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ヒットの裏方

メジャーデビュー5周年。岡崎体育の才能に惚れ込み、5年間をともに歩んだふたりのマネージャー【前編】

2021.06.07

ヒットした作品、ブレイクするアーティスト。その裏では、さまざまな人がそれぞれのやり方で導き、支えている。この連載では、そんな“裏方”に焦点を当て、どのように作品やアーティストと向き合ってきたのかを浮き彫りにする。

2016年に「MUSIC VIDEO」で旋風を巻き起こしてから5年、独自のスタイルを追求し、J-POP界で確固たる地位を築いたアーティスト、岡崎体育。彼を見出し、ともに歩んできたふたりのマネージャー、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)の井上泰斗と、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)の松下友紀に話を聞く。

前編では、岡崎体育との出会いから、いきなり注目を浴びた「MUSIC VIDEO」のミュージックビデオ(以下、MV)の裏側、当時マネジメントが考えていたアーティストとしての在り方までを振り返る。

  • 井上泰斗

    Inoue Taito

    ソニー・ミュージックレーベルズ
    ゼネラルマネージャー

  • 松下友紀

    Matsushita Yuki

    ソニー・ミュージックアーティスツ

岡崎体育(オカザキタイイク)

 
京都府宇治市出身の男性によるソロプロジェクト。2016年5月18日、アルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビュー。本作のリリースに先駆けて公開された「MUSIC VIDEO」のMVが話題となる。同作で、『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。2018年にNHK連続テレビ小説『まんぷく』で俳優デビューを果たす。2019年、目標として公言していたさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功に収める。以降、多数の楽曲提供を含め幅広く活躍中。今年11月の、横浜アリーナでのワンマンライブ開催を発表した。

ライブを観て「10年にひとりの天才がいた!」

――岡崎体育は、今年メジャーデビュー5周年を迎えました。最初に出会ったきっかけはなんだったんでしょうか。

松下:私はもともと大阪の専門学校で音楽関係の勉強をしながらライブハウスで働いていたんですが、そこで「なんでこんなにかっこ良いのにインディーズなんだろう」とか「すごいバンドなのになぜ売れないんだろう」という状況を見ていて、新人発掘に興味を持ちました。

それで、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のSD(新人開発・育成部門)で2012年からアルバイトをするようになったのがきっかけです。新人発掘の一環でライブハウスに通うようになり、そこで岡崎体育と出会いました。それが2014年の夏ぐらいです。

――ライブパフォーマンスを観たのが最初だったんですね。

松下:そうです。音楽のライブなんだけどネタ要素も強い、芸人とアーティストを混ぜたようなスタイルが印象的で、初めて観たときは「変な人がいるな~」という印象でした。ずっとバンドを観てきたんで、正直、岡崎体育がやっていたような打ち込み系にはそこまで興味は持っていなかったんですね。

でも、そんな自分でも直感で面白いと思えるライブだったので興味が湧いて、彼の当時のYouTubeチャンネルをチェックしたんです。そしたらライブで披露していた曲以外にもとにかく琴線に触れる良い曲が多くて、すごく多才な人なんだなと。

――第六感に響いた、と。

松下:当時、読者モデルとか容姿がカッコ良いバンドとかが多く、イケメン文化がすごく流行ってたんですよ。そんななかで、シュッとしたイケメンというわけでもないのに、とにかく気になる存在でした。それで、「こういうアーティストがいます」と、社内プレゼンに掛けたんですよね。井上さんはその前から興味を持ってくれていて。

井上:当時SDに僕の同期がいまして、彼が「お前の好きそうな新人がいるよ」って岡崎体育を教えてくれたんです。

それでYouTubeをチェックして、「これはすごい」と。ネタ曲はもちろん面白いし、ジャンルを超越した音楽性の高さと、独特のセンスと発想を感じさせられて。それで急遽、京都でのライブを観に行きました。

――ライブを観た印象はどうでしたか?

井上:「10年にひとりの天才がいた!」と思いました。音楽的なクオリティと、MVの構成能力と発想力の高さはわかっていたんですが、ライブも僕の想像を遥かに超えるクオリティで、エンタテイナーとしても優れているんだなと。その場で、「自分としては一緒に仕事がしたい」ということを彼に伝えたと思います。それが2015年ですね。

2016年のメジャーデビュー時。

――そのまま井上さんが担当になったんですか?

井上:いや、ソニーミュージックのほかのレーベルや部署にも広くプレゼンがあったのと、その後、会社自体に組織改編があったので、ちょっと時間がかかってしまいました。

――ちなみに松下さんは、2016年から岡崎体育がパーソナリティを務めているラジオ番組『Okazaki Radio Channel』(FM京都)でアシスタントをされていますが、その経緯は?

松下:番組がスタートするときに、本人が「ひとりしゃべりだと間が持たない」と言うので、誰かアシスタントをつけようという話になったんです。当時の岡崎体育は極度の人見知りだったので、初めましての人とスムーズにおしゃべりできるとは思えないということと、マネージャーなら必ず収録に来るという、ふたつの理由でアシスタントになりました(笑)。

――非常に合理的な経緯だったんですね(笑)。2010年代の音楽シーンを振り返ると、楽曲だけでなくMVなども自身でプロデュースするアーティストがどんどん増えてきた時期でした。岡崎体育の創作もその流れにあると思いますが、契約する理由に、そういった潮流の影響もありましたか?

井上:契約の決め手としては、音楽業界的な状況よりも、単に音楽家として、アーティストとして素晴らしいという部分でしたね。例えるなら、岡村靖幸さんのような天才肌を感じていました。もちろん、ジャンルや音楽性は違うけれども、セルフプロデュース能力の高さや音楽的な幅の広さは、共通してるのではないかなと思いましたね。

世の中にバズを起こすために作ったのが「MUSIC VIDEO」

――そして2016年5月18日に、アルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビューを果たし、収録曲「MUSIC VIDEO」のMVは一躍話題になりました。

「MUSIC VIDEO」MV

井上:デビューアルバムを出すことが決まって、本人がその作品を出すにあたり何か世の中にバズを起こしたいと。それを目的に作ったのが「MUSIC VIDEO」でした。そして本人の狙い通り、むしろ狙った以上にバズって。

――そもそもバズることを目的としていたんですね。「MUSIC VIDEO」のMVは、“MVあるある”をネタにした、ある意味では音楽コント、映像コントともとれる作品だと思います。彼のサウンドクリエイターとしての才に惚れ込んだいっぽうで、そういったコント的な側面ばかりが注目されてしまう危険性や不安は感じなかったですか?

井上:「MUSIC VIDEO」を押し出すことに不安はなかったですね。彼がインディー時代に出していた楽曲を聴いていて、彼の音楽性の高さは疑いようがなかったので。

松下:彼の音楽や本人自身に対する信頼もあったので、不安を感じたことはなかったです。ただ、想像以上に話題になったので、“いきなり未知の世界に行ってしまった”という感じはありました。

井上:確かに結果として、我々の想像を超えるぐらい注目されたので、“あるあるの人”という形で受け止められて、そういったオファーばかり来るようになってしまった部分はありました。

――偶然ですが、同じ2016年にCreepy Nutsが「みんなちがって、みんないい。」という楽曲を発表しています。これも 「MUSIC VIDEO」と同じように、構造自体を俯瞰した表現を作品の背骨にした、“ヒップホップあるある”とも言える楽曲です。そのCreepy Nutsが「MUSIC VIDEO」のMVに“仲いい人”として登場しているのも縁を感じます。

Creepy Nuts

松下:ちょうど「MUSIC VIDEO」を制作していたときに、Creepy Nutsの対バンツアーの札幌公演に、岡崎体育が対バン相手として招かれたんですね。そのときが初対面だったんですが、Creepy Nutsのおふたりに「すみません、今作ってるMVに“仲いい人”って歌うパートがあって、出演してもらえませんか?」ってお願いしました(笑)。

――そういう経緯だったんですね(笑)。

松下:今年3月に行なった自主企画イベント『okazakitaiiku purezentsu “TECHNIQUE”』でCreepy Nutsと共演したときに岡崎体育が言ってましたが、「あのときはCreepy Nutsも俺もここまで行けるとは思ってなかった」って。お互いに同じような気持ちがあったようです。

『okazakitaiiku purezentsu “TECHNIQUE”』よりCreepy Nutsと。

軸はミュージシャンであることをちゃんと見せないといけない

――「MUSIC VIDEO」以降、「家族構成」や「FRIENDS」「感情のピクセル」といったコミカルなMVで注目されることが多かったと思います。

「家族構成」MV

井上:音源と同時にMVを制作して、その監督は寿司くん(ヤバイTシャツ屋さんのこやまたくや)が手掛けるという構図は固まっていましたね。バズを起こして注目されることを本人がすごく戦略的に考えていたので、それに向けてのクリエイションだったと思うし、実際にバズを起こすことで、その手腕を証明できたと思います。

――プロデューサー的な思考が功を奏したと。

井上:そうですね。「MUSIC VIDEO」以降、オファーをたくさんいただくようになったし、注目度も上がって、それによって動きやすくなった部分もあります。どんどん忙しくなっていったし、さまざまなタイプの仕事をいただくようになって。その上で、「これはやろう」「これはやめておこう」みたいな方向性は、スタッフみんなで慎重に考えました。

松下:お笑い芸人のようにイメージされたり、勘違いされることも多くて。だから、軸はミュージシャンであり、非常に才能のある音楽家であるっていう部分をちゃんと見せないといけないというのは意識しましたね。いろんな場所に打って出るけど、音楽家という軸はブレないようにするために、スタッフ間での意思の疎通や、スケジュールの組み方、見せ方のアプローチをしっかりしなければいけないなと考えていました。

「感情のピクセル」MV

井上:やはり当時はコミカルな部分をフォーカスされることが多かったですね。だから、例えばテレビ番組なら、ワイドショーと音楽番組には出るけど、バラエティ番組には基本的に露出しない、といった方針でした。それはミュージシャンという軸をブレさせないために必要でしたね。

それと、当時はライブレポートというものをやらなかったんです。ネタ要素が盛り込まれているライブがネタバレしないように、また彼のエンタテインメントを生で体験してほしいと思い、その方向性を決めました。

ライブの世界観を大事にしたいという理由で、フリーイベントも断っていましたね。ただ、それに関しては、僕や松下で決めた部分が大きくて。彼自身はライブハウス出身なので、どんな形であっても求められればライブできます、というスタンスでした。相手がバンドであってもアイドルであっても対バンできるっていうのは、彼の大きな魅力だと思います。

――今では『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のような大型フェスの常連です。

井上:大型フェスは単純にお客さんが多いですし、幅広い層にアピールできる場です。そういう意味で言うと、2019年に行なった念願のさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを埋めることができたのは、大型フェスでのパフォーマンスの成果だと思います。

 
後編へつづく

文・取材:高木“JET”晋一郎

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関連サイト

岡崎体育 公式HP
https://okazakitaiiku.com/
 
岡崎体育 Twitter
https://twitter.com/okazaki_taiiku
 
岡崎体育 Instagram
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岡崎体育 YouTube Channel
https://www.youtube.com/okazakitaiiku

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