複雑なことはやめてシンプルに目立つことをやろうと考えたのです。

大きなスヌーピーとウッドストックがアドトラックに乗って街を走る。シンプルではありますが、何も知らずに見た方は「え!?」と二度見をしてくれるでしょうし、「大きい!」「かわいい!」というプリミティブな感情を想起させますよね。

それがSNSで共有したいというモチベーションになったのではないかと思います。たくさんの方々の目に触れるアドトラックと『ピーナッツ』のIPとしてのパワーの相乗効果により、本当に多くの皆さんがスマホで写真を撮り、SNSに掲載してくださいました。

日本語未訳だった作品も収録した『完全版 ピーナッツ全集 スヌーピー1950~2000』。訳はもちろん谷川俊太郎氏が担当。全25巻で河出書房新社から発売されている。

大切なのは原作コミックの世界観を守ること

──2019年12月、南町田グランベリーパークにオープンした『スヌーピーミュージアム』も1周年を迎えました。新ミュージアムの開館は、『ピーナッツ』事業にどんな効果をもたらしましたか?

『ピーナッツ』のIPとしての魅力をさらに一段引き上げたように思います。世の中にはキャラクターにまつわるさまざまなコンテンツがありますが、シンボリックで聖地のようなものを持っているIPはそう多くはありません。

そこに行けばそのコンテンツの神髄に触れることができるという場所は、コアファンにとっては情熱を保つ装置になりますし、ライトファンにとっても作品から新たな感動や驚きを得られ、熱量を高めるきっかけになると思います。そういう意味で、やはり『スヌーピーミュージアム』には大きな存在意義があると感じています。

──ほかにも、初のメンズショップ『PEANUTS TRAILER SHOP』の出店、『スヌーピーミュージアム』の新企画展なども展開されました。今後は『ピーナッツ』の公式オンライン検定『PEANUTS LOVERS CHALLENGE』の開催、ゲームアプリ『SNOOPY Mogu-Mogu Restaurant』のリリースなども予定されています。代表的な施策について、企画の意図と反響をお聞かせください。

『ピーナッツ』は非常に幅広い年齢層の方々に支えられていますが、『ピーナッツ』の原作がコミックであることをご存じでない方もいらっしゃいます。エージェントである我々としては、できれば原作コミックを通じてシュルツ氏の描いた『ピーナッツ』の世界観をもっと深く楽しんでいただきたいと思っています。

そういう意味では、3月(6日~9日)に開催する『ピーナッツ』の公式オンライン検定『PEANUTS LOVERS CHALLENGE』は、より多くの方に改めてコミックに触れていただけるチャンスだと考えていますし、原点に立ち返るような取り組みだと感じています。

ゲームアプリについては、純粋に『ピーナッツ』のキャラクターの世界観を楽しんでいただきながら、パズルゲームの要素も盛り込んだものになっているので、幅広い方に楽しんでいただけるのではないでしょうか。

3月6日(土)10:00~9日(火)19:59まで、オンラインで開催される初の公式検定『PEANUTS LOVERS CHALLENGE』。

──『スヌーピーミュージアム』が開館したときも、「原作を知らない方が原作と出会う場を作りたい」というお話がありました。キャラクターだけでなく、作品全体を大切にする姿勢は、SCPの皆さんにお話しを伺うと常に感じます。

そう言っていただけるのはありがたいですね。我々は、プロモーションにしてもグッズ展開にしても、原作コミックの世界観はすごく大事にしています。なぜなら、ファンの皆さんのなかにあるスヌーピー像は、原作コミックやシュルツ氏のアートと密接にリンクしているからです。

その世界観から逸脱したり、イメージを裏切ったりすることは絶対にやってはいけないことだと我々は考えていて、それは歴代の担当者も一貫して言ってきたことだと思います。

──新たな施策では、メンズショップのオープンも印象的な出来事でした。スヌーピーのような愛くるしいビジュアルのキャラクターは、女性をターゲットにすることが多いですが、なぜメンズショップも展開したのでしょうか。

もともとスヌーピーは、一般的な甘いキャラクターに比べて男性の支持率が高いキャラクターです。男性がスヌーピーのTシャツを着ても違和感がありませんし、似合う、似合わないはさておき(笑)、僕もよくスヌーピーのトレーナーを着ています。

その上で、これまではTシャツやトレーナーといったアイテムが主流でしたが、男性の嗜好に合うアイテムをもっと増やしても良いのではないかという話が挙がりました。そこで、より多くのファンを獲得するための、ひとつのアプローチとしてメンズショップを展開しました。新型コロナウイルスの影響もあるので、ご来店は完全予約制ですが、非常に好評で、男性のお客様はもちろん、ご夫婦や女性にもご利用いただいています。

東京・神楽坂にオープンしたメンズショップ『PEANUTS TRAILER SHOP』。オンラインストアも展開されている。

それぞれの世代で共感される『ピーナッツ』

──男性ファンの獲得にとどまらず、SCPが『ピーナッツ』の国内エージェントになってから、市場規模が大きく拡大されました。

2010年に我々がエージェントになって、『ピーナッツ』のライセンスビジネスをスタートさせてから市場規模は2倍にすることができました。キャラクタービジネスの市場調査によると、2019年の人気キャラクターランキングでスヌーピーが4位にランクインされ、認知度では95%以上というデータも出ています。以前は中高年の女性がコアなファン層でしたが、現在は若年層からの支持も増え、ティーン誌の好きなキャラクターランキングでも1位に選ばれるようになっています。

性別や年代を問わず、人気ランキングの上位に入ってきているので、そういう意味では我々の取り組みが認められている部分もあるのだと思います。ただ、それにも増して、やはりシュルツ氏が描く『ピーナッツ』の世界観に、多くの方が何かしら共感するものがあるから、これだけの人気が得られるのだと感じます。

──その“共感するもの”とは何だと思いますか?

シュルツ氏は、1950年からお亡くなりになる2000年までの50年間、ずっと『ピーナッツ』のコミックを描き続けてきました。それは、子どものころにコミックに触れた人が大人になり、子どもが生まれ、孫ができ……と、人生のサイクルを丸ごと飲み込むくらいの長さです。

その間、シュルツ氏は時代の空気感を混ぜ込みながら『ピーナッツ』という作品を紡いできました。だからこそ、人生のどの時期に出会っても、自分が共感できる部分を見つけられるのではないかと思います。ハラハラドキドキするようなコンテンツではありませんが、何気ない日常に共感し、親近感を持って楽しめるのが『ピーナッツ』という作品。「自分も同じように感じるな」「あるある」といった同一性を繰り返し体験することで、どんどん作品が身近に感じられるようになるのが、『ピーナッツ』の奥深さだと思います。

──幼い子どもが好むキャラクターのなかには、ある時期を境にパタッと興味を持たれなくなるものもありますよね。でも、『ピーナッツ』には“卒業”がありません。それも、同じような理由からでしょうか。

幅広い年代に向けて、幅広いグッズを展開しているのも理由のひとつだと思います。幼稚園児はクレヨン、小中学生はシャープペンなど、文具ひとつとっても年代によって必要なものが異なります。例えば学校で「これとこれを用意してください」と言われたとき、『ピーナッツ』ならほぼ全部揃う。しかも『ピーナッツ』はアートが秀逸なので、商品に落とし込んだときにも優れたデザインが生まれやすいIPです。

常に身近に『ピーナッツ』の商品があり、そこから興味を広げて原作の世界観に触れていただければ、その方はずっと『ピーナッツ』のキャラクターたちを好きでいてくれるのではないでしょうか。

コロナ禍でも感じたファンの熱量

──昨年からつづく新型コロナウイルスの問題は、さまざまなビジネスに影を落としました。やはり『ピーナッツ』の事業にも影響はあったのでしょうか。

そうですね。我々はこれまで“人をたくさん集めること”をひとつの軸にしてビジネスを行なってきましたが、新型コロナウイルスの影響で“人が集まってはいけない”ことになり、まだニューノーマルに適応しきったとは言えない状況です。

PR活動においても、例えば『SNOOPY HAPPINESS FLOAT』なら「何時何分にどこを通る」と予告し、皆さんに確実にご覧いただけるようにしたかったのですが、それが密につながってしまってはいけないので、お伝えできませんでした。SNSで「待っていたけど会えなかった」というファンの方の投稿も拝見したことがあり、そうした方々には心からお詫びを申し上げたいと思います。

また、『スヌーピーミュージアム』も1回目の緊急事態宣言のときには休館し、再開後も入場者数を制限するなどの対策を行なってきました。加えて、都市部店舗型の『スヌーピータウンショップ』も外出自粛の影響を受けて売り上げが落ち込みましたね。

いっぽうで、食品や日用品の買い物ついでに立ち寄れるショッピングモール内の店舗などは、そこまで大きな影響は受けませんでした。70周年のアニバーサリーイヤーということもあって新たなパートナー企業とのコラボ商品も数多く登場したため、ファンの皆様の熱量に大きく支えられましたね。

──それでは逆にコロナ禍で、需要が伸びたのはどんな商品でしょう。

やはりウチナカ需要が高まったため、ジェラートピケとのコラボ商品であるルームウェアは特に人気でした。また、普段は弁当箱などを販売しているランチウェアのメーカーが、冷蔵庫内の食材を入れる収納容器を発売したところ、こちらも好調。ほかには、除菌消毒を行なう衛生用品とコラボした商品はよく売れましたね。同じ消毒用品を買うにも、「せっかくならスヌーピーのイラストが入ったものを」と選んでいただけるのが『ピーナッツ』の強みだと思います。

──コロナ禍だからできたこと、コロナ禍で改めて気づいたことなどはありますか?

当然ながら、オンライン施策には注力しました。『スヌーピーミュージアム』では、『スヌーピーミュージアム・オンライン』がスタートしましたし、コロナ禍においては、お客様に安全にお買い物をしていただくのが第一なので、オンラインショップの『おかいものSNOOPY』にもより一層力を入れるようになりました。

今後もオンライン施策は重要なテーマになると考えているので、店頭で商品を選ぶような楽しさをご提供できるように進化させていきたいと思います。

映像で『スヌーピーミュージアム』を楽しめる『スヌーピーミュージアム・オンライン』。グッズの購入も可能。

今こそ『ピーナッツ』を通じて伝えたいふたつのメッセージ

──SCPでは、『ピーナッツ』のほかにも『きかんしゃトーマス』『ピングー』などさまざまなIPを扱っています。そのなかで『ピーナッツ』は、どのような存在ですか?

SCPが管理するIPのなかでも、とりわけ市場規模が大きいIPで、事業の柱のひとつと言えます。『ピーナッツ』を扱うようになったことで、ビジネス領域も大きく広がりましたし、ライセンシーの皆様の業種も多岐にわたります。新たな出会いや取り組みも、『ピーナッツ』だから展開しやすい部分もあるので、非常に重要なIPであると感じています。

──越智さんご自身は、『ピーナッツ』のどんな点に魅力を感じていますか? もし好きなキャラクターがいたら、教えてください。

最初に惹かれたのは、シュルツ氏が描くアートでした。シンプルに白と黒で構成されていますが、「シュルツタッチ」とも言われる独特のラインが表情豊かで、深い味わいがあり魅力だと感じています。

あとは、セリフの内容はもちろんですが、フォントもすべてシュルツ氏の手書きですごくかっこ良いですよね。なかでも僕が好きなのは、1970年~1980年頃のVintageアートのスヌーピーです。

それとピーナッツ・ギャングはみんな大好きですが、強いて挙げるならチャーリー・ブラウンでしょうか。野球も負けてばかりですし、凧揚げもうまくいったためしはありません。飼い犬のはずのスヌーピーにも「自分が主人だと思っていた」と言われてしまうような少年ですが、控えめで優しいところが良いですよね。優柔不断なところには共感もしますし、何度失敗してもあきらめないところは尊敬できます。

──最後に、今後の展望についてお聞かせください。キャラクタービジネスの市場において、今後『ピーナッツ』をどのように展開させていきたいですか?

『ピーナッツ』は毎年ブランディングテーマを定めて、さまざまな取り組みを行なっているのですが、2021年は、“AND I LOVE ME”と“LOVE EACH OTHER”に決まりました。

コロナ禍において、多くの方がつらい思いや窮屈な時間を過ごされていると思います。そしてさまざまなことがうまくいかないとき、人はその原因を自分のなかに求めてしまうことがあります。このような状況下で、ひょっとしたら自分を責めたり、嫌になってしまうことも多いのではないでしょうか。

「AND I LOVE ME」というメッセージには、その言葉の通り「自分自身を肯定し、もっと好きになってほしい」「自分自身を抱きしめることで、元気が湧いてきますように」という思いを込めました。

そして自分の心にゆとりができたら、次は「自分以外の人のことをもっと知り、そして好きになってほしい」。そんな願いを込めて、「LOVE EACH OTHER」というメッセージを掲げました。

今の世の中に向けて、ピーナッツ・ギャングを通じて当たり前だけど忘れがちなことを伝えていければと思います。

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

©Peanuts Worldwide LLC

関連サイト

PEANUTS 70周年記念
https://www.snoopy.co.jp/70th/
 
スヌーピー公式オンラインショップ おかいものSNOOPY
https://okaimono-snoopy.jp/
 
スヌーピーミュージアム
https://snoopymuseum.tokyo/s/smt/
 
スヌーピーミュージアム・オンライン
https://online.snoopymuseum.tokyo/s/smo/?ima=1451
 
PEANUTS TRAILER SHOP
https://peanutstrailershop.jp/
 
PEANUTS LOVERS CHALLENGE
https://kentei.snoopy.co.jp/s/k2021/?ima=1616

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