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ヒットの裏方

メジャーデビュー5周年。岡崎体育の才能に惚れ込み、5年間をともに歩んだふたりのマネージャー【後編】

2021.06.08

ヒットした作品、ブレイクするアーティスト。その裏では、さまざまな人がそれぞれのやり方で導き、支えている。この連載では、そんな“裏方”に焦点を当て、どのように作品やアーティストと向き合ってきたのかを浮き彫りにする。

2016年に「MUSIC VIDEO」で旋風を巻き起こしてから5年、独自のスタイルを追求し、J-POP界で確固たる地位を築いたアーティスト、岡崎体育。彼を見出し、ともに歩んできたふたりのマネージャー、ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)の井上泰斗と、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)の松下友紀に話を聞く。

後編では、目標だったさいたまスーパーアリーナ公演に先立って発表したアルバム『SAITAMA』の陰にあった苦悩やライブ実現後の変化、そして、岡崎体育の人間性にも触れていく。

  • 井上泰斗

    Inoue Taito

    ソニー・ミュージックレーベルズ
    ゼネラルマネージャー

  • 松下友紀

    Matsushita Yuki

    ソニー・ミュージックアーティスツ

岡崎体育(オカザキタイイク)

 
京都府宇治市出身の男性によるソロプロジェクト。2016年5月18日、アルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビュー。本作のリリースに先駆けて公開された「MUSIC VIDEO」のMVが話題となる。同作で、『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。2018年にNHK連続テレビ小説『まんぷく』で俳優デビューを果たす。2019年、目標として公言していたさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを成功に収める。以降、多数の楽曲提供を含め幅広く活躍中。今年11月の、横浜アリーナでのワンマンライブ開催を発表した。

バランスをどう取るべきか迷った時期

――2019年1月に発表したアルバム『SAITAMA』と、同年6月9日にさいたまスーパーアリーナで行なわれた『JINRO presents 岡崎体育ワンマンコンサート 「BASIN TECHNO」』で、岡崎体育というアーティストはネクストステージに移行したように思います。特に『SAITAMA』の内省的な部分は、コミカルなイメージの強かった岡崎体育というアーティストのイメージを大きく変えたものでした。

アルバム『SAITAMA』(通常盤/2019年)

井上:メジャーデビュー以降にリリースしたアルバム『BASIN TECHNO』(2016年)、『XXL』(2017年)では、しっかりバズを起こす、狙った通りの結果を出すという、ある意味順風満帆の進み方が、本人的にもできたと思うんですね。

いっぽうで、本人にはコミカルな曲やミュージックビデオ(以下、MV)だけではなく、真面目で、真っ当な楽曲でも評価されたいという意識があったと思うし、そのバランスをどう取るべきか、迷った時期でもあったと思うんです。

――コミカルな楽曲が本人のやりたいことではあっても、そればかり求められると確かに辛くなるでしょうね。

井上:そんななかでできた作品が『SAITAMA』だったと思います。リリースにたどり着くまで、スタッフ側から見てもそういう苦労は感じましたね。ある意味で苦悩の上で制作された作品かもしれません。

松下:さいたまスーパーアリーナでのワンマンが現実的になってきた時期に制作に入ったので、このタイミングで全部真面目な曲のアルバムを出すことに意味があるんじゃないか、っていう話をした記憶があります。

もしそれが受け入れられなかったら、岡崎体育の今後は難しいかもしれないけど、これが受け入れられたらアーティストとしての生命が伸びるんじゃないかなって。

――結果、収録曲の「なにをやってもあかんわ」がTikTokで2019年の年間楽曲ランキングでトップを獲得するなど、ヒット作となりました。岡崎体育は、さいたまスーパーアリーナ公演を成功させたあかつきには、裏方に回って作家業に専念する予定も公言していました。ご自身でも、今後の身の振り方を考えるタイミングでもあったのでしょうか。

2019年6月9日、さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ『BASIN TECHNO』より。

井上:そういった話もしてました。さいたまスーパーアリーナ公演を成し遂げたら、自分はもうパフォーマンスする側じゃなくて良い、裏方に回りたいという話はインタビューでもしていたし、それは決して冗談でもなんでもなくて。

――そういった人生設計はそもそもされてたんでしょうか?

井上:インディーズのころから、27歳までにメジャーデビューするというのは言っていました。そうやって口に出すことで、退路を絶って自らに試練を課してやっていくタイプですし、またそのためにはなにが必要なのかということを、彼は常に考えていますね。「30歳までにさいたまスーパーアリーナでライブする」というのも、メジャーデビュー以前からずっと公言していたことです。

――2016年のメジャーデビュー・アルバム『BASIN TECHNO』収録の「Explain」にも、「いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対」というリリックがありますね。

アルバム『BASIN TECHNO』(初回盤/2016年)

井上:だから彼のなかではさいたまスーパーアリーナは既定路線であり、“必ず成功させなければいけないこと”として考えていたと思います。そこから逆算して、どのタイミングでアルバムをリリースしてツアーを組むのか、ほかにはどういう施策が必要なのかということを、本人を含めたチームとして話し合いました。

――さいたまスーパーアリーナを成功させたアーティストが、そのタイミングで裏方に回るというのは前代未聞だと思います。そういった本人の意思を、スタッフ側はどのように受け止めていましたか?

井上:本人がそういうふうに自分の人生をプランニングしていて、メジャーデビューやさいたまスーパーアリーナ公演の延長線上に、裏方に回るという気持ちがあるのなら、それを止めることはできないだろうなと思ってました。音楽自体を辞めるのではなく、作家や裏方として作品を制作して、ほかのアーティストに楽曲を提供していきたいというのも、音楽家としてのひとつの方向性ではあるので。

でも、さいたまスーパーアリーナでワンマンライブを成功させたという経験は、“これだけ多くの人に求められている”という事実を再認識する出来事でもあったはずなんです。ステージに上がる側としての意識が改めて芽生えたと思うし、結果としてフロントマンとしての活動をつづけることを選んだので、そういう意味でもさいたまスーパーアリーナをやって良かったなと思いますね。

2019年6月9日、さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ『BASIN TECHNO』より。

松下:個人的には「私、仕事がなくなるな」って思ってました(笑)。もともと岡崎体育は小学校のときから将来の夢として「歌手になりたい」じゃなくて「作曲家になりたい」と書いていたタイプなんですよね。だから人前に立ちたいから音楽をやるっていう気持ちがそこまで強くないと思うし、裏方志向はずっとあるんだと思います。

ただ、私はステージに立ってる岡崎体育が好きだし、ステージから降りた姿がイメージできなかったんですよ。良い曲を作って、アーティストに楽曲提供すれば食べていけるとは思うんですけど、でもライブハウスで長い間活動してきて、その結果として、さいたまスーパーアリーナの1万8,000人の前に立ったら、これは辞められへんやろうな、って思ってました。だって絶対気持ち良いはずだし。

活動の幅を広げていくにあたって、正式にSMAに所属

――その通り、フロントに立つ形でのアーティスト活動は継続され、2019年にはSMA所属になりました。

松下:NHK連続テレビ小説『まんぷく』への出演を皮切りにお芝居の仕事が増えてきたので、ちゃんとそういった部分もケアするためのマネジメントということで、本人と会社が話し合って所属が決まったという感じですね。私もSMLからSMAに異動になりました。

井上:さいたまスーパーアリーナを経て、さらに活動の幅を広げていくにあたり、マネジメントを正式にSMAに移して、よりマルチな活動もできるような体制にしようという狙いです。

――岡崎体育自身には、俳優業などに進出したいという願望はあったのでしょうか?

井上:音楽以外の世界に関しては「求められれば応えたい」というスタンスですね。本人は、俳優をやりたい、MCをやりたい、バラエティ番組に出たいというよりも、あくまでも音楽を軸に活動ができれば、という意識です。

2021年3月、自主イベント『okazakitaiiku purezentsu “TECHNIQUE”』より。

――『天才てれびくんYOU』や『アクティブ10公民』、『おはスタ』への出演など、子どもや若者に向けた仕事も多いですね。

井上:「子どもに向けて何かを発信していきたい」という意思を、本人はすごく持っているんですよ。そういった層との相性の良さもあると思うし、子ども向け番組は、本人的にもすごく楽しんでいて、意欲的に携わらせていただいてます。「将来的に自分が末永く活動するため」と本人はギャグっぽく言ってましたが。

松下:「今の子どもたちが大人になったときに知名度がつづく」と(笑)。

井上:「大人を相手にしても先がないんで、将来に繋げるためには子どもだ」とも(笑)。でも単純に子ども向けの仕事が好きなんだと思います。

――昨年12月にリリースされた『「劇場版ポケットモンスター ココ」テーマソング集』では、すべての作曲と、矢嶋哲生監督が手掛けた「掟の歌 featuring vocal SiNRiN(岡崎体育&SiM)」以外の全作詞を手掛けられました。また、フィーチャリングボーカリストとして、トータス松本(ウルフルズ)や木村カエラらを招いています。つまり、岡崎体育のプロデューサー的な側面と、プレイヤーとしての側面の両面によって成立した作品になっているのではないでしょうか。

アルバム『「劇場版ポケットモンスター ココ」テーマソング集』(2020年)

井上:奇しくもさいたまスーパーアリーナ以降、それまで以上に楽曲提供のお話をいただくようになったんです。そういった周りの動きも含めて、これからどういった方向に進むかを考えていたときに、『劇場版ポケットモンスター ココ』の音楽を手掛けてほしいというオファーをいただきました。

――ボーカリストの人選などはどのように?

井上:矢嶋監督から「1曲は岡崎体育に歌ってほしい」というリクエストはありましたが、ほかの曲の人選に関しては、岡崎体育自身が映画の魅力を最大化させるために必要な楽曲を制作して、その楽曲を表現するために必要なアーティストを招くという、すごくベーシックな進め方になったと思います。

また2020年は、コロナ禍でライブなどの活動が難しかったこともあり、そういったプロデュースワークや作家活動に重きを置くことができた年でした。

――コラボや提供楽曲を収録したアルバム『OT WORKS』『OT WORKS Ⅱ』のような、いわゆるアザーワークも非常に印象的ですが、そういったコラボや、オーダーに対して応えるといった、プロデューサー的な手腕の高さ、俯瞰の視点は、岡崎体育の作家性の一部でもありますね。

井上:彼は求められていることに対する適応能力が非常に高いと思います。それには驚かされます。

松下:昔から、自分でアイドルのプロデュースを一からやってみたいとか、新人発掘やオーディションをしてみたいと言ってたんで、そういった興味は強いんだと思いますね。

2021年3月、自主イベント『okazakitaiiku purezentsu “TECHNIQUE”』より。

“紅白”出場を実現させたい

――近くで見る岡崎体育は、どういった人柄ですか?

井上:とにかく優しい。それに、本当に真面目です。アーティスト然とした部分もあるんですけども、それでいてすごく常識人ですね。

松下:すごく気を遣う人ですね。人にちゃんと気を配ることができるけど、悪く言えば“気にしい”な性格でもあったりします。

井上:今はもうなくなりましたけど、昔はネットの書き込みなんかも気にしてました。

松下:気にするピークを越えたんじゃないですかね。社会人も経験してますし、しっかりした大人というイメージです。天狗になることもないし、食費は月に2万3,000円に抑えるという節約家でもあります(笑)。

――最後にマネジメントとして、これから岡崎体育にはどのように進んでいってほしいと思われていますか?

井上:『NHK紅白歌合戦』に出場してほしいです。“紅白”というのは、やはりミュージシャンとしてのひとつの功績だと思うし、出たいというのは本人も公言しているので、それを実現させたい。そのためにどういったことができるのかは考えていますね。個人的には俳優として大河ドラマにも出てほしいですね(笑)。

松下:紅白に出るためという部分も含めて、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで知ってるような、国民的なヒット曲を生み出したいです。それが形になるまで、しっかりサポートしていきたいと考えています。

 

文・取材:高木“JET”晋一郎

最新情報

『OT WORKS Ⅱ』
発売中
 

 
木村昴とコラボレーションしたテレビ東京系『おはスタ』テーマソング「モーニング・グローリー」、ビッケブランカとの「化かしHOUR NIGHT」など、タイアップ曲やコラボ曲を収録するコンセプトアルバム・シリーズの第2弾。

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関連サイト

岡崎体育 公式HP
https://okazakitaiiku.com/
 
岡崎体育 Twitter
https://twitter.com/okazaki_taiiku
 
岡崎体育 Instagram
https://www.instagram.com/okazaki_taiiku/
 
岡崎体育 YouTube Channel
https://www.youtube.com/okazakitaiiku

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