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Artist Profile(アーティストプロファイル)

“天才高校生”からの飛躍。崎山蒼志の音楽世界は縦横無尽に広がりつづける【後編】

2021.03.31

気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「Artist Profile」。

アコースティックギターをかき鳴らして歌う姿がインターネット番組で放送され、SNSを中心に一躍注目の的となったのが約3年前。崎山蒼志は、今年1月、高校卒業目前にメジャーデビューした。そして3月31日には、卒業後第1弾の作品として、ドラマ主題歌用に書き下ろした新曲「逆行」を発表する。ひとつの節目を迎え、これからさらに才能を発揮していくであろう俊英シンガーソングライターの、これまでの足跡と18歳現在のビジョンを聞く。

後編では、メジャーデビュー・アルバム『find fuse in youth』に込めた思いや、3月31日リリースの新曲の手応え、そして今後の活動について語る。

  • 崎山蒼志

    Sakiyama Soushi

    2002年生まれ。静岡県浜松市出身。2018年7月18日、配信シングル「夏至/五月雨」でインディーズデビュー。2021年1月27日、フルアルバム『find fuse in youth』で、ソニー・ミュージックレーベルズよりメジャーデビュー。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。

今やれることをやっておきたい

今年1月に発表されたメジャーデビュー・アルバム『find fuse in youth』は、良い意味で統一感のない、多面体のような1枚だ。全13曲には、崎山蒼志のルーツ、やりたいこと、多方面に広がる音楽的な興味、出会いによる刺激、いろんな要素が詰め込まれている。

自身の楽曲をバンドアレンジで音源化した「再定義」シリーズの「Samidare」「Heaven」「Undulation」を筆頭に、表題曲「find fuse in youth」や「花火」など、バンドサウンドの楽曲も多く収録。そのいっぽうで、「鳥になり海を渡る」など得意の弾き語りによるスタイルや、自身の打ち込みによるアバンギャルドなエレクトロニックミュージックの「waterfall in me」や「目を閉じて、失せるから。」、ストリングスを配したバラードの「そのままどこか」など、さまざまなスタイルの楽曲を展開。メジャーデビュー作にして、ユニークな彼の音楽性を今後さらに拡張していく予兆に満ちたような作品だ。

『find fuse in youth』<通常盤>(2021年)

アルバムの方向性について、崎山は「今、自分が好きなことがいっぱいあって、それを全部やりたかったという感じです」と語る。

「今やれることをやっておきたいという気持ちがありました。完成された曲もやりたかったんですけれど、 とりとめのない感じの曲もやりたかったというか。『waterfall in me』や『目を閉じて、失せるから。』は、iPadでビートから打ち込んで作った曲です。JPEGMAFIAが好きなんで、そういう感じにならないかなとか、デス・グリップスみたいにちょっと気持ち悪い感じにならないかなと思ったりしながら家で作ったものをミックスしていただいた感じです。

打ち込みの曲はこれからもっと研究していきたいですね。『そのままどこか』に関しては、高校3年生のときに、夕方に学生が自転車に乗っている姿がエモいなと思って。夕暮れから夜にかけての時間や、秋の金木犀の匂いにインスピレーションを受けて、恋の歌を書こうと思って書いた曲です」

ちなみに、崎山がここ最近大きなインスピレーションを受けているというJPEGMAFIAは、アメリカ・ボルチモア出身のラッパー/トラックメイカー。デス・グリップスは凄腕ドラマーのザック・ヒルを中心にカリフォルニアで結成された3人組ヒップホップバンドだ。ほかにもタイラー・ザ・クリエイターを好きなアーティストにあげていたり、最近はアメリカのオルタナティブヒップホップにも影響を受けているようだ。

「JPEGMAFIAには、メロディが急に乗ってきたり、いろんな音のコラージュがあって。カットアップの仕方とか、音の揺れ方とか、生バンドがやってるみたいに崩れてまた始まる感じを打ち込みでやってたり、PCで作る音楽としてのいろんな面白さがある感じがしますね。歌詞も和訳してみたんですけれど、それもどんどん視点が変わっていくような感じがあって。めちゃめちゃ格好良いんですけれど、気持ち悪さもあって、そういう違和感も大好きです」

2021年3月21日、ライブツアー「find fuse in you(th)」より。Photo by Keiko Tanabe

根っこにある部分もこの曲に出た

新曲「逆行」は、こうした崎山の多面的な音楽的興味をもとに展開されていたアルバムのさまざまな挑戦が結実したような1曲になっている。鮮烈なカッティングギター、畳み掛けるようなバンドサウンドに、カットアップのエディットを用いた手法など、曲調はとてもスリリング。早くも彼の新境地を見せてくれる楽曲だ。

「この曲は、『賭ケグルイ双』の主題歌のお話をいただいて書いた曲です。原作を読んで、ドラマの映像も見させていただいて、ストーリーや主演の森川葵さんの表情に感化されて書きました。ブレイクコアとか、自分が聴いているいろんな音楽に影響を受けているところもあると思いますけれど、『賭ケグルイ双』という作品に感化されたというのが一番大きかったです。

出演している皆さんが剥き出しの演技をされているんです。それに、ドラマには耽美の要素もあって。もともと僕は幼いころにビジュアル系バンドを聴いていたので、僕の根っこにある部分もこの曲に出たかもしれないと思います」

共同でアレンジにあたったのは、アルバム『find fuse in youth』の収録曲「花火」でもタッグを組んだakkinだ。

「花火」MV

「もともと、エレキギターと電子音っぽいアプローチのドラムとベースで簡単なデモ音源を作って、作詞作曲をして、そこからブラッシュアップしていった感じです。デモ音源にギターの速いストロークのところがあったんですけれど、そこが良いねということになって、そこを主軸に作っていきました。

ベーシックのアレンジは僕がして、akkinさんにまとめていただいた感じです。最初はドラマの放送用に1分くらいのものを作って、それを拡張するにあたって、またakkinさんと進めていきました。akkinさんとは2回目なので、とてもやりやすかったです」

これまで、弾き語り、打ち込み、バンドサウンドと、さまざまなスタイルで曲を作ってきた崎山。それぞれの手法に通じ合う感覚はあるのだろうか。

「つながってる部分もあれば、違う部分もあると思います。つながってる部分は、自分の本当にやりたいことをやれるということですね。あとは、可能性がたくさんある感じがするところ。僕の場合は弾き語りもビートというか、リズムありきのものなので、そういう面では打ち込みに近いなと思うところはあります。

違うところとしては、打ち込みで作る場合は打ち込んだものに歌を付けていくんですけれど、ギターで楽曲を作るときは歌と一緒に作っていくことが多いので、そこは違うかなと思います。あとは、弾き語りのほうが肉体的というか、自分とギターが近いなという感じがあります。『これ、これ』という感じというか。バンドに関しては、これからもっとやっていきたいと思っています。ピアノもやってみたいですし。それぞれに素晴らしさがありますね」

2021年3月21日、ライブツアー「find fuse in you(th)」より。Photo by Keiko Tanabe

ずっと大切にしているのは“未聴感”

こうして、やってみたいことを素直にアウトプットしてきたとも言えるこれまでのキャリアを経て、「逆行」という曲はアーティスト・崎山蒼志にとって、ひとつのターニングポイントになりそうだ。

「ずっと大切にしているのは“未聴感”なんだと思います。聴いたことのない感じの音楽が好きなので、そういうことをやれたら良いなと思っています。『逆行』は、そういう未聴感とある種の聴きやすさが、良いバランスになっているんじゃないかと思います。今までまとまってなかったことがまとまった感じがありました。突き抜けていくような感じもあって、『何が起こってるんだ?』というような意外性もある。それが完成度高くまとまった。今まで好き勝手にやりたいことをやってきて、今も好きなことをやってるんですけれど、ようやくバランスをとれるようになってきた。やっと僕も曲の作り方がわかってきた感じがします」

2021年3月21日、ライブツアー「find fuse in you(th)」より。Photo by Keiko Tanabe

今年3月で、崎山は高校を卒業した。4月からはプロミュージシャン1本での活動がスタートするとのことだ。しかし、この先については、自分でも「未知」だと言う。

「未知だなあという感じですね。地元を離れてひとり暮らしが始まるので不安もありますけど。音楽以外のこともしてみたいし、いろいろやっていきたいです。執筆もやりたいですね。あとは映像制作に関わったり、できないとは思うんですけど、コントもしてみたいなと思ってます」

コントをしてみたい、というのは意外な言葉だった。

「お笑いが好きなんですよ。錦鯉さんやハリウッドザコシショウさんが大好きなんですが、例えばスネークマンショーとか、1980年代にキッチュなことをやっていた人たちのバイブスもすごく好きです。それと、The Gardenというバンドがマック・デマルコとやっていた『Thy Mission』という曲のミュージックビデオ(以下、MV)がすごく好きなんですけれど、シュールで、コワオモシロイんですよ。そういう感じもやってみたいなと思っています」

ノンフィクションや小説に影響を受けることも多いようだ。

「『サピエンス全史』という本はとても面白かったです。考え方もとても刺激になりました。あとは内田百閒さんの小説がとても面白くて、描写にもすごく惹かれる部分があります。映像作品で言うと、映画はあまり観ていなくて、MVがすごく好きです。タイラー・ザ・クリエイターのMVとか、yuigotさんと長谷川白紙さんのコラボ『音がする』のMVもめちゃめちゃ良かったです。東京スカパラダイスオーケストラさんと長谷川白紙さんのコラボもヤバかったですね。すごい方がたくさんいらっしゃるので、最近はとにかく音楽を聴くのが楽しい状態です」

まだまだ底が知れない。“未知”の部分がたくさんある。そして、ジャンルやカテゴリや国境を軽々と超えた“未知の才能”と交感しあってどんどん変貌を遂げていく予感がする。崎山蒼志はそういうタイプのアーティストなのだと感じた。

 

文・取材:柴 那典

最新情報

ニューシングル「逆行」
3月31日配信リリース

 
Amazon Prime Videoドラマ『賭ケグルイ双』主題歌
視聴・購入はこちら

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