松浦航大:ものまねするほどの“好き”を突き詰めた先でつかんだ“オリジナリティ”
2021.06.24
今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る連載「Eyes on」。
第15回は、2020年1月にアルバム『ZOO‼』でメジャーデビューし、昨年10月に発表した配信シングル「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」がテレビアニメ『秘密結社 鷹の爪~ゴールデン・スペル~』オープニングテーマに起用されたネクライトーキーから、ボーカル&ギターのもっさと、バンドのほぼすべての楽曲の作詞作曲を手掛ける、ギターの朝日が登場。
ふたりの出会いから、最新アルバム『FREAK』を含む現在の活動の手応えまでを語るインタビューを、バンドの楽し気な雰囲気そのままのオフショットとともに届ける。
ネクライトーキー
NECRY TALKIE
(写真左から)中村郁香(キーボード)、もっさ(ボーカル、ギター)、藤田(ベース)、朝日(ギター)、カズマ・タケイ(ドラム)
石風呂名義でボカロPとして活動していた朝日を中心に2017年に結成。2020年1月、アルバム『ZOO‼』でメジャーデビュー。ニューアルバム『FREAK』が5月19日にリリースされる。
──ネクライトーキーが音楽活動をスタートしたきっかけから聞かせてください。
朝日:もともと僕は、ボーカロイドを使った音楽を作って発表してたんです。同時に、自分が歌う3ピースのシンプルなギターロックバンドをやっていました。ボカロで音楽を作るときは女性の声を使ってピアノやシンセサイザーを入れてたんですけど、それに近い形態のバンドをやりたいと思うようになったんです。それで、良いボーカリストがいないかなって探したときに、もっさの存在を知った感じです。
──もっささんとはどのように出会ったんですか?
朝日:僕の曲をカバーしてくれてたものがネット上にあったんです。それを聴いて、会ってみたいなと思って連絡をとりました。それくらい声が良くて。でも、当時のもっさはバンドもやってないし、まだ高校生で。そんなまっさらな子に「君は才能があるから音楽をやろう」とか言うのもなんか嫌だなって思って、そのときは何もなく終わりました。
──もっささんは、朝日さんのボカロ曲のファンだったそうですね。
もっさ:はい。高校生のころは、家で動画サイトを徘徊する生活だったのでボカロ曲にどっぷりで、そのなかでボカロPの石風呂さん(朝日)の曲が好きだったんです。そしたら連絡いただいて、最初、偽物かな? ってすごく警戒しました(笑)。でも本物だったので1度会いました(笑)。
──そこから、どういう流れでバンド結成につながったんですか?
もっさ:そこからしばらくは、まったく連絡もなかったんです。4年ほど経ってから、たまたま自分が行ける距離のライブハウスで朝日さんのバンド、コンテンポラリーな生活がライブをするということで観に行ったんですね。ライブを観て、「あー、元気にやってるわー」って思いながらひっそり帰ろうとしてたら、なぜか朝日さんが見つけてくれたんです(笑)。
朝日:実は、そのころもボーカルを探してたんです。その日、たまたま楽屋で当時のマネージャーに、「昔良いって言ってた子はどうしてるの?」って聞かれてもっさのTwitterを見たら、バンド活動してるって書いてあって。自分でバンドやってる子なら誘ってもいいのかも? と思ったんです。そしたら今日のライブに来てるってツイートしてて、めちゃびっくりして探したらほんとにいたんです(笑)。そのときにやっと「一緒にバンドどうですか?」って誘いました。
──4年越しでバンド加入をオファーしたというのは運命的です。もっささん的にはどうだったんですか?
もっさ:ちょうど大学を卒業するときだったので、当時やってたバンドもこれからどうなるのかわからない状態だったんです。私は就職が内定してたんですけど、帰り道にすごく考えて、「よし! 就職先蹴るか」って(笑)。
──急に人生の分岐点が来てバンドを選んだと。
朝日:オレも、バンドをやるために内定蹴ったってあとから知りました(笑)。
もっさ:はい、その1日で人生が変わりましたね(笑)。
──そうしてめでたくネクライトーキーが始動したわけですが、その時点で音楽的な方向性も決まってたんですか?
朝日:そのころには、インディーズ1stアルバム『ONE!』に収録されることになる2曲が既にできてたんです。キーボードがいる自分の好きなバンド、フジファブリック、ユニコーン、初期のXTCとかみたいな音で女性ボーカルだったらすごく面白くなりそうだなって、なんとなくイメージがありました。
もっさ:最初に「タイフー!」と「だけじゃないBABY」の2曲のデモを聴いたんですよ。もともと石風呂さんの曲は好きだったので、音の方向性は自分にもスッと入ってきました。
──活動が始まって、バンドに手応えを感じたのはいつごろでしたか。
朝日:それは初めて全員でスタジオに入った日です。初めてなのでグダグダでしたけど、すごく良いバンドだなって思えたんですよ。まったく根拠はないんですけど、大丈夫だって思ったのを覚えてます。
もっさ:そのとき私は、ほぼ初対面の人たちとだったので、「怖い人来るかも?」とかドキドキでした(笑)。確か「ゆるふわ樹海ガール」(石風呂名義の曲)を最初に合わせたと思うんですけど、その曲を演奏できてる~って普通にうれしかった記憶があります。ただ、歌については、最初のころは朝日さんが歌のディレクションをしてくれてたんですが、結構厳しくて苦労しました(笑)。
朝日:(笑)。でも、この人に歌を頼んで良かったなって思ってました。声がトゲトゲしてなくて、楽器みたいなのに人間味があって良いなと思いますね。
──もっささんは、朝日さんが書く歌詞をどんなふうにとらえていますか。
もっさ:自分ではなかなか口にしないような、怒りとかの感情をちょっと面白くネタっぽく表現してるなって。それを歌で表現できるのがすごく良いなと思ったりしますね。でも、今回のアルバム『FREAK』ではその印象とも違って来たんです。だから、今回のレコーディングは悩んだとこもあります。
──話が出たところで、メジャー2作目となるニューアルバム『FREAK』についてお聞きします。コロナ禍での制作でしたが、作っていく上でこだわったところは?
朝日:前作の『ZOO!!』は結構なスピード感のなかで作ったので、今回はゆっくり腰を据えて、ちゃんと作りたいと思ったんです。いつも自分に近い生活の範囲のことを歌詞にしたいと思っているので、コロナ禍で生活が一変して、その感じは自然と変化として現われてるだろうなとは思います。
──先ほどもっささんが言われた、前との違いを感じた曲を挙げるとすると?
もっさ:「大事なことは大事にできたら」は、朝日さん、すごく変わったなって感じましたね。“みんな死ねばいいやと言えないほど丸くなれたよ”って歌詞があるんです。以前は「きらいな人」って曲で“みんな死んじゃえばいいのにな”って歌詞を書いてた人ですよ(笑)。そう思わなくなったんだな、こんな歌詞書くんだなって思いました。
──どんな変化があったんですか?
朝日:変化というか、昔からそう思ってはいたんですが、どう言ったら良いかがわからなかったんです。今もわかってはいないんですけど、どうにかしたいと思ってるって歌詞になったのかなって思います。
──ある意味、気持ちを素直に表現しているように思えます。朝日さん的にアルバム全体が見えたという曲はありましたか。
朝日:最後の最後にできた「Mr.エレキギターマン」ってもっさが作曲してくれた曲があるんですけど、この曲のおかげでアルバムがまとまったなって思いました。
──突き抜け感もあるし、歌詞も“無骨なまま響け! 狭くていい 心の中、燃やす音楽を”ってストレートな言葉が乗ってる曲ですね。
朝日:そうですね。結構、重たい暗いアルバムになったかもしれないけど、最後の最後で励ましてくれるから、悲観的なだけじゃなく良い感じになったなって思いました。
──リード曲「気になっていく」についても聞かせてください。
「気になっていく」MV
朝日:これも終盤のほうにできた曲で、最初はメロディよりも先にイントロのフレーズができたんです。この感じで1曲作りたいねって話をして、サビメロができていったんです。曲中に、もっさとベースの藤田の掛け合いがあるんですけど、そこをどんな展開にするかすごくスタジオで悩みました。みんなでいろいろ意見を出し合って、最終的に掛け合いになったっていう、二転三転してやっと完成した曲です。
──この曲は跳ね感やスウィング感があったり密度が濃いです。ネクライトーキーはこの曲に限らず、1曲のなかにいろいろな要素が詰まってますね。
朝日:特にこの曲は派手な感じがありますね。
もっさ:ほんといろんな要素が詰まってて、3分40秒もあると思えないくらいのスピード感で過ぎてく曲だなと思います。ネクライトーキーって派手な曲が多いですけど、この曲は意外とやってなかったジャンルを朝日さんがついてくれて、うまいなって思いました(笑)。
朝日:ありがとうございます(笑)。
──全体的な歌詞の話で言うと、大人になりきれない思いが垣間見える曲が多いように感じます。朝日さん自身、そう感じることが多いんですか?
朝日:そうですね。大人になりきれないというか、なんでうまくできないんだろうっていう感じはずっとあるんです。例えば、パッと気の利いたことが言えなかったり、誰かが悩んでてもさっと答えが出せなかったり。シンプルに、なんでもっとちゃんとできないんだろうなとかはずっと思ってます。
──人としてもうちょっとうまくできたらなって気持ちがあると。そういった歌詞を、もっささんはどんな思いで歌ってますか?
もっさ:世の中にはめちゃ感情がこもった歌い方のすごく良い曲がいっぱいあるじゃないですか。でも、これは私の個人的な趣向なんですけど、歌詞がめちゃくちゃ重たいのにあまり感情を込め過ぎないものが好きなんです。
やっぱり、歌詞を書いてるのは朝日さんだし、言ったら別の人じゃないですか。もちろんリンクしてる部分もあるけど、あくまで私は別の人間であるってところは意識してるのかもしれないです。あまり感情的になり過ぎないからこそ、「すごく明るい楽しい曲調だけど意外とそんな歌詞歌ってたんだね」みたいなギャップを生んでるのかもしれないなっていうのは思います。
──結果的にそれが無邪気さにも見えたりします。笑顔で毒吐いてるような(笑)。
もっさ:そうかもしれないですね(笑)。曲としてはすごくポップに聴いてほしいっていうのがありますね。
──今、『FREAK』ができあがって、どんな感想がありますか。
朝日:良いのができたなと思いました。あと、ネクライトーキーってバンドはもっと良くなるなっていうのも思いました。
もっさ:今までの2作と全然違うっていう部分が見えてきました。今まではおもちゃ箱をひっくり返したようなバンドって印象があったと思うんですけど、そうじゃない曲もやれるなって思いました。そういうのもあって、これからのネクライトーキーを自分でも楽しみだなって思えてますね。
──そして、納得のアルバムを引っさげて6月から9月にかけて全国ツアー『ゴーゴートーキーズ! 2021』が開催されます。バンド史上最大規模のツアーをどんなものにしたいですか?
朝日:自分としては今回のアルバムがすごく良い出来だと思っているので、それをライブでも体感してほしいです。アルバムの何曲かはライブでやり始めてるんですけど、やっぱり演奏すると良いなって改めて思うんですよ。なので、皆さんにぜひ生で体感してほしいです。すごく良いライブになるって強く思ってます。
もっさ:ライブのことで言うと、私はCDで聴いた体験を生でどう表現できるか、それ以上の、違う感覚を体験してもらいたいって思って頑張ってます。大変な状況ではあるんですけど、ぜひライブを観てほしいなと思いますね。これからもネクライトーキーは音源でも成長したいし、ライブでも成長できたら良いなと思ってます。
文・取材:土屋恵介
公式HP
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中村郁香:https://twitter.com/papaiyayaka
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