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連載Cocotame Series

DXを考える。

「DX」のその先へ――テクノロジー×エンタテインメントで空間の未来を創る『EX』【前編】

2021.06.02

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IT技術を活用し、社会全体をより良いものに変革していこうとする「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」。連載企画「DXを考える。」では、「DX」に取り組む人々に話を聞きながら、エンタテインメント業界において「DX」がもたらす新たな価値や可能性を探っていく。

連載第1回では、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の「スペースプロデュースオフィス(以下、SPO)」チームが提唱する『エンタテインメント・トランスフォーメーション(以下、EX)』をフィーチャー。

ソニーミュージックグループが持つエンタテインメントにまつわるノウハウと、ソニーグループ各社のテクノロジーを活用し、エンタテインメント性と利便性を両立した空間をプロデュースする『EX』とは、どのような取り組みなのか。

前編では、『EX』立ち上げの経緯やソニーグループの技術をどのように活用しているかについて、プロジェクトメンバーに語ってもらった。

 

  • 川田大洋

    Kawada Taiyo

    ソニー・ミュージックソリューションズ
    アシスタント・マネージャー

  • 田村健介

    Tamura Kensuke

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 松盛 剛

    Matsumori Go

    ソニーセミコンダクタソリューションズ

コロナ禍でのライブやイベントビジネスの減少が転機に

──SMSは、CDなどのパッケージ制作、コンサートでの物販制作、ファンクラブ運営など、エンタメ領域において多岐にわたる事業を展開しています。そのなかで「SPO」の皆さんは空間プロデュース事業を行なっているということですが、どのようなきっかけで発足した部門なのでしょうか。

川田:「SPO」は、1995年にCDショップなどでCD試聴機を設置する什器制作からスタートした部門です。その後、国土交通省で認可される特定建設業許可を取得し、CDショップや書店、オフィスの内装施工も手掛けるようになっていきました。

2010年代に入ると、CDの売上が減少し始めるいっぽうで、ライブやイベントビジネスが拡大。それに合わせて、アニメやゲーム関連のイベントのブース設営など、エンタテインメントに関わる空間プロデュースの仕事が増えていったんです。

その経緯から「SPO」は、エンタテインメントの空間プロデュースにおいて、企画、設計、施工はもちろん、進行管理、コスト管理、イベント終了後のアフターケアまでトータルで請け負うようになりました。ちなみに現在は、一級建築士の資格を持つ社員も数名います。

──これまで手掛けてきたなかで、代表的な事例を教えてください。

川田:売り場では家電量販店などでソニー製品が販売されるブースの什器制作、ショップでは山野楽器や紀伊國屋書店の店内空間作りを数多く手がけてきました。イベントでは、「東京ゲームショウ」のカプコンブースや「AnimeJapan」のアニプレックスブース、国内外での「Fate/Grand Order」記念イベントの企画や施工を行なった実績があります。

SMSが施工を行なった「東京ゲームショウ」のカプコンブース。

あとは、ソニーのテクノロジーを取り入れた空間作りも行なってきました。2019年に東京、2020年に京都で開催された体験型展示イベント「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」が、その好例ですね。VR空間を舞台にしたアニメなので、ソニーの未来を作るテクノロジーとマッチしました。

「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」展示の様子。

──ソニーのテクノロジーがイベント企画にまで応用されているというのは、グループシナジーがいかされているからこそと思いますが、そういった関係性はどのように構築されていったのでしょうか。

田村:もともとのグループ会社という関係性から、もう一歩踏み込んだ連携を模索していこうという動きが、近年、活発になっていました。そうした流れの一環として、ソニーミュージックグループ内で定期的に行なわれている「新規事業創出プログラム」に、ほかのソニーグループの方々もコンタクトされていて。私は、4年前にこのプログラムに参加したのですが、そこからほかのソニーグループの方々ともコミュニケーションを取る機会が一気に増えたんです。

技術の研究開発を行なうソニー(現ソニーグループ)R&Dセンター、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業を担うソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(ともに現ソニー)、ソニービジネスソリューション(現ソニーマーケティング)、そしてソニーセミコンダクタソリューションズなど、あらゆるグループ企業の方々と交流を深めたのですが、実際に話をしてみると、ソニーグループにはエンタテインメント脳を持った面白い方が多いということに改めて気づかされました。

そこで知り合った方々とは、その後も「何か一緒にやりたいね」と飲みながら情報交換をしたり、事業プランを出し合ったりしていたんです。

──つづいて松盛さんが所属しているソニーセミコンダクタソリューションズの事業内容とご自身の業務内容を教えてください。

松盛:ソニーセミコンダクタソリューションズはイメージセンサーを中心に、マイクロディスプレイや各種LSI、半導体レーザーなどを含むデバイスソリューション事業を展開しています。

また、昨今はイメージセンサーとソフトウェアをセットで提供し、価値を最大化するソリューション事業も需要が高まっていて、私は、このソリューション事業の一環として、「AR MAP ソリューション」を通じたビジネス開拓を行なっています。

──なるほど。それでは改めまして『EX』について伺っていきます。『EX』は、デジタル、エンタテインメント、テクノロジーを融合した、未来の空間演出を提案されています。まずは、この取り組みに至った背景について教えてください。

川田:最も大きな要因は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナ禍でイベントの空間プロデュース事業がほぼ立ち消えになり、今後の事業展開を見直す必要がありました。

田村:そこで課題となったのが、我々「SPO」、ひいてはSMSのリブランディングです。SMSが設計、施工ビジネスを展開していることは、ソニーミュージックグループ内では認知されていますが、一歩グループの外に出ると、その認知度は皆無に等しくなります。まあ、総合エンタテインメントカンパニーのソニーミュージックグループが設計、施工のビジネスを展開しているとは、なかなかイメージしづらいのはよくわかるんですが(苦笑)。

そこで、ソニーグループのデジタルソリューションを掛け合わせた空間プロデュースを提唱したんです。

川田:昨今は、コロナ禍もあってECが拡大し、自宅に居ながらあらゆる物が買えるようになりました。サブスクが普及して音楽も映画も好きなだけ楽しむことができますし、ライブやイベントもオンライン化が進んでいます。そして、こうした状況は今後さらに加速することが予想されます。

そうなると商業施設やイベント会場といったリアルの場は、ただ物を売ったり、イベントを開催するだけではなく、自宅では体験できない付加価値を求められるようになるのではないかと考えました。そして、それはエンタテインメントの力で補えると思ったんです。

田村:SMSが蓄積してきたエンタテインメントソリューションのノウハウに、ソニーグループのテクノロジーをいかしたデジタルソリューションを掛け合わせることで、我々「SPO」にしかできない空間プロデュースが提供できると考えました。そして、このコンセプトを「DX」の先を見据えた『EX』と提唱することにしたんです。

ソニーグループ内のシナジーで独自の価値を創出

──「SPO」は、これまでさまざまな空間プロデュースを手掛けてきましたが、テクノロジーを取り入れた空間演出に対するニーズの高まりは感じていましたか?

川田:そうですね。特にイベントや商業施設では、来場者の目を惹きつけることが求められます。クライアントからも「今までに見たことのない、新しい空間を作りたい」という声をいただきますし、SMSならそういった要望に応えてくれるのではないかという期待も感じていました。

田村:我々の強みは、ソニーミュージックグループのエンタテインメントとソニーグループのデジタルテクノロジー、双方の知見を活用できるところにあります。

また、テクノロジー主導でないのも『EX』の特長だと捉えていて。テクノロジーが先行すると「この技術を何かに使わなければ」という発想になりがちで、その空間演出にとって本当にベストな選択なのか判断が難しくなってしまいます。

我々は、ソニーグループ各社のテクノロジーをヒアリングしながら、クライアントに対して「こんなテクノロジーがあって、それを使えばこういった演出が可能です」と案件にマッチしたソリューションを提案することができます。

田村:テクノロジーが先行しすぎては駄目だし、とは言え、エンタテインメントはテクノロジーがなければ表現できないことがたくさんあります。やはりバランスが大事で、我々は、空間プロデュースにおいて、クライアントのニーズに応える良き通訳者でありたいと考えています。

──ソニーグループ内では、どのように話を進めていったのでしょうか。

田村:先ほどほかのソニーグループの方々と交流を深めていたと話しましたが、コロナ禍においてもオンラインミーティングなどで継続的なコミュニケーションは行なっていたので、『EX』については既にコンセプトも理解していただいて、下地はできていました。そのため、非常にスピーディーにプロジェクトとして立ち上げることができました。

川田:『EX』のコンセプトを打ち出したのが、2020年夏のこと。そこから今年の3月に開催された、第50回店舗総合見本市「JAPAN SHOP 2021」に照準を合わせて取り組みを開始しました。この展示会では、「未来の空間を、ソニー・ミュージックソリューションズと一緒に作りませんか?」をコンセプトに、ブースを訪れた方々に『EX』を体感していただく展示を行なったんです。

──2020年夏の時点で、松盛さんもプロジェクトに加わっていたのでしょうか。

松盛:私が参加したのは、2020年10月からですね。最初に田村さんから話を伺ったときには大変驚きました。先ほど申し上げた通り、ソニーセミコンダクタソリューションズは主に半導体を手掛ける企業なので、エンタテインメントの現場とは縁遠かったものですから。

ただ、お話を伺って、いろいろ考えていくと、確かにテクノロジーとエンタテインメントを掛け合わせることで大きな相乗効果が生まれると思いました。

川田:ソニーセミコンダクタソリューションズには、以前、ファンショップやイベントの物販の現場で使えるように、レジ業務をICチップやセンサーによって簡略化できないかとご相談したことがあったんです。

田村:それを踏まえて『EX』の話をご相談したところ、松盛さんがエンタテインメント性に富んだ資料を作ってくれたんですね。“これはイケる!”と直感し、すぐさま「JAPAN SHOP 2021」でもブース内にソニーセミコンダクタソリューションズのテクノロジーを用いたソリューションの展示コーナーを作ろうとチームで話し合いました。

正式に出展が決定した12月上旬から3月の「JAPAN SHOP 2021」まで、時間のないなかではありましたが、濃密なやり取りで出展に間に合わせることができました。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:冨田 望

関連サイト

ソニー・ミュージックソリューションズ
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/(新しいタブで開く)
 
ソニーセミコンダクタソリューションズ
https://www.sony-semicon.co.jp/(新しいタブで開く)
 
SPACE EX
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/s/spo/(新しいタブで開く)
 
「JAPAN SHOP 2021」出展プレスリリース
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/s/sms/news/detail/202000110?ima=0000&link=ROBO004(新しいタブで開く)

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